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日本経済 日本のデフレは終わらない 一段の金融緩和が必要 -株365

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FX・CFD [経済の達人に聞く「2012年世界経済の行方」]

【第3回】(日本経済)学習院大学 経済学部教授 岩田規久男氏

日本のデフレは終わらない 一段の金融緩和が必要

日本経済の現状をどう見る?

学習院大学経済学部教授  岩田規久男氏
学習院大学経済学部教授
岩田規久男氏

岩田氏:

現在の円ドル・レートは、1ドル=77円前後ですが、2005~2006年の為替レートは、1ドル=112~119円前後で推移していましたから、円ドル・レートで見ると超円高です。しかし、実質実効為替レートで見ると2005~2006年と同水準だから、円高ではないという主張があります。

ただ、当時と比べてひとつ大きく異なる点があります。それは交易条件です。交易条件とは、輸出物価を輸入物価で割ったものですから、たとえば自動車を1台輸出した時に、どれだけ石油を輸入できるかという概念です。交易条件が低下しているということは、輸出物価が輸入物価に対して下落しているわけですから、より多くのお金を出さないと、海外から石油などの自然資源を輸入できない、ということになります。つまり、輸出産業にとっては、非常苦しい状況に追い込まれるわけです。

確かに、今の実質実効為替レートは2005年のそれと比べて大差ないのですが、問題は交易条件です。2005年と比べて3割くらい低下しているのです。原油価格など、海外から輸入されるものの物価は、円高によって安くなるのですが、それ以上のペースで円建ての輸出物価が下落しているのです。円高が進むということは、たとえば同じ1万ドルの製品を輸出した場合、受け取った代金の円建て価格が値下がりすることを意味します。この値下がりを防ぐためには、ドルベースの輸出価格を引き上げなければならないのですが、たとえば自動車などは韓国メーカーなどとの競争が激しいため、なかなかドルベースの価格を上げることができません。結果的に、円ベースの輸出物価は下がるしかないのです。

したがって、2005年時点と同水準の輸出採算にするためには、現在の為替レートに比べて3割くらい円安が進まなければなりません。現在の円ドル・レートが1ドル=77円だとしたら、1ドル=100円台がその水準になります。本来、あるべき為替水準を大幅に超えた円高が続いている以上、国内の輸出産業の業績が悪化するのは当然のことです。

しかも、円高による採算悪化の問題は、輸出産業だけの話ではありません。自動車メーカーや家電メーカーをはじめとする輸出産業の業績が悪化すると、これら輸出産業にサービスを供給している非輸出産業の業績も厳しくなり、外需だけでなく内需も冷え込んでしまいます。

今の日本経済は、超円高の放置によって、どんどん悪化の一途をたどっているのです。


2012年の注目材料は?

岩田氏:

基本的に、デフレを止めることができれば、円高からも脱出できるはずです。

そのために必要なことは、政策の転換です。つまり、日本銀行が思い切った量的金融緩和に踏み切ることができるかどうか、という点にかかっています。

金融を大幅に緩和すれば、景気は確実に立ち直ります。これは、リーマンショック後の米国経済を見ても明らかです。米国の失業率が、2011年10月まで9%台で高止まりしていたため、金融緩和の効果がないなどとも言われましたが、決してそのようなことはありません。リーマンショックの直後から、米国は非常に思い切った金融緩和を実施しました。米国の実質経済成長率は、リーマンショックが発生した2008年第3四半期には-2.7%になり、以後-5.4%、-6.4%、-0.7%と四半期連続でマイナス成長を記録しましたが、2009年第3四半期には2.2%のプラスに転じています。

ちなみに1929年の大恐慌の時、米国の実質GDPは3割も落ち込み、それが恐慌前の水準に戻るまでに7年もの期間を要しました。リーマンショックは、この大恐慌以来の経済ショックと言われますが、マイナス幅はこの程度に抑えられ、かつ実質GDPが1年後にリーマン・ショック前の水準に戻ることができたのは、思い切った金融緩和が行われたからです。2011年11月の失業率は8.5%まで低下しましたが、この数字が再び上昇するなど、雇用環境が明らかに悪化したり、あるいは雇用者数が増えないという状況になったりしたら、FRBはQEIIIに踏み切るはずです。

問題は、米国がQEIIIに踏み切った時、日銀が今と同じようなスタンスで、金融緩和を頑なに拒んでいるようだと、間違いなく現在以上の円高が急伸するということです。1ドル=70円割れもあり得るでしょう。もしそこまで円高が進んだら、ただでさえ苦しい日本の輸出企業は、壊滅的なダメージを受けることになります。円高恐慌に陥るリスクも十分に考えられます。

円高恐慌に陥るリスクを回避するためには、前述したように、日銀が金融政策の方針を転換し、今以上に積極的な量的金融緩和に踏み切る必要があります。それを渋っている限り、日本経済にはいつまでもデフレと円高圧力がかかり、経済の立ち直りはどんどん先送りされるでしょう。

ずばり、2012年の日本経済はどうなる?

学習院大学経済学部教授  岩田規久男氏

岩田氏:

正直、日本経済は非常に厳しい状況に追い込まれるのではないかと考えています。

第一の理由は、日銀がなかなか量的金融緩和に踏み切らないからです。なぜ日銀は金融緩和に踏み切ろうとしないのでしょうか。それは、日銀が、1980年代に行った量的金融緩和がバブル経済を醸成し、その崩壊によって、現在も続く長期停滞の原因になったと、考えているからです。

そのため、日銀は極度にバブルを警戒するようになっています。速水総裁や福井総裁時代の日銀の金融政策を見ていると、日経平均株価が1万6000円程度に達するところでバブル警戒感が浮上し、ゼロ金利政策の解除など金融引締めに転じるパターンが見られたのですが、今の日経平均株価は8,000円前後です。これだけ株価が下げているのに、それでもなおバブルを警戒して量的金融緩和を行わないというのは、明らかに異常です。ここまで頑なに金融緩和を拒むスタンスを見ていると、どうも日銀内部では、量的金融緩和によってバブルを招くくらいなら、デフレのままでいた方が良いという考え方が蔓延しているとしか思えません。日銀が量的金融緩和に転じない限り、2012年の日本経済は、現状よりももう一段の悪化を見ることになると思います。

第二の理由は、増税問題です。これから本格的に復興需要が出てくるので、それが日本経済を押し上げる力になると期待する声もありますが、その効果はほとんどないと言っても良いでしょう。なぜなら、増税が控えているからです。近い将来、税金が重くなることが分かっていながら、消費をどんどん増やすことなど、考えられません。せっかくの復興需要による景気押し上げ効果も、増税によって相殺されてしまいます。

もちろん、今の日本の財政赤字を考えれば、少しでも早く財政再建に踏み切りたくなる気持ちも分からないではありません。でも、現在のように景気が低迷している時に財政再建を急ぐと、景気にとっては逆効果をもたらします。それよりも、まずはデフレに歯止めをかけ、景気を回復させることで名目GDPを増やしていく政策を取る必要があります。名目GDPが成長すれば、税収の自然増が見込めるため、財政赤字の削減にもつながります。

加えて、第三の理由として外部要因の問題があります。米国がQEIIIに踏み切ることで円高が急伸し、それが日本経済に及ぼす影響も懸念されますが、目下、最大の関心事は、ユーロ問題です。今後、イタリア国債の売りが急増した時、欧州金融安定基金(EFSF)だけで買い支えるのは無理ですし、欧州中央銀行(ECB)がどんどんお札を刷って流動性を維持しようとしても、それについてはドイツが反対しています。したがって、ECBも動きにくい状況にあります。

その一方で、財政再建のための緊縮財政が取られますから、財政による景気の下支え効果も期待できませんし、金融緩和にも限界があります。現時点で、ユーロ問題は出口なしの様相を呈しています。

こうした国内外の要因を反映して、2012年の日本経済は、極めて厳しい状況に追い込まれることになるでしょう。そして、繰り返しになりますが、日本がデフレから脱却するためには、日銀が量的金融緩和に踏み切れば済む話です。逆に、デフレを止めようともしない中央銀行には、辞めてもらいたいということを最後に付け加えておきたいと思います。


Fanet MoneyLife(掲載日:2012年01月05日)


プロフィール
岩田規久男(いわた きくお)学習院大学経済学部教授

経歴

1966年 東京大学経済学部卒業
1973年 同大学院経済学研究科博士課程修了
<研究分野>
金融、都市経済学、日本経済論
<主要業績>
(1)『企業金融の理論』(共著)日本経済新聞社、1973年
(2)『土地と住宅の経済学』日本経済新聞社、1977年
(3)『日本経済研究』(編著)東京大学出版会、1988年
(4)『ストック経済の構造』岩波書店、1992年
(5)『都市と土地の理論』(共著)ぎょうせい、1992年
(6)『金融入門』岩波書店、1993年
(7)『金融政策の経済学―「日銀理論」の検証』日本経済新聞社、1993年
(8)『土地税制の理論と実証』(共著)東洋経済新報社、1993年
(9)『国際金融入門』岩波書店、1995年
(10)『日本経済の神話』日本経済新聞社、1995年
(11)『金融法延』日本経済新聞社、1997年
<学外での活動>
総務庁「規制緩和委員会」
都市計画中央審議会基本政策部会土地利用計画委員会委員
大蔵省「市場の変貌と今後の展望に関する研究会」
 
   
    

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