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エコノミスト吉崎達彦氏が語る 「これからの米国経済と大統領選挙の行方」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第24回】

エコノミスト吉崎達彦氏が語る

「これからの米国経済と大統領選挙の行方」

混迷続く米国経済。米国国債の格下げ、連日の株価急落、そしてドル安など、これまで世界経済をリードしてきた米国経済の先行きに対する懸念が高まってきています。そして来年は大統領選挙。初の黒人大統領として華々しくスタートしたオバマ政権の行方はどうなるのでしょうか。今回は、大統領選挙オタクとして知られている、双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏に、今の米国経済の問題点、今後の見通し、そして大統領選挙の行方などについて話を伺いました。
とりあえず、米国は債務上限の引き上げを可決して、目先のデフォルトリスクを回避できたわけですが、その後、格下げが行われ、マーケットは混乱しています。米国経済に対する信任は大きく後退したと見るべきでしょうか。
吉崎氏
吉崎氏 双日総合研究所チーフエコノミスト吉崎達彦氏
今回の件は、米国経済にとって非常に痛い問題だったと考えています。8月2日というギリギリのラインで債務上限の引き上げが可決され、結果的オーライだったわけですが、米国は取り返しのつかないものを失ってしまいました。
それは何かというと、米国国債というのは、米国にとって切り札のようなカードです。よく安全保障上の問題で、やがて中国は米国と衝突すると言われているのですが、その中国は米国国債を1兆1,000億ドルも保有しています。つまり、中国が米国に喧嘩を売った時点で、その1兆1,000億ドルは紙切れになるリスクを持っているわけです。これは強力な抑止力になっているはずです。しかも、強制的に買わされているものではなく、自らの判断で買っているわけです。
それを持っているがために、自分の行動を制約されるわけですが、これは正しい意味におけるソフトパワーということになります。
ハードパワー、ソフトパワーという言葉には誤解があって、前者は軍事力や経済力、後者は文化力というような、非常に単純な分け方をされることが多いのですが、学術的に言うと、ハードパワーは強制する力、ソフトパワーは説得や魅力によって知らず知らずのうちに相手に行動を起こさせる力、ということになります。
このソフトパワーが米国にとって大事なわけですが、今回の一件は、そのソフトパワーのなかでも最も大事な米国国債の信用を、自らの手によって貶めてしまったというところに、大きな問題があるのです。米国議会が、債務上限の引き上げを巡って、あそこまでゴタゴタが続くようであれば、もう米国にお金を貸すのは止めようと、投資家に思わせてしまったことが、一番の失点だったと思います。
米国に対する信任の低下は、かなり長引く問題になるのでしょうか。
吉崎氏
冷戦時代は旧ソ連、そしてつい先ごろまではテロとの戦いというように、外部の敵がいて、米国としては諸外国の前であまりみっともないことはできないという緊張感があったわけですが、今回は「民主党の最大の敵は共和党」といわんばかりに、身内の夫婦喧嘩のようなものを、衆人環視のなかでやってしまった。それだけに、米国の威信は大きく揺らぎました。
現在、米国国債の発行残高は14兆3,000億ドルあり、あと2.1兆ドル債務上限を上乗せしましたから、今後、年間1兆ドルのペースで債務が膨らむとしても、向こう2年くらいは先送りできるので、大統領選挙がある2012年は、この問題をスキップさせることができます。これが今回、共和党が譲歩した最大のポイントですが、その見返りとして、大幅な債務削減を求めました。
具体的には、向こう10年間で4兆ドルの債務削減というのが期待値だったわけですが、実際には2.4兆ドルに止まりました。恐らく、これでは不十分だと思うのですが、今回、債務上限の引き上げを妥結するに際しては9,000億ドルの債務削減をすぐに実行し、残り1兆5,000億ドルは超党派委員を作り、そこで今年11月までに、どこをどのくらい削減するのかを話し合って決めるという形を取っています。
では、11月までにまとまらなかったらどうなるか、ということですが、その場合は防衛予算とメディケア予算から強制的に削減するというトリガー条項が付いています。で、どうしてその二つなのかというと、防衛予算の削減は共和党が嫌がりますし、メディケア予算の削減は民主党が嫌がるからです。両者痛み分けということで、何が何でも11月までに債務削減の道筋を立てなければならないという筋書きになっています。
そこで問題は、本当に11月までにまとまるのかということですが、11月は大統領選挙まで残り1年ですから、ここでまた揉めることになるでしょう。先行きは非常に厳しいと見ています。
どうしてここまで問題がこじれてしまったのでしょうか。
吉崎氏
吉崎氏
米国に限らず、ギリシャ問題などで揺れているユーロも同様ですが、先進民主主義国の政治が、どうしてここまで機能不全に陥ってしまったのか、ということを痛感せざるを得ません。
いくつか理由は考えられると思うのですが、第一に、先ほども申し上げましたが、冷戦時代の旧ソ連やテロ国家などの敵がいなくなったこと。第二に、二大政党制のなかで、党派色が強くなり、中道派が空洞化してしまっているという政治構造の問題。第三にインターネットが普及して、ボーカルマイノリティと言われる、少数派だけれども口うるさい人たちが増える一方、サイレントマジョリティが小さくなっている。第四に、政治家のキャリアが短くなり、議員同士の複線的な人間関係が構築しにくくなっているということも挙げられるでしょう。昔なら議員同士、たとえ党が違っていたとしても、複線的な人間関係があったので、たとえ問題がこじれたとしても、「まあまあ」で何とか落とし所を見つけるということがありましたが、それが難しくなっています。
こうした事情が絡んで、今の米国政治は機能不全に陥っているのだと思いますが、結果的に、この問題に絡んだ政治家は、皆、信頼を落とすことになってしまいました。特にオバマ大統領にとっては、非常に痛い政治的な失点になったと思います。
オバマ大統領の再選への影響は?
吉崎氏
もちろん再選を目指すわけですが、民主党内での対立候補は今のところ出ない予定です。ただ、今回の一件で、場合によっては予備選挙が必要になるというケースはあるかも知れません。
今回の債務上限引き上げ法案への下院の賛否を見ると、民主党は賛成95、反対95になっています。つまり半数は反対なのですね。彼らの怒りはもちろん共和党にも向かうのですが、それだけでなくオバマ大統領にも向かっています。下院議員は今後、予算の削減に取り組まなければならないのですが、バサッと予算を切ると、今度は自分たちのクビも危うくなりますから、そのプレッシャーが非常に大きくなっているのです。
そういう立場からすれば、ホワイトハウスの仕切りが悪いということにもなるわけで、オバマ大統領の党内支持が、現状ですでに大きく落ち込んだということになります。
では、2期目を目指すことができるのかということですが、普通に考えれば、再選の可能性は高いでしょう。というのも、共和党の対立候補が揃って小粒だからです。
ただし、失業率が9%もある状態の大統領が再選されるかというと、これもまた前例がありません。
その意味において、2012年選挙は、非常に難しい選挙になると思います。
今回の選挙の争点は何かということですが、現職に新人が挑む場合、現職は新人を相手にしないという横綱相撲を取り、挑戦者はとにかく現職の悪口を言うという構図になります。その時、悪口はひとつだけで良いのですが、今回のケースでいえば、雇用問題が大きな争点になるでしょう。挑戦者は、「今の雇用が悪いのは大統領のせいだ」という論陣を張ってくるでしょうから、オバマ大統領としては今後、どのようにして雇用を回復させるかという点で、政治手腕の発揮が求められるというわけです。
雇用問題は改善するのでしょうか。
吉崎氏
吉崎氏
これだけさまざまな経済対策を行っても雇用が回復しないというのは、米国経済の潜在成長力が落ちているからではないでしょうか。
7,870億ドルもの大型景気刺激策のうち8割以上はもう使ってしまったので、残額はわずかです。前年同期比で見た場合、それだけでマイナスの下駄を履いてしまっているわけです。財政の支えも、3年が経過したところで、何の効果ももたらしていないということになれば、財政政策の効果が弱まっているのではないかという見方も浮上してきます。
では、全く米国経済に救いがないのかといえば、決してそうではありません。たとえば企業はなかなか立派で、アップルは次々に画期的な新製品を出してきますし、一時、破綻したGMも復活してきていますし、フェイスブックのような新しいサービスも登場してきています。こうしたところを見ると、米国経済の活力は、まだ失われていないとも思えます。
今の米国経済を一言で言い表すと「強い企業、弱い家計、危機的な政府」ということになるわけですが、現状、こうした企業の強さを家計部門が取りこめていないというところに、大きな問題があります。
それはなぜかというと、やはり政策に問題があるからだと思います。企業の強みを取りこもうと思ったら、ある程度、ビジネスよりの政治を行わなければなりませんが、今はアンチビジネスの政策になっています。そこを変えていかないと、企業はリストラばかりやって金儲けをし、どんどん新興国に出ていって稼ぐということになってしまいます。これでは、政府の税収も上がりませんし、家計も雇用が回復しないため、厳しい状況に追い込まれてしまいます。
したがって、いかに企業の強みを家計に取り込んでいくかという政策を、早期に打ち出す必要があります。
米国経済はいつ回復するのでしょうか。
吉崎氏
まず財政問題ですが、今、ブッシュ減税については2年間の延長で継続されており、その期限が来年末になります。そのブッシュ減税を失効させることができれば、それだけでかなり財政事情は良くなります。現状、増税は非常に難しいとは思いますが、実現させることができれば、財政問題の改善はかなり期待できそうです。
あとは雇用と住宅の問題です。米国の景気が本格的に回復するためには、この2点が回復しなければ難しいでしょう。ただ、ある程度、景気回復には時間がかかりますが、この悪い状況が永遠に続くわけではありません。
雇用について考えるならば、それは住宅とセットになる部分があるという点に、留意しておく必要があります。現状、雇用情勢は、良い州と悪い州があります。かつては、雇用の悪い州から良い州へと人口移動が生じ、それによって徐々に全体の雇用が調整されていったのですが、今は住宅問題を抱えているため、なかなか他の州に人口が移動しにくいという状態にあると思われます。
したがって、住宅が回復しない限り、米国の景気は立ち直らないということになります。目先でいえば、2012年は財政ブレーキがかかる恐れがあるので、2011年に比べてやや厳しい状況になると考えています。
掲載日:2011年月09月08日
吉崎 達彦(よしざき たつひこ)氏プロフィール
双日総合研究所 副所長 チーフエコノミスト
吉崎 達彦氏 主な著書: 『アメリカの論理』、『1985年』、『オバマは世界を救えるか』など(いずれも新潮社)
マスコミ出演: テレビ東京『モーニングサテライト』、 テレビ朝日『サンデープロジェクト』など。
週刊SPA!「ニュースディープスロート」、 QUICK「エコノミスト情報」などに定期寄稿。


 
   
    

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