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エコノミスト 武者陵司氏に聞く「これからの米国経済の行方」 東証ETF

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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【著名人インタビュー第45回】

 

エコノミスト 武者陵司氏に聞く
「これからの米国経済の行方」

米国経済が本格的な回復局面に入ってきました。それを証拠に、米国の代表的な株価インデックスであるNYダウ工業株30種平均は、3月14日に14,539ドルまで上昇し、2007年10月9日につけた高値を更新。過去最高値をつけました。懸念材料のひとつだった失業率も低下し、雇用環境は順調に改善へと向かっています。この米国景気の回復は短期間で終わるのか、それとも長期間続く景気回復局面の端緒なのか。武者リサーチ代表の武者陵司氏に、話を伺いました。
NYダウが過去最高値を更新しました。米国経済はリーマンショックの痛手から立ち直り、いよいよ本格回復軌道に入ったと見ても良いのでしょうか。
武者氏
武者リサーチ代表 武者陵司氏
NYダウの過去最高値更新に引き続き、S&P500が過去最高値を更新しました。
ところで、NYダウは1929年の世界大恐慌以来、何回、過去最高値を更新したのか、ご存じでしょうか。
実は、たったの5回しかないのです。それぞれ、過去最高値を更新した後、マーケットがどのように推移したのかを振り返ってみると、次のようになります。
(1)1954年⇒その後、30年近く続いた長期上昇の入り口。
(2)1972年⇒高値波乱。その後、10年間の長期低迷に。
(3)1982年⇒1999年までの長期上昇の出発点。
(4)2006年⇒サブプライムショック、リーマンショックで株価急落。
そして2013年、5回目の過去最高値更新になったわけです。ちなみに過去4回の過去最高値更新後の動きを見ると、大相場が2回、高値波乱と長期低迷が2回です。さて、今回はどちらでしょうか。
私は、高値波乱と長期低迷に陥る恐れは低いと見ています。今回の最高値更新は、新しい時代の幕開けという意味を含んだものであり、高値波乱で下落に転じるようなことにはならないでしょう。1972年の高値更新は言わばだましであり、その後の1982年の戻り高値が長期上昇の入り口となりました。同様に2006年の高値更新もだましであり頓挫し、その後の7年間の調整を余儀なくされました。そして2013年の高値更新は7年間のもみ合いの後の戻り高値で、1982年高値との類似性が感じられます。米国経済のファンダメンタルズ、景気循環から見て、今後の景気拡大余地は長いと予想されること等から、NYダウの14,000ドルは、そのほんの入り口に過ぎず、本格的な上昇局面はこれからだと思います。長い目で見れば、2万ドル、3万ドルという水準も、十分に考えられるでしょう。

NYダウ工業株指数の推移と貨幣創造

株価の好調を下支えしている要因としては、どういうことが考えられますか?
武者氏
いろいろ考えられますが、まずシェールガス革命。これは大きいですよ。新しいエネルギー資源の発見により、資源に絡んださまざまな問題点が解決されます。
たとえばインフレ。米国のような自動車社会では、原油価格の上昇がガソリン価格の高騰につながり、米国内ではインフレ懸念が強まります。
ところが、シェールガスのような新しいエネルギー源が発見されたことによって、主要なエネルギー源は、ガソリンからシェールガスへと移行するでしょう。原油に比べて潤沢に埋蔵されていると思われるシェールガスが新しいエネルギー源の中核になれば、インフレ懸念は解消されるでしょうし、貿易赤字の解消にもつながります。シェールガスの埋蔵量からすれば、海外輸出に十分回すことが出来るからです。シェールガスは、米国経済の長期的発展の礎になるはずです。
これに加えて空前の情報通信革命も進行しています。グーグル、フェイスブックなど、新しいITの盟主が誕生すると共に、IT新技術の開発が進み、米国経済の下支えになります。たとえば、日本や韓国のメーカーが製造しているIT製品の核となる技術の大半は米国発ということも、十分に考えられるでしょう。まさに米国企業が胴元となり、世界のIT技術を牛耳る可能性もあります。
リーマンショックという、100年に1度とまで言われた大きなバブル崩壊の影響は、ほぼ完全に払しょくされました。しかも、米国は先進国の中でも非常に珍しい、人口が自然増になっていく国です。労働人口が増えているという点では、世界唯一の国といっても良いでしょう。人口増は、経済の成長を下支えします。
今の米国には、このようにいくつもの好材料が揃っています。先ほど、NYダウは2万ドル、3万ドルの可能性も十分に考えられると言いましたが、場合によっては10万ドルを目指すというシナリオも考えられます。

世界の労働人口推移の予測

NYダウで2万ドル、3万ドル、あるいは10万ドルまで上昇するということになると、かなり強い材料が必要になると思います。この点をどう考えますか?
武者氏
もちろん、先ほど申し上げたように、シェールガス革命や情報通信革命、あるいは持続的な人口増などが、米国経済の下支えをし、それが株価を押し上げる要因になるわけですが、NYダウの歴史を振り返ると、実は興味深い共通点があるのです。
それは100ドル、1,000ドル、1万ドルというように、一桁違う大台に乗せた後、株価は長期的に低迷するという共通点です。
奇妙なことですが、過去の長期停滞は、NYダウ100ドル、1,000ドル、1万ドルの大台に到達した時点で始まり、その大台を完全に離れるのに 10~20年の時間がかかっているのです。そして一度大台を離れると、NYダウは一気に10倍に上昇するというパターンが、繰り返されてきました。過去100年の間に2回、この手の大相場が起こっています。
それと共に注目したいのが金価格の動向です。株価が長期低迷から脱して急上昇を開始した時と相前後して、金価格が上昇しているのです。1930年代後半から1940年代初頭にかけてもそうでしたし、1980年代初頭にも金価格は大きく上昇しました。そして今は高値揉み合い局面ですが、2001年以降、8年にわたって壮大な上昇局面を描きました。
この点からも、NYダウが1万ドル台から10万ドル台になることは、全くの絵空事とは思えないのです。
過去に起こった長期株価上昇の背景は何があったのでしょうか。
武者氏
過去を振り返ると、少なくとも3つの条件が伴っていたことが伺えます。それは地政学レジーム、技術革新に基づく生産性上昇、需要創造メカニズムとしての通貨制度です。
まず地政学レジームですが、経済が繁栄し続けるためには、自由な通商と金融を保障する政治基盤が不可欠です。そのレジームとして1940年代以降、米国が西側世界の実質的な支配者となる「パックス・アメリカーナ」が大きな前提となりました。また1980~90年代の繁栄の背景には、共産圏の崩壊による米国覇権の世界制覇がありました。
第二に技術革新です。これが生産性を飛躍的に高め、経済成長を促しました。1940~60年代に米国で起こった高度消費社会は、豊富な石油資源に支えられたものです。また1980年代以降は、半導体技術革新による情報化革命がビジネスモデルを一新しました。
ただし技術革新と生産性の向上は、必然的に供給力を増大させます。一方で需要が伸びなければ、生産性向上による供給力の増大は、過剰生産と失業増加につながります。そこで第三に、需要を生み出すメカニズムが必要になります。どうやって需要を生み出すのか、ということですが、それは新しい通貨制度の確立と、それにともなう信用創造の拡大によってもたらされます。
たとえば1940~60年代の繁栄の背景には、管理通貨制度の導入がありました。それ以前の金本位制の下では、国が保有している金の保有量を超えて通貨を発行することは認められていませんでしたが、管理通貨制度になり、金の保有量に関係なく通貨が発行されるようになったのです。
結果、世の中が求める通貨量が適切に供給されるようになり、信用が増大したことが、需要創造メカニズムとして働きました。また1980年代以降の繁栄は、ニクソンショックから10年近い時間を置いてからの話になりますが、米国の金保有に制約されていたドル資金供給が、ニクソンショックによってその制約から解き放たれ、世界中にドルが流通するようになりました。これが日本を筆頭に、アジア諸国の工業化や世界経済の成長率の押し上げにつながったのです。
株価の長期上昇を支えてきた、これら3つの条件は、現在に照らして考えるとどうですか?
武者氏
まず、地政学レジームについて言うと、米国は世界覇権国から世界共和国のリーダーに変貌しようとしています。米国の価値観を押し付けるのではなく、国際世論に配慮した政策を取り始めました。
技術革新については、インターネット技術の進化と、それによる文化・経済様式の発展、そしてシェールガスに見られる新エネルギー革命が現実のものになってきました。
そこで問題となるのは、第三の需要創造のメカニズムの創設です。従来の信用方式は、サブプライム危機、ギリシャ危機など相次ぐ金融危機によって、機能しなくなりつつあります。
これに取って代わる、新しい需要創造のメカニズムが発見される時、米国経済は新たな成長局面に入り、株価もさらに大きく上昇していくのではないかと見ています。
このように見ていくと、今の株価は1998年から続いている長期停滞局面の最中か、もしくは出口近辺にいると考えられます。
米国景気の現状をどう見ますか?
武者氏
もはや米国経済に悲観的な見方をする必要はないでしょう。何よりも、米国経済にはポジティブな材料が揃ってきています。
具体的には自動車と住宅です。
米国の自動車の平均需要は、年間1,600万台から1,800万台です。これが、リーマンショックの直後は1,000万台にまで落ち込みました。この数字からも、リーマンショックがいかに厳しいものであったかということが分かります。
ちなみに、現在の状況は1,400万台から1,500万台というところです。まだ、リーマンショック前の平均需要には届いていませんが、それでも底から着実に上昇しています。景気が好転すれば、さらに需要台数は伸びていくでしょう。
それとともに、住宅の需要にも注目して下さい。通常、年間の平均需要は70万戸から100万戸で、ピークには140万戸まで伸びた住宅需要ですが、リーマンショック直後は30万戸まで落ち込み、現在、40万戸まで回復してきました。自動車に比べると、住宅のアップサイドの方がはるかに大きいので、景気回復が本物であれば、住宅需要はさらに大きく上伸して、景気回復に貢献するでしょう。それだけ潜在需要が大きいということです。
最後にドル/円の動向について伺いたいと思います。
武者氏
米ドルには5~10年のドルサイクルがあります。今は2002年から2011年にかけて進んだドル安局面が大底を打ち、そこからドル高に転じた局面になります。したがって今後、5~10年はドル高が進むでしょう。
その一番の理由は、やはり米国の景気が強いことです。過去、米国経済が強い時には、ドルは高くなる傾向が見られました。民間部門はかなりしっかりしてきましたし、それを受けて米国政府も、税収増から財政赤字の立て直しが可能になります。こうした点からも、しばらくドル高局面が続くと見ています。
掲載日:2013年月04月19日
武者 陵司(むしゃ りょうじ)氏プロフィール
1973年3月 横浜国立大学経済学部卒業
1973年4月 大和証券株式会社入社 調査部配属、
~1987年まで 企業調査アナリスト、繊維、建設、不動産、自動車、電機・エレクトロニクスを担当
(1982年調査部の分離独立で大和証券経済研究所に出向、1989年大和総研設立により同社へ出向)
1988年1月 ニューヨーク駐在、大和総研アメリカでチーフアナリスト、米国のマクロ、ミクロ、市場を調査
1993年5月 大和総研企業調査第二部長
1997年1月 ドイツ証券(旧称:ドイチェ・モルガン・グレンフェル証券東京支店)入社、2005年まで調査部長兼チーフストラテジスト
2005年5月 ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーに就任
2009年7月 株式会社 武者リサーチ設立
ドイツ証券株式会社 アドバイザーに就任
ドイツ銀行東京支店 アドバイザーに就任
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 アドバイザーに就任
・2002・2003年の米国Institutional Investorランキング日本株ストラテジスト部門1位。
・2002年度信州大学経済学部、非常勤講師「日本経済論と株価予測の実践経済学」を担当。
・2007年4月より埼玉大学大学院客員教授兼任。「日本経済と証券市場」を担当。
< 主要著作 > 失われた20年の終わり(2011年3月)東洋経済新報社
日本株大復活(2009年7月)PHP研究所
新帝国主義論(2007年4月)東洋経済新報社
アメリカ 蘇生する資本主義(1993年)東洋経済新報社
摩擦と再編の構図(1982年)教育社




 
   
    

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