株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

エコノミスト西岡純子氏に聞く「意外としっかりしている日本経済の現状」 東証ETF

  • PR
  • PR
  • PR
 
 

東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第40回】

エコノミスト西岡純子氏に聞く

「意外としっかりしている日本経済の現状」

解決の糸口がなかなか見当たらない欧州債務問題、長引くデフレなど、日本経済を取り巻く環境は、決して楽観できる状態にない。2012年度は震災特需の影響がプラスに作用すると言われましたが、果たして現状はどうなのでしょうか。RBS証券リサーチ・ジャパン・チーフエコノミストの西岡純子氏に、これからの日本経済の見通しを伺いました。
4~6月期のGDP成長率が事前予想よりも悪い数字になりました。日本経済の回復スピードはかなり落ちてきたのでしょうか。
西岡氏
RBS証券リサーチ・ジャパン・
チーフエコノミスト西岡純子氏
4~6月期のGDP成長率は、8月発表の速報段階では前期比年率で1.4%、9月に入ってからの改定で1%の成長となりました。これらがいずれも市場予想を下回ったことから、欧州危機の影響などが及んでいるのではないか、景気回復のペースが落ち込んでいるのではないかという見方もありますが、私は決してそのようなことはないと見ています。
理由は2つあります。
ひとつはうるう年の影響です。2012年1~3月期のGDP成長率は、改定値で5.3%と非常に高い伸びを示していますが、この背景にはうるう年の影響がありました。通常、うるう年の影響で大きくGDP成長率が押し上げられた後は、その反動でむしろマイナス成長に落ち込むケースが多いのですが、2012年4~6月期は0.7%のプラスを維持しました。むしろ、予想よりも在庫が落ちたのが低い成長率となった主な要因です。それだけ、日本経済の地合いは堅調なものになっていることを示しています。
二つ目は個人消費が底堅いこと。日本経済は韓国などに比べると、外需依存度はむしろ低い方です。輸出のGDP比を見ると、韓国や台湾は軒並み5割を超えていますが、日本はわずか16%です。そうであるにも関わらず、円高が進むと輸出の問題がクローズアップされるのは、自動車産業や家電産業などの輸出企業に対して部品を納めている関連企業が多いからです。
したがって、欧州をはじめとして先進国経済が低迷しているのは、日本経済にとっても非常に良くないことではあるのですが、それでも0.7%のプラス成長を維持できたというのは、内需がそれだけ堅調であることの証です。つまり、個人消費が堅調であり、それが今の日本経済をけん引していると言えるでしょう。
個人消費が堅調な理由は何でしょうか。また、消費税増税法案が成立しましたが、これは個人消費にとってマイナス要因になりませんか?
西岡氏
まずエコカー補助金の申請が続いていることによって、個人消費が下支えされています。加えて、大きな流れとしては、今の日本は高齢者比率が上昇しているので、高齢者向けの商品・サービスが売れています。たとえば高齢者向けのパッケージ旅行などは、単価が相対的に高いので、個人消費の金額を押し上げる効果があります。
一方、個人消費の頭を抑える要因として、消費税の増税が懸念されています。現在、5%の消費税率が、2014年から8%、10%というように引き上げられると、多くの個人は消費を敬遠するようになり、個人消費が落ち込むのではないかという見方です。
ただ、消費税の増税自体は、それほど個人消費を抑圧する要因にはならないと見ています。
97年4月、消費税率がそれまでの3%から5%に引き上げられました。この直前の同年1-3月に、駆け込み需要によって個人消費は大きく伸びましたが、その後、当然のことながら反動減がありました。実際、数字上では、98年、99年と景気後退局面に入ったわけですが、これは決して消費税増税だけが原因ではありません。むしろ、アジア通貨危機やロシア通貨危機が起こったり、国内発の金融システム不安によって国内金融機関が破綻に追い込まれたりしたことが、景気後退の大きな要因になったとみられます。つまり、景気後退の因果を消費税増税のみに求めることはできないのです。したがって、これから消費税率が段階的に引き上げられたとしても、それが原因で個人消費が大きく減少し続けると言い切ることはできません。
しかし、だからといって安心もしていられません。というのも、大きな流れで捉えた個人消費の増減は、人口によるところが大きいからです。これからの日本は、人口の高齢化がすすむだけでなく、徐々に人口が減少していきます。人口が減っているなかで一国全体でみた個人消費を維持、もしくは上昇させていくためには、よほど消費性向が高まらないと難しいでしょう。そして、実際に個人の消費性向が将来的に高まっていくかというと、年金問題など将来への不安が残るなか、その可能性は低いと言わざるを得ません。したがって、このままの状態が続けば、個人消費は低空飛行になると思います。
欧州債務問題や米国の景気後退は、日本経済にとって悪材料になりませんか?
西岡氏
まず欧米の問題ですが、確かにこれは日本経済にとって、懸念材料のひとつと考えられます。ただし、リーマンショックの時と今の経済情勢を比べてみると分かるのですが、今の状況は当時に比べ、深刻さという点ではそれほどでもありません。たとえばリーマンショックの直後、日本経済は2ケタのマイナス成長を2期連続で記録しましたが、今は前述したようにプラス成長を維持していますし、リーマンショック後に何よりも大きな問題だったのは、資金調達コストの上昇でした。リーマンショックによって金融機関の信用リスクが高まった結果、ドル資金の調達コストが上昇し、それが日本企業の活動を制約したのです。
でも、今は違います。欧州危機発生後の早い段階で主要5中央銀行が通貨スワップ協定を結んでおり、どこかの国で金融不安が生じ、資金調達難に陥った場合、他の国が資金を提供することで、流動性を確保する対応がとられました。結果、リーマンショック直後のように、資金調達コストが大幅に上昇するといった金融面の影響は、限定的になっています。
したがって、欧州債務問題や米国の景気後退は、確かに懸念材料ではありますが、リーマンショックの時ほど深刻な材料にはならないと見ています。
ただ唯一、真剣に考えなければならないのは円高によるマイナスの影響でしょう。円高が更に進むような事態になれば、日本の輸出企業は輸出競争力を一段と後退させることになります。もっと言えば、デフレからの脱却も困難になるでしょう。目下、日本経済の先行きを見ていくうえで、一番懸念されるのは、もう一段の円高進行です。
仮に円高が進んだ時、日本の通貨当局は介入してでも、それを阻止する考えはあるのでしょうか。
西岡氏
たとえば2002年にかけて、米ドル/円は米ドル高に進みました。具体的には、99年11月の1ドル=101円台から、2002年1月には1ドル=134円台まで米ドル高が進んだわけですが、この時の政策金利は日本が一旦の利上げを経て0.25%、米国では5%台から6.5%へ引き上げられる局面でした。つまり金利差で見て、米ドルが買われることを説明できたのです。
でも、今はどうかというと、この手の金利差やファンダメンタルズから、円安を説明するのが難しい状況にあります。というのも、日本も米国も、そして欧州も揃って金融緩和を進めているからです。同じように低金利なのに、円だけが安くなることを合理的に説明することはできません。したがって、ファンダメンタルズで円安は進まない、ということになります。
そうなると、円高を阻止するためには介入が求められます。
では、実際に介入を行うのかどうかということですが、これまでの経緯からいうと通貨当局が介入を決断する際には円高が急速に進むという大きな動きが決定打となっているようにみられます。つまり、70円台後半という水準は、かつてに比べると十分に円高水準なのですが、通貨当局に為替介入を決断させるほどの大きな動きになっていないようです。
ですから、もし日本の通貨当局がドル買い介入を決断するとしたら、それは米ドル/円が1ドル=70円を割り込みそうになるような、ドラスティックな値動きをした場合ということになるでしょう。たとえば、欧州当局内での政治的対立や意思決定の遅れにより、スペインの金融機関に対する支援やその他や重債務国への救済の実現が再び困難となり、リスクオフから円が大きく買われる可能性はまだシナリオから排除できません。そうなった時、日本の通貨当局は改めてドル買い介入を決断するはずです。
日本の経済が自律的に回復軌道に乗るためには、何が必要でしょうか。
西岡氏
今の日本経済は、前述したように、エコカー補助金や高齢者の贅沢旅行などに支えられた個人消費の堅調さと、震災の復興特需が景気の下振れを抑えていますが、これらがいつまでも続くことはありません。したがって、こうした特殊要因に支えられているうちに、自律的な回復力を取り戻していかなければならないのですが、そのための鍵は、やはり円安だと思います。
2007年にかけて日本経済が堅調に推移したのはなぜか。一番の理由は、円安が進んだからです。2007年6月には1ドル=124円をつけ、インフレ率も徐々に上昇傾向をたどり、それに伴って、株価も上昇トレンドを描いていきました。
だからこそ今、介入を行うことによって、為替レートを円安にする必要があるのです。
なかには為替介入など効かないという意見もあります。でも、決してそのようなことはありません。単独介入では動かないと言われますが、スイス中央銀行のように大胆な政策でもって介入を行えば、充分に効果は上がります。
また、為替介入をするには、米国側とのコンセンサスが必要だという意見もありますが、当の米国自体、2009年からドル安政策を取っています。米ドルについては通貨安を容認しているのに、日本が通貨安政策を採ることに対して批判するのは明らかにバランスが悪いです。もっと日本も堂々と為替介入を行うことによって、デフレ脱却と景気浮揚は期待できます。日本経済を救うのは円安だということを、日本の通貨当局は改めて認識するべきでしょう。
掲載日:2012年月09月14日
西岡 純子(にしおか じゅんこ)氏プロフィール
アール・ビー・エス証券会社東京支店 リサーチ・ジャパン・チーフエコノミスト
京都大学経済学研究科 修士課程終了後、2000年4月に日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入行。
日本銀行(2002年-2006年)、三菱UFJ証券(2006年-2007年)、エービーエヌ・アムロ証券会社東京支店(2007年-2008年)に在籍し、国内外のエコノミストを務める。
2008年7月アール・ビー・エス証券会社入社。 東京支店において、エコノミストとして日本経済の調査、分析を担当。 2012年日経ヴェリタス・エコノミスト・ランキング第7位。



 
   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »

K-ZONEユーザがオススメする証券会社

  1. 1位
  2. 2位
  3. 3位