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ストラテジスト香川睦氏に聞く 「進む円安 今後の動向は?」

オピニオンリーダーが語る

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ドル/円は今年2月から続いていたボックス圏をようやく抜けました。9月、半年にわたって続いたドルの上値、1ドル=103円台を抜けると、一気に1ドル=109円台を付けました。このまま円安は加速するのか。円安のメドはどこなのか。東海東京調査センターシニアグローバルストラテジストの香川睦氏に伺いました。


まず、9月に入ってから急速に進んだ円安の背景から教えてください。

東海東京調査センターシニア
グローバルストラテジスト
香川睦氏
香川氏

 米国経済が強いという点が大きいと思います。経済指標にもさまざまなものがありますが、ここではPMI景気指数を取り上げてみましょう。これは世界の製造業2,000社の仕入れ担当役員に聞き取りアンケートを行ったものを指数化したもので、50を超えると景気好転、下回ると景気悪化と考えます。

 9月の速報値を見ると、日本が51.7、ユーロが50.5、中国が50.5となっていますが、米国は57.9です。米国の景況感が比較的良いということを意味しています。つまりファンダメンタルズから見て米ドルが買われやすいということです。

米国を中心に製造業景況感は改善している

 また、通貨指数の推移を見ても、米ドルが非常に強いことが分かります。通貨指数というのは、ある通貨の他通貨に対する総合的な価値を示しています。別の言い方をすれば、通貨の相対的強弱を示すもので、指数が上昇するとその通貨は他通貨に対して強いことを意味します。
 2013年10月以降、つまりこの1年における通貨指数の推移を見ると、米ドルと英ポンドが大きく上昇しているのが分かります。ユーロはほぼ横ばいで、円が大きく下落しています。要するに、これだけ急速にドル高円安が進んだのは、米ドルが強くなった反面、円が弱くなったことが背景にあります。

通貨指数の推移でみる為替の強弱
(出所)ブルームバーグを基に東海東京調査センター作成(14年9月23日時点)

円が急速に弱くなった理由は何ですか?
香川氏

 いろいろありますが、まずは金利動向ですね。長期金利の代表である10年物国債利回りを見ると、米国と日本の金利差が明らかに拡大しています。2013年1月の金利差は1%程度でしたが、現在の長期金利は米国が2.53%で、日本が0.54%です。2%近くまで金利差が開きました。しかも、日本の長期金利がこれから上昇へと転じるのか、ということですが、しばらくは上昇しないでしょう。なぜなら12月には消費税を10%まで引き上げるかどうかを決断しなければならないからです。もし消費税率を10%にするならば、景気を回復させる必要があります。そのためには、もう一段の金融緩和や財政出動を検討しなければなりません。

日米の成長率格差と長期金利差の趨勢
(出所)ブルームバーグ集計によるエコノミスト予想平均に基づき東海東京調査センター作成(9月19日時点)

 GDPの成長率からも、日米の金利差が今後拡大へと向かうことが見えてきます。2014年第1四半期の実績値は、日本が6%成長だったのに対し、米国は2.1%のマイナスでした。これは、日本が消費税引き上げ前の駆け込み需要があったのに対し、米国は大雪の影響で消費が落ち込んだためです。
 ただ、その後の米国経済は循環的な回復途上にあり、2014年第2四半期は4.2%のプラスに転じました。もちろん、前期がマイナス2.1%ですから、前期比のプラス幅が大きくなるのは当然ですが、その後の予想値を見ても、米国経済はほぼ3%台での安定が見込まれています。
 これに対して日本はどうかというと、当然、第2四半期は駆け込み需要の反動から、マイナス7.1%と大きく落ち込みました。それだけに、第3四半期は3.4%のプラスが予想されていますが、問題はその後で、1%台半ばでの成長が続きそうです。その最中に、消費税率の再引き上げを決断しなければなりませんから、景気を失速させないためにも、積極的な金融緩和が必要になってくるでしょう。
 したがって、日本の金利には低下圧力がかかります。対して米国は、量的金融緩和を止める方向が明らかになってきました。恐らく、来年には長期金利が3%台を目指す動きになるでしょう。つまり日米両国の金利差はますます開き、ドルが買われやすくなります。

対外収支の悪化は円安要因
(出所)財務省、日銀、ブルームバーグに基づき東海東京調査センター作成(14年9月時点)

 また、貿易収支の悪化も円安を加速させています。日本の貿易収支は2012年の後半から恒常的な赤字へと転落しました。また、経常収支はこれまで何とか黒字を維持していましたが、これも4~6月期には赤字に転じています。対外収支の赤字は、その国の通貨が売られる構造的な要因になります。
 こうした要因から考えてみても、円は対ドルで売られる状況が続くでしょう。大まかなメドですが、年末までに1ドル=110円は十分視野に入ってきますし、来年は1ドル=120円を目指す動きになると思います。

あまり急激に円安が進むと、日本国内の物価が急騰して生活が苦しくなるという話もありますが、円安は日本経済にとってプラスですか?
香川氏

 一部では、円安によって儲かるのは大企業製造業ばかりという声もあるのですが、よく考えてみると、決してそうとも言い切れないと思います。
 確かに、1ドル=76円台の時から見れば、今は円安トレンドですが、2007年は1ドル=124円ですから、そこから見れば、今もまだ円高水準にあります。また、今は日本の製造業が海外に生産拠点を移しているので、円安になったからといってすぐに輸出が増えるわけではないという声もあります。確かにその通りだと思いますが、逆に海外に進出した生産拠点が収益を稼げば、円安になる分、日本本社の収益にとってはプラスになります。いずれにしても、円安は総じて日本の企業業績全体にはプラスに行くと見込まれます。
 また、円安で輸入物価が上昇するという懸念も当然だと思いますが、実は思った以上に輸入物価は上がらないのではないかとも考えられます。というのも、国際商品市況が下落基調にあるからです。確かに円安は輸入物価を上昇させる要因ではありますが、一方で国際商品市況が下落しているため、円安が進んだとしても、輸入物価が上がりにくい状況にあります。これは、国際商品市況の総合的なインデックスであるCRB指数を見ても一目瞭然です。同指数は、2011年5月に370ドル前後まで上昇しましたが、現在は280ドル近辺で推移しています。さらに言えば、原油価格などのエネルギー市況も、シェール革命によって下落圧力がかかっています。このように考えると、円安によって日本国内の物価がどんどん上昇するという可能性は低く、緩やかな円安は今後、日本経済にとってむしろポジティブな材料になるとみています。

日本の株価にとって円安はプラスですか。
注目されるウォン相場と日本株の高い連動性
(出所)ブルームバーグに基づき東海東京調査センター作成(14年9月23日時点)

香川氏

 例えば韓国ウォンの対円相場を見ると、リーマンショック前の2007年7月には100ウォン=13.405円だったのが、2009年2月には6.161円まで下落しました。このウォン安が韓国の自動車、家電など輸出企業の業績好転につながりました。逆に、日本の自動車、家電メーカーは、輸出マーケットにおいて苦戦を強いられたのも事実です。

ウォン高・円安は輸出関連業界に支援材料
(出所)ブルームバーグに基づき東海東京調査センター作成(14年9月12日時点)

 現在、100ウォン=10.44円まで韓国ウォン高へと転じてきました。これが日本の輸出企業にとってはポジティブな材料のひとつになっています。株価の動きを見ても、2012年7月時点の東証1部・輸送機器と韓国の現代自動車の株価を100とした場合、2014年9月12日時点では東証1部・輸送機器が190まで上昇したのに対し、現代自動車は85まで下落しています。いかに韓国企業が、これまでウォン安に助けられていたかということを、雄弁に物語っていると思います。

 今後、日本の株価動向を占う上で重要な要因は3つあると考えています。

 第一に米国の株価が強気で推移すること。現状、米国の株価は幾度となく過去最高値を更新し現在に至っていまが、今後も堅調が持続するとみています。
 第二はドル高円安です。言うまでもなく、円安は日本のデフレ脱却にとって不可欠な要因です。ドルが堅調に推移すれば、デフレ脱却期待を介して株価の上昇につながります。
 第三は国内要因で、今後の消費税引き上げと、それが景気にとってどのような影響を及ぼすのかという点が注目されそうです。

 これら3点のポイントのうち、第一と第二は基本的にクリアしていくと考えています。国内要因については、日本の景気の先行きに不透明感が強く注視する必要があります。ここしばらくは米国の株価が堅調に推移し、かつドル高が続くという前提条件のもとで考えると、日本の株価は比較的堅調に推移すると見ています。

日本の株価のメドを教えてください。
香川氏

 日経平均株価は現在、出遅れ修正の局面にあります。今後の株価を見るうえでのポイントは、為替になるでしょう。今後さらに円安が進んだ場合、為替の想定レートが1ドル=109円だとすると、日本の輸出企業は業績が上振れする可能性が生じてきます。来年3月にかけて、日経平均株価は1万8,000円を目指す動きになるでしょう。
 ただ、リスク要因もあります。
 第一に国内要因。思ったよりも景気回復のピッチが遅いなか、金融緩和をせずに消費税率の引き上げが決まった場合。
 第二に地政学リスク。ウクライナ情勢の深刻化は、やはり株価にとってマイナス要因でしょう。
 そして第三が中国リスク。シャドーバンク問題に端を発した不良債権問題が浮上すると、世界的な株安要因になります。
 これらのリスク要因が顕在化しなければ、来年3月までに日経平均株価が1万8,000円程度まで上昇しても不思議ではないと考えています。


香川 睦(かがわ むつみ)氏

投信運用会社のファンドマネジャー、米国駐在、外資系金融機関を経て、現職でグローバル投資調査を担当。レポート執筆、日経CNBC「前場NOW」やテレビ東京「モーニングサテライト」出演の他、投資戦略・資産運用セミナー講師を務めている書「入門グローバル分散投資-これから始める資産運用50のとびら」(共著/東洋経済新報社)など。


掲載日:2014年10月29日

 
   
    

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