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フィスコ 小瀬正毅に聞く「これからの為替見通し」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第43回】

フィスコ 小瀬正毅氏に聞く

「これからの為替見通し」

9月、1ドル=77円台まで円高が進んだドル/円は、そこから一転して円安トレンドに突入しました。安倍自民党総裁によるマイナス金利発言、恒常化する日本の貿易赤字など、円売りの材料が徐々に表面化してきたからです。果たして、この円安トレンドは本物なのか。どこまで続くのか。金融情報会社フィスコ情報配信部 債券・為替部長、小瀬正毅氏に伺いました。
9月後半以降、円安トレンドへと転じた理由は?
小瀬氏
フィスコ情報配信部 債券・為替部長
小瀬正毅氏
最大の要因は、日本の貿易収支赤字が恒常化しそうになってきたからです。2012年の貿易収支は大幅赤字になりそうですし、2013年も恐らく赤字になるでしょう。経常収支はとりあえず黒字を維持していますが、それも徐々に縮小してきています。
貿易収支が本格的な赤字に転じるというのは、日本経済の過去30年を見ても、なかったことですから、これが現実化すれば、為替の需給バランスに大きな影響を及ぼすのは必至です。
かつて、日本の貿易黒字の額が増えると、外国為替市場では円買い圧力が強まりました。貿易黒字というのは、日本の自動車メーカーや家電メーカーがどんどん日本製品を輸出した結果、日本国内に多額のドル通貨があることを意味しています。このドル通貨は、そのまま日本国内で使うことはできませんから、どこかでドルを売り、円に替える必要があります。したがって、貿易収支の黒字額が増えるほど、将来、必ず出てくると思われる円買いを連想して、どんどん円が買われるのです。
そして貿易赤字が増えると、この逆の現象が生じます。貿易赤字が増えるというのは、海外からの輸入額が、日本からの輸出額を上回ることを意味しています。輸入するためには、ドルなどの外貨を持つ必要があります。つまり外貨買い・円売りが起こります。
貿易赤字が膨らんだのは、原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸入が増える一方、米国や欧州の景気低迷によって、輸出が減っているからです。一部では、金融緩和に対する期待で円が売られたとの見方もありますが、基本的にこれまでも金融緩和は行われてきたので、本格的な円安トレンドを形成するほどの材料にはならないでしょう。やはり貿易収支の赤字が恒常化しそうだという点が、円売りを加速させているのだと思います。
安倍発言はそれほど重要視されていないということですか?
小瀬氏
もちろん、円安を加速させるドライバーにはなったと思いますが、それはあくまでも一時的なものです。それ以上に、貿易収支の赤字という構造問題が、大きな円売り要因になっていると考えた方が妥当です。
安倍発言では「マイナス金利」という話も出てきて、それはそれで非常に大胆な内容だったわけですが、その実行可能性はともかく、マーケット参加者に対して、「これは本当に円安になるかも。デフレ経済から脱却できるかも」と思わせることができました。それだけマーケットは、安倍発言に注目しているということです。もし、マーケットが安倍発言を軽視しているようであれば、これだけの反応はないでしょう。それだけ、マーケット参加者の期待感は大きいということです。
何といっても、この発言が行われた時点では、まだ安倍自民党総裁は首相の座に就いていませんでしたが、衆議院選挙で自民党が第1党になり、安倍首相が誕生しました。その人が、日銀の専管事項である金融政策に踏み込んだ発言をしたのですから、注目度が高まるのは当然でしょう。
2013年4月には、白川日銀総裁の任期が満了するので、マーケット参加者の間では、もう次期日銀総裁は誰なのかということに関心が移っています。もし、自民党の意向を強く反映するような人が次期日銀総裁になれば、恐らく強力な金融緩和政策を実施するのは目に見えています。そこに今回の安倍発言でしたから、火に油を注ぐことになりました。円安のきっかけを作ったという点で、安倍発言は十分に評価されると思います。
今の円安トレンドは持続しますか?
小瀬氏
中期的に見ても、円安が進みやすい環境ではあると思います。恐らく、今後1年は円安トレンドではないでしょうか。
ただ、どこまで円安が進むのかという点については、マーケット参加者がどこまで円安について強力にコミットするかにもよります。大勢のマーケット参加者が、「まだ円安が進む」という強い意識を持っていれば、相当程度の円安水準が現実のものになるだろうし、半信半疑であれば、そこそこの円安水準でストップするでしょう。
基本的に為替というのは、米ドルを基準にして動いています。そのため、いくら日本サイドから円安の材料が出てきたとしても、一方で強いドル売り要因があったら、まず円安にはなりません。円高になります。ということで、今後、マーケット関係者が強く円安トレンドにコミットするかどうかは、これからの米国経済次第でしょう。「財政の崖」問題をクリアしたとしても、米国は今後も財政削減をしていかなければならない。景気はようやく回復の兆しを見せていますが、足元はまだ脆弱です。もし、なかなか米国経済に回復の兆しが見られないということになれば、ある程度の円安で頭打ちになるでしょう。
でも、逆に米国の景気回復がいよいよ本物ということになれば、円安は進みます。おおよそのメドですが、2014年に1ドル=100円台も可能だと思います。
また、2014年4月にも予定されている消費税率の引き上げですが、これも円安要因になるでしょう。消費税が導入されたのは1989年のこと。当初3%でスタートしましたが、1997年には5%に引き上げられました。
消費税が導入された1989年はバブルピークの年。その後、株価は大幅に下落し、バブル景気は崩壊しました。そして、1997年に消費税率が5%に引き上げられた時も、山一証券の破たんなど金融不安が高まり、景気は大きく後退しました。恐らく2014年の消費税率引き上げも、景気にとってはマイナス材料です。ちなみに、89年、97年のいずれも、消費税率の引き上げを受けて円安が進みました。2013年に引き続き、2014年も消費税率の引き上げと、それによる景気の後退懸念を受けて、円は売られやすい環境になります。
ただ、実際にどの水準まで円安が進むのかは、米国の景気次第という側面が非常に大きいと思います。
ドル円相場(1998年1月~2012年12月)

出所:QUICK
一方で、円の高値水準は、ほぼ見えたといっても良いでしょう。少なくとも1ドル=85円を捉える事が出来れば、今後、1ドル=80円を割り込むような円高になる可能性はかなり低いと見ています。
米国景気の行方は?
小瀬氏
サブプライムショック、リーマンショックという、2度の大きな金融ショックを経て、米国経済は徐々に回復トレンドへと向かっていますが、正直なところ、よくここまで回復してきたなと思います。
でも、これまでの米国経済は、景気が悪くなると、どのような方法を使っても、何とか景気低迷から脱出しようという動きが見られましたが、これから先は、選択肢が非常に限られるだけに、景気低迷に対する処方箋を打つのが難しくなります。
すでに金利はゼロ金利で、これ以上の引き下げは出来ませんし、財政出動も難しいでしょう。財政の崖問題を克服できたとしても、今の巨額な財政赤字を解消するためには、むしろ財政緊縮を真剣に考えるべき時期に来ています。となると、景気回復策は量的金融緩和に頼るしかありません。
ただ、金融政策は経済の成長ドライバーにはなりませんから、せいぜい景気の悪化がこれ以上進まないようにする程度の効果しか期待できません。住宅関連はしっかりしていますが、この先、歳出削減などが視野に入り、それをカバーするだけの材料がないということになると、やはり米国景気の回復は、そう簡単ではないということが見えてきます。
そうなると、来年の為替相場は、現状に比べて円安にはなるでしょうが、一方で米ドルの上昇余地も限られるので、どんどん円安が進む環境にはならないと思います。
円安が進めば日本の景気は回復へと向かうのでしょうか。
小瀬氏
円高が日本経済にとって非常に厳しいものであることは、この数年で、あの日銀でさえもがしっかり認識したと思います。
したがって、円安はウェルカムなのですが、それが本当に個人レベルまで含めて、景気の回復感につながるのかという問題があります。
今後、円安が進めば、日本の輸出企業は徐々に収益が改善へと向かうでしょう。
しかし、問題は円安が進み、輸出企業の収益が改善に向かったとしても、個人ベースの所得増加にはなかなかつながりにくい状況にあるということです。それは、2002年から2007年にかけて、戦後最長の景気拡大局面と言われたにも関わらず、給料がほとんど増えなかったということからも分かるでしょう。つまり、企業が儲かっても、その利益の一部でさえ、従業員にはほとんど回らず、企業は内部留保を高めたのです。
企業業績が改善すれば、株価はそれを織り込みますから、株価が上昇し、そこで株式を保有している個人には資産効果がもたらされますが、株式を持っていない個人には、全く関係のない話になります。しかも給料が上がらないというのでは、個人消費など盛り上がるはずがありません。
したがって、円安が進んだとしても、日本の景気が目に見えて、実感として回復することはないと思います。その意味では2013年も、日本の暮らしぶりという点では、いささか厳しいということを自覚しておく必要がありそうです。
掲載日:2012年12月26日
小瀬正毅(こせ まさき)氏プロフィール
フィスコ情報配信部 債券・為替部長
[担当]為替・金利市場:国内外の債券市場や外国為替市場の分析・予測。
[経歴]外資系銀行、証券などでマネーマーケット、カスタマーディーラーなどを経験した後、2000年フィスコへ入社。



 
   
    

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