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イギリス経済 ユーロと中途半端なカップリング状態にある英国経済は厳しい状況に -株365

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FX・CFD [経済の達人に聞く「2012年世界経済の行方」]

【第6回】イギリス経済 同志社大学大学院 教授 浜矩子氏

ユーロと中途半端なカップリング状態にある英国経済は厳しい状況に

イギリス経済の現状をどう見る?

同志社大学大学院教授   浜矩子氏
同志社大学大学院教授 
浜矩子氏

浜氏:

イギリスはユーロ経済圏に対して一定の距離を保ち、通貨政策、金融政策の自由度を維持してきました。そのことがイギリス経済に一定の底力を与えて来たことは事実です。金融立国化の行き過ぎや過度のロンドン一極集中問題が課題ですが、少なくとも、独自の政策運営は出来てきた。

しかし、今のようにユーロが非常に厳しい状況に陥ると実際には決してユーロと一定の距離を維持できていたわけではないということが、見えてきました。つまり、ユーロ経済の低迷による悪影響が、着実にイギリス経済にも及んできたのです。

目下、イギリスの製造業は極めて厳しい状況下にあります。恐らく、2012年のユーロ経済は、非常に低い成長率かもしくはマイナス成長を余儀なくされますが、それによってイギリスの対ユーロビジネスは大きく落ち込んでしまうでしょう。

日本やドイツ、アジア各国などとは違い、イギリスの製造業には目玉となるようなビジネスは存在していません。自動車産業も、すでに海外資本に買収されており純粋にイギリス資本の自動車メーカーは、1社も存在していません。そのような状態ですから、経済の地力は、非常に弱くなっています。

そのうえ、今のイギリスはリーマンショックから立ち直るために積極的な財政出動を行ったツケが回ってきており、多額の財政赤字を抱えています。これを何とかして削減するのがキャメロン政権の使命ではあるのですが、ただでさえ景気が悪いなかで財政再建を行おうとすれば、景気は着実に悪化します。つまり現在のイギリス経済は、ユーロ債務危機と自国の財政危機という2つの問題を抱えた状態ですから、当然、2012年において大きな経済成長など、期待できるはずがありません。

確かに、イギリスはユーロと別の経済なので金融政策も通貨政策も独自路線を取ることができます。たとえばユーロ経済圏で利上げを行ったとしても、イギリスは利下げを行うことで、景気刺激策を講じることができるのです。もちろん、数少ないイギリスの製造業にとって有利なように、ポンド安政策を取ることも可能です。

その意味では確かにイギリスの政策的余地は広いのですが、問題は、実体経済のマーケットとして、ユーロ経済圏が存在しているということです。いくら金融政策や通貨政策の自由度は確保していたとしても、ユーロ経済圏に輸出の大半を依存している状態では、当然イギリス経済もユーロ圏経済の動向に引っ張られることになります。現状のイギリス経済は、ディカップリングが出来そうで出来ないという現状にもがき苦しんでいるのです。


2012年の注目材料は?

浜矩子氏

浜氏:

一番大きな注目材料は、前述したようにユーロ経済圏の動向でしょう。金融バブルの効果がはげ落ちた今、ユーロ圏から大きなデフレ圧力が波及して来ることになれば、イギリス経済も打撃を受けることは必至でしょう。ユーロ経済が2012年中にも回復路線をたどるようなことになれば、それに伴ってイギリス経済も回復局面へと向かうでしょう。

ただ、ユーロ経済が2012年に回復路線をたどるかというと、それははなはだ疑問です。というのも、ユーロが抱えている本質的な問題を解決することは、非常に難しいからです。

仮に、財政規律強化策の一環として、今想定されているように、過大赤字国罰金という形の制裁措置を講じるということになると、ただでさえ財政状況の厳しい国に対して、さらに大きな負荷をかかることになります。つまり現実的な解決方法ではありません。

結局は財政統合に踏み切らざるをえないだろうという議論もあります。しかしながら、それはいずれの国も嫌がっている。財政黒字国は、赤字国への恒常的な所得移転を強いられることを容認し難い。赤字国は上記のように財政規律のタガで厳しくしばられることが窮屈だ。こうような状況で、黒字国にとっても赤字国にとっても財政統合は天敵なわけです。

財政を統合したら、その時点で国としての政策主権は失われたのも同然になります。それを果たして、多くの国の国民が受け入れられるでしょうか。

したがって、ユーロ問題を本質的に解決するのは、少なくとも2012年中には不可能でありそれにともなってイギリス経済も極めて厳しい状況に追い込まれます。

2つめの注目材料は製造業の行方ですが、これについては、前述したように現状でイギリス経済の裾野を幅広く潤せるような製造業は存在していません。せいぜい兵器関係くらいでしょうか。80年代は、バブル経済と日本製造業の進出によって一時的にイギリスにも大型の加工組立産業が拠点を持ちましたが、今はそのほとんどが撤退しており、イギリスには大型組立産業がほとんど存在していません。

こうなると、3つめの注目材料として、金融街シティの浮沈がクローズアップされてきます。結局は、またしても、シティを中心とした金融部門がどこまでイギリス経済全体をけん引することができるのかということが焦点になっていうわけです。何時まで経っても、なかなか、一極集的金融依存体質が抜けないイギリス経済です。

ただ、シティが世界の金融の中心地であり続けるためには、非常に高いハードルをクリアしなければなりません。というのも、ユーロの登場によって、欧州金融の中心地がフランクフルトに移る可能性を、常に意識しなければならないからです。もし、シティに何らかの規制が入り、企業が資金調達を行ううえで使い勝手の悪い市場だという認識が広まったらとたんにシティは没落してしまうからです。

したがって、シティはユーロ救済の枠組みから距離を置いたところで、常に自由度の高い運営が行えるという独自路線を貫いていく必要があります。それが可能であれば、シティは再び世界の金融の中心地としての地位を築きその効果でイギリス経済も当面、安泰になる余地が生まれます。

ただ、イギリスが金融立国を目指せば目指すほど、イギリスの地方経済はどんどん衰退していくでしょう。それでもシティの浮沈に依存しなければならないほど、イギリス全体の経済は疲弊しているのです。

ずばり、2012年のイギリス経済はどうなる?

浜氏:

経済成長率で言うと、せいぜい1%成長というところでしょう。それ以上は、期待できないと見ています。

株価的にも、非常に厳しい局面が続きそうですし何よりも今のイギリス経済には、何かをはやして経済を盛り上げる材料が、どこにもありません。

仮に、これからイギリス経済が復活を遂げていくとしたら、まずポンド安に期待するということでしょうか。さらにポンド安が進むということになれば、一時的にイギリス経済が回復する可能性が浮上してきます。

加えて、今や世界的に先進国の最後のバトルフィールドと呼ばれている「資源開発」、あるいは「大型のインフラ整備プロジェクト」などの分野で、いかにしてイギリス企業が食い込んでいけるのか、ということも、今後のイギリス経済復活のカギを握ってくるでしょう。

端的にいって、2012年のイギリス経済は前述したようにユーロ問題の影響を受けますから、非常に厳しい状態が続きます。こうしたなかでポンド安がどこまで進むのか、その間、資源開発や大型インフラ整備などでどこまでイギリス企業が世界進出できるのかによって、停滞から多少なりとも脱却できる光が見えてくる。そのような1年になるのではと見ています。


Fanet MoneyLife(掲載日:2012年01月31日)


プロフィール
浜 矩子(はま のりこ)同志社大学大学院教授

経歴

1975年に一橋大学経済学部を卒業し三菱総合研究所に入社。1990年渡英し、三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所所長兼駐在エコノミスト就任。 1998年に帰国、三菱総合研究所主席研究員・経済調査部長。2002 年秋より同志社大学大学院ビジネス研究科教授に就任。
 
   
    

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