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シニアFXマーケットアナリスト尾河眞樹氏に聞く「個人人気の高い主要通貨の行方」 東証ETF

 

東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第22回】

シニアFXマーケットアナリスト尾河眞樹氏に聞く

「個人人気の高い主要通貨の行方」

米国経済の停滞、ギリシャ問題、新興国のインフレリスクの高まりなど、さまざまな経済問題が浮上するなか、相変わらず円相場は対米ドルで高値が続いています。更なる円高はあるのか。それとも本格的な円安へと向かっていくのか。興味を持っている個人投資家も多いでしょう。今回はシティバンクのシニアFXマーケットアナリストの尾河眞樹さんに、個人の注目度が高い通貨の行方について、話を伺いました。
米ドルの対円レートは、6月に入ってから1ドル=80円~81円台のボックス圏内での推移が続いていましたが、7月にはいり一時78円台を付けました。今後、ドル高、円高のいずれにマーケットは振れるのでしょうか。
尾河氏
尾河氏
シティバンク銀行シニアFXマーケット アナリスト尾河眞樹氏
まず、今の米国経済の現状を認識する必要があると思うのですが、そこでのカギになるのが、果たしてQEⅢは行われるのかどうか、ということです。
要するにアメリカの景気はどうなるのかということですが、現状、QEⅢが行われるという見方を、徐々に織り込みつつあるのは事実です。というのも、今のアメリカ経済が、昨年の状況と似ているからです。
昨年6月あたりからアメリカの景気後退懸念が浮上して、7月23日の議会証言において、バーナンキFRB議長が、「アメリカの景気見通しは異例なほど不確かである」と言いました。それをきっかけにしてアメリカの追加緩和期待が高まり、QEⅡに至ったわけです。もっと言うと、昨年6月はすでにギリシャ問題も浮上していましたね。
確かに、昨年6月の状況というのは、今のアメリカ経済を取り巻く環境と、かなり似ているのです。
ただ、実際に昨年の状況と比較した時、本当に異例なほど不確かな状況にあるのかどうかという点を、検証してみる必要はあると思います。
すると、かなりの点で、昨年6月と今とでは、環境に違いがあることが分かります。
たとえばアメリカの株価ですが、昨年のバーナンキ発言から現在まで、2割以上上昇してきていますし、投資家の不安心理を示すVIX指数も落ち着いています。米ドルも下がって、輸出が伸びています。結果、企業部門の改善が見られ、資金需要も高まっています。確かに、住宅部門の改善が見られないなど、悪い材料もあるのですが、少し良い話も見られるようになってきました。それらを考えると、異例なほど不確かな状況ではないと思います。
足元の景気減速懸念については、5月と6月の雇用統計が悪かったことから心配する声があるのは事実です。でも、そもそも雇用統計は連続してみれば緩やかな回復傾向を維持しています。
5月と6月の雇用統計が悪化した理由としては、日本の震災の影響でサプライチェーンの問題が生じ、自動車が売れなかったために、自動車に関連する雇用が落ちたこと。そしてガソリン価格が上昇した影響によって、個人消費が落ち込んだことなどが考えられるわけですが、これらは一時的なものと考えられます。事実、ガソリン価格はここにきて低下傾向にありますし、日本のサプライチェーンも徐々にではありますが、回復してきています。
したがって、当面は金融緩和の状態が続きますが、QEⅢを行うまでには至らず、米ドルは今後、徐々に上昇へと向かうというのが、現時点での見通しです。
これ以上、円高が進むことはありませんか?
尾河氏
テクニカル的には、1ドル=78円もあると思うのですが、そこまで円高が進むようなことはないと見ています。なぜなら、円を積極的に買う理由がないからです。
ただ、当面は米国の金融緩和も継続されますし、一方で日本も金融緩和を続けていますから、方向感は出にくいでしょう。1ドル=80円前後でウロウロするような動きが続くのではないでしょうか。
ここまでボラティリティがない状態が続くということ自体、おかしな話ですし、投機筋もドル/円の取引をあまり手がけていませんから、誰かが動き出すと、一気にドル高トレンドへと移行すると思います。そのきっかけになるのが、米国の景気動向でしょう。意外と米国景気が強いということになれば、ドル買いポジションを取ってくると思います。見通しとしては、年末までに1ドル=86円。そして来年になると、米国で出口戦略への地ならしが始まり、年後半には利上げの動きも出てきますから、それによって1ドル=90円台もあると思います。
このような見通しに立てば、今はドルは割安ともいえるでしょう。慌てて外貨に投資する必要はないと思いますが、今の為替水準が続いているのをいいことに、「いつでも投資できるからいいや」などと高を括っていると、突然、為替が動きだしてチャンスを逃してしまうことも考えられますので、少しずつ外貨投資の準備を進めておくと良いでしょう。
個人投資家の外貨投資というと、今は豪ドルの人気が高いと思うのですが、豪ドルの動きについてはどう見ていらっしゃいますか?
尾河氏
尾河氏
個人の方が興味を持っている通貨というと、米ドル以外では豪ドルが挙げられます。やはり金利が高いというのがその理由ですが、豪ドル/円の動きをみると、今年に入って一旦、1豪ドル=90円をつけてから、下げてきています。そのため、先行きを心配されている個人の方もいらっしゃいますが、当面、豪ドルが大きく下落するリスクは少ないと見ています。
現在、豪ドルが売られている理由としては、米国や中国の景気後退懸念と、商品相場の下落です。またオーストラリアの国内要因としては、洪水の影響によって炭鉱の操業に影響が及んでいることも挙げられます。何しろ石炭や鉄鉱石は、オーストラリアにとって重要な輸出資源ですから、その操業に悪影響が及んだということになれば、やはり国内景気に対する懸念も高まります。
ただ、中国経済について言えば、確かにインフレ懸念が高まっているものの、それを抑えるような経済政策が行われていますし、突然、中国経済が崩壊してしまうようなことは起こらないと考えています。人口が多いので内需は強いですし、何よりも経済成長率は9%という高い水準にあります。結果、資源需要は今後も伸びていきますから、オーストラリア経済にとっては、ポジティブな材料です。
また、豪ドルのような高金利通貨は、キャリートレードを通じて海外投資家の動向が強く影響を与えますが、米国の金融緩和がしばらく続くということになると、キャリートレードによって豪ドルが買われてくる可能性があります。今後、米国の経済指標が改善されれば、リスクを取って運用するという動きが生じてきますから、いずれ豪ドルは戻り相場に入っていくでしょう。じわじわとした動きではありますが、1豪ドル=90円は十分に狙える水準だと見ています。
ユーロの不安定さが世界的な金融不安につながる恐れはありませんか?
尾河氏
7月11日のユーロ財務相会合までにギリシャの追加救済策を決める予定だったのが、7月11日に9月ごろまで延びたということが、今のユーロ安につながっています。
仮にギリシャがデフォルトになった場合、どういう影響が及ぶのかということですが、ユーロ圏全体から言えば、ギリシャ経済の規模は極めて小さいので、その経済が後退したとしても、それほど影響はありません。
ただ、ギリシャ国債がデフォルトということになると、それを保有している金融機関の財務への悪影響や金融不安につながり、それがグローバルに影響を及ぼすリスクが高まります。先日、フランスの3つの銀行が格下げされましたが、これなどはまさに典型例です。
今、少し注意した方が良いのは、ギリシャなどで悪材料が出るとドルのLIBOR金利が上昇する傾向がみられるということです。ドルは基軸通貨ですから、さまざまなビジネスを行うのに必要な通貨なのですが、ギリシャのデフォルト懸念が高まるとどうもそのドル資金を慌てて取りに行くという動きからドルLIBOR金利の上昇につながっています。
もちろん、それは一時的な現象だと思うのですが、あまりその動きが続くようだと、ドル資金を調達する動きが加速して、豪ドルが売られるということにつながっていくケースも考えられます。つまりユーロ問題が回り回って、グローバルな問題点につながるリスクがあるので、この点には注意が必要です。
そうなると、ユーロの動きは今後、どうなるでしょうか。
尾河氏
尾河氏
ギリシャ救済については2本、話が走っています。ギリシャはすでにEUから救済策を得ていて、何回かに分けて資金救済を受けているのですが、これを継続的に受けていくためには、その都度、財政赤字がきちっと削減されているかどうかのチェックを、IMFから受けることになります。これについては、7月2日に第5次支払いが確定したのでとりあえずはクリアされました。
もうひとつは来年の話になるのですが、ギリシャが来年以降も資金ショートに陥る恐れがあるので、資金調達をしなければなりません。でも、マーケットからの調達は不可能なので、他の方法を考える必要があります。
そこで、IMFとEUから追加の資金援助を受ける必要があるうえに、ギリシャ国債を保有している投資家に対する資金償還を先延ばしにしてもらう(国債のロールオーバー)かという、方法を考える必要がありますが、後者を選択した場合、格付け会社はデフォルト認定する恐れがあります。仮にデフォルト認定されなかったとしても、これらの支援は結局はその場しのぎに過ぎません。
したがって、今は何とか凌げたとしても、いつかデフォルトになる恐れがありますし、ギリシャへの資金援助を認めると、今度はポルトガル、アイルランドはどうなるという話になってしまいますから、議論もなかなか進みません。
この手の根本的な問題が解決しない限り、ユーロが今後、上昇していくという絵は描きにくいということになります。仮にユーロが上がるとしたら、それは米国の金融緩和が予想以上に長引き、米ドル安によってユーロが押し上げられるというくらいしかないでしょう。
掲載日:2011年月07月19日
尾河眞樹(おがわ まき)氏プロフィール
シティバンク銀行 個人金融部門個人金融商品統括本部投資調査部バイスプレジデントシニアFXマーケットアナリスト
伊藤さゆり(いとう さゆり)氏 米系銀行や国内輸出企業財務部での為替関連業務を経て、現在はシティバンク銀行で個人金融部門のアナリストとして活躍。


   
    

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