【第18回】分配金利回りの高いETF
ETF [ コラム ]
- 分配金利回りの高いETF
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2015年12月末現在、195本のETFが東京証券取引所に上場しています。このうち2015年に分配を実施したETFは117本でした。この117本の分配金利回りの分布を見ると、最も多かったのが1%以上2%未満のファンドで、55本ありました。次いで多かったのは2%以上3%未満のファンドで、その数は30本でした。一方、分配金利回りが3.0%超のETFは16本ありました。
(データ:東京証券取引所)
【分配金利回りが3%超のETF】
(データ:東京証券取引所 2015年12月末現在)
分配金利回りが3%を超えていた16本のETFを投資対象別に見ると、日本の株式に投資するタイプのETFが半分以上を占め、次いで外国債券と続きました。なお、日本株式に投資するタイプのETFのほとんどは業種別ETFでした。
(データ:東京証券取引所)
- ETFの分配金利回りとベンチマークの配当利回りとのかい離
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ETFは特定の株価指数や債券指数への連動を目指す商品なので、ETFの分配金利回りは、連動を目指す指数の配当利回りに近いものになると期待されます。ところが、2015年の分配金利回り実績において上位に位置する日本株式の業種別ETFの分配金利回りは、指数の配当利回りから大きく乖離しています。これは、ETFが配当を受け取る時期と、ETFが分配金を支払う時期の違いによる影響です。
例えば、2015年12月末時点で、分配金利回りが最も高かった野村アセットマネジメントの金価格連動型上場投資信託(「NEXT FUDNS 建設・資材(TOPIX-17)上場投信」(1619)の分配金利回りは12.36%でした。建設業の2015年12月末の業種別利回り(第一部・平均利回り)が1.60%だったのに比べて非常に高い利回りに見えます。なお、同ETFの2014年の分配金利回りは0.3%に過ぎませんでした。
この違いの原因の一つが配当の受取と分配金の払出しのタイミングの違いです。「NEXT FUDNS 建設・資材(TOPIX-17)上場投信」が組み入れている建設業や資材業の企業の決算の多くは3月末日に集中しています。したがって、同ETFは3月末日の保有株数に応じて、組入れている企業から配当を受け取ります。一方で、同ETFは、7月15日の受益権口数に応じて、分配金を払います。3月末に比べて7月15日の受益権口数が減少していれば、受け取った分配金は変わらないので、1口当たり分配金は押し上げられることになります。実際に、「NEXT FUDNS 建設・資材(TOPIX-17)上場投信」の2015年3月末時点の受益権口数は約465,000口でしたが、7月15日には49,994口にまで減少しています。分配可能額を465,000口で分けるか、49,994口で分けるかでは、大きな差が生じることになるわけです。
このように配当の受取と分配金の払出しのタイミングのずれによって、その間に受益権口数が変化した場合には、ベンチマークの配当利回りとETFの分配金利回りが大きく乖離することになります。受益権口数が減少し、分配金が押し上げられることを分配の濃縮化と呼び、一方、受益権口数が増加し、分配金が押し下げられることを分配の希薄化と呼びます。
- 相対的に高い利回りが期待できるETF
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分配金目的でETFに投資するといっても、濃縮化により高い分配金利回りを提供するETFを見つけるのはハードルの高い作業ですが、リート(不動産投資信託)を投資対象とするETFや新興国の債券を投資対象とするETFでは、相対的に高い分配金利回りが期待できます。また、高配当ETFと呼ばれる、高い配当利回りが期待できる株式に的を絞って投資するタイプのETFでも相対的に高い分配金利回りが期待できます。
- リートETF
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リートETFは、リート(不動産投資信託)に投資して、特定のリート指数への連動を目指すETFです。リートから受け取った分配金が、リートETFの投資家への分配金の原資になりますが、リートの分配金が相対的に高いため、リートETFの分配金利回りも高くなる傾向があります。例えば、J-REITの予想分配金利回りは次のグラフのように2%後半から8%程度で推移してきました。なお、リートETFには、日本のリート(J-REIT)に投資するタイプと海外のリートに投資するタイプのものがあります。
(データ:不動産証券化協会)
【東京証券取引所に上場しているリートETF】
(データ:東京証券取引所 2015年12月末現在)
- 外債ETF
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外国の債券に分散投資することで、特定の債券指数に連動した投資成果を目指すETFを一般に外債ETFと呼びます。2015年12月末日現在、6本の外債ETFが東京証券取引所に上場しています。外債に投資するETFでは、先進国に投資するファンドより新興国に投資するETFの配当利回りが高くなる傾向にあり、信用格付けが低い債券に投資するETFの方が格付けの高い債券に投資するETFよりも利回りは高くなる傾向にありますが、それだけリスクの高い投資対象であることも意味しています。
【東京証券取引所に上場している外債ETF】
(データ:東京証券取引所 2015年12月末現在)
- 高配当銘柄に投資するETF
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高い分配金利回りを目的としてETFを選択する場合、高配当ETFも検討に値します。東京証券取引所に上場しているETFの中には、高い株式配当利回りに着目した株価指数への連動を目指して運用を行うETFがあり、このようなETFを一般に高配当ETFと呼びます。ETFが高配当の銘柄に投資することで、投資家にも高い分配金利回りを提供することが可能になると考えられています。2015年12月末現在、次の5本の高配当ETFが東京証券取引所に上場しています。
- 上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(1399)
- iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF(1478)
- NEXT FUNDS 日本株高配当70連動型上場投信(高配当70)(1577)
- iシェアーズ 米国高配当株ETF(モーニングスター配当フォーカス)(1589)
- 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)(1698)
米国株式を投資対象としている「iシェアーズ 米国高配当株ETF(モーニングスター配当フォーカス)」を除くと4本は日本株式を投資対象としています。では、これらのETFの分配金利回りはどうだったでしょうか。2014年と2015年の分配金利回りを見ると、日本株式を対象とした高配当ETFの分配金利回りは、東証第一部の約1.5%という単純平均利回りを上回りました。また、米国株式を対象とした高配当ETFも、S&P500株価指数の配当利回り2.26%を上回っています。
分配金利回りの高いETFは市場や経済状況等により毎年変化します。今年高い分配金利回りを提供したETFが翌年もそうだとは限りません。個人投資家にとってはその銘柄を予想するのはハードルの高い作業ですが、このような高配当ETFを利用することで、自分で配当利回りの高いETFを予想することなく相対的に高い分配金利回りの獲得を目指すことができます。
(データ:EDINET、東京証券取引所)