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ストラテジスト山田雪乃氏に聞く 波乱含みの新興国経済はどうなる?

オピニオンリーダーが語る

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1月24日の外国為替市場では、新興国通貨が対米ドルで軒並み下落しました。アルゼンチン・ペソの暴落を機に、新興国経済に対する警戒感が高まったためです。米国経済の量的緩和縮小や、中国経済への不安感も、通貨安を加速させました。新興国発の金融不安が起こる恐れはあるのでしょうか。大和証券投資戦略部シニアストラテジストの山田雪乃さんに話を伺いました。


新興国で通貨不安が高まっています。新興国で経済不安が高まる恐れはありますか。

大和証券投資戦略部シニアストラテジスト 山田雪乃氏
山田氏

新興国経済が不安定化したのは、昨年5月に米国がテーパリング(量的金融緩和の縮小)を実施するとアナウンスしたところからです。その一方で、米国の経済は徐々に回復軌道に乗り始め、日本経済もアベノミクス効果で株価が大幅に上昇。長年、日本経済を痛めつけてきたデフレから脱却できる見通しも出てきました。そして、一時は債務危機で深刻な状況に陥っていたユーロ経済圏も、徐々に底打ち感が高まってきました。
こうしたことから、投資家が保有するポートフォリオをリバランスさせる必要性が浮上しました。要するに、新興国から先進国に、投資の比重を高めたのです。結果、新興国の株式市場からは資金が流出し、株安や通貨安を加速させました。


ただ、この手の動きは春先までと見ています。今は投資マネーの動きによって、マーケット自体はややボラティリティの高い動きになっていますが、実体経済に目を向ければ、アセアン5カ国の経済成長率は5%を維持していますし、中国も確かに一時期の2ケタ成長は難しい状況ではありますが、それでも7%台で成長しています。

今の混乱は一時的なもので、中長期的にはまだ新興国の経済成長には期待できるということですか。
山田氏

はい。投資対象という点で見ても、中長期的に考えれば、新興国は人口が増加傾向にあり、1人あたりの購買力も高まっていくでしょう。たとえばインドネシアやトルコなどは、人口ピラミッドの底辺層、つまり若い人たちの人口比率が非常に高いので、その分だけ経済の伸びシロが高いと思われます。2000年代の後半あたりから、BOPビジネスといって、最も収入が低い低所得層を対象にしたビジネスへの注目が高まってきました。マンダムやユニチャームなどは以前からこの分野でビジネスを展開しています。この層は、約5兆ドルもの市場規模があると言われていますが、経済成長に伴う所得水準の上昇を通じてこの層が消費活動におけるボリュームゾーンに成長し、そのことが経済レベルの全般的な向上に結びつくのです。先進国からの直接投資が続く中で、新興国経済は一時的な波乱はあっても、成長は続くでしょう。春先には底を打ち、夏場にかけて再び新興国が見直される状況になっていくと思われます。

タイで起こっている大規模デモが株価に及ぼす影響はどう見ていますか。
山田氏

デモの長期化によって、タイの株式市場が大幅な調整に見舞われると懸念する声もありますが、デモそのものによる影響は軽微だと見ています。
2001年にタクシン元首相が選挙で選ばれてから、タイでは4回にわたって大規模なデモが行われました。具体的には、2006年の軍事クーデター、2008年の空港占拠に至った大規模デモ、タクシン派によって引き起こされた2009年の大規模デモと2010年の大規模デモですが、2006年、2009年、2010年に関しては、ほとんど株価の調整は見られませんでした。
逆に、2008年は9.2%の下落という大幅調整となり、今回の大規模デモに関しては、それが深刻化した2013年11月以降の局面で、7%ほど調整しています。
したがって、今回のデモに関して、株価は大幅な調整を行っていますが、その最大の原因は政情不安というよりも、外部環境の不安定さによってもたらされている面が大きいと思います。2008年はリーマンショック後の大幅な調整局面でしたし、2013年は米国のテーパリングが売り材料になった面があります。そして、こうしたタイの株式市場を大きく左右するのが外国人投資家であることを考えると、タイのデモがどうなるのかというよりも、タイの株式市場に投資している外国人投資家の動きが、注目されるでしょう。
2月の総選挙でインラック政権が圧勝したとしても、反タクシン派による抗議行動などで、しばらく政情不安は続くものとみています。ただ、米国をはじめとして海外経済が回復へと向かい、タイ企業の業績がさらに伸びるということになれば、株価を十分に下支えする要因になると思います。

中国経済はしばらく停滞が続くのでしょうか。
山田氏

現状は、不動産投資を活性化させない程度の成長率だと思います。今騒がれているシャドーバンキングを通じて、不動産市場に短期資金が大量に入り込んでおり、その結果、経済成長にとって本当に必要とされるところに資金が回っていません。これからも中国が持続的な経済成長を維持できるようにするためには、金融制度改革や都市化政策などを通じた内需活性化を図っていくことになるでしょう。
今、注目されているのは三中全会(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)において、成長率の目標を7.5%にするのか、それとも7%にするのかということですが、ここがまだ不透明です。そのため、中国関連について踏み込んで投資しにくい状況にあるのも事実です。
今後、シャドーバンキング規制などが浮上すれば、銀行株の調整も考えられます。結局は政策次第という面があるでしょう。
とはいえ、現在の経済成長率は7%を維持しています。ここはきちっと評価するべきでしょう。あまりにも中国経済の成長に対する期待感が強すぎて、結果的に出てくる数字が下方修正されたから株価が下げてしまうという側面はあると思います。確かに、かつての2ケタ成長の実現は難しい状況にはありますが、それでも7%で成長しており、それは先進国と比べてもはるかに高いという事実を、しっかり見るべきだと思います。

日本もアジア経済の一員ですが、こうしたアジア新興国の現状を受けて、日本経済は今後、どうなるでしょうか。
山田氏

日本もかなり黒田日銀総裁の異次元金融緩和政策によって株高が進んでいますし、円安に振れて企業は一段落しています。が、やはり期待するのは第三の矢です。
これまで残念なことに、日本企業は新興国などのインフラ投資案件において、韓国企業などの後塵を拝してきました。そこで、安倍首相が積極的なトップ外交で、アジア地域におけるインフラ投資などの案件を取ってくるというのは、これまでになかった展開です。そこは評価しても良いでしょう。人口減少によって、日本国内のマーケットが縮小傾向にある中で、海外に活路を求めるというのは、非常に良い政策だと考えています。
面白いのは、日本の地方銀行が軒並みアセアンに進出していることです。これまで地方銀行といえば、日本における各都道府県の名士的な存在で、地元企業の資金調達を手伝ってきたわけですが、地元企業のアセアン進出につれて地方銀行もアセアンへ進出しています。また、日本の企業だけでなく、現地企業への融資も念頭においています。国内における資金需要がどんどん細ってきているので、新たな活路を新興国に求めているのです。
たとえばトヨタ自動車はインドネシアで自動車産業の基盤を強化しようとして、積極的な設備投資を行っていますが、自動車関連企業が進出するに当たって、その資金調達を、日本の地方銀行が手伝っているのです。自動車産業だけでなく、さまざまな消費関連の企業が新興国に進出しているので、地方銀行にとってはビジネスチャンスが広がっています。

かつては、新興国でビジネスを展開しようとしても、経済水準が低いから商売にならないと考える日本企業が多かったのですが、ここに来て徐々に所得水準が上がり、購買力が高まっていることで、その成長力を取りにいこうと考える日本企業が、かなり増えてきたという印象を受けます。
政権が誕生してすぐ、安倍首相はアセアン諸国やトルコを歴訪しました。基本的にはインフラ案件を取りにいくためのものであり、実際にそれが実を結びつつありますが、同時にそれが企業経営の活性化にもつながる側面がある点には注目したいところです。
その意味で、新興国の経済成長をうまく取り込める日本企業が、投資先として有望になっていくではないでしょうか。
ただ、日本企業は家電などの分野では、かなりサムスン電子などに遅れを取っています。日本の強みを活かせるビジネス分野というと、何でしょうか。
山田氏

農業でしょうね。海外で日本の果物や野菜は高い評価を得ています。おいしいし、安全性も高いからです。家電は負けてしまっていますが、農産物の競争力は非常に高いと思います。特に海外の富裕層は、良いものであれば高いお金を出してでも買いますから、日本の農作物は価格競争に巻き込まれないだけの付加価値を持っているといっても良いでしょう。
また、海外で日本のおいしい野菜や果物を育てられるようにするため、日本の優れた農業技術を海外に輸出することも、これからの取組みとして注目されます。
さらに言えばソフトですね。キティちゃんなどのキャラクターや漫画、AKB48などは、アジアで高い人気を得ています。
このように、アジア全域が、日本企業にとって魅力あるマーケットになるわけですが、最近は、中国よりも、これからはアセアンの時代だという論調も目立ってきています。
しかし、これはちょっと誤解もあるのではないでしょうか。経済の成長率という点ではアセアンの魅力が目立ちますが、世界最大の人口を持つ中国は、世界最大の消費マーケットであるという点も忘れてはいけません。一時的に厳しい状況にありますが、投資のチャンスを逃さないためにも、新興国経済の行方をしっかりウォッチしておくべきでしょう。



山田 雪乃(やまだ ゆきの)氏

大和証券投資戦略部情報課次長 シニアストラテジスト

国際大学大学院国際開発学科卒業後、大和総研に入社。経済調査部、投資戦略部を経て、2011年より大和証券キャピタル・マーケッツシンガポール調査部。1999年より豪州経済・株式市場を担当。2007-10年コモディティ市場、2011-12年ASEAN市場の担当を兼任。共著に「大和のアジア証券市場」など

掲載日:2014年2月17日



 
   
    

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