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【国際ニュースはココを読め - 第3回 】~25%節電は本当に必要か

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特集・コラム [ 蟹瀬誠一コラム ]

蟹瀬誠一の国際ニュースはココを読め 第3回

~25%節電は本当に必要か

蟹瀬誠一氏
明治大学国際日本学部長
国際ジャーナリスト 
蟹瀬誠一氏
どうも世の中節電ブームのようだ。さまざまな節電グッズが売れ行きを伸ばし、自宅では妻がそこいら中の電気を消して回る。都内の地下鉄はエアコンが切られており、車掌さんが窓開け協力のアナウンスをする。
電気使用量がピークを打つのはまだ先のことなのに、今から予行練習なのだろうか。電気を貯めておくことはできないのだから、電気使用量にまだ余裕のある今から節電に躍起になったところで、別段、大きな効果があるわけではない。
ひょっとしたら、この夏の節電は実は必要ないのではないか。節電に反対するつもりはないが、政府が打ち出している節電目標値には、ある種の作為が感じられるのだ。
経済産業省は当初、今夏に行われる電力供給対策で、瞬間最大使用電力を25%削減することを、大口電力利用者に要請する方針を打ち出した。
以来、さまざまなメディアを通して、電気の供給不足、大停電の恐れ、経済活動全般に及ぼす影響などが、盛んに喧伝されるようになった。これだけ「電気が足りない」という情報が流布されれば、皆で協力して節電しようという気持ちにもなろうというものだ。
これが経済産業省の目論見だとしたら、どうだろうか。 4月28日、海江田経済産業相は閣議後会見で、25%の削減目標を15%に引き下げることを明らかにした。一体、これはどういうことなのだろうか。25%という数字には、何か意図があったように思えてならない。
たとえばこういうことだ。
福島第一原発事故をきっかけに、日本全国で原子力発電に対する風当たりが強まっている。これまで、原発政策を推進してきた経済産業省としては、長年にわたって続けてきた努力をみすみす捨てるのは忍びない。
そこで、彼らが考えたのは、「電気が足りない→電気が足りないとこれだけ生活は不便になる→だから原子力発電は必要なのだ」というロジックだ。これによって、原子力発電の必要性を世の中に再認識させようという目論見である。
だからこそ、電力使用量の削減目標を25%という非常に高いところに置こうとした。
しかし、25%という節電目標が設定された時には議論されなかったようだが、実は「揚水発電」の仕組みを用いれば、25%も削減する必要はない。揚水発電とは、夜間の余剰電力を利用して、下貯水池から上貯水池にポンプで水を汲み上げて、日中の電力使用量の多い時間帯に水力発電を行い、ピーク時の電力供給を補完しようというものである。 もちろん、それによって対応できるのは、水を流すことのできる数時間だが、電力不足というのは、たとえ真夏でも終日続くわけではない。電力使用がピークに達する数時間だけ対応できれば良いのだ。
それでも足りないのであれば、節電で対応する必要性も出てくるが、政府が打ち出している25%もの削減は必要なかった。結局、節電目標が15%に削減に引き下げられたことで、25%という数字が、ある種の作為を持っていたことがばれてしまった。
また、節電目標をめぐる今回のゴタゴタでは、「25%削減」という数字が独り歩きした感もあったが、これには大手メディアの影響も無視できない。テレビにしても新聞にしても、今やほとんど官報状態だ。
メディアというものは、自分の足で情報を集め、その中身を吟味し、テレビや新聞などの媒体を通じて、世の中に情報を提供するのが本当の姿だが、最近の大手メディアは、記者クラブ制度の上に胡坐をかき、お上から下りてくる情報をそのまま掲載している。政府が「25%削減」と言えば、それをそのまま報道してしまう。
25%という数字にはどういう根拠があるのか、その根拠は本当に正しいのか、といったことは、メディアなら当然、疑問に思うべきだし、それを政府にぶつけて、情報の精度を高めていく必要がある。それもせずに、単に政府発表の数字だけを垂れ流すというのは、記者クラブ制度の弊害そのものといえるだろう。
その垂れ流されている情報を鵜呑みにし、行き過ぎた節電を行うと、今度は日本の経済活動そのものが停滞し、景気低迷やデフレが長引いてしまう恐れがある。これでは本末転倒だ。いや、日本の景気の低迷ぶりから考えると、節電する必要もないかもしれない。
蟹瀬誠一氏
とはいえ、これを機に私たちも、必要以上に電気を使わない、新しいライフスタイルを模索しても良いだろう。ヨーロッパに行くと分かるが、日本の夜は無駄に明るい。そもそも日本人には、「陰影」というものに美を見出す文化があるのだから、それを見直す良い機会にもなる。
戦後に一度だけ実施して不評だったサマータイムの導入を見直すのも、ひとつの手だ。当時は高度経済成長期だったため、ともすれば労働時間の延長につながりやすいサマータイムは、労働強化のきっかけになるということで反対意見も多かったが、今や日本経済は成熟期に入っている。サマータイムを導入したからといって、それが即、労働強化につながるようなことはないだろう。
私もかつて、米国に留学していた時、サマータイムを経験したことがあるが、仕事が終わっても外が明るいので、皆で野球の試合をした後、バーベキューを楽しんでから帰宅することもあった。それでも、現地は夜の9時過ぎまで明るいので、まだ空が明るいうちに、自宅に帰ることができる。本当に、1日を有効に使った気分になったものだ。
もっといえば、これを機に産業構造の転換を目指すということも考えられる。日本は工業大国であるが故に、どうしても電気をはじめとしてエネルギーを多く使う経済構造になっている。中長期的には、この構造自体を見直して、脱工業国化を図るというのはどうだろうか。
何をするにもお金がかかる。財源はどうするのだ、という意見もあるだろう。今回の災害復興にかかる資金は最大で25兆円といわれているが、恐らくそれだけでは済まない。
今、政府では消費税引き上げなどの増税策が議論されているが、額にして30兆円とも言われている埋蔵金を、復興資金に回すことはできないのだろうか。まず増税ありきという議論には、どうも違和感を覚えるし、現時点における増税は、更なる景気の低迷とデフレの悪化を招く恐れがある。
そしてこれを機に、将来的には税制そのものをドラスティックに見直しても良いだろう。たとえば所得税、法人税、相続税をゼロにして、10%の付加価値税を課したとしても、名目GDPが500兆円を維持できれば、50兆円の税収は期待できる。
あの震災から2カ月が過ぎた。政府がやるべきこと、私たち個人がやれることは、まだたくさんある。ここで一度、日本の総決算を行うつもりになって、諸制度やビジネス慣行の見直しを行ってみてはどうだろうか。
掲載日:2011年月06月01日

プロフィール
蟹瀬誠一(かにせ せいいち)氏プロフィール
明治大学国際日本学部長
元スーパーモーニングニュースキャスター
米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米『TIME』誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。
文化放送「蟹瀬誠一、ネクスト」のパーソナリティ、『経済討論バトル頂上決戦』 (朝日ニュースター)『賢者の選択』(BS朝日) 『地球感動配達人 走れ!ポストマン』(TBS)などのキャスター・レギュラーコメンテーターを務め、カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2004年から明治大学文学部教授、2008年から同大学国際日本学部長に就任。
 
   
    

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