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【第143回】 投信フォーカス 国内公募株式投信での『外国税額控除』適用除外の影響を探る - 注目の投信 - 投資信託

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投資信託 [ 注目の投信 ]

【第143回】

投信フォーカス

国内公募株式投信での『外国税額控除』適用除外の影響を探る

――先進国外債ファンドへの影響はほとんど無し。海外株式型ファンドの海外配当源泉税は取り戻せなくなった。分配しないファンドや外国籍投信に投資するファンド・オブ・ファンズでの海外源泉税は元々取り戻せない。

“外国税額控除”とは――海外源泉税について、国内での投資家収益に対する課税との二重課税を回避するための税制上の措置。国内公募株式投信では分配金にかかる所得税の範囲以内で海外源泉税を分配時にファンド段階で取り戻す仕組み――。国内公募株式投信でのファンド段階での“外国税額控除”は2010年1月から適用除外に。

国内の公募株式投信(ファンド)が国内の株式やREIT、債券など国内資産に投資している場合、ファンド段階ではその配当金や利息収入に対して原則課税されない。分配金などの投資家収益にかかる国内課税との二重課税を避けるためだ。これに対し、投資対象が外国資産の場合、配当金や利息に対し原則、海外の投資国で源泉徴収される。国によって税率は異なり、非課税の国や、株式配当金に対しては源泉課税されるが、債券利息収入は非課税という国もあるようだ。実際の源泉課税率が租税条約で決められた軽減税率以上の場合、投資国によっては超過分の源泉税の還付請求が可能なケースもあるようだ。こうした海外の投資国で徴収された源泉税について国内課税との二重課税を避ける目的で、国内の所得税から控除(減額)する税制上の仕組みを“外国税額控除(外国所得税控除)”と呼ぶ(注1)。

国内の公募株式投信では“外国税額控除”の措置として、個々の投資家が税務処理するのではなく、ファンドの決算時に海外源泉税をファンドの基準価額に取り戻す(繰り入れる)ことで、分配金に対する国内所得税がその分控除されるような計理処理を行っていたが、このファンド段階での“外国税額控除”の措置が2010年1月から行われなくなった。

“外国税額控除”は分配時にのみ可能。分配しないファンドは海外源泉税を取り戻すことはできない。外国籍投資経由で海外株に投資している場合の配当源泉課税率は高くなるケースがある。

ただし、海外源泉税をファンドの基準価額に取り戻すといっても、無条件に可能なのではなく実際には税制に則した制限事項がある。このファンド段階での“外国税額控除”が可能なのはあくまで“決算時に分配金を支払う(もしくは償還時)”場合のみであり、翌決算に控除を繰り越すことはできない。取り戻せる海外源泉税の額は“分配金に対する所得税”の範囲に限定される。国内の公募株式投信が外国籍投信経由で海外資産に投資している場合、外国籍投信が組み入れている海外資産に対する源泉税は外国税額控除の対象外――などがその注意点となる。

このため、元々分配金を出していないファンドについては、海外源泉税を取り戻す手段は無かったし、今後も無いことになる。例えば、海外株価指数連動型のインデックスファンドでは、組み入れ株式の配当利回りと海外源泉課税率によっては、運用コスト(信託報酬)に比べ“誤差”とは言えない大きさの海外源泉課税率が“見えないコスト”として発生する。信託報酬が年0.6%前後の格安運用コストの海外株インデックスファンドが相次いで登場しているが、仮にファンド組み入れ株式の配当利回りが平均3%、配当金に対する源泉課税率が平均10%とすると、「配当利回り×源泉課税率=0.3%」の税制コストが生じていることになる。投信を通じて海外株に投資する便益を得るうえで制度上避けられないコストとは言え、格安となった運用コストに迫る水準になるファンドも出てくる。

なお、ファンド段階で“外国税額控除”ができたといっても、その金額は分配金に対する所得税を上限とする範囲に限定されていた。現在、分配金に対する課税率は10%。このうち住民税が3%で所得税は残りの7%。つまり「分配金×7%」が控除額の上限だった。これに加え、分配金に元本の払い戻しに相当する特別分配が含まれていると、特別分配は非課税で所得税が発生しないので、控除額の上限値がその分下がることになる。こうした結果、分配金を出したとしても、海外源泉税が分配金所得税に対する控除上限値を超えたため、海外源泉税を100%取り戻すことができないケースがあった可能性もある。なお、401k(DC、確定拠出年金)専用ファンドの分配金は非課税で所得税が発生しないので、401k専用ファンドでは海外源泉税を取り戻すことはできない。

さらに、ファンド・オブ・ファンズの形態で外国籍投信を通じて、海外資産に投資している場合にも注意が必要。投資先の外国籍投信の国籍はケイマン、ルクセンブルグといったいわゆる“タックス・ヘイブン”となることが多いが、これらの国と米国など投資国は租税条約を結んでいないことが一般的であり、非課税の投資対象を除き、株式配当などに対し軽減税率が適用されず源泉課税率が高率となることがある。これに対し、多くの投資国との間で租税条約を締結している日本の国内籍投信から海外に直接投資する場合には、租税条約上の軽減税率が適用される。例えば、ケイマン、ルクセンブルグ籍の外国籍投信が米国株や米国REITに投資する場合、その配当金に対しては現在30%源泉徴収される。日本から直接投資した場合の源泉課税率は10%で済む。

“外国税額控除”が適用除外となったのは、1月から特定口座の中で投信の売却損(譲渡損)と分配金の損益通算が可能となったことに伴う。分配しようがしまいが、国内公募株式投信の収益に関し、海外源泉税を取り戻す手段は無い。ただし特定口座での分配金を含む損益通算が可能となったことで、投資家の収益面ではこれまでより有利になる場合も。

国内公募株式投信のファンド段階での外国税額控除が2010年1月から行われなくなった(適用除外となった)のは、この1月分から源泉徴収ありの特定口座を利用することで、確定申告をしなくても売却損(譲渡損)と分配金(配当金)の損益通算ができるようになったことに伴う。投資家の年間の損益が確定する翌年1月にならなければ控除対象の上限となる所得税額が確定できないことが関係しているようだ。

結局、分配しようがしまいが、国内公募株式投信の収益として海外源泉税を取り戻す手段は無くなったことになる。国内公募株式投信の形態がどのような形であろうと、海外と国内での源泉税の二重課税状態が残ることになる。海外源泉税をこれまでのように分配時の“外国税額控除”で取り戻すことはできず、“外国税額控除”が可能だった2009年末までに比べ、投資家収益がその分減ることになる

ただし海外源泉税については、例えば、現地通貨建て新興国債券では源泉税が発生する国があるが、米ドル建て新興国債券は非課税など、債券利息収入に対しては非課税のケースも目立つようだ。さらに、特定口座の中で分配金を含めた損益通算が可能となったため、“外国税額控除”適用除外が投資家の収益面でこれまでより不利になるとは一概には言えない。

国際投信の「グロソブ」での“外国税額控除”適用除外の影響は無い。組み入れ先進国債券の利息収入は現在非課税のため。

国内最大の公募株式投信であり、先進国の高格付け債券で運用する国際投信投資顧問の「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)<通称:グロソブ>」の場合、組み入れ債券の利息に対する源泉課税率はどのようになっているのだろうか。投資家への詳細な情報開示を推し進めている国際投信投資顧問に確認したところ、「グロソブ」が現在組み入れている16ヵ国(日本を含む、2010年1月末時点)の債券の利息はすべて非課税。ただし、オーストラリア(豪州)国債については2009年12月までは現地源泉課税率が10%だった。同様にして、先進国の国債に投資しているファンドに関しては、大半の組み入れ債券の利息収入が非課税であり、“外国税額控除”適用除外の影響がほとんど無いとみられる(注2)。

(注1)国内で売買が可能な海外籍投信の分配金に対して海外で源泉徴収された場合、その税額は国内での確定申告により一定の条件での還付請求を行うことが可能。ただし、例えば米国籍ETFで米国からみた海外株に投資している場合、分配金の原資になる株式配当金に対し米国株以外は一般に源泉徴収されている。この組み入れ株式配当金に対する海外源泉税を日本の居住者であるETF購入者が取り戻すことのできるような税制上の仕組みは存在しないものとみられる。

(注2)海外での源泉課税率や国内の税制は今後変わりうる。


執筆:QBR 高瀬(掲載日:2010年2月22日)

 
   
    

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