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欧州ドイツ経済 足元は3%成長だが、ユーロ危機の影響は否めない -株365

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FX・CFD [経済の達人に聞く「2012年世界経済の行方」]

【第2回】(欧州ドイツ経済)ニッセイ基礎研究所 主任研究員 伊藤さゆり氏

足元は3%成長だが、ユーロ危機の影響は否めない

ドイツ経済の現状をどう見る?

伊藤さゆり氏
ニッセイ基礎研究所 主任研究員
伊藤さゆり氏

伊藤氏:

2010年のドイツ経済はリーマンショックという金融危機からの急回復を遂げ、3.7%という高い成長率を記録しました。この流れは2011年前半まで続いていたので、2011年全体で見ても、ドイツの経済成長率は3%前後を達成できると思います。

ドイツ経済の現状は、決して悪くありません。さまざまな経済指標を見ても、今のドイツ経済は、リーマンショック前の水準を上回るまで回復しています。なかでも注目されるのは失業率で、東西ドイツ統一以来の低水準を記録したということです。ユーロが誕生した1999年当時は、より安価な労働力を求めて、ドイツから工場が海外に移転し、ドイツ国内の雇用情勢は厳しくなるなどと言われていましたが、労働市場改革の進展とユーロ安を通じた価格競争力の強化が進んだため、足もとは極めて堅調です。雇用情勢が良いということは、それだけ家計が潤っており、個人消費拡大の下地が整っていることを意味します。

一方、企業サイドはどうかというと、こちらも順調な回復を遂げてきました。その結果、設備の稼働率も長期平均を上回る水準で、基本スタンスとして設備投資に前向きです。

ただ、当然のことながら夏場以降の環境変化はドイツ経済にも影響を及ぼしており、足元の景気は減速傾向にあります。たとえば先行性の高い経済指標である「IFO企業景況感指数」を見ると、「現状判断指数」については悪化しながらも、非常に高い水準を保っているのですが、6カ月先の景況感を示す「見通し指数」は大きく悪化しています。このことはドイツの製造業を中心にユーロ危機の影響に対する懸念が強まっていることを意味します。足元はまだ底堅さがあるものの、先行きの不透明感が強まっているというのが、ドイツ経済の現状です。

図版1
図版2

2012年の注目材料は?

伊藤氏:

ユーロ圏のなかでも独り勝ちのイメージが強いドイツですが、このままユーロ危機が深刻な状態になったら、やはり厳しい状況に追い込まれることになります。足元は堅調な雇用と設備投資という国内サポート要因があるので、年間でマイナス成長に陥るリスクは高くはありませんが、それにはユーロ危機がこれ以上拡大しないという条件が必要です。

では、ユーロ危機を拡大させないようにするためには、どうすれば良いのでしょうか。それには大きく3つのファクターが考えられます。

第一に、現状、財政危機に陥っているギリシャなどの国々が責任を持って財政と構造改革を実行し、実際に効果を上げること。

第二は、そうは言っても財政危機国だけで今の厳しい状況を乗り切るのは難しいので、ユーロ圏の危機対応の枠組みである欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を強化すること。この枠組みには、金融システム危機や財政危機を未然に防ぐという目的があるのは、言うまでもありません。

第三は、ECBがより機動的な政策対応を行っていくことです。金融機関への資金供給という面でも国債購入という面でも、現状、ECBが果たしている役割は非常に大きいのですが、それはユーロ圏の政府のレベルでの危機対応が規模の面でも機能の面でも不十分であることの裏返しでもあります。言わば、ECBにしわ寄せが行っているのですが、EFSFが危機拡大を防ぐ「防火壁」としてきちんと機能するようになるまでは、ECBが機動的な政策対応を取っていくことは必要です。

この3つの条件が揃えば、ユーロ危機が今以上に深刻な状態に追い込まれることはないと考えています。うち、第二、第三のファクター実現のカギは実はドイツが握っていますが、基本的にドイツは、第一のファクターを重視する立場で、第二、第三のファクターに対しては、非常に慎重な姿勢を見せています。

たとえば第二のファクターでは、各国政府が共同でユーロ共同債を発行し、資金調達を1本化するという提案が出されていますが、ユーロ圏の財政規律が徹底されていない現状では、ドイツがこれに賛同する可能性は非常に低いでしょう。またユーロ共同債以外には、EFSFを銀行にして、ECBの資金を機動的に使えるようにするというアイデアも出されていますが、これを行うと、中央銀行の信認低下、物価安定を脅かす恐れがあるということで、やはりドイツは反対しています。また第三のファクターであるECB自身の政策対応についても、特に国債買い入れに、ドイツは極めて消極的な姿勢を取っています。

ただ、このようにユーロ危機が深刻化しているなかで、ドイツがいつまでも、すべての提案に対してノーを言い続けられるのかというと、それはないだろうと見ています。というのも、このままドイツがあらゆる提案にノーを突きつけていたら、何の政策対応も進まないまま、ユーロ危機が今以上に深刻化し、ユーロ崩壊の懸念を一層煽りかねません。

それを考えると、財政規律の強化というドイツの主張を他国に受け入れさせる見返りとして、ドイツも危機対応能力強化の面で何らかの譲歩をするのではないでしょうか。その結果として、先ほど述べた3つのファクターが揃ってくるというのが、現状のメインシナリオです。

ユーロ危機が深刻化すれば、それだけドイツ経済にはネガティブな影響が及んできますから、2012年のドイツ経済を見る場合は、ユーロ危機がどこまで拡散していくのか、そしてそれを食い止めるための対応策はしっかりと講じられるのかどうかという点が、注目点になります。

ずばり、2012年のドイツ経済はどうなる?

伊藤さゆり氏

伊藤氏:

ドイツ経済は2011年10~12月期から徐々に悪化の兆しを見せていますが、恐らく2012年の初頭は停滞感が一層強まりそうです。何しろドイツは輸出を成長の原動力としていますから、ユーロ危機の拡大で、ユーロ圏に属している国々の景気が低迷し、その影響が域外にも及ぶような状況では、ドイツの輸出は伸び悩み、成長のペースも抑制されざるを得ません。

ただ、前述したように、比較的堅調な雇用と設備投資への意欲が下支え要因になりますから、大幅なマイナス成長が数四半期にわたり続くといったようなことはありませんし、他のユーロ加盟国と比較すれば、ドイツが引き続き強いポジションにいることも確かです。

2011年11月には、ドイツ国債の入札で札割れが起こるという事態が生じ、金融市場においても緊張が走りましたが、これはあくまでもユーロ危機の余波であり、ドイツそのものが財政面で厳しい状況にあるわけではありません。ユーロ加盟国のなかで、ドイツは相対的に安全な国なので、今後もドイツへの資金流入が止まるという恐れはありませんし、ドイツ国債の札割れをきっかけにして、いよいよドイツも追加対策に本腰を入れる必要があるという認識に切り替わっていけば、今後も札割れが続くような事態にはならないでしょう。

ユーロ危機を解決するためには、市場関係者の不安心理を取り除くことが、何よりも求められます。2012年上半期のうちにEFSFの強化などが達成されれば、ユーロ圏の危機対応能力は向上しますから、危機の拡大に歯止めが掛かり始めるでしょう。

2012年の半ばから後半にかけては、先行き不安の緩和と域外経済の回復でユーロ圏の経済も徐々に持ち直す見込みです。ドイツ経済も2012年前半の一時的な停滞局面を経て、年後半には再び回復に向かい始めると考えています。

Fanet MoneyLife(掲載日:2012年01月05日)


プロフィール
伊藤さゆり(いとう さゆり)ニッセイ基礎研究所・主任研究員

経歴

1987年 日本興業銀行入行。
2001年 ニッセイ基礎研究所入社。
2003年~ 現職。
著書
『 現代ヨーロッパ経済論 』 (部分執筆) ミネルヴァ書房 2011年 、『 現代の金融 -世界の中の日本 』 (部分執筆) 昭和堂 2009年

 
   
    

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