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投信ニューフェース 「TOM運用日本株式ファンド」(バークレイズ) - 注目の投信 - 投資信託

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投資信託 [ 注目の投信 ]

【第124回】

投信ニューフェース

「TOM運用日本株式ファンド」(バークレイズ)

――株式市場の“目からウロコのクセ”に着目。日経平均の“月末買い・月初売り”を繰り返すと、2008年は約15%上昇し、約31年間では8.8倍に上昇した事実に基づく手法。

英国金融大手バークレイズ銀行傘下の運用会社「バークレイズ・キャピタル・ファンド・ソリューションズ・ジャパン」(以下BCFS、注1)は、日本での公募投信第一号として『TOM運用日本株式ファンド』を2009年9月24日に設定する。“TOM”(トム)とは”Turn Of the Month”の頭文字を取ったもので、日本語では“月変わり”と訳し、月末・月初の数日間を意味する。

株式市場の動きを長期間にわたって観察し分析すると、月末・月初の数日間に上昇することが多く、しかも月末・月初は他の期間に比べパフォーマンスが良い(TOM効果)という株式市場の過去のクセに基づいた運用を行う。この種のクセを総称して、異常(例外)を意味する“アノマリー(Anomaly)”と呼ぶ。アノマリーとは理屈では説明のつかない事象のことで、株式の値動きはランダム(不規則)であり、特定の手法によって儲かるような機会が放置されることは決してないとする証券投資理論の大原則“効率的市場仮説”に反した経験則とみなされる。「米国株は10月に下落しやすい一方で、1月に値上がりする傾向がある」といったアノマリーの存在は一般投資家にも良く知られているが、今回の月末・月初のTOM効果はほとんど知られていない。

(注1)英国に本拠点を置くBCFSの運用スタイルについて、同社代表取締役の岩居雅彦氏は次のように説明する。「BCFSとETF運用大手のBGI(バークレイズ・グローバル・インべスターズ)とは、元来BCFSのファンド運用のスタイルが大きく異なっているため、現在も将来も運用商品における競合は発生しない。BCFSは2006年に資産運用ビジネスに参入。設立当初より伝統的資産のロング(買い)のみの運用は行わず、絶対リターン追求型の独自運用商品の開発と運用に専念している。」

TOM運用日本株式ファンド』の運用は極めてユニーク。月末の4営業日と月初め2営業日の6日間のみ、日経平均(値動きは日経平均にほぼ一致するが完全に一致するとは限らない)を保有し、それ以外の日は安全資産の短期債券(注2)の運用に切り替える。つまり6日間の日経平均保有と15日前後の短期債券保有を交互に切り替える運用を反復する。具体的には、月末を含む5営業日前の取引終了時点の終値近く(終値に一致するとは限らない)の日経平均先物を買い、月初2営業日目の終値近くで売ることを繰り返す(注3)。国内の株式運用ファンドには、運用期間中一時的にせよ運用資産のすべてを現金(キャッシュ)相当の短期債券に切り替えるようなファンドは他に存在しない。

(注2)英国銀行協会発表の円LIBORスポット・ネクスト(現在、年利回り0.1%強)相当の利回りを有する短期債券。

(注3)2009年9月と10月の例では、9月25日(金)~30日(水)の4営業日が月末4日間に相当する。このため、設定日9月24日(木)に日経平均先物を終値近くで買い、10月第2営業日の10月2日(金)に日経平均先物を終値近くで売る。

BCFSは今回、同じグループのバークレイズ・キャピタルが欧州で開発したTOM運用手法を日本株に応用し、同社との提携商品としての一環として公募投信第一号の『TOM運用日本株式ファンド』を投入。“目からウロコの内緒話”をキャッチフレーズに、その運用手法を世の中に広く公開することとした。世界を見渡しても、株式市場のアノマリーに基づく運用を行う公募投資は珍しい。

 <ファンドの仕組み(イメージ図)>

(出所):バークレイズ・キャピタル・ファンド・ソリューションズ・ジャパン(BCFS)

『TOM運用日本株式ファンド』の運用会社サイト:https://www.bcfs.barcap.jp/#product

TOM運用日本株式ファンド』はそのユニークな運用手法を実現するうえで、直接、日経平均や短期債を売買するのではなく、バークレイズ銀行が同等の価値を持つ債券として発行する仕組み債に投資する。この仕組み債はユーロ市場で発行されるのでユーロ円債に区分されるが、ユーロ建てではなく円建ての債券であり、為替変動リスクは生じない。ただファンドの直接の投資対象は債券となるので、仕組み債発行体のバークレイズ銀行の信用リスク(債務不履行リスク、注4)は免れず、仮にバークレイズ銀行が経営危機などに直面すると、日経平均の動きや短期債の実勢値とは無関係に仕組み債の時価が下落し、ファンドの基準価額に響くリスクは排除されない。

(注4)バークレイズ銀行の仕組み債の発行体格付けは、AA-格またはAa3格(2009年8月末時点)。

果たして、この“クセ”は本物だったのだろうか。日経平均について過去約31年間にわたり、この月末・月初6日間の騰落率と、この6日間とそれ以外の日を含む月間の騰落率を集計すると、月末・月初のTOM効果(優位性)が歴然としていたことに驚かされる。月末・月初6日間の騰落率はプラスになった回数が多く、この6日間騰落率を平均すると、月間騰落率の平均の2倍程度だった。これは、月間のうち月末・月初6日間以外の期間(15日前後)は平均すると下落したことを意味する。具体例を挙げると、たまたまの偶然かもしれないが、金融危機の真っただ中、昨年10月に日経平均は月間で約23%下落したが、10月の月末から翌11月初めにかけての6日間には32.9%上昇していたという事実は見落としがちだ。

日経平均でのTOM運用(月末・月初の6日間のみ保有)を、1979年以降09年8月末まで約31年間運用し続けたと仮定したシミュレーションを行うと(取引コストや税金などは考慮せずに)、その上昇率は約8.8倍(複利で年率平均換算すると約7.3%の上昇率)に達した。これに対し、この間の日経平均の上昇率は約1.7倍にとどまった。株式市場にはアノマリーは存在しなく“市場は効率的”という仮説への反証例としては十分すぎるデータかもしれない。しかも、この間の日経平均の価格変動リスク(月次騰落率の標準偏差を年換算)が20%弱だったのに対し、TOM運用の価格変動リスクは12%強と6割程度に縮小。TOM運用では日経平均の保有期間が短いため、上下への大きな変動にさらされる期間が短縮化される。その結果、価格変動リスクが小さくなったのは当然かもしれない。月末・月初のアノマリーが今後も持続することが大前提だが、長期での価格変動リスクが抑えられるという点で、長期投資におあつらえ向きの運用手法とも言えそうだ。

この月末・月初のTOMアノマリーの存在は、ファインナンス(証券投資理論)を研究する学者の間では以前から話題になっており、米国では既に20年あまり前にその存在を示す学術論文が公表されている(注5、c)。昨年、米国の著名学術誌に掲載された論文(注5、a)によると、2005年末までの80年間にわたり、米国株式市場でこのアノマリーが存在し、米国のみならず日本を含む35ヵ国中31ヵ国で、アノマリー現象が確認されたとする結果が報告されている。ただ、アノマリーを説明するメカニズムは学術論文でもいまだ解明されておらず、“謎”に包まれている。仮にこのような月末・月初のTOMアノマリーが有利であるとして多くの投資家が同じ行動を取った場合、投資家の買い需要で月末株価が高くなる一方で、月初の株価は売りに押されて安くなり、結果的にアノマリー効果が消失するはず――と理屈上考えられるが、学術論文でその存在が公にされてからも20年間、TOMアノマリーは生き残ってきた。ひょっとすると、謎ときの決定打が見つからない証券市場最大の“難問”の一つかもしれない。なお前記論文(注5、a)では、月末・月初(TOM)の日を月末1営業日と月初3営業日の4日間として分析している。日数のさじ加減もTOM効果を左右する可能性がある。

(注5)関連する学術論文(新しい順)、その他論文については、これらの巻末記載論文を参照。
(a)“Equity Returns at the Turn of the Month”,John J.McConnell and Wei Xu,Financial Analysts Journal Vol64 No2 March/April 2008
(b)“Turn-of-Month Evaluations of Liquid Profits and Stock Returns:A Common Explanation for the Monthly and January Effects, Joseph P.Ogden, The Journal of Finance Vol45 No4 September 1990
(c)“Are Seasonal Anomalies Real? A Ninety-Year Perspective”, Josef Lakonishok and Seymour Smidt,The Review of Financial Studies Vol1 No4 1988

BCFSの岩居雅彦・代表取締役によると「データ分析の結果からは、新興国よりも先進国の株式市場でのTOM(月末・月初)効果が鮮明になった」そうだ。TOM効果を裏付ける理由として次のような説が一般に唱えられている。先進国株式市場でのTOM効果が高いこととも関連している可能性がある。
 (1)給料日説
 給料の支払い日が月末(25日前後)に集中することから、株式投資の軍資金を得た個人投資家の買いが入りやすいこと
 (2)ラストミニッツ(駆け込み)説
 機関投資家の運用者は、月間の運用成績を少しでも改善したいという動機から、成績が確定する月末に買い増しする行動に走りやすいこと
 (3)累積投資・年金説
 毎月一定額の積み立て投資を継続するドル・コスト平均法による個人の株式やファンドの購入日を月末付近に設定しているケースが多いこと

このTOM運用を海外の代表的な株価指数に適用しても、その効果は大きかった。過去約11年の上昇率が3%に過ぎなかったNYダウはTOM運用だと約2倍に上昇。約17%下落した英国FTSE100指数はTOMでは2.7倍に上昇した、などだ。これに対し、新興国を代表するロシアのRTS株価指数は、うなぎのぼりの高騰後につるべ落としの大幅下落となりながらも約11年で18倍に上昇したが、TOM運用では7.4倍だった。中国の上海総合株価指数は9年半で約1.6倍に上昇し、TOMでは1.2倍だった。株価指数自体の上昇率を上回ったかどうかの比較という点では、先進国株式市場の方がTOM効果は大きかったと言えそうだ。特徴的な共通点は、どのグラフをみてもTOM運用の値動きが株価指数に比べ緩やかだった点だ。

日経平均のような株価指数ではなく、国内上場の個別株にこのTOM運用手法を適用するとどうだったか。過去約11年間の株価データ(月末・月初に終値で売買できたと仮定、取引コストや収益に対する税金は考慮していない)で分析してみた。集計した438銘柄について約11年間TOM運用を続けると、上昇率は平均で約5.7倍に達し、全期間保有し続けた通常投資の平均上昇率の1.9倍を大きく上回った。個別株でもTOM効果のアノマリーが存在していた。

個別株のTOM運用成績上位をみても、ITバブルのような急騰局面には追随できない一方で、金融危機による大幅下落が避けられたという特性が浮き彫りとなった。買い持ちの期間が短縮されたためだろう。その結果、5位の「JAFCO(8595)」のように約11年間株を保有し続けても上昇率は3%未満(配当は含まない)だったがTOM運用だと31倍に上昇したような例もある。ただTOM運用は万能ではなく、中には月末・月初6日間での下落が続いた銘柄もある。

TOM運用日本株式ファンド』は毎営業日に売買が可能だが(注6)、月末・月初の6営業日以外の基準価額はほとんど変動しない。最低売買金額は販売会社によるが、1口1円単位での売買が可能。販売手数料の上限は3.15%(税込み)。実質的信託報酬は、ファンドの信託報酬の年率0.987%(税込み)に、ユーロ円債の管理費用に相当する年0.5%を加えた約1.5%。解約時には信託財産留保額の0.4%が発生する。決算は年2回(3月と9月)で、基準価額が当初元本(1万口で1万円)を超えた分は分配金に回す方針という(岩居氏)。

(注6)申し込み期間は現在2010年12月20日まで。申し込み日の翌営業日の基準価額が売買に適用される。2009年10月9日までと、償還日直前の2019年9月2日~2019年9月20日までは原則解約ができないクローズド期間となる。

過去の分析データは、こんな究極の“クセ”が世界の株式相場に実在していたことを明確に示す。ただ月末・月初には、クラッシュと呼ばれるような急落がたまたま起こらなかったことが関係している可能性は捨てきれない。TOMアノマリーの効果はこれからも持続し、謎はますます深まるのか。それとも“難問”が解かれる前に現象が消失し、やはり株式市場は効率的だったということになるのか、運用成績の先行きに興味が尽きないファンドが登場した。

一般の個人投資家が個別株やインデックスファンドで似たようなTOM運用を行うことは可能だ。だが通常、それなりの売買手数料が発生するうえ、収益に税金がかかり、TOM効果が薄まる可能性はある。TOM効果は売買する株価に左右されるが、個別株では終値付近で自由に売買できる保証はない。効果があるのかないのか、TOM運用の成果を見定めるには月末・月初の数日間に限定した投資を長期間辛抱強く続ける必要もある。その意味では、価格変動リスクが日経平均に比べ縮小する可能性が高い点で長期投資向きであり、しかも少額で投資できるようにした『TOM運用日本株式ファンド』の利便性は高いと言えそうだ。ただしTOM運用手法は万能ではない。月末・月初のTOM効果のアノマリーはいつ消え去っても不思議ではない現象であり、アノマリーが存在し続けるにしても月末・月初の騰落率のみがプラスとなる保証はない。このため、アノマリーが無くなってもファンドの基準価額が元本割れするかもしれない“不確実性”は決して消失しない。


執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2009年09月18日)

 
   
    

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