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投信フォーカス - 「J-REITのボラティリティー上昇の背景を探る ― ニッセイ基礎研究所に聞く」 - 注目の投信(第68回) - 投資信託

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投資信託 [ 注目の投信 ]

【第68回】

投信フォーカス

J-REITのボラティリティー上昇の背景を探る ― ニッセイ基礎研究所に聞く

REIT(不動産投資信託)は、オフィスや商業施設、マンションなど賃貸不動産に投資し、そこから生じる収益全額を投資家へ分配する金融商品だ。国内では2001年9月に2銘柄が上場されてから6年半が経過、現在では42銘柄が上場し時価総額は4.2兆円に達する(08年4月末時点)。

 一般に、REIT投資は価格変動リスクを伴うものの、債券投資などに比べて高い分配金利回りを期待できるため、ミドルリスク・ミドルリターン型の商品として位置づけられてきた。ところが、この1年くらいの間、REITのボラティリティーは上昇しハイリスク型の商品に変質してしまった。この傾向は日本に限らず世界的に共通している。

 グラフ-1は、世界のREIT指数のボラティリティーの推移を示したもの。ボラティリティーとは値動きのブレ幅を示す指標で、価格変動リスクとも呼ぶ。ボラティリティーは、値が大きいほど値動きが荒いことを示し、この1年間での急上昇が鮮明だ。世界を代表する株価指数の「NYダウ」のボラティリティーをも抜き去っている。

 グラフ-2で、J-REIT(国内REIT)指数とTOPIX(東証株価指数)のボラティリティーの推移を比較した。J-REIT指数は、昨年5月の最高値から今年3月の最安値まで半値に下落するなか、J-REITのボラティリティーはTOPIXを上回ってきている。

 さらに、REITは株式と値動きの傾向が異なる商品であったが、最近ではその傾向が似てきた。グラフ-1とグラフ-2の最下段に、相関係数(注1)と呼ぶREITと株式の値動きの連動性をあわせて示す。資産分散型投信の多くは、株式・債券・REITを組み合わせることでリスク軽減を目指すが、REITのボラティリティー上昇に加えて、株式との連動性が高まったことで分散投資効果が急低下したことになる。

 J-REITのボラティリティー上昇の背景とその影響について、ニッセイ基礎研究所・投資助言室の岩佐浩人チーフインベストメントアドバイザーに聞いた。岩佐氏は、昨年10月にQUICK端末サービスにて、J-REITのボラティリティー上昇がもたらす需給動向への影響についての解説レポートを公表している。

 岩佐氏は、ボラティリティー上昇は米サブプライムローン問題の深刻化により外国人投資家が換金性の高いJ-REITを一斉に売却した影響が大きく、投資家のリスク回避的な動きが収まってくるにつれ、いずれJ-REIT本来の水準に低下するとしている。加えて、ボラティリティーの上昇が需給にマイナスの影響をもたらした点についても指摘している。

J-REITのボラティリティーが上昇した背景は何か。

不動産全般に対する資金フローがグローバル化するなか、J-REIT市場では取引シェアで約60%を占める外国人投資家の影響力が高まっている(グラフ-3)。日本の堅調な不動産ファンダメンタルズ(空室率や賃料など)に着目した外国人投資家が、06年12月から07年5月までの半年間でJ-REITを4400億円超買い越した結果(グラフ-4)、投資口価格(株価)は急上昇し、J-REIT市場全体の分配金利回りは平均で2.5%台に低下した。しかし、その後の米サブプライムローン問題に端を発する世界的な信用収縮の広がりから、換金性の高いJ-REITを売却に転じた結果、大幅に調整することになった。

J―REITの投資口価格について、過去1年間の週次ボラティリティー(年率)を計算すると、市場創設来、株式と債券の中間で推移してきたが、足元では国内株式を大きく上回る35%程度にまで上昇している。ボラティリティーの上昇は、米国REITや豪州REITなど世界のREIT市場にも共通するが、中でもJ-REITが最も高くなっている。J-REITは米国REITとは異なり、原則として不動産の開発行為は認められておらず不動産賃貸事業に特化している。また、海外不動産に投資した豪州REITのように、信用収縮の影響からリファイナンスリスクが顕在化し投資口価格が急落した事例も生じていない。このため、J-REITのボラティリティー上昇は行き過ぎで、J-REITのキャッシュフローは安定していることから、金融市場におけるリスク回避的な動きが鎮静化すれば、本来の商品性を反映した水準に低下すると考えている。

(グラフ-3)J-REITの投資主体別売買代金比率の推移(2003年4月~2008年3月)

(出所)東京証券取引所のデータをもとにニッセイ基礎研究所作成。

ボラティリティーの上昇による市場への影響は。

需給面でマイナスであろう。一つは個人マネーが集まりこれまで安定した買い主体であった投資信託、もう一つは新たな投資家層として期待される年金資金への影響だ。昨年9月末に施行された金融商品取引法は、投資家保護を主旨として個人投資家に対する商品リスクの説明やリスク許容度に応じた販売姿勢を求めている。ボラティリティー上昇により、J-REIT投信はミドルリスク型商品であるとの説明が難しくなっており、昨年10月以降、投資信託を経由した資金流入は大きく落ち込んでいる(グラフ-4)。また、年金運用ではオルタナティブ投資(代替投資)の一環としてJ-REITの認知度は高まっているが、J-REITが債券代替投資としてはリスクが高く、株式代替投資としては株式との相関が高く分散投資効果が小さいと判断すれば、ヘッジファンドなど他の代替投資へ年金資金が流れる可能性がある。

運用難などを背景に債券代替投資として、早い段階からJ-REIT投資を積極的に行ってきた金融機関もある。金融機関がリスク管理手法としてVaR(バリュー・アット・リスク)を採用する場合、保有資産のボラティリティーを基に想定最大損失額を計算して、J-REIT投資に見合った自己資本金額を算出するため、ボラティリティーが上昇すると必要となる自己資本額が不足し、保有するJ-REIT資産を強制的に売却することもある。これに金融機関のロスカットルールが相まって、市場急落に拍車をかけた可能性がある。

(グラフ-4)外国人投資家、投資信託のJ-REIT売買動向(2006年1月~2008年3月)

(出所)東京証券取引所のデータをもとにニッセイ基礎研究所作成。

今後の注目材料は。

6月に東証REIT指数先物取引がスタートする。やや流動性の劣るJ-REIT市場に先物取引が導入され、市場効率性が向上し市場へのアクセスが容易となることで、新たな投資家層の取り込みが期待される。もっとも、J-REITは時価総額4兆円、時価総額上位2銘柄で市場ウェイトの30%を占めるやや偏りのある市場。市場規模が100倍近い株式市場でさえ、先物主導で株価が大きく変動することがあり、先物取引が価格形成の撹乱要因となるのか、その影響度合いを注視する必要がある。

J-REITの価格水準をどうみるか。懸念材料はないか。

J-REIT市場全体で見ると、年間の分配金が2000億円。投資家のエクイティ出資が3.7兆円、保有物件の含み益(鑑定評価額-簿価)1兆円に対して、時価総額は両者の合計を下回る4.2兆円(利回り約5%)となっており、安定的な分配金の期待できる利回り商品として魅力ある水準にまで価格調整したのではないか。

一方、投資口価格の低迷する住宅系REITが、1口当たり出資金を約45%下回る価格での第3者割当増資を発表、既存投資主の持分希薄化と分配金の下方修正が生じるといったケースも出てきた。投資口価格が低迷し、LTV(有利子負債比率)が50%を超え財務方針の上限に近づいているREITも多いが、既存投資主の持分希薄化が多発するようになると、多くの投資家がバリュエーションといった評価の物差しや資産運用会社への信頼を失い、REIT市場全体に対する不信感(リスクプレミアム拡大)に繋がる恐れがある。

個人投資家がJ-REITに直接投資する際の留意点は。

分配金利回りの高さのみに目を奪われて購入しないこと。利回り格差には、将来の分配金成長率の差が反映されているほか、物件売買益を含んだ分配金により一時的に利回りが上昇しているケースもある。不動産取引市場が調整局面を迎えるなか、継続的に売却益を計上し分配金を維持できるか不確実性が高まっている。

J-REIT間で資金調達コストに格差が生じていることもあり、保有物件の質や資産運用会社の不動産運営力・財務運営力を総合的に判断する必要がある。個人投資家には容易でない面もあるが、分析対象となる銘柄数は株式に比べ圧倒的に少なく、各J-REITはHPサイトで保有物件の紹介や決算説明会の資料・動画を配信するなど情報開示を充実させており、これらを参考に銘柄の選別・分散を図ることが重要ではないか。

(注1)相関係数:2つの金融商品について、過去の値動きの連動性を示す統計値。-1~+1の間の値をとり、-1に近いほど値動きが正反対、+1に近いほど値動きが一致、±0に近いほど値動きに関連性が無かったことを示す。一般に、複数の金融商品を組み合わせて全体のリスク軽減を目指す分散効果を期待するうえでは、相関係数がマイナスもしくは小さめとなる組み合わせに投資することが有効とされる。

インタビュー2008年4月 聞き手:QBR 高瀬浩(掲載日:2008年5月14日)

 
   
    

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