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【第8回】中国シフトへの反動か 強まる日本時代へのノスタルジー 中国・アジア新興国特集

 

中国・アジア新興国特集 [ 台湾 アジア一の親日国 ]

【第8回】

中国シフトへの反動か 強まる日本時代へのノスタルジー

公開されるや否や、歴史的な大ヒットとなった台湾映画がある。そのタイトルは『海角七號』。テーマとなったのは日本統治時代における日本人と台湾人のむくわれなかった恋だ。


社会現象になった映画


記念切手も発売

『海角七號』が公開されたのは2008年8月。有名な俳優が出演するというわけでもなく、田舎町を舞台にした地味な作品と思われていたのだが、いざ蓋を開けてみると口コミやネットを通じて一気に評判が広がり、最終的には興行収入5億3千万台湾ドル(約14億7千万円)という未曽有の数字を達成。台湾映画としては1位、外国映画を含めた歴代映画興行成績としてはタイタニックに次いで2位という記録を達成し社会現象ともなった。

舞台となった田舎町


にぎわうロケ地

映画の舞台となったのは台湾最南端の小さな町、恒春(へんちゅん)だ。戦前に福建省などから移民してきた本省人や南方系の原住民が住む典型的な田舎町であり、戦後に中国から渡ってきた国民党により公用語とされた北京語よりも、本省人が話す“台湾語”が幅をきかしており映画のセリフも大半が台湾語だ。また日本語を話すお年寄りも多く、セリフの端々に日本語も聞こえてくる。

その恒春を舞台に戦前の日本人教師と台湾人女学生、現代の日本人女性と都会で挫折した台湾人の若者というふたつのカップルを、日本人教師が書き、そして届かなかった恋文が時間を越えてつなぐというストーリーだ。映画の中では日本統治時代がノスタルジックに描かれており、そこに批判的な視点を感じることはほとんどない。約3万人の本省人が殺害されたと言う二二八事件(1947年)やその後40年続いた戒厳令が象徴するように、戦後の国民党政権による本省人への弾圧は実に過酷であり、その反動として戦前の日本統治時代が美化されやすいという傾向は以前から強いものの、この映画の大ヒットはそれだけでは説明できないだろう。

中国シフトへの反発か

理由の一つとして考えられるのは、現在の馬英九総統率いる国民党政権による、急激な中国シフトへの不安感だろう。2008年に政権を民進党より奪回して以来、現在の国民党政権は中国との経済的な結びつきの強化をハイスピードで進めている。 それに対する台湾人民衆の警戒感は日々強まっており、陳水扁前総統の汚職事件により支持率が急落した野党・民進党が地方選で予想以上の勝利をおさめてきている。6月26日には中国と台湾間の経済協力枠組み協定(ECFA・自由貿易協定(FTA)に相当)に反対する10万人規模のデモが開催され、その先頭に立ったのは独立派の象徴である李登輝前台湾総統だった。

台湾人の中国へ対する恐れは予想以上に強硬だ。その思いが日本統治時代の“ふるきよき時代”へのノスタルジーへと向かっているのかもしれない。映画の舞台となった恒春には毎日ロケ地めぐりの観光客が多数訪れているが、その大半が大学生や20代を中心とする若い世代だ。彼らの世代にとって日本は憧れの存在であり、中国への反動として日本への親しみがより強化される可能性は高い。それに対して日本がどう応えていくかが重要な課題であろう。


執筆:渡辺千晶(掲載日:2010年07月01日)



プロフィール :渡辺千晶 (Watanabe Chiaki)
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。外資系商社、証券会社等を経て、台湾観光情報サイト「旅々台北.com」の設立に関わる。台湾コンシェルジュとして、チャイナ エアラインHP、トラベルジャーナル、ガイドブック、雑誌などのメディアに、硬軟とりまぜた台湾情報を寄稿。地方自治体へ日本市場開拓のアドバイスも行う。
 


   
    

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