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「かぶオプ」におけるボラティリティの考え方 - 先物・オプション

 

先物・オプション [ 「かぶオプ」買い方・売り方 ]

シンプレクス・インスティテュート取締役 塙麻紀子の「かぶオプ」個人投資家向け週刊コラム

「かぶオプ」におけるボラティリティの考え方

皆さんは、「ボラティリティ」ということばをご存知でしょうか。リーマンショック以降、投資家の不安心理を表すVIX指数(ボラティリティ・インデックス)が注目されるようになったので、耳にしたこともあると思います。実は、投資家の中でも特にオプションの市場参加者は、「ボラティリティ」を非常に重視しています。今回は、この「ボラティリティ」がどのような意味を持ち、「かぶオプ」投資家たちの間でどのように使われているのかを簡単に説明しましょう。

まず、「ボラティリティ」とは、株などの値段が変化する度合い、つまり変化の激しさを「(年率)○○%」というかたちで表すものです。一般的に、市場が荒れるとボラティリティは高くなり、逆に静かな相場ではボラティリティは低くなります。

実は、「ボラティリティ」には2種類あります。ひとつは「HV」と呼ばれる「ヒストリカル・ボラティリティ(Historical Volatility )」と、もうひとつは「IV」と呼ばれる「インプライド・ボラティリティ(Implied Volatility)」ですが、意味合いが異なるので使い分けが必要です。

「HV」は、過去の一定期間の実際の相場についてのボラティリティです。詳しい説明は省きますが、ある株式の過去の終値データさえあれば、HVは計算で求めることができます。当サイトのこちらのページには、主要銘柄のHVが掲載されており、HVの高い順・低い順にソートもできて、なかなか便利です。


2011年9月14日9時42分
クイックマネーライフ「先物・オプション」オプション原資産一覧(HVの低い順)

上記の表は、クイックマネーライフに掲載されていた、2011年9月14日午前9時42分時点でのHVの一覧です。HV順にソートしてみると、HVの最も低い銘柄は「4502:武田薬品」で10.02%、HVが高い銘柄は「6976:太陽誘電」で58.17%、「9501:東京電力」で53.07%と、銘柄によってかなり開きがあります。いわゆるディフェンシブ銘柄である武田のHVは相対的にかなり低く、このところ値動きのかなり激しかった太陽誘電や東電のHVは高い、というのは、実感にも合っていますね。ちなみに、株価指数であるTOPIXのHVは、このところ大体20%前後で推移しています。

次に「IV」ですが、これは市場参加者たちが予想する将来のボラティリティです。「予想」といっても、いわゆる経済指標の事前予想のような、アナリストたちが予想する数字ではありません。実は、「IV」は市場で売買されている「オプションの値段」から逆算して求めるのです。

では、実際のIVの例を少し見てみましょう。

2011年9月14日、日産自動車(7201)の終値とリコー(7752)の終値は、どちらも「648円」でしたが、その時のATM(アット・ザ・マネー)である権利行使価格650円の期近のコールの値段を見ると、日産は28.0円、リコーは19.5円でした。

 

限月も権利行使価格も、原資産である株価の値段も全く同じなのに、これらのコールの値段が、何故こんなに違うのでしょうか。実は、この主な理由は、IVが異なるからなのです。

(注)予想配当も違いますが、比較的軽微であるためここでは無視します。

(注)OP価格の決まり方について詳しく知りたい方は、かぶオプナビをご覧下さい。

上記の表の「IV」を見ると、「日産自動車10月650コール」のIVは46.3%、「リコー10月650コール」は38.3%で、8%もIVが違います。オプションは、他の条件が同じなら、IVが高いオプションの方が値段も高いという特性があるので、日産自動車の方が、リコーよりもオプションの値段も高くなるというわけなのです。

では、なぜ日産自動車の方がリコーよりもIVが高いかというと、市場参加者たちは、リコーよりも日産の方が、今後の値動きが激しいと考えているからです。その根拠のひとつとして、HVの高さを挙げることができます。実際、クイックマネーライフのデータによれば、9月14日時点で、日産自動車のHVは47.5%、リコーは34.6%でした。過去の値動きを見る限り、今後も日産の方がリコーよりも値動きが激しくなるだろうと予想するのが自然です。よって、日産のIVはリコーよりも高めなのです。もちろん、HVは過去のボラティリティなので、将来のボラティリティの予想であるIVは様々な理由によって変化します。例えば決算発表など将来のイベントに対する市場参加者の期待感や、単に需給によってもIVは変わります。また、買気配と売気配のいずれが約定するかによって、IVは数%以上違うこともあります。

手慣れたオプション・トレーダーたちは、取引の際にIVもチェックしています。オプション・トレーダーは、単に株価の上下の相場観だけで市場に参加しているのではありません。現物株のポジションとの絡みもあるので一概には言えませんが、基本的には、今後IVが上がると思うならばオプションの「買い」戦略を取りますし、IVが下がると思うならばオプションの「売り」戦略を取ったりします。また、ある「かぶオプ」の値段を見て、IVが割安だと思えば買いますし、割高だと思ったら売ったりします。

このように、オプション市場では、トレーダーたちは、株価の上下の予想だけでなく、IVを見てオプションを売買しているものなのです。IVという概念は、最初はとっつきにくいかもしれませんが、勉強してみると投資の世界が広がりますよ。

ただし、現状は、個人投資家が「かぶオプ」のIV等のデータを入手しにくいのが難点です。前営業日のHVやIVのデータは東証のサイトよりダウンロードできますが、IVデータをリアルタイムで提供している証券会社は少ないので、今後のサービスの拡充に期待したいところです。

 

プロフィール :塙 麻紀子(はなわ まきこ)
株式会社シンプレクス・インスティテュート取締役
 
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会AFP認定者
慶応義塾大学法学部法律学科卒。学生時代より、ベンチャー企業での新事業の立ち上げ等に関わり、2001年よりシンプレクス・インスティテュートに勤務。本業の傍ら、個人投資家として、主に日経平均先物・オプション、日経225miniの売買を行っている。セミナーや講演会にて、デリバティブの啓蒙・教育活動も行っている。
 
 

Fanet MoneyLife(掲載日:2011年09月22日)

   
    

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