株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

投信フォーカス - 長寿投信「さわかみファンド」の値動きを分析 - 投資信託

  • PR
  • PR
  • PR
 
 

投資信託 [ 注目の投信 ]

【第117回】

投信フォーカス

長寿投信「さわかみファンド」の値動きを分析――設定後10年連続して資金流入したファンドは唯一無二。2000年以降08年以前に開始した積み立て投資の収益率はすべてマイナス。一時市場平均並み化した運用成績は09年上半期に改善。

一度買った銘柄は割安感が解消するまで保有し続ける「バイ・アンド・ホールド」を運用の特色とする「さわかみファンド」。販売の大半は自社で行うなど独自路線を歩む、さわかみ投信が「わが社の1本」としてITバブル崩壊前の1999年8月24日に運用を開始してから丸10年経過しようとしている。10年前に当初設定額16億円あまりでスタートした運用資産規模は2173億円(09年7月24日時点)に成長。この純資産残高は、ETFを除く国内籍の公募追加型株式投信では27番目に大きく、日本株ファンドでは「フィデリティ・日本成長株・ファンド」(フィデリティ投信)の純資産残高(2748億円)に次ぐ規模に膨らんだ。この間、保有者の口座数はほぼ右肩上がりに増加し、「小さく産んで大きく育てる」という言葉が当てはまりそうなファンドだ。今年(09年)6月末の保有者数は約12万人。単純平均すると、1人当たりの保有資産額は180万円程度になる計算だ。

毎月の資金流入額(新規購入額から解約額を差し引いた金額)は、設定以降毎月プラスで推移。この7月も24日までに約17億円流入し、このペースだと月間の資金流入額が「設定後連続、かつ10年間(99年8月~09年7月)継続してプラス」となるのは確実な情勢だ。国内籍の公募追加型株式投信では前人未踏の記録となる。設定後10年連続して資金流入した公募追加型株式ファンドの例は、しばらく他に現れそうにない。

継続した資金流入を支えるのは、毎月一定額の積み立て投資(ドルコスト平均法)を行う定時定額コースを選択している投資家層の厚さ。09年6月末には約5万9千人(注1)と保有者数全体の半数を占め、仮に一人1万円を毎月積み立てているとしても、計6億円の資金が毎月積み上がることになる。

(注1)定時定額コースの口座数は、第8期決算時(07年8月23日):60251名、第9期決算時(08年8月25日):63156名と、この2年間は6万人前後を推移。

さわかみファンド」の運用の特色を表すキーワードとして、「景気の大きなうねり」「バイ・アンド・ホールド型運用」「長期投資」などが挙げられる。目論見書の投資方針には「経済の大きなうねりをとらえて先取り投資をすることを基本とし、その時点で最も割安と考えられる投資対象に資産を集中配分。その投資対象資産の中で、将来価値から考えて市場価値が割安と考えられる銘柄に選別投資し、割安が解消するまで持続保有するバイ・アンド・ホールド型の長期投資を基本とする」と記されている。

「バイ・アンド・ホールド」型運用の特徴について、創業者で現最高運用責任者の澤上篤人・さわかみ投信代表取締役は4年前の新聞インタビュー記事(注2)で次のように説明している。「現在の資産残高1000億円超のうち200億円は現金だが、すべて成約待ち状態の資金。200銘柄近くに、毎日同じ値段の指し値買い注文を入れ続けている。相場が下がったから何かを買おうとするのではなく、あらかじめ発注してある銘柄の株価が下押ししたら自動的に買える。売り込まれた株を下値で支え、企業を応援する意味合いもある。銘柄は基本的に入れ替えず、株価が急騰しても売らない。(設定からの)この6年間で売ったのは計70億円と少額だ」

「一度決めた指値を変えながらの追いかけ買いはしない。指値と1円違いで買えなかったのはしょっちゅうだが、後悔せず、縁がなかったと考えることが大事。その結果、現在保有の約300銘柄(注3)のうち、損が出ているのは2割未満の50程度だ」。

(注2)2005年9月1日付け「日経金融新聞」5頁、「さわかみ投信社長に聞く――バイ&ホールド運用に特化、売りは日本復活時に」
(注3)09年6月末時点の組み入れ銘柄数は202に減少

投資家層の中心がリスクを取って将来の資産形成を図る30代~40代の働き盛りのサラリーマンというのも、高齢層のマネーが偏在している投信市場にあっては異色の存在だ。「さわかみファンド」の月次運用レポートや毎年1回発行される運用報告書に目をやると、受益者(保有者)を指す「ファンド仲間」という言葉が頻繁に出てくる。長期投資の時間軸は人それぞれだし運用スタイルも様々だろうが、「バイ・アンド・ホールド」型の長期投資や株式相場の流れを追わないなど、「さわかみファンド」の運用方針には一貫性があるとして共鳴しあう投資家どうしの横のつながりを意識させる言葉使いだ。「さわかみファンド」の販売手数料は無手数料(ノーロード)で、信託報酬も1.05%(税込み)と日本株で積極運用するアクティブ型ファンドの中では安めな点も、若い世代の資金を引き寄せた一因として挙げられそうだ。ただし、解約時には換金額が50万円を超す場合、換金額に対し1.5%の信託財産留保金(注4)が徴収される(換金額が50万円以下の場合、信託財産留保金は徴収されない)。

(注4)信託財産留保金:長期投資の観点から、換金時に発生する諸費用の負担は保有者ではなく解約者に求めるのが公平とする仕組みに立って解約者が払うコストで、徴収額は販売会社ではなく投信の純資産に組み込まれる。

さわかみファンド」はこれまで日本株以外に投資したことは無いが、運用方針上、将来的な可能性として海外株や株式以外にも投資する余地を残しており、目論見書に記載されているファンド分類は「国内・株式」型ではなく「内外・資産複合」型となっている。

肝心の値動きと運用成績を分析してみる。これまで分配金を出していないので、「さわかみファンド」の運用成績は計算しやすい。直近の基準価額=12063円を当初元本の1万円で割ると、約10年の設定来騰落率は20.6%。複利方式で1年あたりに換算した年間騰落率は約1.9%となる(09年7月24日時点)。

市場平均を代表する「配当込みTOPIX(東証株価指数)」と月間騰落率を比較すると、過去10年間を通じ6勝4敗の成績。負けは2005年~2008年に目立ち、この間の値動きは市場平均に接近した。4年前の05年には株式に投資せず現金で保有した比率が高い。現金の保有は株式相場の下落時の緩衝材として役立った時期もある。これが09年6月末時点では現金比率は2%程度とほぼフルインベストメントに近い。結果的に、現金比率を削減する過程で市場平均との勝ち負けを繰り返しながら、運用成績が市場平均に近づいていったという見方もできる。

今年に入ってからの運用成績は改善。09年上半期の運用成績は日本株ファンドの中では上位の成績(注5)を残し、今年に入り7月24日までの上昇率は22%。「配当込みTOPIX」の8.4%上昇、「日経平均」の上昇率(12.2%)を大きく上回った。金融関連株には投資していなく、組み入れの中心は「オールドエコノミー」の復権を狙ったかのような製造業株であり、今年3月以降の輸出関連銘柄の株価急回復を追い風として受けたとみられる。

(注5)2009年上半期の「さわかみファンド」の運用成績:08年末~09年6月末までの上昇率は20.1%で、ETFを除く日本株ファンド(インデックスファンドを含む)約700本の中で上位65位。

現金保有比率の削減に沿った動きをとったのが、値動きの荒さを示すボラティリティー(価格変動リスク)の推移。08年あたりまでは一貫して市場平均を下回って推移していたが、最近は市場平均をやや上回ってきている。より積極的な運用姿勢に転じてきたことがうかがえる。このため、値動きが市場平均に近づいても、ボラティリティーが市場平均以下だったことから、騰落率をボラティリティーで割って求める運用効率はほぼ10年間市場平均を上回っていた。運用効率も09年は改善傾向にある。



市場平均との比較以上に重要なのが、実際に「さわかみファンド」に投資した場合の収益率。投資開始時点を10年前から08年末まで変え、その時点で一括投資した場合と、その時点から積み立て投資を継続した時の収益率を計算してみる。一括投資し09年7月24日まで保有時の最大収益率は、03年3月末に投資した場合のプラス46%。最低は07年に投資した場合のマイナス40%程度。積み立て投資(注6)を09年7月24日まで継続したケースでは、運用開始当初の99年と08年以降に積み立て開始した場合を除き、積み立て開始時期によらずほぼ全期間で損失を抱えた状況にある。最大損失率は05年から積み立てを開始した場合でマイナス20%あまり。ただ、今年に入ってからの基準価額上昇により、09年7月24日まで積み立てを継続すると、08年末時点での損失率に比べ20%程度、損失が縮小している。積み立て投資での20%の損失は、現在の基準価額が平均購入単価に比べ20%下回っていることを意味する。平均購入単価の動きは基準価額に比べ緩やかなことから、平均購入単価が現状を維持すると仮定したうえで、今後基準価額が25%程度上昇すると、ほぼ全投資時点での積み立て投資の収益率がプラスに転換する可能性が高い(注7)。

(注6)毎月末に積み立て投資したとして計算。「さわかみファンド」の定時定額購入コースの約定日は月末ではなく毎月第7営業日。
(注7)あくまで平均購入単価が変化しない場合の概算であり、実際の積み立て投資の収益率には今後の基準価額の動きとそれに伴う平均購入単価の上下が関係する。

「ファンドの規模が大型化すると運用成績は市場平均並みに陥りがちなのでは――」。「さわかみファンド」の今年これまでの運用成績はこんな不安をはねのけた格好だが、ETFやインデックスファンドを通じ手軽に市場平均を売買できるようになった以上、アクティブ運用と市場平均との勝ち負けの評価は今後もつきまとう。投信市場全体を見渡すと、新規設定ファンドには投資家の資金が集まりやすく、既存ファンドからは資金流出する傾向が強まっている。「さわかみファンド」は長寿ファンドながらも投資家の資金を着実に積み上げ続けているという点で「貯蓄から投資へ」というスローガンを先頭に立って実践していると言え、「ファンド仲間」の支持基盤の広がり方や運用の足跡には一層注目が集まりそうだ。


執筆:QBR 高瀬浩(掲載日:2008年7月29日)

 
   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »