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大和総研経済調査部シニアエコノミスト 山崎加津子氏に聞く「欧州危機は去ったのか」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第35回】

大和総研経済調査部シニアエコノミスト 山崎加津子氏に聞く

「欧州危機は去ったのか」

昨年末にかけて、世界的な金融危機を引き起こすと懸念された欧州債務問題も、ようやく山場を超えた感が出てきました。その後の欧州経済はどうなっているのか、債務問題が再び浮上する恐れはないのか。大和総研の山崎加津子氏に伺いました。
昨年末と現状とで、欧州債務問題にはどのような変化が生じているのでしょうか。
山崎氏
山崎氏 大和総研経済調査部シニアエコノミスト
山崎加津子氏
昨年末にかけて、欧州債務問題は世界的な金融危機を招く恐れがあると言われましたが、その後、2つの点で変化が生じてきました。それを機に、欧州債務問題に対する懸念が、多少和らいだと考えることができます。
第一は、マーケットそのものが落ち着きを取り戻してきたということです。昨年夏に世界的に株価が下落色を強め、秋口にかけてユーロ圏諸国の国債のデフォルトリスクが浮上してきました。それによって、欧州の銀行が保有している国債の価値が毀損し、それが銀行の経営危機に発展するのではないかという見方が浮上し、多くの銀行が保有している国債を投げ売りしました。
結果、イタリアやスペインなどの国債の利回りが急上昇したのですが、今年に入ってこうした悪循環にいったん歯止めがかかった感があります。欧州中央銀行(ECB)が最後の貸し手の役割を果たし、大量の資金供給を行ったことが、マーケットの混乱を抑えるきっかけになりました。
第二は、今年に入って、国債入札に対する一定の需要が確認されたことです。今年1~3月にかけての国債償還スケジュールにおいて、イタリアやスペインは何とか自力で資金を調達しなければならない状況でしたが、いざ入札を行うと、それに対する十分な応札がありました。結果、国債利回りが低下傾向を示すようになり、マーケットの懸念が和らいだのです。
マーケットの心理が変わったのはなぜですか?
山崎氏
いろいろ理由は考えられます。まず、イタリア国債やスペイン国債を何がなんでも保有したくないと考えた投資家による売却が昨年末で一段落したとみられます。このような投資家は主として外国の年金、保険、銀行などでしょう。一方、イタリアやスペインの銀行が自国の国債を全く買わなくなるほど、両国の国債の信用力が低下したわけでもありませんでした。問題があったのはイタリアやスペインの銀行の流動性の部分で、ここへのECBによる大量の資金供給が効果的だったわけです。
ECBが銀行に大量の資金供給を決断したことは、広い意味で金融緩和といえます。これは株式市場にも好材料となり、昨年夏に急落した後、底値圏で行ったり来たりを繰り返していた株価が今年に入って明確に上昇し、3月半ばまでに年末比で10%以上上昇しました。
株価上昇の背景にはもう一つ、ファンダメンタルズ改善も寄与したと考えられます。米国の景気が回復へと向かっている点が評価されました。輸出主導型経済の欧州にとって、米国やエマージング諸国の景気後退は大きなマイナス要因だったからです。エマージング諸国の景気はまだ減速していますが、金融政策が昨年の引き締め基調から、緩和へと転じてきており、今後の景気の持ち直しに効いてくることが期待されます。
ECBの金融資産のうち金融機関向け貸出
ECBの金融資産のうち金融機関向け貸出
(出所)ECB
欧州経済は回復するのでしょうか。
山崎氏
昨年末時点に比べれば改善の兆候が一部に見られます。とくに輸出競争力の高いドイツは、米国やエマージング諸国向けの輸出が牽引して、企業景況感が改善してきました。ただ、欧州の全般的な回復とはなりにくいでしょう。というのも、今年の欧州にとって最大のテーマは財政再建だからです。財政状況は国によって大きく異なり、ドイツの財政は決して悪くはないですが、イタリアやフランスはかなり積極的な財政再建に取り組まざるを得ない状況にあります。ドイツにしても輸出の4割はユーロ圏向けで、EU全体に拡大すれば6割を占めていますから、欧州各国が財政再建に取り組むと、ドイツの輸出にもその需要後退の悪影響が及びます。
財政再建に取り組んでいる国々では、公務員給与や年金支給額の抑制、補助金の削減などの歳出削減策が採られます。あるいは歳入を増やすために不動産課税やVAT(付加価値税)の税率引き上げなども実行されています。これらは直接的に消費や投資を減退させる要因となりますが、より問題なのは、こうした財政再建が成功するのかどうか疑念が持たれていることでしょう。
とりわけギリシャの財政再建については、公務員数削減や税制改革、また国有企業の民営化などの処方箋は出されているものの、すでに4年連続のマイナス成長となっているギリシャ経済が一連の改革を推進できるのか疑問視されています。しっかりした成長戦略なしには、財政赤字の削減は困難でしょう。
ギリシャリスクが再燃する恐れはありませんか?
山崎氏
ギリシャがEUやIMFと合意した財政再建計画は非常に野心的なものなので、ギリシャ政府がこれを実現できない、あるいは実行には移したものの、期待したような効果を得られないこととなる可能性はかなり高いと予想されます。ただ、マーケットにとって問題なのはそのようなギリシャリスクが、どれだけ他国や金融システムに波及するかという点でしょう。今年1-2月にはギリシャの第二次支援がなかなか決着せずにゴタゴタが生じましたが、この間、イタリアやスペインの国債利回りは低下傾向をたどっていました。それまでは、ギリシャ国債の利回り上昇に連れて、イタリア国債やスペイン国債の利回りも上昇していましたが、ここに来てようやく、マーケットが「ギリシャは極端なケースである」というユーロ圏諸国の主張を聞き入れてくれたのだと思います。
別の言い方をすれば、マーケットはイタリア、スペイン、ポルトガル等が、ギリシャのようになってはいけないということで、財政再建を進めてくるはずという期待感を抱いていると言えるかもしれません。それが、社会保障費のスリム化や労働市場の改革といった具体的な成果となって表れてくるかどうかをマーケットは注目すると予想されます。4月になってスペインの国債利回りが再び上昇しているのは、スペイン政府が財政健全化に消極的になったのではないかとマーケットが懸念したためです。
ユーロという単一通貨制度が崩壊することはありませんか?
山崎氏
ユーロを構成している17カ国の政策当局は、ユーロ体制を維持するということでコンセンサスを形成していると見ています。単一通貨ユーロはすでに60年以上をかけて推進してきた欧州統合の一環で、ユーロ誕生によって為替リスクのない3億人市場が誕生しました。確かに、維持していくうえではコストがかかりますが、逆にユーロを無に帰したとしても、やはり膨大なコストがかかります。通貨を新しく作る必要があるだけでなく、さまざまな契約内容の見直し、ルール作りが必要で、訴訟も多発するでしょう。
もちろん、ギリシャにはユーロから離脱してもらいたいという意見は、今も多く聞かれます。ただ、実際にギリシャがユーロから離脱したら、その波及効果が懸念されます。したがって、ユーロは維持する方向でコンセンサスが得られたのでしょう。
とはいえ、ユーロの根本的な矛盾点は残ると思うのですが、この問題をどう解決すれば良いのでしょうか。
山崎氏
ユーロ加盟国は、同じ金融政策が適用されるため、どうしても自国の経済実体に対して、過剰に金融が緩和されたり、逆に引き締められたりした結果、経済的な格差が拡大するという矛盾が生じてしまうのですが、この矛盾点の解決を図らない限り、再びギリシャのような問題が浮上してきてしまいます。
では、加盟国ごとの経済格差をどう解消すれば良いのかということですが、ひとつはユーロ加盟国がこれ以上、財政赤字を拡大しないようにする必要があります。この点については、相互に財政状況を監視する体制が出来上がってきていますので、これがしっかりとワークするようにするのがポイントです。
加えて財政統合を推進するために注目されるのはユーロ共同債の発行です。昨年11月に欧州委員会で取り上げられ、その後、広く意見募集がかけられました。現在はそれに基づいて新たな提案が準備されているのではないかと考えられます。ユーロ共同債については、財政が健全で国債利回りが低い国々にとっては国債発行のコストが上昇する可能性が高いため、慎重な意見が多く、ドイツがその筆頭となっています。とはいえ、ドイツはユーロ誕生によって最も経済的な恩恵を受けた国でもありますので、ユーロという仕組みを崩壊させたいとは思っていないでしょう。したがって、現状ではユーロ共同債の発行について、あまり良い顔をしていないドイツも、どこかで妥協してくると思います。
財政統合の実現には相当長い時間がかかるでしょう。その実現のためには、各国が相互に財政状況の監視を強めるとともに、国の競争力を高めることも必要です。その上でユーロ共同債の導入を実現させていくことが、ユーロが抱えている矛盾点の解決につながると思います。
ユーロ/円の値動きはどうなりますか?
山崎氏
為替に関しては引き続き「弱いもの競争」なのだと見ています。今年初めまではユーロの悪材料によって、ユーロ安が進みやすい環境でしたが、現状は日銀も金融緩和を強めてきています。したがって、ユーロ/円については当面、ボックス圏の推移になると思います。一方で、米国は景気回復局面に入ってきている点がプラスですが、回復のペースはかなり鈍いため、やはり大きくドルが買われる状況にもなりにくいのではないかと予想します。
取材日:2012年月04月04日
掲載日:2012年月05月08日
山崎加津子(やまざき かづこ)氏プロフィール
大和総研経済調査部シニアエコノミスト
主要担当分野:欧州経済
山崎氏 1993年東京大学教養学部卒業後、同年に株式会社大和総研に入社。経済調査部、フランクフルト支所、国際調査室、投資戦略部などを経て、2011年より現職。



 
   
    

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