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【第3回】外資優遇に一服感 ベトナム直接投資の知られざる現状 中国・アジア新興国特集

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中国・アジア新興国特集 [ ベトナムの素顔 成長力を読み解く  ]

【第3回】

外資優遇に一服感 ベトナム直接投資の知られざる現状

日本からベトナムへの直接投資は2008年上半期の9億米ドルをピークに、その一年後には、わずか1億米ドルにまで激減した。そこには、金融危機の影響で外国企業が新規の投資を見合わせたことに加え、前年にベトナム政府が大型の案件を相次ぎ許可したことへの反動や、外資優遇に対する政府の大幅な政策転換が影響したといわれている。
 ベトナムの成長力を読み解くシリーズ第3弾は、国際機関日本アセアンセンター投資部でベトナムはじめアセアン諸国の直接投資を支援促進する小貫朋子補佐官と阿部聡投資部長のおふたりに、ベトナム直接投資の最新情報と今後をうかがった。(取材協力:日本アセアンセンター投資部)


好調なはずのベトナム投資が8億ドルも急降下 その謎は?


日本アセアンセンター投資部 阿部聡投資部長と小貫朋子補佐官

2008年上半期の日本からベトナムへの海外直接投資(FDI)は、過去最高の約9億米ドルを記録した。しかし、世界金融危機のあおりを受け下半期には2億米ドルに、さらに2009年上半期には1億米ドルにまで落ち込んだ。この急転直下の原因を小貫さんにうかがったところ、「金融危機の影響に加え、2009年1月に実施された税改正(外国企業への優遇税制廃止)が響いた」と分析する。

現在ベトナムでは、国内外の別なく、企業に対して一律25%の法人税を課している。しかし、改正前のベトナムにおける法人税率は28%であった。一見、引き下げられたかのようにみえるが、実は工業団地に進出する外国資本の製造業に限り、この28%を15%に引き下げる優遇措置を実施してきたのである。さらなる呼び水として、利益計上から最初の3年間を免税、その後7年間は50%という減免措置もあった。これらの恩恵に授かることで、多くの日本企業がベトナム進出をはかってきたのである。

ところが、この改正により、ハイテク産業以外の製造業は優遇恩恵が適用されなくなった。その結果、一気に投資熱が下がったというわけだ。ちなみに改正直前となる2008年暮れには、他国がリーマンショックの激動にありながら「(旧税制の適用を目的に)駆け込み進出も少なくなかった(小貫さん)」という。2009年にみられたFDIの落ち込みは、そうした反動も一因しているのである。


タックスヘブンもベトナム投資 リゾート開発も活発化


外資によるリゾート開発が進む中部の都市ダナン

それでも2009年、ベトナムにおける海外直接投資の認可額は、日本円にして約214億円にのぼった。申請件数では米国がもっとも多く、次いでケイマン諸島やサモア、韓国と続く。とりわけ租税回避国からの流入が、ベトナムへの期待感を象徴する。

事業内容でみるとホテルやレストランが最大で、額にして約88億米ドル。次いで不動産(76億米ドル)、製造業・加工業(29億米ドル)の順になっている。日本からの直接投資でもっとも大きいのは製造業だが、流通などサービス分野での進出もめざましい。規制緩和も理由のひとつで、最近ではファミリーマートがホーチミン市内に一号店をオープンさせたことで大きな話題になった。さらに今後は「ベトナム国内向けの食品や飲料、医療器具などへの関心が高まっている」と小貫さんは語り、サービス分野での成長性を強調する。

全体的な傾向としては、「米国系、韓国系デベロッパーによる不動産投資が増えている(小貫さん)」のだそうで、日本からの不動産投資は若干後塵を拝している。

例えば、リゾート開発が進む中部の都市・ダナン。東西経済回廊の玄関港ダナンは、ベトナム新幹線開通後、フエやホイアンなど古都の世界文化遺産を一日で廻ることができる注目のエリアだ。そこが今、米国などの外国資本で大きく変容を遂げようとしている。海路・陸路に至便な土地への観光投資は、間違いなく活発化している。


期待されるベトナム直接投資の今後と課題


泰越や中越の国境付近には、菅笠(すげがさ、「ノン」と呼ぶ)姿のベトナム人が目立つという

不動産投資の伸びは、人件費にも如実に表れている。ベトナムの平均給与上昇率は、年々ウナギ昇りだ。2008年ベトナム人労働者の昇給率は16.5%で、特に「不動産や不動産開発の分野における人件費の高騰が顕著(小貫さん)」という。

しかし、成長の余地は果てしない。ベトナムには未だ部品や資材を供給する、いわば「裾野産業」が未成熟だ。部材の調達は、ほとんどが中国華南地区やタイからの輸入でまかなわれ、その多くが海上輸送である。

そうしたなかで注目される分野が、ロジスティクスだ。単なる物流や輸送という概念を超え、戦略的かつ最適化をはかるための取り組みにも期待が高まる。ベトナムに拠点を置く住商グローバル・ロジスティクスでは、泰越(バンコク-ハノイ間、約1600キロ)を3泊4日、中越(ハノイ-広州間、約1400キロ)を2泊3日の陸路で結ぶ。

ベトナム投資に課題は山積だ。税制など突然の制度改革や手続きの煩雑さ、インフラの未整備など、ベトナムのもつ不透明さに戸惑うひとも少なくない。しかし、それでもなお世界の投資意欲がそがれないのは、ベトナムという国、ベトナム人の秘めたる可能性にある。日本での新幹線開業のときを思い出してみてほしい。「あのとき日本も、世銀からの借入金で初の新幹線を導入した(阿部さん)」。時代は、舞台を変えて繰り返されているのである。


聞き手:千葉千枝子(掲載日:2010年02月18日)



プロフィール :千葉千枝子 Chieko Chiba
旅行作家。中央大学卒業後、富士銀行、シティバンクを経てJTB へ入社。96 年、有限会社を設立。旅と金融をテーマに、運輸・観光業全般の論評、執筆・講演活動を行う。著書に「JTB 旅をみがく現場力」(東洋経済新報社)など。今春より東京成徳短大で観光学講師に就任。
 


 
   
    

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