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中国経済 サスティナブルな成長を維持できるかどうかが中国経済のポイント -株365

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FX・CFD [経済の達人に聞く「2012年世界経済の行方」]

【第5回】(中国経済)富士通総合研究所主席研究員 柯 隆氏

サスティナブルな成長を維持できるかどうかが中国経済のポイント

中国経済の現状をどう見る?

富士通総合研究所主席研究員  柯 隆氏
富士通総合研究所主席研究員
柯 隆氏

柯氏:

ユーロ債務危機の問題は、中国にとっても対岸の火事ではありません。それはユーロという通貨の信認問題というよりも、ユーロゾーン、つまりユーロ経済圏の成長率の問題です。仮にユーロ経済圏が2012年にマイナス成長ということになれば、中国経済も痛手を被ることになるでしょう。というのも、中国にとってユーロ経済圏はお得意様だからです。中国の貿易相手としてユーロ経済圏は、米国に比べても規模が大きいだけに、ユーロ債務危機によってユーロ経済圏の成長率が低下、もしくはマイナス成長になったら、中国経済にも悪影響が及ぶことになるのです。

したがって、中国はユーロ債務危機をこれ以上深刻なものにしないためにも、さまざまな形で支援することになるでしょう。何しろ、中国は外貨準備世界一の国ですから、SWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)で運用している外貨準備の一部を使って、たとえば価格が暴落しているイタリア国債を買い支えることなど簡単に出来てしまいます。どのような形になるかは何とも言えませんが、さまざまな側面で中国がユーロの支援に動くのは、ほぼ間違いのないところだろうと見ています。

ただ、そのためには、いくつかの政治的駆け引きが行われるのも事実です。恐らく中国は、ユーロ債務危機を支援するため、2つの条件をユーロ経済圏に提示してくるでしょう。

第一に、中国から欧州への武器輸出解禁。第二に、欧州各国が中国経済を資本主義経済であると認めること。この2つの条件を呑むならば、中国は積極的に、ユーロ債務危機の脱却を支援するべく、資金の援助を行うはずです。

もちろん、こうした中国からユーロ経済圏に提示される条件を、米国や日本がそう簡単に容認するはずがありません。もしユーロ経済圏が、この2つの条件を受け入れるという動きを見せたら、たちまちのうちに、政治的介入を行ってくるでしょう。

でも、そうなったら、今度は「それなら中国の代わりに、米国や日本がどこまで資金的な援助をしてくれるのですか?」ということになります。米国にしても日本にしても、今のユーロ経済圏が抱えている債務問題を十分に引き受けられるだけの資金力は、持ち合わせていないでしょう。

それに、ユーロ経済圏にとって中国はビッグビジネスを行うための魅力的なマーケットでもあります。この資金援助を機に、中国経済と欧州経済の結び付きを強めたいという狙いもあるはずです。今や世界経済は、国と国との戦いではなく、地域同士の戦いになってきています。だからこそ、TPPをはじめとするさまざまな貿易協定が締結されているのです。実際、TPPなどは米国を主軸とした中国包囲網のひとつです。この動きを見れば、中国が欧州とお近づきになろうと考えるのも、当然のことです。

現状、中国経済はユーロ債務危機という非常に大きな問題の影響を受けて、経済の成長率が低下する恐れを抱えてはいますが、2012年には積極的な支援に動き出す可能性もありますから、それが経済の成長スピードをどこまで下支えるかという点が、注目されます。


中国経済にとって、2012年の注目材料は?

柯 隆氏

柯氏:

まず、2012年は中国にとって政治の年になるということです。

これまで8年間にわたって政権を握ってきた胡錦濤国家主席、温家宝首相というトップ2人が引退し、代わりに習近平(しゅうきんぺい)が国家主席になる予定ですが、首相の任命権は国家主席ではなく中国共産党の長老が選ぶことになっています。

したがって、中国共産党の長老が誰を首相に選ぶのかによって、これから先の中国の政治・経済運営がスムーズに運ぶのかどうかが決まってきます。少なくとも、李克強(りこっきょう)が首相に選ばれたら、習近平とは派閥が異なるので、政策運営などで苦労することになりそうです。

また、それと同時にこれまで8年間にわたって政権を握ってきた胡錦濤国家主席、温家宝首相の総括が必要でしょう。この8年間、社会的な大混乱こそ起こらずに済みましたが、本来であれば改革するべきことに何も着手して来なかったのも事実です。次期指導者が誰になるにしても、前任者が着手しなかった改革をきちっと行っていくべきでしょう。

具体的には、国有企業、国営銀行の民営化と、政治改革です。政治改革については、やはり現在の厳しい情報統制をいくばくかでも緩和していく必要があるでしょう。ユーロ経済圏への支援によって、中国が少なくともユーロ経済圏に、自国経済を資本主義であると認めさせたいのであればこうした改革には、速やかに着手していくべきです。

また、こうした改革と同時に金利自由化を進めていく必要もあるのですが、残念ながら金利自由化については、中国共産党が認めたがりません。というのも、金利が自由化されれば、国営銀行の貸出金利と預金金利の間にある300ベーシスもの利ザヤが縮小してしまうからです。国営銀行は、中国共産党にとって第二の財政ともいうべき存在ですから、ここに手が入り自分たちの既得権益が侵されることを恐れています。

ただ、将来的に人民元の自由化、国際化を進めていくのであれば金利の自由化は必要不可欠です。2012年に登場する次期指導者は、中国経済の成長を維持していくためにも改革と自由化をきちっと推し進めていく必要があります。

ずばり、2012年の中国経済はどうなる?

柯氏:

まず経済成長率ですが、多少のスローダウンは仕方のないことだと考えています。

2010年までは北京オリンピックや上海万博など国際イベントが目白押しだったので、いわゆるイベントエコノミーということで非常に高い経済成長率が実現しました。10%台という高い成長率を謳歌してきたわけですが、2011年はその効果も完全に消え、しばらく成長スピードはスローダウンします。

何しろイベントエコノミーの段階では、施設などの過剰投資が行われるので、イベントが終わると、しばらく経済は停滞気味になるのです。したがって、2011年以降は中国経済も落ち着きを取り戻し、巡航速度に戻るでしょう。成長率で見ると、2011年は9.2%成長といったところでしょうか。

そして、2012年はユーロ債務危機問題の影響インドなどその他の新興国の成長率ダウンなどを受けて、中国経済も多少スローダウンします。成長率で言うと、8.5%成長といったところでしょう。

でも、それでも十分だと私は考えています。確かに、かつての10%成長からすれば、8.5%という成長率は何となくピークアウトしたという印象を受けると思いますが、それでも世界的に見ればトップクラスの成長率です。したがって中国は、このトップクラスの成長率をしっかり維持していく必要があります。

そのためには、この成長をよりサスティナブルなものにするために、何が出来るのかということをしっかりと考えて、政策に反映させていく必要があります。

特に、これまでの30年間にわたる高い成長率は、自由化のインセンティブを享受したためでもあります。したがって、前述したようにこれからも自由化を推し進めていくための政策をしっかり行っていく必要があります。

それと同時に、中国経済は自由化の恩恵でパイが非常に大きくなりましたが、同時に所得格差という深刻な問題を抱えるようになりました。これがチャイナリスクのひとつと考えられています。したがって、これからはフェアな所得配分が行われるようなメカニズムをどのように導入していくかということも、問われてくるでしょう。

このように、いくつかの問題点はありますが中国が世界で最も経済成長率の高い国であるという事実は、2012年も続くことになりそうです。


Fanet MoneyLife(掲載日:2012年01月31日)


プロフィール
柯 隆(かりゅう)富士通総研経済研究所 主席研究員

経歴

1992年 愛知大学法経学部卒業
1994年 名古屋大学大学院経済学修士
1994年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年 富士通総研経済研究所主任研究員
2005年 同上席主任研究員
2007年 同主席研究員
【主な著書】
2010年中国経済攻略のカギ PHP研究所『Voice』編集部 2010年1月
華人経済師のみた中国の実力 日本経済新聞出版社 2009年5月 共著(朱炎、金堅敏)
中国の不良債権問題 日本経済新聞出版社 2007年9月
中国の統治能力 慶應義塾大学出版会 2006年9月
中国に出るか座して淘汰を待つか! 中経出版 2002年3月
最新中国経済入門(共著) 東洋経済新報社
 
   
    

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