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【第1回】中国版グリーンニューディール - 中国環境ビジネス ‐ 中国・アジア新興国特集 中国・アジア新興国特集 中国・アジア新興国特集

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中国・アジア新興国特集 [ 中国環境ビジネス ]

【第1回】

中国の環境政策―中国版グリーンニューディール

環境・エコビジネスといえば、真っ先に先進国に目が向いがちで、中国の環境をめぐる話題となると、大気汚染や、黄砂、食品汚染など問題点として議論されることが多く、政府の取り組みあるいはビジネスとしてのポテンシャルについて語られることは少ない。しかし実際、中国政府は環境問題に関して多くの対応策を講じており、ビジネスとしても環境・エコ産業はいま中国で新興産業として有望視されている。

深刻な中国の環境問題

【中国の交通渋滞事情】 北京市内

中国では、急速な経済成長、工業化と都市化の進展に伴い、さまざまな公害や環境問題が発生している。河川水系の70%が汚染されており、農村では3億人以上の飲料水が不合格である。自動車の普及、発電所や工場の増加は、エネルギー消費と大気汚染物質の排出量を増大させ、エネルギー源の約8割が石炭に依存していることは事態を深刻化している。

2007年時点で、中国の二酸化炭素(CO2)排出量は61億トンと、全世界(289億トン)の21%を占め、米国の57億トンを抜いて世界最大の排出国となった。二酸化硫黄(SO2)の排出量については、2006年に日本の約30倍の2,589万トンと、米国を上回る世界最大の排出国である。2004年時点の中国の重慶市、天津市の大気中の粒子状物質(PM10)濃度は、世界保健機関(WHO)の大気質指針値の5倍に当たる100μg/?を超え、北京89μg/?達している。

2007年の中国の一次エネルギー消費量は世界の16.8%を占め、米国に次ぐ世界第2位である。しかし、一人当たりエネルギー消費量は世界平均の2.38トン(石炭換算)の約6割の1.87トン(石炭換算)にとどまっており、中国のエネルギー消費量は今後も長い期間にわたって増え続ける見通しだ。

中国は先進国が1960~80年代に経験した公害など伝統的な環境問題だけでなく、省エネなど地球温暖化への対応といった新しい分野の課題にも直面しているのである。

資源節約型かつ環境にやさしい社会の構築を目指す「十一・五」計画

こうした汚染問題は、国民の健康を害するだけでなく、中国経済にも悪影響を及ぼす。世界銀行の2007年時点の推計によれば、中国の大気汚染と水質汚染のコストはそれぞれGDPの3.5%、8%にのぼる。中国政府は以前から環境対策を打ってきたが、1980~90年代を通して大きな成果が見られなかった。転機を迎えたのは、2002年11月の胡錦涛政権の発足以降で、従来の経済成長一辺倒の路線から、調和社会の構築という路線に転換したのである。

2006年3月に発表された第11次五カ年計画(2006~10年)の中で、中国政府は「持続可能な国民経済体系と資源節約型かつ環境にやさしい社会の構築」を掲げ、環境保全産業を中長期的に重点的に発展させる産業として位置付けた。そして5年間に①汚染処理と環境保全に1兆4,000億元を投資する、②単位GDP当たりのエネルギー消費量を20%、COD(化学的酸素要求量)とSO2を各10%削減する、②2010年時点の全国都市部の汚水処理率を70%以上、生活ゴミの無害化処理率を60%以上に改善する、などの数字目標を打ち出した。2008年時点で、CODとSO2は各6.6%、9.0%の減少になっており、この二つについては目標達成の可能性は高い。

2006年 3月 第11次五カ年計画(2006~2010年)
- 「資源節約型・環境にやさしい社会の構築」を掲げる
汚染処理と環境保全への投資: 1兆4000億ドル
- 単位GDP当たりエネルギー消費量の20%削減
- COD(化学的酸素要求量)、二酸化硫黄(SO2)の各10%削減
- 2010年時点の都市部汚水処理率70%以上
- 2001年時点の生活ゴミの無害化処理率60%以上
2007年 6月 「気候変動対策国家方案」の発表
「気候変動対応および省エネ・排出削減工作指導小組」の設置
9月 「再生可能エネルギー中長期発展計画」の発表
2008年 3月 「国家環境保護総局」の「環境保護部」への格上げ
4月 改正「省エネルギー法」の施行
11月 4兆元景気対策のうち省エネ・環境関連投資2,100億元
2009年 1月 「循環経済促進法」の施行
6月 「新エネルギー発展計画」制定中

公害対策から地球温暖化対策への広がり

2007年以降、中国の環境対策はさらに強化され、その中身も従来の公害等への対応を中心とするものから、省エネルギーや再生可能エネルギーなど地球温暖化への対応といった分野にまで広がっている。2007年6月に中国の最初の温暖化対策に関する国家計画である「気候変動対策国家方案」が発表されたのに続き、9月の「再生可能エネルギー中長期発展計画」では、総エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2005年の7.5%から、2010年までに10%、2020年までに15%に引き上げるなどの目標が盛り込まれた。また、2008年11月に発表された4兆元にのぼる景気対策のうち約2,100億元を省エネ・汚染物質排出削減、エコ・プロジェクトなどに投資するという。

各国の単位GDPのエネルギー消費量

さらに現在、中国政府は「新エネルギー発展計画」を起草しており、2020年の風力発電能力の目標を従来の3,000万キロワットから1~1.5億キロワットに、太陽光発電能力の目標を180万キロワットから1,000万キロワットに大幅に上方修正する予定である。

法制度と環境行政の整備も着々

環境関連の法整備も進んでいる。2008年4月1日に改正「省エネルギー法」が施行され、省エネ・排出削減に対する地方政府の責任を強化し、目標達成を促す。2009年1月1日施行の「循環経済促進法」は、省エネ、排出削減、リユース、リサイクル等の推進の法的根拠となった。行政面では、環境政策の推進を強化するため、2007年に温家宝首相をトップとする「気候変動対応および省エネ・排出削減工作指導小組」を設置し、2008年3月には「国家環境保護総局」を「環境保護部」に格上げし、「国家発展改革委員会」内に「気候変動対応司(=局)」を新設した。現在、中国の環境問題の主な担当省庁は、省エネなど気候変動の関連分野を管轄する国家発展改革委員会と、廃棄物処理や循環型社会形成に取り組む「環境保護部」の2機関で、このほか科学技術部と国家エネルギー局のかかわりも大きい。

環境対策とエコ商機のシナジー効果

これまでの中国の環境対策はなかなか徹底できず、目立った成果を上げられなかった。これは、環境問題への対応は、地域の経済発展が最優先課題である地方政府にとって負担であり、経済発展の一部を犠牲する必要があり、政策の徹底に消極的だということがある。最近の環境対策も過去の繰り返しになるのか、という疑念は残っている。

ただここ数年、環境対策と経済発展はもはや二律背反の関係でなくなりつつある。「十一五」計画をはじめとする最近の環境対策の内容からも分かるように、環境・エコは新興産業として中国で大きな可能性をもっている。中国が直面している環境問題の多様性と同じように、環境ビジネスも伝統的な公害問題に対処する汚染処理の装置や機械から、新エネルギーを作り出す設備などと需要は幅広い。日本環境省の平成16年3月時点の推計によると、アジア主要国の環境ビジネスの潜在市場規模は210~250億ドルで、そのうち中国が約半分を占め、2020年には全体で約1,340~1,640億ドルになる。環境対策が環境ビジネスを誘発し、環境ビジネスの成長が環境問題の改善につながり、経済が発展する、このような良い連鎖の生成に期待したい。

株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員/李 粹蓉
(掲載日:2010年02月04日)


プロフィール
株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員
李 粹蓉  り すいよう Ri Suiyo
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネジメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度財務省委嘱「中国研究会」委員。
 


 
   
    

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