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第一生命経済研究所主任エコノミスト西濱徹氏に聞く 「新興国経済の発展可能性」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第27回】

第一生命経済研究所主任エコノミスト 西濱徹氏に聞く

「新興国経済の発展可能性」

中国やインドをけん引役として、世界経済の成長をリードしてきた新興国。しかし、最近は過剰流動性によるインフレ懸念と、金融引締めなどによって、その成長スピードがスローダウンしてきました。果たして、新興国経済が目下、抱えている問題点には何があるのか、今後の新興国経済の行方はどうなるのか。第一生命経済研究所経済調査部主任エコノミストの西濱徹氏に話を伺いました。
新興国のインフレ懸念は、まだ根強く残っているのでしょうか。
西濱氏
西濱氏 第一生命経済研究所経済調査部
主任エコノミスト西濱徹氏
今年の新興国経済は、まさにインフレリスクに直面した1年でした。
インフレリスクが高じた一番の理由は、商品市況の高騰です。原油などの資源価格や、食糧価格が上昇の一途をたどりました。
しかも、その動きに拍車をかけたのが、過剰流動性です。リーマンショック後、米国やユーロ経済圏では積極的な金融緩和を行いました。米国では、QEⅡまで行い、さらに現在はQEⅢの可能性を探っているところだと思いますが、いずれもすでにゼロ金利で、政策金利の下げ余地が無くなっているため、量的な金融緩和を行おうということです。
量的金融緩和とは、市場に流通しているお金の量を増やすためのものですから、過剰流動性が生まれます。つまりお金がジャブジャブになるのです。余ったお金は、投資先を求めますから、上昇トレンドに乗っていたコモディティ市場に、その過剰流動性が向かいました。当然、こうなると商品市況の高騰を招くことになります。
結局、新興国経済を苦しめてきたインフレの原因は、先進国の金融緩和によって生まれた過剰流動性ということになります。
では、この先どうなるのかということですが、中国については、年末がポイントになります。インフレ率は7月にピークアウトしたものの、しばらく高止まりが続いていました。それが、年末にかけて減速し、年明けには政府目標(4%)を割る気配を見せています。年内の利下げはないと思いますが、来年の春節後に発表される1月の消費者物価指数がさらにもう一段下がるようだと、金融緩和の動きが出ると期待されます。
また、ブラジルやインドネシアなどの資源国は、すでに利下げ局面に入っています。先進国の景気後退によって先進国向け輸出がスローダウンし、景気後退の可能性も懸念されている上、インフレ圧力も緩和しており、利下げしやすい環境が整ってきました。また、一時は新興国に向かっていた過剰流動性が、リスクOFFによって一旦、新興国市場から抜けたことも、インフレ圧力の緩和につながっています。
ただ、再びリスクONの動きになると、新興国市場に資金が流入し、再びインフレ懸念が高まる恐れもあります。いずれにしても、新興国経済は中長期的に成長する可能性はありますが、短期的には、かなりボラタイルな動きをすることになりそうです。
BRICs諸国のインフレ率の推移
BRICs諸国のインフレ率の推移
(出所)CEICより第一生命経済研究所作成
仮に先進国経済が不振でも、新興国経済は高い成長率を維持できるという「デカップリング」は、今もあてはまるのでしょうか。
西濱氏
基本的に、デカップリングの概念はないと考えて良いと思います。これは、新興国経済が、どういう形で成長の恩恵を受けているのかということを考えると、分かると思います。
たとえばアセアン諸国の場合、非常に輸出依存度が高いので、どうしても先進国経済の影響を受けざるを得ません。
また新興国のなかでも内需が強いと見られているインド、およびインドネシアも、やはり先進国経済に依存している部分はあります。インドの場合、メイン産業はITなので、先進国経済と密接にリンクしていますし、インドネシアの場合、資源国という性質があるので、やはり先進国経済の影響を受けることになります。
資源国という点では、ロシアも先進国経済の影響を色濃く反映します。というのも輸出の半分は欧州向けだからです。つまり、今問題になっているユーロ経済圏の影響を、強く受けることになります。
新興国は、確かに高い経済成長率を維持していますが、多くの国民は未だに所得水準がまだまだ低く、購買力もあまり高くありません。したがって、新興国のみで経済成長を達成することは難しいといえます。やはり先進国あっての新興国経済なのです。
逆の見方をすると、先進国経済が低迷するなかで、新興国経済が世界経済のけん引役になれるのかという疑問が浮かんでくると思いますが、これについても、やはり「ノー」と言えるでしょう。2000年台前半は先進国経済が堅調に推移していたので、新興国経済も非常に潤ったわけですが、今回は先進国経済が極めて厳しい状況に追い込まれているので、新興国経済にとっても苦しい局面が続くのではないでしょうか。ただし、新興国経済の潜在成長率は先進国に比べて高いため、相対的に高い経済成長の実現が可能であることは間違いないでしょう。
新興国のリーダー的存在である中国の経済動向は?
西濱氏
西濱氏
中国は2015年に生産年齢人口が減少に転じる「人口オーナス」に突入します。その国の経済が成長するためには、人とカネと技術が必要ですが、このうち人の数が減るのだから、カネと技術を集めることが、中国経済発展のためのポイントになります。
もちろん、外資企業の参入などにより技術水準は上がっていくでしょう。ただ、中国の産業が抱える最大の問題点は、内発的なブランドがないということです。そこで、今のユーロ危機により、欧州企業のなかには経営的に苦しくなるところも出てくるでしょうし、中国企業が欧州ブランドを買収するケースが増えてきそうです。あるいは、中長期的な発展を考えるのであれば、インフラの整備と社会保障制度の確立も、極めて重要になります。
これまで、沿海部に比べて内陸部の発展が遅れていましたが、この原因のひとつに、両者のアクセスの悪さを挙げることができます。したがって、インフラを整備し、沿海部と内陸部の人、物の移動がスムーズに進むようにすれば、これまで点で発展してきた流れが線になり、さらには面に広がっていきます。
また社会保障制度の確立は、個人消費を促すために必要です。現在、中国の貯蓄率は20%を超えています。なぜ、そこまで貯蓄率が高いのかというと、社会保障制度が満足に確立されていないため、いざという時のために、多くの人がお金を貯め込んでいるからです。結果、個人消費がなかなか盛り上がらないという事態を招いています。
中国経済を現在の輸出依存から内需型に切り替えるためには、とりもなおさず個人消費の水準を引き上げる必要があります。したがって、社会保障制度を充実させ、個人の過度な貯蓄から消費に回っていくような仕組み作りが必要になってくるのです。
ちなみに、人口が減少することによって、現在8%台半ばと見られている中国の潜在成長率は、中期的には6%程度まで下がることが予想されます。そこまで潜在成長率が落ちる前に、中国は次の段階の発展に向けた政策を打ち出し、実行に移していく必要があります。
中国に次ぐ人口を有するインドの経済発展は、これからも続くのでしょうか。
西濱氏
インド経済は、中国に次ぐ人口を擁する国ということもあり、内需主導型の経済発展が期待されています。
インド経済の特徴は、成長過程が中国と大きく異なることです。中国の場合、海外資本の製造業を国内に導入し、第二次産業を中心にして経済発展を遂げてきたのに対し、インドの場合は、IT産業という第三次産業から経済発展を達成してきました。
そのため、インドは現在、中国の経済発展モデルに範をとり、学ぼうとしていますが、中国のケースをそのままインドに持ち込めないというジレンマに悩まされています。
現状を言えば、インド経済は今、高いインフレ率に悩まされています。このインフレがどの段階で収まるかによって、インド経済の状況は大きく変わるでしょう。今のところ、インドの物価は10%近い上昇率を示していますが、来年3月あたりには7%程度まで落ち着くと見られています。そこがターニングポイントになり、インド経済は2012年4~6月期が大底になるでしょう。また、秋物の食糧の発育状態が良好と見込まれるので、これもインフレを抑制する原因になります。
いずれにしても、インド経済は現在の高インフレが収まる段階をもって、再び上昇トレンドへと向かうでしょう。
個人投資家にも関心の高いブラジル経済の今後は、どう見ていますか?
西濱氏
株価を見ると、足元の経済情勢は徐々に盛り返してきています。これは、インフレ率に頭打ちの兆候が出てきたことで、ブラジルの中央銀行が金融緩和に転じてきたためです。
とはいえ、ここから一気にインフレ率が減速することはなく、インフレ率が目に見えて鈍化するのは、年明け以降になると思われます。インフレ率の鈍化が明確に分かると、金融緩和も相俟って景気の回復が期待できるでしょう。
ちなみに株価を見ると、ボトムから見てすでに20%近く上昇してきました。ここまで急激に上昇した場合、依然として金融市場を取り巻く環境が不透明であることを鑑みれば、やはり目先は調整リスクに注意する必要があります。
新興国市場に投資する際の注意点は?
西濱氏
まず、株式市場などの流動性が非常に低いことが挙げられます。最近は個別株投資も出来るようになりましたが、流動性が低いので、日本の株式と同じ感覚で短期トレードをするのは難しいという程度に捉えておいた方が良いでしょう。
また、2012年という年に限って言えば、来年は政権交代する国がたくさんあります。米国でも大統領選挙が行われますが、新興国だけでも、韓国、ロシア、台湾において、それぞれ政権交代を巡って選挙が行われます。また、中国においては指導者層の世代交代も予定されています。したがって、どういう点で政策変更が行われるのかという点に、十分注意する必要があります。
BRICs諸国の政策金利の推移
BBRICs諸国の政策金利の推移
(出所)CEICより第一生命経済研究所作成
掲載日:2011年月12月12日
西濱徹(にしはま とおる)氏プロフィール
第一生命経済研究所 主任エコノミスト
西濱徹氏
一橋大学経済学部卒。
2001年4月 国際協力銀行入行。
同行では、ODA部門の予算折衝や資金管理、アジア向け円借款の案件形成・審査・監理、ソブリンリスク審査業務を担当。
2008年1月に第一生命経済研究所に入社、11年4月より現職。
担当は、アジアをはじめとする新興国のマクロ経済及び政治情勢分析。


 
   
    

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