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投信ニューフェース 東証ETF『MAXIS海外株式(MSCIコクサイ)上場投信』 - 注目の投信 - 投資信託

 

投資信託 [ 注目の投信 ]

投信ニューフェース

東証ETF『MAXIS海外株式(MSCIコクサイ)上場投信』

――9年の運用実績を持ち指数連動性が高いマザーファンドで合同運用。マザーファンドは指数採用の世界主要23ヵ国の現物株に直接投資。組入株式の配当金に対する源泉課税率は米国の10%など、公募株式投信と同じ扱い。

日本を含まない世界株価指数の代表格「MSCIコクサイ」の円換算値の変動率に連動。「MSCIコクサイ」は米国、英国、カナダなど現在23ヵ国の株式で構成。国際水準でみても低運用コストのETFで、1万円程度から世界先進国株式の市場平均に投資が可能。

※以下、断り書きの無いデータはすべて2010年11月26日時点。

三菱UFJ投信が運用する同社初の海外株ETF『MAXIS海外株式(MSCIコクサイ)上場投信』<以下「MAXIS海外株式(銘柄コード:1550)」>が11月25日に東証に上場した。

三菱UFJ投信のETFサイト:http://www.am.mufg.jp/etf_info/index.html

国内上場ETFや一般の海外株ファンドと同様に日本円で売買し、主たる運用コストの信託報酬は年率0.2625%程度(税込みの上限値)。海外株ETFの信託報酬としては国際的にみても遜色のない低水準に抑えてある。信用取引による売りや買いも可能。売買単位は10口で、11月末の終値を基にした最低売買価格は1万円程度となる。11月30日まで上場後4ヵ日間の終値の平均(約1028円)は、基準価額の平均に対し4.6%ほどプラス乖離して推移している。ETFなので株式と同様に売買時には所定の取引手数料が必要となるが、カブドットコム証券は“フリーETF(手数料無料上場投信)”の一本として取引手数料を無料扱いにしている。

MAXIS海外株式(1550) 」が連動対象とする“MSCIコクサイ”は世界先進主要国の株式市場の平均的な動きを示す代表的な株価指数。現在、日本を除く欧米を中心とする23ヵ国の株式で構成している。米国株の比重が過半数を占め、その他、国別では英国、カナダ、フランス、豪州を合わせて全体の8割を占める(2010年9月末時点)。MSCIコクサイは年金など機関投資家がパッシブ(指数連動型)運用を行う際のベンチマーク(連動指数)として広く採用していると同時に、MSCIコクサイ連動型の公募のインデックスファンドも珍しくない。現在、インデックスファンドは確定拠出年金(DC、401k)向けなど40本程度あり、運用資産残高合計は2100億円に達する。

マザーファンドは2001年12月から9年の運用実績を有する。指数連動性が高く、運用資産残高は1300億円以上。

三菱UFJ投信初の海外株ETFといっても、同社ではMSCIコクサイ連動運用の実績を積み重ねてきた。MSCIコクサイ連動型マザーファンドの「外国株式インデックスマザーファンド」は、2001年12月から既にほぼ9年の運用実績がある。同じマザーファンドに投資している三菱UFJ投信のインデックスファンドには、2001年12月設定の「三菱UFJ<DC>外国株式インデックスファンド」(税込み信託報酬:年0.8295%、運用資産残高約23億円)や、2009年10月運用開始の「eMAXIS先進国株式インデックス」(税込み信託報酬:年0.63%、運用資産残高約37億円)などがある。

現在「外国株式インデックスマザーファンド」は主に変額年金や確定拠出年金向けファンドで活用されており、その運用資産残高は約1310億円(2010年8月末時点)。マザーファンドでの指数連動手法は、採用銘柄と組入比率を指数に合致させる完全法ではなく、組入銘柄と配分比率を計量的に決定していく最適化法と呼ぶ運用手法を採用している。三菱UFJ投信によると「MSCIコクサイの採用銘柄数は現在1300以上あるが、マザーファンドの組入銘柄数は1200程度。運用資金の出入りを考慮すると、完全法よりもむしろ指数連動性が高いと考えている」(商品企画部長の代田秀雄氏)という。規模の大きいマザーファンドで合同運用するメリットは、運用コスト全般の低減につながり、資金の出入りにも対応しやすく指数連動性が維持できるというのが一般的な解釈だ。

実際、マザーファンドのMSCIコクサイ連動性は2004年5月以降、過去6年間において、十分に高かったとみなすことが可能だ。「三菱UFJ<DC>外国株式インデックスファンド」をはじめ、同じマザーファンドで運用しているインデックスファンドの運用報告書の“ベンチマークとの比較”の部分には、マザーファンドと“MSCIコクサイ(配当含まず)”との間の乖離率を要因分解して公開している。2003年5月以降2010年5月までの7年間の運用報告書の公開データを見ると、主な乖離要因は2004年には年率でマイナス0.8%、2006年がプラス0.2%とやや大きかったが、他の年はマイナス0.1%以内の範囲に収まっている。公開データからは他に、MSCIコクサイ(配当含まず)との連動性には関係しない、組入銘柄の配当金収入などによる「その他」のプラス乖離要因が結構大きいことが読み取れる。

MAXIS海外株式(1550) 」の運用形態は、資産規模が大きく連動性の高い運用実績を有するこの「外国株式インデックスマザーファンド」を活用する形で、ファンド・オブ・ファンズ形態で行う。このため、ETFの組成と解約は現物株を拠出して現物株に交換するのではなく、現金設定・現金解約の仕組みを採っている。ETF解約時の費用として信託財産留保額(0.1%)が発生するが、これはETFを組成した投資家が解約する際に負担するコストであり、取引所で換金売り注文を出す一般投資家には関係しない。

(注)出所:「MAXIS海外株式(1550)」の目論見書

地方銀行など機関投資家の積極活用も期待し、年2回決算。株式配当金(源泉課税後、運用経費控除後)は原則として全額分配。海外での配当金に対する源泉課税率は一般の公募株式投信と同じ扱い(米国株の配当金は現在10%現地源泉課税など)。

MAXIS海外株式(1550) 」の分配金に関しては、他のETFと同様に、組入株式配当金から運用経費を控除した後の金額(円建て)を原則として全額分配するが、インデックス連動運用を行うため値上がり益や為替差益は分配しない。決算は年2回(6月と12月)行う。地方銀行など機関投資家の積極的な投資を期待して、金融機関が分配金収入を上期・下期に分けて決算計上する利便性を考慮したようだ。

組入株式の配当金に対しては、海外株に投資する一般の公募インデックスファンドや株式投信と同じく、投資国で源泉課税徴収され、源泉税をファンドの収益として取り戻すことは原則できない。つまり課税後の配当金収入が分配原資に回る。MSCIコクサイの源泉課税前の実績配当利回りは足元で年率2.5%程度。MSCIコクサイ投資国での配当源泉課税率の実勢値は現在、米国の10%など、投資対象23ヵ国の平均で10%~20%の間に収まるとみられる。

同じくMSCIコクサイ(円換算)連動型のETFとして、今年1月末に東証に先行上場した「上場MSCIコクサイ株(1680) 」(日興アセットマネジメント)では、現物株ではなく指数先物中心の運用を行っている。米国人など外国人投資家がETFを売買することにより、例えば米国人が日本経由で米国株に投資するのが可能となる点を考慮。株式配当源泉税の扱いを巡る国際的な税制上の取り決めに対応し、ファンドが現物株に投資して株式配当金に対する租税条約上の低減税率の適用を受けないような形にした場合の運用効率の低下を限定化するためだ。

この点に関し「MAXIS海外株式(1550) 」では、「日本人が投資家の主体になることを想定し、さらに外国人が投資した場合の今後の税務上の扱いは必ずしも明確になっていない」(三菱UFJ投信)ことを踏まえ、マザーファンドを通じて現物株に投資し、そのうえで海外投資国での株式配当源泉課税率は米国株の10%(現在)など、他の公募株式投信と同じ税率が適用される仕組みとしている。なお、実際に外国人がこのETFに投資した場合の扱いに関し、目論見書の“税金”の部分には「日本以外の国・地域の居住者が取得された場合、いわゆる租税条約および関連規定により、日本国外の税当局に対してファンド受益者に対する報告義務が発生することとなる可能性がある」旨の記載がある。

MSCIコクサイ(円換算)連動型インデックスファンドの信託報酬と半年間騰落率を比較――低コスト・インデックスファンドの差異は微小。MSCIコクサイ(円換算)の過去9年の値動きを“NYダウ(円換算)”と年別比較――株価上昇局面ではNYダウを上回り、下落局面では下回って推移した傾向。

MSCIコクサイ(円換算)連動型の信託報酬が安いETFおよびインデックスファンドについて、信託報酬と半年間騰落率を表に比較列挙した。この半年間は円が急伸し、米ドルに対して約8%の円高に振れたが、MSCIコクサイ(円換算)は上昇。半年間上昇率を見ると、ETFの「上場MSCIコクサイ株(1680) 」が3.9%だった以外、他のインデックスファンドは4.3%もしくは4.4%と差異は微小だった。なお「上場MSCIコクサイ株(1680) 」以外は、ネット証券や銀行(インターネット専用ファンド)において、ノーロード(無手数料)で購入可能となっている。

グラフはMSCIコクサイ(円換算)と、米国を代表する株価指数の“NYダウ(円換算)”および“日経平均”について、2002年以降の年間の動きを年別に比較したもの(注)。総じて、世界的な株価上昇局面ではMSCIコクサイ(円換算)はNYダウ(円換算)に比べて優勢に推移し、下落局面では劣後した傾向が見てとれる。MSCIコクサイでは米国株の比重が50%を超すが、残りは他の国にも投資している点や、米ドル以外の通貨に対する円相場の違いが、騰落率の差として表れたとみられる。値動きの上下への変動幅の大きさを示す価格変動リスク(2002年以降の月次騰落率の標準偏差)を測ってみると、MSCIコクサイ(円換算)の価格変動リスクはNYダウ(円換算)よりもやや大きく、日経平均と同程度だった。

(注)MSCIコクサイ(円換算)は「三菱UFJ<DC>外国株式インデックスファンド」の基準価額を採用した。組入銘柄の源泉課税後・運用経費控除後の配当金収入が基準価額に上乗せになり、この間、ファンドの分配金は出ていない。なお、NYダウおよび日経平均は採用銘柄の配当金を含まずに計算する指数。

ETFの売買全般に関わる留意点。指数への中長期の連動性を重視する場合は、成り行き注文に注意。ETFの市場価格と基準価額との連動性に関しては、市場での流動性の厚みを提供する指定証券会社の役割が重要。

ETF全般に関わることだが、ETFの大きな特徴は市場価格と基準価額との間に乖離があっても、その乖離幅は中長期的には拡大せず、縮小するように市場での値段が付くような構造が組み込まれている点にある。基準価額の公表は1日1回、ETF取引終了後の夕方以降となるが、ETFの時価である基準価額自体も指数構成銘柄や円相場の動きに伴って、日中リアルタイムで変動する性格のものだ。その変動に合わせてETFの日中取引価格も連動して上下するのが基本原理だ。ただし、海外資産で運用するETFの基準価額は時差の関係で前日の海外時価をベースに計算するため、完全連動したとしても日本時間でのETFの日中取引価格と当日夕方以降に公表される基準価額との間に、ある程度以上の乖離が発生するのは避けられない。

留意すべきは、ETFの市場価格は株価と同様に注文時間帯の需給動向次第で変動し、基準価額の動きとは無関係な値段が付くことが往々にしてあることだ。低コストの信託報酬が軽く吹き飛ぶほど乖離幅が広がる場合がある。グラフは5月以降の毎日、市場の終値と基準価額の乖離幅を3ヵ月騰落率の差として計測した例。全般的な傾向として海外資産型ETFの乖離幅は大きくなりやすい。「上場MSCIコクサイ株(1680) 」では、3ヵ月間騰落率の乖離幅が±4%を超えた日が目立つ。日本株ETFの乖離幅は海外株ETFに比べ縮小する傾向にあり、三菱グループ株で構成する「MAXIS S&P三菱系企業群上場投信(1670) 」では、この間の平均乖離幅が±0.9%程度だった。日本株指数として投資家によりなじみのあるTOPIX連動型の「MAXIS トピックス上投信(1348) 」だと乖離幅はさらに縮小し、平均で約±0.2%だった。

特に、日中の高値や安値で売買すると基準価額との乖離幅がさらに広がり、乖離は投資家収益にとってプラスにもマイナスにもなり得る。表は四本値と呼ぶ日中の始値・高値・安値・終値を基に、高安の値幅を分析したもの。国内上場の全ETFについて今年に入ってからの毎日、高値と安値の値幅差を始値と終値の平均値で割った割合を投資対象グループ別に集計した。日中の高値と安値の値幅差は結構大きいことが分かる。海外株、日本株や商品ETFでは最大値幅差が10%を超した日もある。全ETFについての全期間の平均でも高安差は1%近い。

もっとも、日中の価格変動そのものがETFの生命線だ。長期投資家のみならず、値動きの軽さを狙った短期売買を志向したり信用取引で売りから入るなど、様々な相場感を持った投資家が集合することで、ETFがいつでも売買可能となる流動性が維持される。

その一方で、日中の高値や安値に近い値段で売買すると、基準価額と大きく乖離し連動性が損なわれる恐れがある。このため、ETFの最大の特徴である低コスト運用での中長期の指数連動性を重視する投資家の場合は、成り行き注文ではなく指値注文の方が安全と言えそうだ。特に、前場開始前、後場開始前や最良気配(売り気配の最安値と買い気配の最高値)の間の値幅差(スプレッド)が広く開いている状況で、成り行き注文を出すと思わぬ値段で約定してしまう可能性がある。売買の際には、売り気配とその数量、買い気配と数量が一覧表示される、いわゆる“板”の状況が参考になる。ただし指値注文には、買い急ぐ場合や換金を迫られている時などに、より有利な値段での売買の機会を逸してしまうリスクがある。

こうした市場でのETFの流動性の厚みを提供し、ETFの基準価額連動性に関係する存在として、指定証券会社と呼ばれETFの設定と解約を行う証券会社の役割が重要になる。「MAXIS海外株式(1550) 」では現在、クレディ・スイス証券、野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の4社が指定証券会社に加わっている。今後、売買がどの程度活発に行われ、ETFの運用資産額(現在約21億円)がどう膨らんでいくかが注目点の一つになる。

なお、MSCIコクサイ指数を算出しているMSCI社では、一般投資家が日中に「MAXIS海外株式(1550) 」を市場で売買する際の参考値となるよう、情報ベンダーなどを通じて、MSCIコクサイ(円換算)のリアルタイム指数値を広く配信する計画もあるようだ。


執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2010年12月03日)

   
    

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