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投信フォーカス ”ディスカバー・インドネシア”経済の実像を専門家に聞く - 注目の投信 - 投資信託

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投信フォーカス

”ディスカバー・インドネシア”経済の実像を専門家に聞く

――インドネシア株式市場の平均株価が過去最高値を更新。通貨ルピアも急回復。インドネシア株ファンドの運用成績も快走中。関心が高まるインドネシア経済の注目点をアジア経済研究所・濱田美紀氏が詳しく解説。

インドネシア経済の潜在成長力に見直し機運。株式市場が急回復。通貨ルピアも戻り歩調。“多民族国家”を束ねて行くうえでの政治・経済の課題も多く投資リスクも小さくないが、政治の安定化につれ、“BRICs+I=BRIICs”の一角として新興国の中核に急浮上。

インドネシア株ファンドの運用成績が快走中だ。昨年11月末に運用を開始した2本のインドネシア株ファンド「PCAインドネシア株式オープン」(ピーシーエー・アセット・マネジメント)と「ING・インドネシア株式ファンド」(アイエヌジー投信)、両ファンドの基準価額はこの3月に1ヵ月間で約16%上昇。4月16日までの設定来4ヵ月半では3割強の上昇率を残している。米大手格付け会社のS&P社が3月に、インドネシアの長期外貨建て債務格付けをBB-からBBに引き上げたことなどから、外国人投資家の資金が流れ込み、インドネシア株式相場は一段高となった。インドネシアを代表する株価指数の“ジャカルタ総合株価指数”は過去最高値を更新。調整してもおかしくない程の上昇が続いてきた。

高金利通貨としてのインドネシア・ルピアも急回復し、関心が集まっている。投資通貨を米ドルなどから高金利通貨に切り替えて運用する“通貨選択型”でもインドネシア・ルピア型が登場。2月に設定された「野村新エマージング債券投信(通貨選択型)インドネシアルピアコース(毎月分配型)」(野村アセットマネジメント)や、4月新規設定の「世界投資適格債オープン(通貨選択型)インドネシアルピアコース(毎月決算型)」(国際投信投資顧問)などだ。

とはいっても、ファンドがインドネシアの株や債券を組み入れるのは最近始まった訳ではない。1991年7月から運用している現存する最古の海外株ファンド「JFアジア・成長株・ファンド」(JPモルガン・アセット・マネジメント)もインドネシア株を投資対象にしている。「ターゲット・ファンド・シュローダー・アジア債券オープンBコース(為替ヘッジなし)」(シュローダー証券投信投資顧問、2005年3月設定)など、インドネシア債券を組み入れた新興国債券ファンドも多い。ただ、インドネシアがファンドの投資先として大きくクローズアップされてきたのはつい最近のことだ。インドネシア経済は1997年のアジア通貨危機で深刻な打撃を受けたが、IMF(国際通貨基金)の支援を受けながら、興隆(エマージング)してきた。中国、インドと並んで“ゴールデン・トライアングル”を形成する一角としても注目を集め、3月に新規設定された3ヵ国の株式に投資する「アムンディ・チャインドネシア株投信」(ソシエテジェネラルアセットマネジメント)の純資産残高は820億円を超してきた。

インドネシア共和国と日本との結びつきは深い。戦時中は石油資源を必要とした日本軍の占領下にあったが、東インド会社から始まった300年にわたるオランダの植民地統治から、インドネシアが独立運動を起こすにあたり日本軍に協力したことや、戦後の賠償金や多額のODA(政府開発援助)などを通じ、日本がインドネシアの経済発展に協力してきた歴史がある。

インドネシアの気候は赤道直下、熱帯性でモンスーンによる激しい降雨と湿気が特徴。世界最多の1万7千以上の島々からなり、バリ島などの国際的なリゾート地にも恵まれている。世界最多数のイスラム国家であると同時に、バリ島ではヒンドゥー教信者が多いなど、宗教や言葉が異なる多民族が暮らす。独立後はスカルノ、スハルト、両大統領の長期独裁政権が続き、その間に汚職が日常茶飯事になったとされる。爆弾テロや鳥インフルエンザ、頻発する地震や大津波などのニュースも記憶に新しい。

そうした気がかりな点を抱えながらも、“BRICs”にインドネシアの“I”を加えて“BRIICs”と呼ばれるようになるまで、新興国の中で頭角を現してきた背景は何か。インドネシア経済の専門家のアジア経済研究所・濱田美紀氏に詳細な説明をしてもらった。投資の損得、そろばん勘定を離れ、インドネシア経済の実情を知り、インドネシアの“再発見”に役立てたい。

アジア経済研究所は独立行政法人・日本貿易振興機構(ジェトロ)の附置研究機関であり、開発途上国研究における国内屈指の拠点。調査対象国は、アジアだけでなく、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、オセアニア、東欧諸国に及ぶ。濱田氏は開発研究センター・国際経済研究グループでインドネシア経済を担当している。

http://www.ide.go.jp/Japanese/Researchers/hamada_miki.html

なぜ今、インドネシア経済が世界的に注目されるようになったのか――金融危機の痛手が小さく、安定した経済成長。世界第4位、2.3億人の人口大国での消費市場の大きさにも期待。政治の安定化とバランスのとれた経済政策。

濱田氏:

「世界的な金融危機以降、多くの国の経済が低迷する中で、インドネシアは安定した経済成長を続けている。注目される理由には、2009年のGDP成長率が4.5%とアジアの中で中国やインドに次ぐ伸びを示していること、2.3億人を抱える世界第4位の人口大国であり、その国内消費市場の大きさにも期待が集まっていることが挙げられる」

「民主化後11年が過ぎ、3度の議会選挙、2度の直接大統領選挙を経て、現在のユドヨノ政権は2期目に入り政治的にも安定していることもまた、インドネシアに安心感を与える材料となっている。2009年の直接選挙で60%の支持を得て再選を果たしたユドヨノ政権は、98年のスハルト政権崩壊後の混乱とその後の不安定な政治運営を経験してきたインドネシアと比べると圧倒的に安定していると言える。また1期目で、テロ対策、汚職撲滅対策に積極的に取り組んできたことが評価されている。政権2期目には副大統領をはじめ主要経済閣僚に有能なエコノミストを据え、工業大臣にはインドネシア商工会議所(KADIN)会頭を任命したことで、バランスのとれた経済政策が採られることが期待されている」

インドネシアは世界経済危機の影響が比較的軽微で、経済成長が比較的安定しているという、その背景とは――輸出依存ではない経済構造。豊富な天然資源。財政再建の進展や対外債務の減少。

濱田氏:

「様々な理由が挙げられるが、ポイントを列挙すると、
  ◇国内消費が牽引する経済構造。GDPの6割が民間消費。
  ◇輸出に大きく依存していない経済構造。インドネシアの輸出はGDPの3割程度にとどまる。輸出主導で成長してきたタイやマレーシアが世界経済低迷の影響を強く受けたのとは対照的に、1997年のアジア通貨危機以降の経済再編の中で、インドネシアは世界の生産ネットワークに組み込まれていなかったことが幸いし、影響が軽微だった(それでも2009年1月と2月の輸出は大幅に減少した)。また、輸出の3割が石油・ガス・石炭・銅鉱などの天然資源であることも特徴」

「◇(90年代後半のアジア通貨危機の再建と教訓から)対外的ショックに対する経済的な耐性ができていた。
  ◇財政再建の進展。2000年に入り財政赤字は減少傾向。2008年度以降は経済危機に対応するための景気刺激策を盛り込んでいるため、財政赤字はGDP比2%を超えるが(2008年2.1%、09年2.5%、10年1.6%→2.1%)、自律的な財政運営ができるようになってきたことは前向きに評価できる。
  ◇対外債務の減少。対外債務はGDP比で30%あるが、内訳を見ると約6割が政府開発援助(ODA、Official Development Assistance)などの政府債務であり、アジア通貨危機時のように民間部門の借入はあまり増加していない」

「◇外貨準備の積み増し:外貨準備高も2000年末の294億ドルから2010年2には697億ドルに増加。
  ◇構造改革。燃料補助金の削減、食糧調達庁(BULOG)の公社化、石油公社プルタミナの株式会社化、銀行部門の改革など。
  ◇世界金融危機への対応:2008年に預金保険機構の上限の引き上げ、預金準備率の引き下げ、財政赤字の思い切った拡大(GDP比1%から2.5%へ引き上げ)、71.3兆ルピア(2010年3月末円換算で約7130億円)の財政刺激策、中央銀行レートの継続的に引き下げ(9ヵ月間で0.3%)など迅速に対応した。その後、金利は歴史的に低い水準6.5%を維持している」

インドネシア経済の注目点は――堅調な経済成長と輸出の回復。期待に沿う成長が実現できるかは、今後5年間の政府のカジ取りにかかっている。

濱田氏:

「何と言っても堅調な経済成長がインドネシア経済に期待されている。2009年のGDP成長率は4.5%だったが、2010年も好調。政府は2010年の経済成長率を5.5%と予想(2014年までには7%成長を達成することを目標としている)。英エコノミスト誌グループのEconomist Intelligence Unitは、2010年は5.6%、2011年は5.9%と予測している。中央銀行の予測では2010年第1四半期の予測も4.8%から5.7%へ上方修正。2010年通期予測は5.6%成長」

「政府は次のような中期目標(2010年~2014年)を掲げており、期待に沿える成長が実現できるかどうかはこの5年間のカジ取りにかかっている。GDP成長率:7.0%~7.7%(2014年)、失業率:5~6%(現在8%)、貧困率:8~10%(現在14%)、インフレ率:3.5~5.5%、財政赤字幅:GDP比1.2%」

「輸出の回復も著しい。2009年1月と2月は主要輸出国(日本、米国、シンガポール、中国)などの景気の落ち込みで急激に落ち込んだが、その後主要輸出国の景気回復もあり、鉱物資源を中心に順調に回復している(グラフ)」

インドネシア経済のリスク要因は――差し迫った大きなリスクがないのが評価ポイント。インフラ投資とエネルギー開発が政策の最重要課題。

濱田氏:

「現在のインドネシアは取り立てて差し迫った大きなリスクがないという点で評価されている。ただ、順調な経済成長を遂げるうえでの阻害要因となるビジネスリスクは山積しており、その解決がそのままユドヨノ政権2期目の政策課題となっている。経済政策の重要課題はインフラ開発、食料安全保障、エネルギー安全保障、中小企業振興、工業・サービス業開発、運輸振興などで、中でもインフラ投資とエネルギー開発が最重要課題」

「ビジネスリスクとしてもっとも懸念されているのは、インフラ整備の遅れによる物流に障害が生じること。また2009年には停電が頻繁に発生したことで、電力供給能力の問題が表面化した。運輸(港湾、空輸、陸路)全般の投資が過去10年間十分でなく、新投資を始め、補修・整備も十分になされていないことが、現在の港湾や道路の貧弱な状況につながっており、将来的な投資の妨げになる可能性が大きい。これはユドヨノ政権も十分に認識しており、インフラ投資に今後5年間で2千100兆ルピア(3月末円換算で約21兆円)という巨額の資金が必要になり、そのうち10~15%は国内の財政などで賄い、残りは海外からの直接投資(FDI)や援助などを含めてファイナンスを多様化していく、としている。また、2009年には国がインフラ・ファイナンス会社を設立するなど、インフラ整備に本格的に取り組む姿勢を見せている」

「インドネシアの主な輸送手段は陸運。インドネシアの道路の総延長距離は約42万km(2007年)。島々を結ぶためにも、鉄道、空輸、海運それぞれが補完的に機能している。しかし、インフラ投資が十分でないことが、現在の大きな問題のひとつとなっている。ユドヨノ第2次政権では、島嶼(とうしょ)国であることを活かした海洋国としての構想が必要であると認識されている。港湾を整備して海上での流通網を整備していくという発想だ」

国民の半数の1億人以上が貧困(=1日2ドル以下で生活)というのに、消費が活発とは――貧困層が多いのは事実だが、中間層の購買力が増大中。若年層の多さが内需拡大を下支え。経済の底力がある中で、失業対策と雇用の創出が政府の最重要課題の一つ。

濱田氏:

「貧困・失業対策は待ったなしの状況だ。ただ貧困率の解釈については留意が必要。貧困率を考えるとき、国際比較をするために最も簡単な方法が、一人1日1.25ドルで計算する方法である。この計算によると、インドネシアの貧困率は21.4%(2005年)、1日2ドルで計算すると、53.8%にものぼる。こうした計算は国際比較するには簡便だが、各国の事情をまったく考慮していないため、インドネシアのように中所得国でもほとんどの人が貧困になってしまい、“ものすごく貧しい国”という印象を与えてしまう」

「インドネシアの中央統計庁は、インドネシアの貧困線(基準値)を1ヵ月約20万ルピア≒22ドル(1日あたり0.73ドル)以下としている。これは1日に必要なカロリーなどをもとに計算されており、この基準を用いると貧困率は14.15%(2008年)まで下がる。貧困率の削減は、インドネシアの重要な課題だが(ユドヨノ政権は2014年までに8-10%に削減目標)、現在のインドネシアの経済をけん引しているのは、2億3千万人の人口だ。そして14歳以下が人口の30%を占めることからも分かるように、若年層が多いことからくる今後の継続的な内需の拡大である」

「日本では、2009年に通商白書が“中間層人口が急速に拡大し、今後成長が期待されるアジア諸国・新興国の市場は日本企業にとっての大きなチャンス”としたことから、急速に新興国中間層への関心が高まっている。そこでインドネシアの一人当たりの支出についての分布をみると、下位40%に属している人口が18.72%、中間40%に属しているのが36.43%、上位20%が44.86%である(インドネシア中央統計庁、2008年)。したがって約8,300万人がインドネシア国内の中間的層に相当すると言える」

「2009年の通商白書では中間層を世帯可処分所得5,001~35,000ドルの人口と定義している。一人当たりGDPが2200ドル程度のインドネシアにおいて5,001~35,000ドルという幅はあまりにも大きく、これがインドネシアの所得分布の現状とどれだけ呼応しているかは分からない。しかし貧困の削減と、先述の支出上位20%の層が増加傾向にあることを考えると、中間層の中でも購買力をもつ層が今後増加することが期待されるのも確かだ」

「一方、若年層の多い人口大国であることは、失業対策が非常に重要であることの裏返しでもある。毎年約200万人が労働市場に参入し、これを吸収するには年6%の経済成長が必要とも言われている。2009年に4.5%成長できたことは、世界経済の状況を考えるとインドネシアの底力を示したことにもなるが、今後の安定低な成長を考えると、喜んでばかりもいられない数値でもある。そのため、政府は失業率を2014年までに5~6%に低下させる目標を掲げ、雇用機会の創出を重要課題に取り上げ、投資の呼び込み雇用確保に懸命になっている」

株式市場の規模や最近の傾向は――海外資金の流入で高騰。外国人の買い越し続く。50社程度に集中売買。市場規模が小さく、マクロ経済指標の変化で急変する可能性大。

濱田氏:

「中国、インドと比較してもこの1年位のインドネシアの株価上昇率は大きい。2009年末の“ジャカルタ総合株価指数”は2008年末に比べ1年間で約87%上昇し、2010年に入っても上昇の加速度が増している。これは、主にインドネシアの経済成長と安定的な為替相場など、堅調なマクロ経済指標に注目した外国人の買いによるものだ」

「しかし、インドネシアの株式市場は2000年以降急速に拡大してきたとはいえ、GDP比約35%(2009年)の規模の小さい市場である。またインドネシアに限らず、タイなど発展途上国の資本市場の特徴として、その国の優良企業と上場企業は必ずしも重ならないことがある。そのため、一部の優良上場企業に売買も集中せざるを得ない。2009年には売買高上位50社で全体売買高の92%を占め、時価総額上位50社の合計時価総額は全体の86%に上る。そのうち銀行が12行を占め、その他も資源・エネルギー、通信、食品大手、有力コングロマリットの持ち株会社などである」

「外国人の売買高は全体の30%程度で、これは2004年、2005年の40%に比べると低くなっているものの、2000年以降は2005年を除き常に買い越している。政府が堅めに発表した2010年のGDP成長率5.5%を上回る成長率の伸びが見込めることから、今後も外国資本の流入が予想される」

「ただ、中央銀行も4月は金利6.5%の据え置きを決めているが、金融緩和政策の見直しを検討し始めている。さらに市場規模が小さく、一部の資源関連企業に売買の偏った株式市場であるため、マクロ経済指標の変化で急変する可能性が高い市場であることには常に留意する必要がある」

そのほかの注目点や注意点は――脱工業化から舞い戻る形の工業化・製造業振興の進展に注目。センチュリー銀行を巡る不正疑惑の行方には注意。

濱田氏:

「近年のインドネシアの成長を支えているのが、個人消費であることは、銀行の産業別の貸出額を見てもわかる。製造業への貸出しは減少し続けており(2004年の25.8%→2009年の17.0%)、サービス産業やその他(個人)が増えている。資源の切り売りと個人消費に支えられた現在の経済構造は、工業化を十分に達成しないうちの脱工業化(de-industrialization)を進めている。このため政府は製造業の強化と工業振興を図る必要あることが指摘されている」

「2008年に公的資金で経営危機から救済されたセンチュリー銀行(現ムティアラ銀行)が政権中枢に不正資金を供与したとの疑惑が、2009年から政治問題化し、好調なスタートを切るはずだったユドヨノ政権の足を引っ張っている。この事件に関してブディオノ副大統領(救済当時中央銀行総裁)、スリ・ムルヤニ大蔵大臣の責任問題で、連立与党のうち二党(ゴルカル党とPKS)が両者に責任があるという立場を表明したため、連立の不安定化の問題が表面化している。これを受け、2010年1月の大統領の支持率は70%と2009年の85%からはかなり低下している。それでも十分に高い水準にはある」

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聞き手:QBR 高瀬 浩(掲載日:2010年04月21日)

 
   
    

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