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エコノミスト中島厚志氏に聞く「日本はギリシャ化するか」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第34回】

エコノミスト中島厚志氏に聞く

「日本はギリシャ化するか」

二次支援が決まり、多少落ち着きを取り戻してきた感のある欧州経済。1ユーロ=97円台まで進んだユーロ安にも歯止めがかかり、一時は110円前後となるところまで回復してきました。果たして欧州危機は山場を乗り越えたのでしょうか。今回は、独立行政法人経済産業研究所理事長の中島厚志氏に、今後の欧州経済の動向を伺いました。
ギリシャ問題は、一応の解決を見たと考えてもよろしいのでしょうか。
中島氏
中島氏 独立行政法人経済産業研究所理事長
中島厚志氏
マーケット的に言えば、ギリシャ問題は解決していないと見られています。ギリシャ国債の利回りやCDSの推移を見ても、ギリシャだけ突出して高い水準にあります。
しかし、ギリシャ問題が深刻化した時、スペインやポルトガル、イタリアなどの南欧諸国でもソブリンリスクが高まり、第二、第三のギリシャになるのではないかと懸念されましたが、少なくとも国債利回りやCDSの推移を見る限り、これら3カ国については、ある程度、落ち着きを取り戻していると言えましょう。
また、ギリシャの破綻リスクも後退しました。というのも、第1次支援での1,100億ユーロにくわえて、今般の第2次支援でさらに1,300億ユーロのお金が付いているからです。確かに、巨額の財政赤字を抱えているのは、それはそれで深刻な状況であることに変わりありませんが、このように資金繰りが付いている限り、国は破綻しません。
2度に亘るギリシャ支援が通ったことで、当面、ギリシャが無秩序状態で破綻するという心配は、無くなったと見て良いでしょう。
ギリシャ経済は徐々に回復へと向かうのでしょうか。
中島氏
ここが大きな問題で、確かに当面、無秩序状態で破綻するリスクは回避できましたが、経済自体が復活するかと問われれば、それは困難を極めるとしか言いようがありません。たとえばギリシャの家計部門を見ると、ユーロ圏に加盟した2001年以降、住宅ローンの残高が急速に伸びていることが分かります。そして、2009年の住宅ローン残高は2000年の6倍にまで増えてしまいましたが、これは住宅バブルが崩壊したスペインの2倍近い伸びです。
なぜ、ここまで急速に家計部門が借金を増やしてしまったのかというと、ひとつの大きな要因は通貨統合によって、安い金利で借金することが可能になったことにあります。通貨統合以前、ギリシャはインフレ率も高くしたがって高金利国でしたが、ユーロに統合されたことによって、ギリシャ単独の時に比べると、はるかに低い金利で資金調達が可能になりました。結果、過剰なまでの債務を抱えることになったのです。
したがって今後は、政府のみならず家計においても、過剰なまでに積み上げてしまった借金を、どうやって返済していくかというところに焦点が絞られてくるわけですが、ここで大きな問題として立ちはだかるのが、ギリシャ経済はマイナス成長が今後も続き、そのなかで借金を返済していかなければならないということです。
しかも、失業率は20%を超えています。若年層に至っては、何と失業率が40%以上にも上ります。これは極めて厳しい状況というしかないでしょう。
一般的に、バブルが崩壊した後の調整期間は、過剰なまでの消費や投資などによって経済が膨張したバブルの期間と同じくらいかかると見ていいでしょう。バブル的な経済状況が5年以上も続いた後では、いくら何でも1年でこのツケを調整することはできません。頑張っても5年、10年はかかると思います。
時間をかければ、何とかなるのでしょうか。
中島氏
問題は、それだけの長い間、頑張ることができるのか、ということですが、結論から言えば難しいでしょう。
ユニット・レイバー・コストといって、生産1単位あたりに要する人件費を見る指標があるのですが、ギリシャの場合、この数字を2000年が100だとすると2009年は150近くとなっており、ユニット・レイバー・コストで見れば5割方コスト競争力が落ちています。対してドイツはほとんどコスト競争力が落ちていません。
このような状況の下で、これからどうやって踏ん張るかということですが、個人は今まで以上に消費を落とさなければなりませんし、国も厳しいなかではありますが何とか増税をして財政を立て直さなければなりません。もっとも、これでは経済成長が下押しされてしまいますので、きちっとした形で成長戦略を描いていく必要があるわけですが、そこで問題になるのが、経済を中心的に支えていく企業のコスト競争力が大きく落ち込んでいるということです。
しかも、ギリシャの主要産業は、観光と海運業、そしてオリーブやワインといったところですが、いずれも技術革新で生産性を上げやすい製造業ではありません。つまり、現状では成長戦略を描くのが、非常に難しい状況にあります。
したがって、これからもギリシャ問題は、ユーロ圏にとって火種になりつづけると思います。折に触れて、ギリシャ危機がマーケットなどでも懸念され、その度にユーロが売り込まれるなど、不安定な状況が続くでしょう。いずれにしても、ギリシャが自ら構造改革に着手して、企業活力を中心とした成長戦略を描き、実行に移していかない限り、問題の根本的な解決にはつながりません。
ギリシャ問題が再び浮上した時、イタリア、スペインやポルトガルなど、他の国に悪影響が波及する恐れはあるのでしょうか。
中島氏
ギリシャ問題が深刻化した時期以降、イタリア、スペインやポルトガルなどの国債も売られ、第二、第三のギリシャショックが起こるのではないかと懸念されますが、基本的に、イタリアやポルトガルと、ギリシャとでは、問題の在り方が違うと考えて良いでしょう。イタリアやポルトガルの国債が売り込まれたのは、ギリシャ問題を材料視して、マーケットが勝手に騒いだだけです。
というのも、たとえばイタリアの政府債務残高のGDP比はほとんど増えていません。しかもイタリアの場合、ギリシャとは違って工業力もあります。また、スペインの政府債務残高のGDP比はフランス、ドイツよりも低い水準です。
さらに、どうしてギリシャの財政赤字がここまで増えたのかというと、背景にあったのは好景気時に財政赤字の削減ができなかったことが大きい。すなわち、財政赤字削減の好機の好景気時に、法人税を大幅にカットし、アテネオリンピックでお金を使い過ぎ、脱税対策も出来なかったことなどが挙げられます。つまり、ギリシャの政府債務問題は政府の政策運営の拙さによる面が大きいので、これとイタリア、スペインを同列に議論するのは、いささか的外れといえます。
またポルトガルに関しては、確かに国の競争力は低いものの、経済規模、人口ともギリシャよりもさらに小さい国ですから、仮に経済混乱に陥ったとしても、ユーロ圏内で見れば、その悪影響は極めて小さいでしょうし、まだ何とか対応の仕方があります。
つまり、イタリア、スペインにしてもポルトガルにしても、マーケットでは騒がれていますが、ギリシャとは違うという認識で問題はないと思います。
日本経済がギリシャ化する恐れはありますか。
中島氏
これについてはいろいろな見方があります。確かに、政府債務残高の対GDP比で見ると、日本はギリシャ以上に深刻な状態にあると言えるでしょう。何しろ、今の日本政府が抱えている政府債務残高の対名目GDP比は、過去120年間で最悪の水準にあります。何しろ、あの太平洋戦争のときの水準さえも超えているのですから、この数字だけを見れば、極めて厳しい状況にあることが分かります。
ただ、その一方で、国内で資金繰りがついているから大丈夫だという主張も、間違ってはいません。ギリシャの場合、政府債務の半分は海外から調達した資金によって賄われていましたから、ソブリンリスクが高まると、一斉に資金が引いてしまい、窮地に追い込まれてしまいました。でも、日本の場合、国債の海外保有者割合はわずか6%程度です。しかも、海外投資家が日本のソブリンリスクを懸念して、国債を売ったとしても、国内資金でその国債を吸収できるので、資金繰りが付かなくなる恐れはまずないと考えられます。
とはいえ、このまま巨額の財政赤字を放置することはできないのではないでしょうか。
中島氏
中島氏
そのとおりです。日本が、太平洋戦争で多額の財政赤字を抱えたのに、どうして戦後、一気に財政赤字が減ったのかというと、この間、急激なインフレなどが起こったからです。
たとえば東京都の消費者物価指数は、昭和9年から11年の年平均を1とすると、昭和29年にはその286倍にもなりました。これは、昭和9年に日本国債を購入した場合、その価値が99.7%も減額されたのと同じことになります。つまり、国債を発行して借金をしていた国からすれば、その借金が棒引きされたようなものです。こうして日本は、多額の財政赤字を一掃しました。言い換えれば、国民の金融資産が実質的に目減りして、政府の財政赤字が解消されたのです。
これは、非常に示唆に富んだ事実だと思います。財政赤字というのは、結局のところ、誰かの負担によって解消されるわけですが、それが誰かというと、最後には国民負担になるのです。しかも、それは決してそう遠くない未来に、現実のものになるのではないかと思いますので、現在いない将来世代の誰かではなく我々なのです。
IMF支援も、IMFが持っている資産が40兆円程度であるのに対して、日本の財政赤字は1,000兆円を超えていますから、到底、穴埋めなどはできません。したがって、どう考えても最後のツケは、国民が負わざるを得ないということになります。
こうした状況になるのを避けるためには、国ではなく企業が中心となる成長戦略を描くしか方法がありません。戦略の具体例としては、TPPなどで日本企業が海外の成長を上手く取り入れて、利益を上げていくということを、今以上に加速させていくという方法が考えられます。日本の輸出の対名目GDP比は、世界147カ国中137位で、世界でも最低水準にあります。これだけ低い水準なのですから、工夫次第で海外の成長を取り入れる余地は、中小企業やサービス業など含めていくらでもあると思います。いずれにしろ、日本経済のギリシャ化を回避するカギは、企業活力と競争にあるのです。そして、日本の国民が、国に頼ることなく自助努力を図るときには、財政赤字問題や経済不振は解消されます。
掲載日:2012年月04月16日
中島厚志(なかじま あつし)氏プロフィール
中島氏
1975年

株式会社日本興業銀行入行

1987年 調査部主任部員
1992年 国際営業第一部課長
1995年 産業調査部主任部員、同副部長
1997年 パリ支店副支店長、同支店長
1999年 パリ興銀社長
2000年 調査部長
2002年4月 - 2003年3月 みずほ総合研究所執行役員調査本部副本部長兼みずほコーポレート銀行調査部長
2003年4月 - 2004年3月 みずほコーポレート銀行執行役員調査部長兼みずほ総合研究所執行役員調査本部副本部長
2004年4月 - 2011年3月 みずほ総合研究所(株)専務執行役員調査本部長
2011年4月 独立行政法人経済産業研究所理事長
主な著作物
『中国「人民元」の挑戦』 東洋経済新報社 2004年
『日本経済のリスクシナリオ―新たな危機にどう立ち向かうか』 日本経済新聞社 2004年
『世界経済 連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』 東洋経済新報社 2009年
『日本の突破口 ―経済停滞の原因は国民意識にあり』 東洋経済新報社 2011年


 
   
    

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