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三菱総研シニアエコノミスト 武田洋子氏に聞く「2012年の世界経済はどうなる?」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第30回】

三菱総研シニアエコノミスト 武田洋子氏に聞く

「2012年の世界経済はどうなる?」

2011年の世界経済は、ユーロ債務危機によるマーケットの混乱、新興国経済を苦しめたインフレ、一向に改善しない米国の雇用問題、震災で大ダメージを受けた日本経済など、ネガティブな材料が噴出しました。果たして、2012年の世界経済はどうなるのでしょうか。三菱総研シニアエコノミスト武田洋子氏に話を伺いました。
2012年の世界経済の行方を展望するうえでのポイントは?
武田氏
武田氏 三菱総研シニアエコノミスト
武田洋子氏
ポイントは2つです。ひとつはユーロ債務危機の行方。もうひとつは国際政治です。ユーロ債務危機については、抜本的な解決には時間がかかるため、2012年も不安定な状況が続くことが想定されますが、ユーロの崩壊自体は回避されると見ています。その理由は3つあります。
ひとつはユーロが創られた歴史的な経緯です。ユーロは経済メリットを追求することに加え、欧州の平和を維持するという目的も併せ持っています。つまり、第二次世界大戦などの歴史的な悲劇を二度と引き起こさないとの政治の意志です。東西ドイツの統合も通貨統合を条件に実現したと言われています。
2点目はグローバルなパワーバランスにおける欧州の位置づけです。新興国経済が台頭し、中国は経済面のみならず、国際政治の舞台でもプレゼンスを高めています。しかも、その中国と米国は対立を深めてきています。こうした複雑な国際情勢のなかで、欧州が存在感を示し続けていくためにも、欧州がひとまとまりになる必要があり、通貨ユーロについても守ろうとすると思います。
3点目は経済的理由です。もしユーロが崩壊すれば、それこそリーマンショックを超える金融・経済危機が世界中を襲うでしょう。完全崩壊とまで行かなくても、たとえばドイツがユーロから離脱してマルクを復活させれば、マルクは対ユーロで大暴騰し輸出産業の多いドイツ経済は失速するでしょうし、ギリシャがユーロから離脱してドラクマを復活させたら、ドラクマが大暴落してギリシャの対外債務は一気に膨張してしまいます。このように、完全崩壊にしても、一部離脱にしても非常に大きなショックが世界中に波及します。
したがって、ユーロを死守せざるを得ないというのが現実的な選択肢ではないでしょうか。
国債利回り(10年)の対独スプレッド
国債利回り(10年)の対独スプレッド
注:アイルランドは9年債、2012年1月10日時点
作成:三菱総合研究所
そしてもうひとつの注目ポイントが国際政治です。2012年は、中国で新政権が始動し、ロシア、フランス、米国、韓国などで大統領選挙が行われます。北朝鮮情勢からも目が離せません。2011年に「アラブの春」として民主化運動が広がった中東も、不安定な情勢が続いています。
本来、各国が協力してユーロ債務危機に対応しなければならない局面であるにもかかわらず、多くの国が自国内のことで精一杯になり、問題解決に向けた取組みが進展しなくなる恐れがあります。このような事態が一段と深刻化した時、ユーロを震源地としたリスクシナリオが浮上してしまいます。
ユーロ債務危機に絡んだリスクシナリオは、どのようなことが想定されているのでしょうか。
武田氏
リスクシナリオについては2つ考えられます。リスクシナリオ1は、世界的な金融危機は免れるものの、世界経済が急減速するというものです。リーマンショックの時は、大きく落ち込んだ後、V字に近い回復を遂げましたが、今回は景気低迷が長引くL字型になる恐れがあります。
リスクシナリオ2は、イタリアやスペインなど中核国の危機へと発展し、一気にリーマンショック並みか、それを上回る世界的な金融危機へと広がるというものです。この場合、世界経済はリセッションに陥ると思います。
もっとも、標準シナリオでは、欧州の信用不安がくすぶり続けるなか、世界経済は減速しつつも成長は持続するとみています。欧州で何かイベントが生じるごとにマーケットは不安定化すると思いますが、一方で、米国経済は緩慢ながらも成長を続け、新興国経済も内需の下支えにより失速は回避するとみているためです。現時点では、標準シナリオに落ち着く可能性が7割程度、リスクシナリオ1の危険性が2割程度、そして最悪のリスクシナリオ2の危険性が1割程度といったところでしょう。
世界経済の実質GDP成長率は、標準シナリオの場合で3%台とみています。リスクシナリオ1の場合、特に新興国経済が失速すれば0~2%程度まで減速する可能性があります。そしてリスクシナリオ2の場合、世界経済はマイナス成長に陥ってしまうでしょう。
問題は、リセッションに陥った場合、そこからの回復が非常に難しいということです。リーマンショックの時は、大幅に落ち込んだ後、急回復しました。まさにV字に近い回復だったわけですが、それは各国の政策対応の自由度が高かったからです。つまり大幅な金融緩和と財政出動が可能だったわけですが、現状は先進国の政策対応余地が、非常に小さくなっています。すでに財政は赤字が累積しており、金融政策もゼロ金利、あるいはそれに近い状況で対応に限界があります。新興国は、先進国に比べて政策対応の余地はありますが、一方でインフレやバブルへの懸念を抱えています。したがって、一旦リセッションに突入してしまうと、各国が思い切った政策対応が採れない分だけ、景気の低迷が長引く恐れがあります。
先進国の債務問題を解決するためには、どうすれば良いのですか。
武田氏
まず欧州ですが、財政再建への道筋を示し、それを実行することで市場の信認を取り戻していくことが必要であることは言うまでもありません。
ただ、同時に大事なことは、再び債務を膨らませないように、成長力自体を引き上げる努力、つまり生産性や競争力を高める構造改革を実施していく必要があるでしょう。
とはいえ、財政再建は痛みを伴いますし、構造改革には時間もかかります。したがって、当面の資金繰り支援など時間を稼ぐ対策も必要です。また、「一つの通貨・金融政策とバラバラな財政政策」というユーロの欠陥を改善するためには、財政の統合性を強める必要があります。もちろん、独立の主権国家が財政を完全に統合するのは困難ですので、財政のガバナンスを強化した上で、それでも止むを得ない場合に財政を移転する仕組みを整備する必要があると思います。欧州共同債の発行はその一つの手段になると思います。
米国でも、財政を巡り民主党と共和党の対立が続いています。大統領選挙が終わるまで、両党の対立は深まる一方でしょう。基本的に民主党は大きな政府、共和党は小さな政府を目指しています。債務問題の解決は急務ですが、新政権が固まらない限り抜本的な解決策は打ち出せないでしょう。
2011年の財政赤字、政府債務残高、経常収支実績見込み(対GDP比%)
2011年の財政赤字、政府債務残高、経常収支実績見込み(対GDP比%)
注:2012年1月10日時点
出所:欧州は欧州委員会、日米はIMF
債務問題は、わが国もこれ以上先送り出来ない状況にあります。日本の一般政府債務残高はGDPの約2倍にのぼり、ギリシャやイタリアを上回ります。今は欧州の債務問題に市場の注目が集まっていますが、ある日突然、日本の財政に対する懸念が強まる可能性はあります。何かをきっかけに信認が決壊すれば、一気に大幅なリスクプレミアムが要求され始め、その結果、財政、金融、経済の「負のスパイラル」が始まることは、欧州債務危機の展開をみれば明らかです。
2012年は国際政治の面でも経済の面でも不安定な状況が続くことが予想されますが、日本は震災復興と財政再建の実現に向けて大きな一歩を踏み出す年とする必要があるでしょう。
掲載日:2012年月1月31日
武田 洋子(たけだ ようこ)氏プロフィール
株式会社 三菱総合研究所 シニアエコノミスト
武田氏 米ジョージタウン大公共政策大学院修士課程修了。
1994年日本銀行入行。2009年4月から現職。
専門はマクロ経済、国際金融。


 
   
    

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