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米国経済 下げ止まりの兆しは見えるが、本格回復にはほど遠い。ユーロ問題の決着が注目材料 -株365

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FX・CFD [経済の達人に聞く「2012年世界経済の行方」]

【第1回】(米国経済)三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員調査本部長 五十嵐敬喜氏

下げ止まりの兆しは見えるが、本格回復にはほど遠い。ユーロ問題の決着が注目材料

米国経済の現状をどう見る?

五十嵐氏
 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
執行役員調査本部長

五十嵐氏:

米国経済については楽観的な見方をしていましたが、それも徐々に苦しい状況になってきたというのが正直な思いです。その最大の要因は、後でも触れますが、ユーロ問題にあります。そもそもギリシャの債務問題から始まったユーロクライシスですが、今ではイタリア、スペインといった経済規模の大きな国にまで、債務問題の影響が及んできました。

それに対する対策も、寄り合い所帯であるユーロ経済圏のなかでは、各国の利害が対立してしまい、なかなか根本的な処理策が講じられないという状況に陥っています。恐らく、このまま2012年に向かって、事態は一層、厳しくなっていくでしょう。そうなれば、私自身が楽観的に見ていた米国経済の行方にも、暗い影が差してきます。成長率の下方修正も余儀なくされるでしょう。

ただ、それでも私は、米国経済が日本化するとは思っていません。日本化の根拠は、バランスシート調整にあります。日本の場合、バブル経済が崩壊してから、長年にわたってバランスシート調整が続き、それがデフレの深刻化につながったわけですが、米国の場合、すでにバランスシート調整が一段落した兆しが現れています。

具体的には「債務償還年数」といって、今、抱えている債務を全額返済するのにどのくらいの年数が必要なのか、ということを示すデータですが、その年数は、サブプライムショックが起こる前の2005年時点で、30年を超えていました。それが現状では15年くらいまで半減しました。債務償還年数が15年というのは、住宅バブルが起こる前の水準と同じです。ここまで借金返済の目途が立ってくると、徐々に消費を増やしても良いのではないかというムードにつながっていきます。

また、企業業績が回復していることから、少なくとも仕事についている人の所得は、徐々に増えています。失業率も、11月の雇用統計でようやく9%を割り込んできました。このように雇用環境が改善されてくれば、人はお金を使うようになります。米国では、GDPの7割が個人消費で占められていますから、雇用情勢の改善は、景気を確実に下支える要因になります。

2012年の注目材料は?

五十嵐氏:

米国経済の内部要因としては、やはり大統領選挙の行方でしょう。本来、米国で大統領選挙が行われる年は、その前年も含めて景気は回復しやすくなります。これは、たとえば今回の大統領選挙であれば、オバマ大統領の再選がかかっているので、再選されやすくするため、積極的な景気対策を打ってくるからです。

でも、現状はなかなか景気対策を打つのが難しいと思います。すでに金融政策については、政策金利がゼロ%水準にありますし、量的金融緩和を行おうとしても、QEIIへの反対意見が非常に根強かったので、QEIIIを即、実行に移すのは困難でしょう。さらに財政政策ですが、これも以前のように積極的な財政出動を行うのは困難です。それは2011年8月に、民主党と共和党の間で散々揉めた挙句、ようやく債務上限引き上げで妥結したプロセスを見れば明らかでしょう。財政赤字の削減を巡って、今後、両党の摩擦は一段と激しくなると思われるだけに、柔軟な財政出動は今後、さらに厳しくなるのは明白です。

そうなると、結局のところ景気対策については打つ手なしということになります。したがって、大統領選挙の年だからといって、景気対策がどんどん打たれて米国経済が回復するというシナリオは、非常に描きにくいということになります。一方、米国経済の外部要因としては、やはりユーロ問題による影響が大きいと思われます。欧州に債権を持っている米国金融機関の損失が拡大する懸念がありますし、もうひとつ大きな問題になりそうなのがCDSです。欧州の銀行が保有しているCDSを保証しているのが米国の金融機関だったら、やはり米国の金融マーケットは大混乱に陥るでしょう。こうした金融マーケットを通じての影響だけでなく、ユーロ危機は米国から欧州への輸出減少を通じて、実体経済にも悪影響を及ぼします。そのうえ、欧州の金融機関が新興国から投資資金を引き上げたら、新興国経済も落ち込みますから、米国から新興国への輸出も低迷してしまいます。

このように、ユーロ危機が長引けば長引くほど、米国経済のさまざまな側面に悪影響が及んでくるのです。したがって、2012年の米国経済を見ていくうえでは、やはりユーロ危機の行方が大きな材料になると思われます。

ずばり、2012年の米国経済はどうなる?

五十嵐氏

五十嵐氏:

さまざまな問題点について申し上げてきましたが、米国経済については基本的に、これ以上、ひどい状況になることはないけれども、リーマンショック直後のように、V字回復することもない、ということだと考えています。たとえて言うならば、U字回復というところでしょうか。つまり、ナベ底を這うように、景気がなかなか上向かないという状態が続くということです。もちろん、このように景気回復への足取りが重くなる最大の要因が、ユーロ危機にあるのは、言うまでもありません。

では、どうやったらユーロ危機による景気低迷から脱することができるのでしょうか。残念ながら、現時点においてもなかなか有効な処方箋を描くことができないというのが現実です。

ユーロ危機から脱するために考えられる処方箋としては、第一に、ECBがイタリアやスペインなど、財政危機に陥りそうな国の国債を購入し、金利が急騰するのを抑えること。第二に、ドイツやフランスなどの主要国が、EFSFにもっと資金を提供し、十分な流動性を確保すること、などが考えられますが、いずれの方法も、現時点においてはなかなか実現に移すことができません。

結局のところ、ドイツがどこまで妥協できるのかということに尽きるのですが、ドイツ国内の世論がこの手の救済措置に対して猛反対しているだけに、実現させるにしても、相当の時間を要します。加えて、リーマンショックの時は、世界中の先進国が積極的に財政を出動させて、世界経済が危機に陥ることを防ごうとしましたが、今回は各国とも財政赤字に苦しんでいるなかで生じている危機なので、積極的な財政出動によって危機を乗り切るという手が使えません。

このように、ユーロ危機から脱する糸口が見当たらない以上、2012年中に米国経済が急回復するという可能性は、ほとんどないと見るのが妥当でしょう。米国自体、財政赤字がかなりの水準にまでのぼり、金融政策もやりつくしています。QEIIIが行われるかどうかということについても、ユーロ危機がさらに悪化して、米国経済に深刻な影響が及ぶという事態になれば行われる可能性はありますが、これまで行われた量的金融緩和が、実体経済にプラスの効果をもたらすという結果が見えてこなかっただけに、よほどの事がなければ、QEIIIには踏み切らないと思います。

ただ、ひとつだけ言えるのは、前述したように、米国経済がさらにここから落ち込むリスクはないということです。2%の成長率が1%に落ちることはあっても、マイナス成長にはならないでしょう。

したがって、2012年の米国経済は落ち込みが一段落しつつも、そのまま底ばいが続く展開になると見ています。


Fanet MoneyLife(掲載日:2012年01月05日)


プロフィール
五十嵐 敬喜(いがらし たかのぶ)三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員 調査本部長

経歴

昭和51年 京都大学経済学部卒、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行
昭和53年 同行調査部 エコノミスト
昭和56年 経済企画庁に出向(2年間)
昭和61年 バンカーストラスト銀行(ニューヨーク)に出向 客員エコノミスト
平成元年 三和銀行資金証券為替部 マーケットエコノミスト
平成14年 UFJ総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)調査部長
テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」にレギュラーコメンテーターとして出演のほか、新聞・雑誌等へのレポート、コメント掲載等も多数。
 
   
    

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