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投信ニューフェース 大証ETF『VIX短期先物指数』(国際投信) - 注目の投信 - 投資信託

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投信ニューフェース

大証ETF『VIX短期先物指数』(国際投信)

――「VIX」は米国株式市場の“不確実性の度合い”を数値化。VIXの値動きは株式市場と逆相関で動く傾向が強いが、VIX自体の変動率はハイリスク。連動指数の「VIX短期先物指数」は「VIX」とは異なる値動き。

“刺激の強い赤トウガラシ”。国際投信投資顧問社長がこう形容する新種のETF「VIX短期先物(1552)」が大証に上場。1口単位で売買し、上場初日の最低売買価格は1万3千円~1万5千円程度と、荒っぽい値動きでスタート。

※以下、断り書きの無いデータはすべて2010年12月17日時点。

12月20日、大証に新種のETF『国際のETF VIX短期先物指数』<以下「VIX短期先物(銘柄コード:1552) 」>が新規上場した。上場初日の終値は13200円で前日の基準価額12842円、当日の基準価額12646円をそれぞれ2.8%、4.4%上回る水準で取引された。上場後4日間の売買代金は計2.1億円。運用資産規模(約6億円、12月24日時点)に対する売買回転率は4割近くに達し、投資家の売買状況としては滑り出し順調、まずまずのスタートを切った。売買単位は1口。信用取引による売りと買いも可能。ただ、上場日の高値15100円に対し、安値は13190円で落差が1910円。上場初日の高値は終値に対し14%高となり、上場2日目の終値は前日比4.5%安と、早くも“ハイリスク”ETFの素顔の一面をのぞかせた。

VIX短期先物(1552) 」の当日夕方以降に公表される基準価額は、一般の海外資産型ファンドの基準価額と同様に時差の関係で、前日の投資資産の時価(米ドル建て)を当日午前中の米ドル・円相場で円換算した値がベースとなる。その点では、日本時間で取引されるETFの市場価格の方が、当日公表の基準価額に先行する形となる。さらに、ETFが連動を目指すのは、円換算した指数の“変動率”であって、円換算した指数の絶対値ではないことにも注意が必要。

VIX短期先物(1552) 」は国内最大規模の毎月分配型投信「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で有名な国際投信投資顧問が運用するが、同社がETFに関わりを持つのはこれが初めてではない。海外籍のETF“iシェアーズ(iShares)”(運用はブラックロック)を全面活用する形で、新興国を含む世界の株式、先進国国債やインフレ対応を意識した物価連動国債などに分散投資するバランス型ファンド「グローバルETFオープン」(税込み信託報酬は年1.20%±0.05%程度)を、2008年9月に立ち上げている。

国際投信投資顧問のETF直接運用への参入により、国内の運用会社でETFの運用を手掛けるのは8社となった。「VIX短期先物(1552) 」は投資対象が伝統的な株や債券とは異なるという点で代替投資(オルタナティブ、Alternative)型に区分できる。大証上場にあたり、国際投信投資顧問の駒形康吉社長は「使い勝手の良いボラティリティー関連商品が日本には無かったが、利便性の高いETFとして実現できた」と語り、「VIX短期先物(1552) 」を「刺激の強い赤トウガラシ」に例え、「上手に使って料理の味わいを深める調理方法を編み出す香辛料や調味料にして欲しい」と、投資家の新ETF活用に期待を込めた。

VIX短期先物(1552) 」の主な運用コストとなる信託報酬は年0.378%(税込み)。これに、直接的な投資対象となる仕組み債(リンク債)の保有コストとして年0.6%~0.8%程度などが加わり、実質運用コストは年1%程度。ETFの設定や解約を行い、流動性提供に深く関わる指定参加者は現在、バークレイズ・キャピタル証券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の2社。大証の「ETF流動性向上プログラム」には参加していないが、カブドットコム証券では売買手数料無料の“フリーETF”の一本に加わった。決算は年1回(11月)に行うが、「投資先の仕組み債には利息収入が付かない」(国際投信投資顧問)ので、分配金は出ないとみられる。

国際投信投資顧問の関連サイト:http://www.kokusai-am.co.jp/fncj037/Init.do?fundCd=160001

国際投信投資顧問によると、投資先仕組み債の発行体の候補は、運用開始前の時点でバークレイズ・バンク・ピーエルシーとゴールドマン・サックス・インターナショナルの2社。仕組み債は文字通り連動指数とほぼ同じ時価を持つような“仕組み”を有するが、債券である以上、その価格は発行体の債務返済能力を示す信用リスク(カウンター・パーティー・リスクとも呼ぶ)にも左右される。リーマン・ショック時には、商品指数連動型の仕組み債に投資していた国内公募株式投信が相次いで売買停止状態に陥った。発行体グループの経営危機を受け、仕組み債の市場での取引が成り立たない流動性喪失状態になり、適正な基準価額の算出ができなくなってしまったためだ。仕組み債の発行体の信用度によるが、市場混乱時にはこういった不測の事態が起こるリスクもゼロではない。

実質信託報酬の“年1%程度”は、ETFとしては格安コストとは言えないが、実質的な投資対象となる“VIX先物”の限月乗り換え(ロールオーバー)に要する売買コストなども考慮に入れると、国際水準比較ではさほど高くないとの見方もできそうだ。例えば、米国NY証券取引所には、同じ指数に連動するリンク債「iPath S&P 500 VIX Short-Term Futures(VXX)」(発行体は英大手金融グループのバークレイズ・バンク・ピーエルシー)がETN(Exchange Traded Note)として2009年1月から上場しており、投資家が払う費用は年0.89%。「iPath S&P 500 VIX Short-Term Futures(VXX)」の時価総額は11億ドル程度に達し、投資家の支持を集めているようだ。

VIXは米国を代表するデリバティブ市場のCBOE(シカゴオプション取引所)が算出する指数。米国株価指数S&P500の“1ヵ月間”のボラティリティー(価格変動リスク)の“予測値”を数値化。米株式相場の上下へのブレ幅の大きさを確率的な期待値で示し、投資家心理を反映。

“VIX”はVolatility Index(ボラティリティー指数)の略称で、米国の先物・オプション市場のメッカ、CBOE(Chicago Board Options Exchange、シカゴオプション取引所)が算出している。ボラティリティーとは金融商品の値動きの“不確実性”を示す指標のことで、一般には“価格変動リスク”と呼ばれる。ボラティリティーが大きいほど値動きが荒く、小さいほど緩やかな値動きをするという、金融商品価格の上下への変動幅の大きさを、変動率のバラツキ(散らばり)度合いを基に確率的に示す数値だ。金融商品のリスクを知るうえで“いろはのイ”の指標となる。

VIXは米国を代表する株価指数“S&P500”(注1)のボラティリティーを測った指数で、S&P500自体の値動きではなく、“S&P500オプション”の価格を基に算出する。

オプションは、1ヵ月後、2ヵ月後など将来の定められた満期に一定の行使価格で原資産を買う権利(Call)と売る権利(Put)を売買する。プレミアムと呼ばれるオプションの価格と原資産のボラティリティーの間には次のような関係がある。満期に至るまでの原資産価格のボラティリティーが大きくなると投資家が予想するとオプション価格は高くなり、ボラティリティーが小さくなると予想すると安くなる特性を有する。ボラティリティーが大きくなるということは権利行使が可能となる確率が高まるからだ。

こうしたオプション価格とボラティリティーなどの関係を基に、投資家が“予想する”原資産のボラティリティーをオプション価格から逆算することが可能となる。通常、オプション価格から逆算した原資産ボラティリティーのことを予測値、期待値の意味で“インプライド(Implied)ボラティリティー”と呼ぶ。これに対し、一般に価格変動リスクや標準偏差と呼ぶリスクは、指数や株価、為替相場、投資信託の基準価額など原資産価格の“過去”の変動率を基に統計的に求めるので“ヒストリカル・ボラティリティー”と呼んで区別して使う。

VIXは具体的には、CBOEが開発した近似計算式に基づき、S&P500の“1ヵ月(30日)”先のインプライド・ボラティリティーを、S&P500オプション取引参加者の一種の市場平均として算出する。VIXの単位はポイントだが実質的には、一般の価格変動リスクと同じく“年率”換算した%単位の意味を有する。VIXは市場“予測”ボラティリティーという点で、S&P500の今後の動きに対する何らかの“投資家心理”を反映した指標としての意味を持つ。なお、VIXは1ヵ月後に実測値として求まるヒストリカル・ボラティリティーに関係はするものの、1ヵ月後のヒストリカル・ボラティリティーを予測するものではなく、あくまでS&P500の1ヵ月先までの変動率の大きさを現時点で予測した数値になる。

VIXの数値としての意味合いについては、S&P500の現在の水準が1ヵ月後までに最大どの程度上下する可能性があるかを示す。VIXは年率換算した数値なので、仮にVIX=20%の場合、20%を1ヵ月換算し、市場参加者の予測値として、1ヵ月後までに現在のS&P500の水準から最大±5.8%程度までの上下へのブレが約7割(68%)の確率で起こると予想。リーマン・ショック後の2008年11月下旬につけたVIX=約81(%)の場合には、1ヵ月後までのこのブレ幅が±23.8%程度と予想したことになる(注2)。

VIXとS&P500指数の動きは逆相関の傾向が強いが、順相関の場合も。同種の「日経平均VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)」も日経平均とは逆相関の値動き。“恐怖指数”と呼ばれるが、あくまでボラティリティーの予測値であり株価指数の上下への方向性を占う指数ではない。ボラティリティーには平均回帰性と、同程度の水準が続きやすいクラスタリングという特性がある。

VIXを日本でも有名にしたのは、2008年9月のリーマン・ショック後の金融市場混乱期に指数値が飛び跳ねるように急騰。株式市場の急落と相反して急上昇したことから“恐怖指数”(fear gauge, fear index)との異名を持つ。VIXは2003年春先の米英軍によるイラク攻撃に至るまでの米株式相場急落時期や、1997年秋のアジア通貨危機の際にも急騰した。実際、1990年1月末以降、過去21年間のVIXとS&P500指数の動きを対比すると、ほぼ逆相関の関係になっていることが分かる。21年間の相関係数を(月次騰落率を基に)計算するとマイナス0.6程度だ。

グラフ1

国内株価指数についてもVIXと同じ計算手法に基づき、日本経済新聞社が日経平均のボラティリティー指数となる“日経平均VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)”を算出している(計算式の詳細部分はVIXとやや異なる)。2007年以降の日経平均VIと日経平均の逆相関関係が分かる。

グラフ2

ただVIXはあくまで、S&P500指数がどの程度まで上下に動く可能性があるかを示すボラティリティーの市場予測値であり、株式相場の方向性を占う指数ではない。VIXが上がったからと言って必ずしもS&P500が下落する訳ではないし、VIXが下がったからと言ってS&P500が上昇するとは限らない。VIXが上昇トレンドを描いた1995年以降数年間は、S&P500が上昇基調をたどった過去もある。後から振り返ると、リーマン・ショック後にVIXがピークをつけた後、2009年初に米株式相場が底入れしているが、いつVIXがピークをつけるかを知ることはできない。

VIXが恐怖指数としての本性を現す前の状態に注目すると、2007年に米サブライム・ローン問題が表面化しVIXが上昇し始める前までには、VIXは静かにじわり低下し続けていた。このように、ボラティリティーには上がり続けることも無ければ、下がり続けることもない性質があるようだ。一種の平均回帰性(Mean Reversion)を持った指標だが、下がり続けた後は穏やかな上昇局面を迎えるというよりは、金融市場の急落と共に一気に急騰する局面がこれまで何回となくあった。

ボラティリティーは別の顔も持つ。過去の動きの影響を受け、ボラティリティーが上がるとしばらくは高い状態が続き、ボラティリティーが低下すると低水準を持続する“ボラティリティー・クラスタリング”という現象があることが知られている。平均回帰性とクラスタリングの両面が絡み合いながら、日々変動するのがボラティリティーの特性と言えそうだ。

VIX短期先物(1552) 」に関しては、特に注意すべき点が2つある。VIXのボラリティリティ―がかなり大きいことと、「VIX短期先物(1552) 」の連動指数はVIXではなく、“VIX先物価格”をベースにした指数で、VIXとは値動きがかなり異なる点だ。

【注意点-1】VIXのボラティリティー(価格変動リスク)はかなり大きい。21年間のヒストリカル・ボラティリティーは約63%で、S&P500指数のヒストリカル・ボラティリティー(約15%)の4倍強。2010年に前日比±3%を超えて変動したのは2日に1日の割合。

VIXは時々刻々と変化する。“ボラティリティー=一定”では決してない。しかも、VIXの毎日の“変動率”はかなり大きい。例えば、価格変動リスク=20%に対して19%と21%は価格変動リスクの“絶対値の差”としてはそれほど大きくないとの見方ができるが、“変動率”で見ると全く異なる。20%に対して19%および21%は変動幅だと±1%の差だが、これを変動率に直すと20%に対して20分の1の±5%の変動率ということになる。この程度の変動はVIXの日々の動きとしてはごく自然に起こる。

2010年に入ってからのVIXの“1日あたりの”変動率をみると、最大上昇率は5月初旬の31.7%で、その直後に29.6%の最大下落率を記録している。2010年に前日比で±3%を超えて変動した日数を集計すると、2日に1日の割合となった。21年間のVIXのヒストリカル・ボラティリティー(月次騰落率の標準偏差を年率換算)を計算すると約63%。同じ21年間のS&P500のヒストリカル・ボラティリティー(約15%)と比較すると4倍強の大きさだ(米ドルベース)。

【注意点-2】「VIX短期先物(1552)」の連動対象はVIXではなく、S&P社が算出する“S&P 500 VIX 短期先物指数”の円換算値。連動指数(米ドルベース)は算出開始後の5年間で約84%下落。VIX先物の“限月間価格差”が影響。金融危機など大変動の続発を想定しない限り、長期で値上がりを目指すという一般的な長期保有には向かない。

VIXは指数としては有名になったが、VIXを金融商品として直接売買することは一般にできない。株式の裏付けを有する株価指数とは異なり、基本的には単なる計算数値に過ぎないからだ。この点に関し、「VIX短期先物(1552) 」が連動対象とするのはVIXではなく、S&P社が算出する“S&P 500 VIX 短期先物指数”(S&P 500 VIX Short-Term Futures Index Total Return)という指数の円換算値であり、米ドル・円相場の変動の影響も受ける。連動目標は円換算指数の絶対値ではなく、その変動率となる。

“S&P 500 VIX 短期先物指数”は、VIX自体ではなく、同じくCBOEに上場している“VIX先物”の直近1限月目と2限目の価格を基に米ドルベースで計算する指数。VIX先物の1限月目の満期が来ると、現在の2限月目を1限月目として100%組み入れ、現在の3限月を2限目として、その比重を毎日一定割合で増やす(その分、1限月目の比重を減らす)ように、日々1限月目と2限月目の配分調整を行う手法で計算する。

指数が先物を保有する場合、現金を証拠金としてレバレッジを掛けて先物を買い建てることになるため、現金部分に対し金利収入(3ヵ月物米短期国債利回り)が発生する。金利収入の有無により、“S&P 500 VIX 短期先物指数”には金利収入を上乗せしたTR(Total Return)と、金利収入を考慮せず先物価格のみで計算するER(Excess Return)の2種類ある。「VIX短期先物(1552) 」が連動対象とするのは、金利収入が加わるTRの方。指数起算日の2005年12月20日から過去5年間でTRの騰落率は、金利収入の無いERを1.7%程度上回った(米ドルベース)。

S&P社のVIX指数に関しては、VIX先物の4~7限月目の価格を基に計算する“S&P 500 VIX 中期先物指数”(S&P 500 VIX Mid-Term Futures Index Total Return)も存在する。この中期先物指数を連動対象としたバークレイズ社のETN「iPath S&P 500 VIX Mid-Term Futures(VXZ)」も現在10億ドル程度の時価総額を有し、活発に取引されているようだ。

注意しなければならないのは、同じVIXでも“VIX”と、S&P社の“S&P 500 VIX 短期先物指数”はかなり異なる動きをとってきたことだ。“S&P 500 VIX 短期先物指数”の算出起算日(2005年12月20日)から現在までの5年間に、VIX自体は11%台から16%台へ1.4倍に上昇したが、“S&P 500 VIX 短期先物指数(TR)”は約84%下落。一方、“S&P 500 VIX 中期先物指数 (TR)”の方はこの間、1.5倍に上昇した。

グラフ31
グラフ32

指数のパフォーマンスにこれだけの差がつく理由には大きく2つある。そもそもVIXとVIX先物は、トレンドが一緒でも価格(変動率)は異なる。VIX先物は1ヵ月後や2ヵ月後など将来のVIXを予想して取引するからだ。さらに指数計算方法には、1限月目から2限月目への切り替え(乗り換え、ロールオーバー)を内包している。先物価格には通常、期近価格と期先価格の間に限月間格差がある。この限月間価格差を保ちながら、または縮小、拡大しながら、先物価格が日々変動する。

問題は、指数が毎日行う部分的な限月切り替えの際に、先物特有の限月間価格差が指数値に影響を及ぼす点だ。期先高(コンタンゴ)の場合は乗り換えコスト(ロールコスト)が発生して指数のマイナス要因になりやすく、その反対に、期先安(バックワーデーション)の場合は乗り換えプレミアムが発生し指数の押し上げ要因になりやすい。この限月間価格差が指数に影響を与える現象は、商品先物で構成する商品関連指数でも同様に発生する。

期先高が指数に不利で、期先安なのに指数に有利――というのは分かりづらいかもしれないが、単純化して説明すると、期先高状態での限月乗り換えは、期近を安く売って期先を高く買うことに相当するのでマイナス要因。反対に期先安での乗り換えは、期近を高く売って期先が安く買えるという点でプラス要因になる傾向がある。

リーマン・ショックが起こった2008年の9月からしばらくはVIX先物価格が切り上がると同時に、VIX先物の2限月価格が1限月に比べて目立って安くなり、2限月安が“S&P 500 VIX 短期先物指数”の押し上げ要因に加わった。これに対し、それ以外の大半の時期には2限月高が現在まで続き、指数を押し下げる方向に働いている。

VIXとVIX先物価格の関係として注目すべき点がある。リーマン・ショック後2008年11月下旬にVIXは約81%まで切り上がったが、この時のVIX先物価格は1限月が60(ポイント=米ドル)程度、2限月が45(米ドル)程度で両方共にVIXより安く、しかも2限月が1限月に比べ15(米ドル)も安かった。VIXがピークをつけた2008年11月時点で、VIX先物価格はすでにその後のVIX低下を織り込んでいたと言えそうだ。

“S&P 500 VIX 短期先物指数(円換算)”を料理の味付け、分散投資に利用してみると。“S&P VIX 短期”1割の分散投資の例ではリターンは下振れしたが、リスクはやや縮小。ドルコスト平均法では含み益・含み損状態が様変わり。大幅な含み損状態でも金融市場の混乱を想定して、積み立て投資を継続すると含み益に転じる可能性も。

VIX短期先物(1552) 」の単独投資に関しては、価格変動リスクが大きいこと、金融市場が安定状態に入ると指数値は低水準を継続する可能性が高い点、先物価格特有の限月間格差――など不確定要因が多く、一般的な意味での長期保有には向かない。ただ、金融危機など不意に訪れる大変動に備え、S&P500指数などとの逆相関関係に注目した分散投資が有効となる場面もありそうだ。

ただし“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”は高ボラティリティーのため、中長期の分散投資をするにしても全体の価格変動リスクを抑えるうえでは、「VIX短期先物(1552) 」の組み入れは一部にとどめるのが適当とみられる。

ここでは例として、“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”を全体の10%組み入れて、“S&P 500指数(円換算)”との分散投資を2005年12月末から行った場合と、「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」との間で同様の分散投資を行った場合の運用成績を追跡してみた。いずれも“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”の比重を10%に維持するリバランス(配分調整)は行っていない。“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”は金利収入を含まずに、S&P社の計算基準で過去に遡及したQBR試算値を採用。なお「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の基準価額と“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”の間でも、リーマン・ショックを挟むこの5年間はおおむね逆相関の関係にあった(相関係数はマイナス0.5程度、月次騰落率を基に計測)。

過去5年間では“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”を1割加えた分散投資の運用成績は、“S&P500指数(円換算)”および「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の単独投資のリターンに比べ、各6%、8%下回った。その一方で、分散投資の価格変動リスクは単独投資に比べやや縮小。2008年の金融危機の頃には分散投資のリターンが単独投資を上回った場面もある。“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”のハイリスクを認識したうえで、金融不安などによる投資資産価格の下落に備えた分散投資の“香辛料”としての味付けが効く場合があるかもしれない。

グラフ42

“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”の単独投資に関して興味深いのは、2005年末からドルコスト平均法で月末積み立て投資を継続してみた場合の収益率の変化。ドルコスト平均法の収益率は投資金額合計に対する保有時価の割合で計算した。ETFは一般の投資信託と異なり、金額ベースではなく口数単位で購入するため、厳密な意味での定時定額購入はできないが、ある程度まとまった金額を継続的にETF投資に回せるとして、擬似的な積み立て投資は可能という前提を置いたうえでのシミュレーションになる。仮にETFが高くなりすぎて買い付けが無理な場合は購入を中断する場合が出てくる可能性がある。

そうすると、2008年のリーマン・ショック後には100%を超す大幅なプラス収益だったのが、昨年秋からは一転して大幅な含み損。足元は8割近い下落率だ。ただ平均購入単価が緩やかに変動するのに対し、“S&P 500 VIX 短期先物指数 (円換算)”の変動は激しい。新たな金融危機でVIXが急騰すると、一転して含み益に転ずる可能性が無くはない。

VIXは“炭鉱のカナリア”か。じわり下がり続けるVIXは混乱の匂いをかぎつける予兆(シグナル)になる場合も。身近になったボラティリティーを通じて、株式市場の変調を知る判断材料に。

VIXは恐怖指数としての側面が注目されやすいが、市場関係者の間にはすでに、恐怖に至る前の段階で不穏な気配を感じとっていた向きもあった。2004年から2007年にかけ、右肩上がりに上昇を続ける株式市場とは逆行し、VIXは10%台前半までじわり低下。心地良い水準だが、VIXの過去21年間の平均(20%程度)を大幅に下回る水準が続いたのは異常値とも言えた。“炭鉱のカナリア”が危険を感知するように、何かただならぬ事態が進行しているのをVIXが察知していたとの見方もできる。それが、リーマン・ショックにつながる米住宅バブル崩壊の前触れであったことを知らずとも。2005年にはグリーンスパン前FRB(米連邦準備理事会)議長が、政策金利を引き上げても長期金利がなかなか上がらないことを “謎(コナンドラム、Conundrum)”と発言。金融市場の平穏さにある種の警戒感を表明した。VIXの静かな低下局面は、異例とも言える米長短金利の逆転現象が続いた時期に重なる。

ボラティリティーは平均回帰する特性を有するとされる。時期は分からないものの、下がり過ぎたボラティリティーはいずれ上がる。足元のVIXは16%台まで低下。これは、米国の追加量的緩和政策(QE2、Quantitative Easing 2)を受けた新たな過剰流動性相場の始まりを意味するのか、それとも次なる金融不安への予兆なのか。世界を見渡すと、中国の高インフレや不動産バブルの行方、朝鮮半島情勢や欧州の債務問題、各地で荒れ狂う異常気象、世界主要国G20の間での経済成長率や経常収支の不均衡問題など、世界経済を揺るがしそうな不安材料には事欠かない。「VIX短期先物(1552) 」や日経平均VIで身近になったボラティリティーを通じて、株式市場の変調を自分なりに判断する情報源がまた一つ増えた。

VIXの理論的背景を知る。金融工学の金字塔“ブラック=ショールズ方程式”から求まるインプライド・ボラティリティーをより実際的に拡張。将来のボラティリティーを取引する考えた方から生まれた“バリアンス・スワップ”(分散の交換)と言う画期的手法をベースにして計算式をモデル化。

CBOEは2003年にVIXの計算方法を現在の仕組みに改訂。計算式は、ゴールドマン・サックスの計量戦略研究ノート(Quantitative Strategies Research Notes)の中で1999年に提唱された“バリアンス・スワップ”(分散の交換、Variance Swap)という手法をベースにモデル(近似計算)化されている。“バリアンス(分散)”というのは、ボラティリティーの2乗を指すが、将来のボラティリティーを売買するうえで、精度の高いインプライド・ボラティリティーを実際の市場の中でどのように推計するのが適切かという考え方で生まれた画期的手法だ。オプションのボラティリティーが行使価格の2乗に深く関わりがあることを洞察し、個別のオプション価格のインプライド・ボラティリティーを平均するのではなく、複数の行使価格や複数の限月にまたがるオプションを“ポートフォリオ”とみなし、ポートフォリオ全体のインプライド・ボラティリティーを一つに捉えようとした点に斬新性がある。

それまでは、オプション価格を求める公式として1973年に公表された“ブラック=ショールズ方程式(BS式、Black-Scholes formula)”を基にして、オプション価格から逆算して求まるインプライド・ボラティリティーをベースにしたVIXが計算されていた。ただBS式は、オプション満期までのボラティリティーに変化がない、行使価格によらずボラティリティーは一定、原資産の価格変動は連続的にランダム・ウォーク(不規則に変動)し正規分布に従う――など、いくつかの現実離れした仮定を前提に成立する理論式である。

これに対し、“バリアンス・スワップ”手法から求まるインプライド・ボラティリティーはこうした制約条件のほとんどから解放され、BS式など特定のオプション価格推計モデルに依存しないという点で、“モデルフリー・インプライド・ボラティリティー”とも呼ばれる。BS式からインプライド・ボラティリティーを求めるにはコンピュータでの収束演算が必要なのに対し、“バリアンス・スワップ”方式によるインプライド・ボラティリティーを近似計算するには、OTM(Out of The Money、現在株価よりも高い行使価格に対するCall及び現在株価よりも低い行使価格のPut)の価格をベースにした四則演算で済むのも、新鮮な驚きとなる。

VIXは市場心理を反映する指標としての有用性は広く認知されているが、計算結果にある種の誤差が発生する点も指摘されている。実際のオプション市場では取引できる行使価格が無数ある訳ではなく価格帯に限りがあることや、行使価格には刻み幅があり連続していない。このため、VIXはモデルフリー・インプライド・ボラティリティーとしての理論式を実際のオプション市場にあてはめて近似計算している。

近似計算されたVIXのインプライド・ボラティリティーとしての精度に関しては、ファイナンス系学術論文を中心に各種の実証研究結果がこれまでに報告されている。その中では、行使価格の設定価格帯に限度があることから、S&P500が不連続にジャンプして変動した場合、特に金融危機での株式相場急落場面にはVIXは本来あるべき数値に対し下方乖離しやすいことや、実際の行使価格には刻み幅があるためプラス乖離しやすいことなどが指摘されている。こうした近似計算誤差を分析したうえで、VIXをベースにしたより精度の高いインプライド・ボラティリティーを算出する改良計算モデルの研究開発も行われている。大阪大学のCSFI(金融・保険教育研究センター)が取り組み、日経平均のインプライド・ボラティリティーを指標化した“CSFI-VXJ(Volatility Index Japan)”もその一つ。

VIX、日経平均VI、大阪大学のCSFI-VXJおよびS&P 500 VIX短期先物指数の算出方式などの詳細については、それぞれCBOE、日本経済新聞社、大阪大学CSFI、S&P社のサイトに公開されている。

(注1)S&P500
S&P社が米国株式市場の大型株500社について時価総額加重平均方式で計算している平均株価指数で、略称はSPX。時価総額は大株主が保有する固定株数などを除き、実際に市場に流通している株数をベースに計算した浮動株数調整後。30社で構成し1世紀以上の歴史を有する“NYダウ”と並び、米国株式市場を代表する平均株価指数。日興アセットマネジメントがS&P500(円換算値)への変動率の連動を目指して運用するETF「上場S&P500米国株(1547) 」が、10月末に東証に上場している。

(注2)年率換算したボラティリティーの1ヵ月換算
 ボラティリティーは年率換算した数値として表示されるが、これを1ヵ月換算するには、1年=12ヵ月の“12”の平方根(ルート)で割って計算する。
 “約7割(68%)の確率”については、株価や株価指数が連続的にランダム・ウォーク(不規則変動)し、その変動率が正規分布(Normal Distribution)する前提に立った確率。正規分布は平均変動率(期待変動率)を中心に左右対称の“釣り鐘”状態を描き、別名ベルカーブとも呼ばれる。統計的な意味付けを行ったとされる18世紀~19世紀に活躍したドイツの大数学者ガウスの名を取って、ガウス分布と呼ぶこともある。統計数学的には最も美しい理想的な分布の一つとされるが、実際の株価変動や投資信託の基準価額の変動が、美しい正規分布で表せることはほとんど無く、分布に何らかの歪みを生じる。
 特に、金融市場の混乱期には分布がマイナス方向に偏るケースや、裾が極端に広く厚い“ファット・テール”という現象が確認できる。その意味では、“約7割”の確率は正規分布の前提をおいた目安に過ぎない。ただし、ボラティリティーの大小が価格変動リスクの大きさを示すという関係は変わらない。
 開発者の名前を冠したBS式に関しては、金融工学の金字塔として関係者が1997年のノーベル経済学賞受賞の栄誉に浴したが、その翌年の1998年に、運営に関わった巨大ヘッジファンド(LTCM)がロシア危機のあおりを受け破綻。市場の流動性が著しく枯渇し、売りが売りを呼ぶ金融市場急落時には、最先端のリスク管理手法も歯が立たなかったことがクローズアップされた。ただBS式に関してはモデル誕生後40年近く経った今なお、汎用的で明解なオプション価格推計モデルとしての役目を失っていず、多くの金融工学に関する計算モデルの基礎として広く活用されている。その意味では制約条件やクセ、限界を理解したうえで利用すべきモデルと言える。


執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2010年12月27日)

 
   
    

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