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(特集)2014年の経済、投資戦略を占う!(全3回)経済産業研究所理事長の中島厚志氏に聞く 「2014年の世界経済、日本経済はこうなる」

【著名人インタビュー】

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2013年の世界経済は、新興国が低迷する半面、先進国の復活が目立つ展開となりました。日本経済はアベノミクスの効果で円安、株価上昇が続き、米国経済は3度にわたるQEが効を奏しました。ユーロは予断を許さない状況ですが、債務危機という状況は徐々に脱しつつあります。2014年、世界経済はどうなるのか。リスク要因は何なのか。経済産業研究所理事長の中島厚志さんに話を伺いました。


2014年の世界経済見通し

2014年の世界経済は、さらなる回復へと向かうのでしょうか。

経済産業研究所
理事長 中島厚志氏
中島氏

主要国・地域の鉱工業生産の伸び率を見ると、先進国は堅調に推移していますが、新興国はアジアを除いて停滞しているのが分かります。また、半年程度先の経済情勢を反映すると言われているOECD景気先行指数を見ると、日米欧経済とも回復基調にありますが、特に日本経済の強さが際立っています。逆に、新興国のインド経済は大きく落ち込んでいます。インフレが高止まりしている上に通貨が大幅に下落していること、財政赤字が深刻化していることなどがその背景です。一方、中国経済は底入れしつつあります。これら主要国経済の傾向は2014年も続きそうです。


リーマンショックは過去のものになったと見て良いのでしょうか。
中島氏

過去の5大金融危機該当国とリーマンショック後の米国と日本、ユーロ圏の実質GDPの動きを比較すると、いかにリーマンショック後現在に至るまでの経済動向が厳しいかが分かります(図表1)。ちなみに、5大金融危機というのは、厳しい金融危機に襲われた78年第3四半期から79年第1四半期にかけてのスペイン、88年第1四半期から第2四半期にかけてのノルウェー、90年第3四半期から93年第1四半期にかけてのスウェーデン、90年第1四半期から93円第1四半期にかけてのフィンランド、そして93年第2四半期から第3四半期にかけての日本を指します。

【金融危機後の実質GDP推移】

(注)2007年4Q=100。五大危機はスペイン(78Q3-79Q1)、ノルウェー(88Q1-88Q2)、スウェーデン(90Q3-93Q1)、フィンランド(90Q1-93Q1)、日本(93Q2-Q3)
(出所)Eurostat、OECD、内閣府、各国統計より作成
まず米国の場合、リーマンショック後1年間の実質GDPは、非常に大きく落ち込んだ後目覚ましく回復したのですが、その後の回復ぶりは五大金融危機該当国とほぼ同じで、米国にとって厳しい経済状況が持続してきたと言えます。ところが、日本の実質GDPの回復は、5大金融危機該当国に比べてはるかに鈍いものに止まっています。これは、リーマンショックの影響が米国以上に大きかったことに加え、東日本大震災や円高急伸の影響を受けて景気が合計3回も落ち込んだからですが、2013年7~9月期にようやくリーマンショック前の景気の山の水準に近接してきました。
一番深刻なのはユーロ経済圏です。リーマンショック後、公的債務危機が加わった結果、実質GDPの推移は日本以上に大きく下振れしているのです。どうして回復基調が鈍いのかというと、財政危機の深刻化に伴い、財政再建を最優先して景気刺激をほとんど行わずに来たからです。また、域内では通貨調整がないので、債務危機国が価格競争力を上げるには賃下げとデフレに頼るしかないことも景気を一段と悪化させています。

2014年の各国・地域の経済見通し(米国経済)

各国・地域の見通しについて伺いたいと思います。まず、2014年の米国経済を見るうえでのポイントは?
中島氏

過去の景気回復局面と、リーマンショック後の景気回復局面を、いくつかの側面で比較してみましょう。
まず実質GDPの伸びは、明らかに過去の景気回復局面に比べて劣後しています。
鉱工業生産の回復も同様で、やはり過去の景気回復局面よりも鈍い回復ぶりです。
住宅着工件数は最近こそ急回復していますが、いままでのペースは今までにないくらい緩やかです。こうした中率そのものは依然として高水準ですが、過去と同じペースで改善してきているのが失業率です。
雇用改善も背景に、2014年の米国経済は個人消費の堅調さに支えられて底堅い展開が続くと見ています。失業率は6.7%と5年ぶりの水準にまで低下してきましたし、資産効果の影響もあって足元の消費は堅調です。2014年には所得税増税の影響も剥落することから、一段と消費の伸びが期待されます。

FRBは今後、QEを縮小する方向ですが、その影響をどう見ますか。
中島氏

2013年12月19日、米FRBは2014年1月からQEを縮小するという方針を打ち出しました。最近のトレンドでみると、2014年にかけて前期比年率2.5%の実質GDP成長率が持続すると、失業率はFRBが目標とする6.5%を割り込んで6.1%まで低下する計算になります。やはり、QEは慎重ながらも着実に縮小されるでしょう。
問題は、QE縮小が景気やマーケットにとってネガティブ要因にならないのかどうかということですが、基本的にネガティブ要因にはならないと見ています。それは、QE縮小が景気回復が着実に進んでいるという前提条件のもとで行われるからです。したがって、株価も上昇傾向を維持するでしょう。個人消費が年率3%増の現状ペースを維持すると、QEが着実に縮小されても2014年末のニューヨークダウは1万8,000ドル超えが視野に入ってきます。
また、FRBが量的金融緩和を縮小する過程で、円ドル金利差も拡大が見込まれます。米株価上昇と金利差拡大が相まって、2014年末までに1ドル=120円の円安水準に達する可能性があり、それが日経平均2万円乗せのシナリオを描くうえで、大きなきっかけになると見ています。

2014年の各国・地域の経済見通し(欧州経済)

底入れしつつあるユーロ経済圏ですが、今後の回復シナリオをどう描いていますか。
中島氏

ユーロ圏経済は成長率で見ると底入れしているのですが、主要国の物価がディスインフレ傾向にあるのが気がかりです。消費者物価上昇率を見ると、キプロスがマイナス2.3%、ギリシャがマイナス1.7%とデフレですし、スペインも12月こそ0.2%の上昇ですが、10月の消費者物価上昇率はマイナスでした。これらの国々については、域内の競争力を賃下げとデフレで改善する動きが出ていると言えるのですが、ドイツやオランダなど域内勝ち組の国々でもディスインフレ傾向が顕著なのです。
消費者物価と可処分所得の伸び率を比較すると、リーマンショックの前までは可処分所得の伸び率が消費者物価上昇率を上回っていました。しかし、リーマンショック後は、可処分所得の伸び率と消費者物価上昇率がほぼ同じになり、ユーロ危機の後は両者の関係が完全に逆転しました。現状は、可処分所得の伸び率が、消費者物価上昇率を下回っています。これでは購買力が落ちてしまうので、自然とディスインフレが進行してしまいます。
景気を立て直す手段には、財政政策、金融政策、成長戦略という3つの柱がありますが、現状、ユーロ経済圏では財政の立て直しに最重点が置かれているため、財政政策を用いた景気刺激策には期待できません。
とはいえ、経済成長率が低迷しているなかでは、痛みが伴う思い切った成長戦略も講じられません。したがって金融政策に頼らざるを得ないわけですが、それにも限界があります。ユーロ経済圏は底入れし、回復の兆しを見せてはいますが、今後、さらに大きく回復する決め手に欠く状態です。

しかし、為替レートを見るとユーロ高が続いています。これはなぜですか。
中島氏

ユーロ圏の中核国であるドイツ経済が相対的に好調なことやユーロ圏に経常黒字があるからです。ただ、ユーロ経済圏の経常黒字のうち8割をドイツが、残り2割をオランダが稼いでいる状態にあります。
確かに、ドイツはユーロ経済をけん引しているわけですが、問題なのはあまりに堅実な経済なので、貯蓄水準が高い反面、消費や輸入が少ないことです。ユーロ域内の貿易を見ても、ドイツが貿易赤字になっている相手国はアイルランド、オランダ、スロバキア、スロベニアの4か国しかありません。一方、貿易黒字になっている相手国は12か国もあります。これでは、域内他国はドイツへの輸出で成長することがなかなかできません。
つまりユーロ経済圏は、景気を回復させる決め手に欠けるだけでなく、最強国であるドイツの経済があまりにも健全なゆえに、ドイツ経済の好調に乗ることも大してできず、この面でも回復のペースは極めて小さなものにならざるを得ないと見ています。

2014年の各国・地域の経済見通し(中国経済)

成長率が落ち込んでいる中国経済が、再び高い成長率に回復する可能性はありますか。
中島氏

中国経済は底を打ったと判断していますが、基本的には前年並みの成長に止まるとみています。つまり7%台の成長が続くということです。
今、中国経済は輸出主導から内需主導に切り替えようとする転換期にあります。しかし、中国の所得水準の伸びが、高水準とは言え従来以上となっているわけではないので、内需主導への切り替えはゆっくりとしか進まないでしょう。加えて、不動産価格の高騰が続いているため、積極的な財政金融政策を打ち出すのも困難な状況にあります。
こうしたことからも、中国経済は2014年、7%半ばの成長率に止まるものとみています。

2014年の各国・地域の経済見通し(日本経済)

こうした海外情勢を受けて、2014年の日本経済はどうなるのでしょうか。
中島氏

今回の日本の景気回復は、過去の景気回復局面と比較した場合、いくつかの点で非常に高いパフォーマンスを見せています。たとえば実質GDPの伸び率や、鉱工業生産の伸び、そして住宅投資の伸びなどがそれです(図表2)。これは、アベノミクスの大胆、かつ機動的な対策が効いている何よりの証といっても良いでしょう。
2014年、日本の景気に及ぼすネガティブな要因で最も注目されるのは、4月の消費税率引き上げです。一般的には、消費税率引き上げで消費者物価は2.8~2.9%台に上昇し、4~6月期のGDP成長率は前期比年率で4.6%のマイナスになると見られています。

【景気循環:過去局面に対する今次局面の上振れ/下振れ度合(過去平均=100)】

(注)景気の山を0期、その水準を100として、過去平均(過去3回の景気循環平均)に対する今次局面の上振れ/下振れ度合いを表示。なお、過去3回の景気循環の山は1997年4-6月期、2000年10-12月期、2008年1-3月期で、今次循環は2012年4-6月期を山として計算
(出所)内閣府

これに対して5.5兆円の経済対策が実施されますが、これは消費税増税分が全額相殺される規模に当たります。
また企業収益に目を向けると、2013年1~3月期まで2年あまりの経常利益前年比増加部分は全てコストカットによって確保されていましたが、同年4~6月期以降は営業利益も寄与するようになりました。これはコストカットではない本業要因で収益が向上したということであり、前向きの投資や雇用が促進される可能性が高まっています。
さらに、労働需給はタイトになってきており、賃上げが行われやすい環境にあります。ちなみに、いままでの春闘値上げ率と雇用者報酬増加率との関係から言えば、仮に13年1.8%増であった春闘の賃上げ妥結率が2.9%増になれば、雇用者報酬が1%上昇して消費税増税分の半分を賃金増で補える計算になります。そうなれば、政府の経済対策と合わせれば、消費税率引き上げのマイナス効果は十二分にカバーできるでしょう。もちろん、一気にそこまでの賃上げは想定できないのですが、昨年末のボーナスと春闘賃上げ妥結率がどこまで上昇するのかが、今年の景気を占ううえで重要になるということであり、ある程度のボーナス増と賃上げがあれば、消費税率引き上げの悪影響は乗り越えることが可能だと言うことです。
大胆な金融緩和政策を継続できるかという点も、要注目です。いま金利水準が物価上昇率を下回る実質マイナス金利状態になっていますが、これは久々なことですし、確実に設備投資や住宅投資にプラスに効きます。
2014年の日本経済は、賃上げの行方、実質マイナス金利を維持できるかどうか、そして消費税率引き上げ後の消費マインドの悪化をいかにして抑えられるか、という3点が注目点になるでしょう。その上で、消費税率引き上げはあっても、日本経済は1%台乗せの成長率が見込めると見ています。


中島 厚志(なかじま あつし)氏

1952年 12月生まれ 東京都出身
1975年 株式会社日本興業銀行入行
1999年 パリ興銀社長
2000年 調査部長、執行役員調査部長
2004年-2011年 株式会社みずほ総合研究所専務執行役員調査本部長
2011年 独立行政法人経済産業研究所理事長就任、現在に至る。

掲載日:2014年1月16日



 
   
    

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