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エコノミスト柯隆氏に聞く 「中国経済 今どうなっている?これからどうなる?」

オピニオンリーダーが語る

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不動産バブルが懸念される中国経済。成長率もかつての2ケタから、現在は7%台まで低下しています。仮に中国経済がバブル崩壊となれば、世界経済に大きな影響を及ぼすことは必至ですが、そのリスクはどの程度あるのか。また、これから中国経済はどうなるのか。富士通総研経済研究所主席研究員の柯隆氏に話を伺いました。


7%台の成長率に低下した中国経済の現状は?

富士通総研経済研究所
主席研究員 柯隆氏
柯氏

 現在、中国経済は方向感のない展開になっています。ここから更に落ち込むのか、それとも回復するのか、今ひとつ見えてきません。
 中国国内のエコノミストの見方も二分しています。思い切った金融緩和が必要だという説と、急いで緩和する必要はないという説です。
 このうち後者は、習近平国家主席と李克強首相の考え方といっても良いでしょう。つまり、成長率を上げるよりも、今は構造改革が優先するということです。今の状態で構造改革を疎かにし、金融緩和を行えば、過剰設備を抱え、構造改革を必要としている企業が、真剣に構造改革に取り組まなくなる恐れがあります。

 基本的に、この考え方は正しいのですが、問題は今、金融緩和を行わないと、中国経済にとって、かなりの痛みを伴うことです。また、社会不安を招き、政権に悪影響を及ぼすことにもなるでしょう。不動産バブルのハードランディングという、中国政府としては考えたくない結果を招くことにもなります。
 つまり、金融緩和を行えば構造改革が進まない。でも構造改革を優先して金融緩和を行わなければ、景気のさらなる悪化と不動産バブルのハードランディングを招くことになる。非常に難しい選択を迫られており、なかなかどちらか一方に経済の舵を切れない状況に直面しています。だから、中国経済は方向感のない展開が続いているのです。

敢てどちらかを選択するとしたら、どちらを選ぶのでしょうか。
柯氏

 まず、不動産バブルのハードランディングだけは、絶対に避けなければなりません。仮にそれが現実化したら、中国経済の低迷だけに止まらず、世界経済にネガティブな影響を及ぼすことになります。
 では、現在の不動産市況はどうかというと、小康状態を保っています。一部で不動産価格が値下がりする動きは見られますが、全体的には大きく下げていません。物件を持っている人たちも、先を争って投げ売りをするという状況ではなく、いつ手放せば良いのかということで迷っています。まだ、決定的に売らなければならないという状況ではないということです。
 それは、中国が現時点でごく僅かではありますが、金融緩和を行っているからです。バブルを再燃させるほどの金融緩和ではありませんが、農業分野と中小企業分野においては金融を緩和しています。これが、不動産市況が崩れるのを、一歩手前で防いでいるのです。
 不動産がバブル化しているのは紛れもない事実です。ただ、かつての日本がそうだったように、バブルを徹底的に退治しようとすると、バブルの崩壊を招き、経済全体に毒がまわってしまいます。経済の実務を担当している李克強首相としては、それだけは何が何でも避けたいと考えています。ごく一部でも金融を緩和しているのは、今の状況を踏まえて考えれば、やむを得ない選択といっても良いでしょう。

株価の動きはどうですか。
柯氏

 株価は経済のバロメーターですから、その動向は絶えず注視しておく必要があります。その点で言えば、上海総合指数は現在、ごく僅かではありますが、上昇しています。ただ、中国企業のファンダメンタルズは、改善というにはまだほど遠いのが現実です。今の株価上昇は、景気回復に対する期待感だけで買いが入っているという状況です。
 投資主体を見ても、個人投資家はまだ参戦していません。今の買い主体は、ペンションファンドなど機関投資家の資金が入っているだけです。したがって、株価上昇に力強さがありません。上海総合指数は2300ポイント前後で様子見が続き、政策次第で買いが入ってくるという状況です。今後の株価見通しとしては、年内に2400ポイント程度までの上値余地がありますが、2500ポイントを超えることはないと見ています。
 気になるのは、前述したように不動産バブルがハードランディングした時です。この場合は、株価も大きく下げるでしょう。株価を左右する政策面としては、やはり金融緩和を今後どうするのか、という点に尽きると思います。もし、金融緩和が全く期待できないということになれば、不動産バブルは完全に崩壊し、株価も急落するはずです。当然、中国経済は大きく落ち込むでしょう。それは現政権も絶対に避けたいと考えているはずなので、程度の違いはあるにしても当面、金融緩和は継続せざるを得ず、微妙なところではありますが、株価も大きく下げることなく、2300~2500ポイントのレンジで推移し続けるはずです。

米国は量的金融緩和を止めると言い始めました。中国にとってどのような影響が考えられますか。
柯氏

 これも中国経済にとっては懸念材料のひとつです。もし、米国が量的金融緩和を止め、今後、金融を引き締める方向に動きだせば、これまで中国をはじめとして世界の新興国市場に流れていたマネーが、米国に還流する恐れがあります。そうなると、中国ではキャピタルフライトが現実化する恐れがあります。現在、中国では資本規制が行われていますが、一度、キャピタルフライトが起こると、それを止めることはできません。中国政府が最も懸念していることのひとつです。

中国経済の成長率は7%台に低下しています。この成長率を是とするべきなのか、それともさらに向上させるべきなのか、どちらでしょう。
柯氏

 7%の経済成長率は、決して低いものではありません。仮に4%成長が7%成長になれば、誰もがハッピーですが、10%成長が7%成長になると、同じ7%成長でもアンハッピーに感じるものです。でも、他の先進国などの経済成長率と比べれば、7%成長は決して低い数字ではありません。
 恐らく、今の中国経済を取り巻く環境から考えると、7%の経済成長率というのは、決して低いものではなく、リーズナブルな水準だと考えています。大事なことは、この成長率を維持しながら、徐々に構造改革を推し進めていくことでしょう。
 現在、中国では経済格差が大きな問題になっています。いくら7%、あるいは8%という経済成長率が続いたとしても、この経済格差が縮小しないままだと、多くの中国国民にとってはアンハッピーな状況になります。一人でも多くの中国国民にとってハッピーな状況にするためには、この格差を縮小しなければなりません。そのためには、富裕層の所得税を引き上げる、あるいは社会保障制度を充実させるといった方法によって、低所得者層の不満を解消させる方向に政策を進めていく必要があります。このまま経済格差が開いたままだと、いずれ低所得者層の不満が爆発し、政治的な混乱を招きかねません。
 その意味では、構造改革だけでなく政治改革も必要でしょう。中国国民は、共産党内部の腐敗に気付いています。ただ、あまり性急に政治改革を推し進めると、今度は共産党の既得権益者からの抵抗に遭い、習近平政権そのものが危険に晒されることになります。そうなると、ますます政治的に混乱する恐れがあるので、政治改革に関しては極めて慎重に事を進める必要があります。

今後の中国経済の行方はどうなるのでしょうか。
柯氏

 その前に確認しなければならないのは、李克強首相が行っている構造改革が進むかどうかということです。それ次第で、中国経済の行方は大きく変わってきます。
 現在、人民元が切り上がり、かつ中国国内の人件費は上昇傾向を辿っています。また、一人っ子政策の弊害が出てきており、中国はかつてのように、安い労働力を大量に用いてモノ作りを行うというビジネスモデルが通用しなくなりつつあります。安い人件費で安価な商品を大量に製造するという、世界の工場としての役割を終えようとしているのです。
 したがって、今後は労働の質を高める必要があります。つまり、労働者1人あたり100ドルの付加価値を生み出していたとしたら、これからは150ドルの付加価値を生めるようにする必要があるということです。そのためにも、産業構造の転換が必要です。
 ただし、労働者1人あたりの生産効率を高めると、今度は失業者が増えます。そこで製造業からサービス業への転換を図ることによって、溢れた労働力を吸収する必要があります。
 今後3~5年間で、こうした構造転換が実現できるかどうかによって、中国経済の行方が決まってきます。実現できなければ、恐らく中国経済は厳しい局面を迎えることになるでしょう。でも、7%台の経済成長が維持されているうちに構造改革を実現できれば、中国経済はクラッシュを免れ、徐々に回復軌道へと戻っていくはずです。


柯 隆(か りゅう)

富士通総研経済研究所 主席研究員

中国南京市生まれ
1988年1月来日
同年 愛知大学法経学部入学
1992年3月愛知大学法経学部卒業
1992年4月名古屋大学大学院経済学研究科入学
1994年3月名古屋大学大学院経済学研究科修士取得
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年10月 富士通総研経済研究所主任研究員
2006年7月より現職

著書
中国が普通の大国になる日」(日本実業出版社、2012年) 
チャイナクライシスへの警鐘」(日本実業出版社、2010年)
中国の不良債権問題」(日本経済新聞出版社、2007年)
「日中『歴史の変わり目』を展望する」(勁草書房、2013年、共著)
"Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia", World Scientific Publishing Company, 2012 (共著)
「中国の統治能力」(慶応義塾大学出版会、2006年、共著 ) など


掲載日:2014年12月1日

 
   
    

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