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+YOUニッポン応援全国キャラバン(東証アカデミー特別編)「アナリストレポートの読み方 講座」

金融最前線

 

企業の「利益の成長性」を見つける読み方とは?運用・調査の現場から具体的な視点を豊富に紹介

東京証券取引所は2月17日、東証ホールで個人投資家向けの「アナリストレポート読み方講座」を開催した。第一部の講師にはレオス・キャピタルワークス最高運用責任者の藤野英人氏を迎え、「ファンドマネージャーはここを見る! ニュースや企業業績・街角景気の見方」と題した講演をおこなった。第二部には、株式会社QBR QUICK企業研究所調査部のチーフアナリストである山藤秀明氏が登壇。自らが実践している具体的なアナリストレポートの読み方を解説した。その内容を抜粋して紹介する。



ファンドマネージャーはここを見る!ニュースや企業業績・街角景気の見方
日本には利益が伸びている会社がたくさんある!

レオス・キャピタルワークス
最高運用責任者 藤野英人氏

第一部に登壇した藤野英人は、まず日本株式市場についての"誤解"を指摘した。

「2002年12月から2012年12月までの10年間におけるTOPIXのパフォーマンスは+2%でした。2002年12月に上場していた企業のうち、同じ10年間で株価が上昇した企業は約70%(1,705社)もありました。その1,705社の株価は10年で平均約2.1倍に、利益は同じく約2倍まで成長しています。また、1,705社のうちいわゆる大型株(大企業)は4%しかありませんでした。アベノミクスによる株価上昇まで日本企業に元気がなかったというのは誤解で、"大企業は元気がなかったが成長企業はたくさんあった"というのが正しい」。

「大企業だから伸び悩み、小さい新興企業だから成長する、というわけではありません。利益が伸びるかどうかということ。企業の利益と株価は長期的には一致します。そして、日本には利益が伸びている会社がたくさんある。最近の日経会社情報や会社四季報を見てみてください。『増』『最高』『絶好調』という言葉が目立ちます。このような成長する会社を見つけて投資することが成功の秘密です」。

身の回りの情報を"自分事"として見る習慣を

さらに藤野氏は、ファンドマネージャーとしてのべ5,500人以上の経営者と面談した経験から、有望銘柄を発掘するための視点を紹介した。

  • 業種や財務内容に比べて株価が割安
  • 今後の成長性が期待できる
  • 財務内容が良好である
  • 業種や企業のことがよく理解できる
  • 身近な企業
  • その企業の株主であることに誇りがもてる

「以上のような観点から、自分が納得したときが『買いどき』で、これらが満たされなくなったり納得できなくなったりしたときが『売りどき』といえます。情報やニュースに対する心構えとしては、自分の好奇心を広げて"自分事"として考える習慣をつけたいですね。つまり、自分の身近な身の回りの情報が宝の山なのです。普通に町を歩いていても、店頭の情報や電車のつり革広告、人びとのファッショントレンドや装飾品、何気なく聞こえてくる会話や話題、いつも行くレストランのお客さんの雰囲気――。これからみんな、わたしも注意している情報です」。

藤野氏は「企業のホームページは情報の宝庫」としながら、ひとつの見方を提案した。 「企業IRは、経営トップが先頭に立って自らの言葉で語りかける姿が求められます。たとえば自社のホームページに社長の顔写真が載っているかどうか、トップメッセージの主語の違い(「私/私たち」と「当社/社名など」など)といったところに真摯さが表れるのではないだろうかと考えました。そして、その違いがリーマン・ショック後の株価とどのように関係しているのかをまとめてみたのです。結果として、株価推移に大きな違いが出ています(グラフ参照)」。
このような視点で企業ホームページを見て、有望銘柄を探し出してみるのも興味深い。

【企業ホームページのコンテンツの違いによる株価推移】
期間:2008年11月~2013年2月、2008年10月末=100
出所:レオス・キャピタルワークス調べ

アナリストレポートの読み方と銘柄選びの勘所
株式会社QBR QUICK企業研究所
調査部チーフアナリスト 山藤秀明氏

レポートを読む前にホームページで企業概要を確認

アナリストレポートの発行者として、約20名のレポートを日々チェックしています。繁忙期だと、1日に10銘柄分ぐらいのレポートを読みます。そこでの私自身の経験とノウハウを踏まえた、アナリストレポートのわかりやすい読み方をお話しします。

大きく基本編と応用編の2つに分けてみます。まず基本編。ポイントは5つあります。ひとつめは「相手(銘柄)を知ること」です。

アナリストレポートは企業紹介レポートではありません。一部上場の有名企業は別ですが、新興市場の若い企業などは、いきなりレポートを読んでも何をしている企業なのか、わからないと思います。レポートを読む前に当該企業のホームページなどで事前に銘柄(企業)の概要を確認しましょう。最近は、ホームページで個人投資家向けに事業内容や経営方針、業績、事業リスクなどをわかりやすく説明。専門用語を解説している企業も多くあります。
一方のアナリストレポートには何が書かれているのでしょうか。企業側の公開情報に加えて、業界動向や同業他社との比較、財務分析、業績予想、事業リスクなど、投資判断をおこなうにあたって、アナリストが重要と判断した情報をまとめています。つまり、アナリスト自身のエッセンスが含まれているわけです。
そのエッセンスを読み取ることが、上手なレポートの読み方ということもできるでしょう。注意したいのは、アナリストは専門用語を乱用する傾向があるということ。だからこそ、企業のホームページで確認したいのです。

まず見出しを読む、キーワードを探す、リスクを確認する

2つめのポイントは「全体の流れ(シナリオ)を確認するために、まず見出しを読むこと」です。レポートをいちどに全部読むは私でもたいへんです。見出しを読んだだけで、「このアナリストは何を言いたいのか」という見解を読み取ることができます。私のチェック方法も同じです。
3つめから5つめまでは、ポイントというよりノウハウですね。(3)「司会者」と「回答者」に扮して読む。具体的には見出しを質問者、本文を回答者として音読すると論点が明確になって読み込みやすくなります。(4)キーワードを探す。アナリストがポイントと考えている言葉は、表現を変えたりしながらレポート中に何度も登場します。藤野さんの話しに出てきた「増」「最高」「絶好調」などもそうですね。ただし、アナリストレポートには「絶好調」は出てきません。日本証券業協会のルールで禁止表現になっています。
(5)リスク(不確実性)を確認する。どんな高成長企業にも必ずリスクがあります。レポート中に「リスク要因」がない場合もあるのですが、その場合は好材料の逆をリスク要因と考えるとよいでしょう。たとえば、「円安で業績好調」という表現があったら円高が、「好景気で業績拡大」なら景気動向(悪化)がそれぞれリスク要因になるわけです。

見出しを読んで利益成長がイメージできなければ投資しない

次は応用編です。レポートを読んで把握すべき最も大事なポイントは、利益の成長性です。なぜ利益が大事なのか、「PER(株価収益率)「配当利回り」「PBR(株価純資産倍率)」という3つの主な株価指標で考えてみましょう。

「PER」は株価を利益で割った数値です。「配当利回り」は、配当金を株価で割った数値。「PBR」は、株価を1株当たり純資産で割った数値ですね。3つに共通しているのは、株価上昇余地が大きくなる(=割安感が強くなる)にはためには、いずれも利益が拡大することが条件になるということ。利益が増加すれば株価の割安感が強くなる。だから、利益の成長性が大事になるわけです。

アナリストレポートを読んで利益の成長をイメージすることができるかどうか。アナリストの見解は当然のことながら絶対ではありません。見出しだけ読んで利益の成長がイメージできなければ投資しない。そのような判断でもまったく問題ないと思います。

前回レポートと比較して"変化の兆し"を読み取る

株式市場の変化を読み取る、感じ取ることも大事です。

株式相場は「水準」ではなく「変化」に、より敏感に反応する傾向があります。たとえば、利益が10%増で1,000億円の企業よりも、同じく50%増で100億円の企業の株価の方が上昇しやすいと考えられています。2013年1年間の日経平均株価の上昇率は57%でしたが、そのうち予想営業「利益額」の上位30社の平均上昇率は62%、同じく予想営業「増益率」上位30社の平均上昇率は90%でした。30%近くも差があったわけです。

市場の変化を感じ取るとは、どのような意味なのでしょうか。

世の中はデジタルではなくアナログで変化しています。つまり、株式市場が反応する多くの情報(業績や統計など)はデジタルですが、その前に存在する変化の兆しのようなアナログ情報を感じ取ることで、世の中よりも先んじた投資判断が可能になるということです。
具体的には、前回のアナリストレポートと今回の内容を比較して読んでみる。デジタルな業績予想は据え置き(変化なし)でも、明るい(あるいは暗い)文言が使われていたりするなど表現やトーンが変化していることがあります。ここに注意しましょう。業績予想(数値)は東証の適時開示規則によって、売上が1割、利益が3割以上、乖離した場合に修正しなければなりません。逆に、乖離がそれ以内であれば修正義務はないのです。

これは、私が前回のレポートと比較して読んだ結果、気になって当該企業に電話インタビューしてわかった実際の話です。相手の担当者は「(修正開示義務のない範囲で)予想業績は上振れ」と示唆しました。個人投資家の皆さんがここまでやるのは難しいかもしれませんが、前回レポートと読み比べて表現やトーンを確認することは大きな意味があると思います。

無料でだれでも読める「東証アナリストレポート」

東証は個人投資家向けに無料でアナリストレポートの提供をおこなっている。一般のアナリストレポートは主に、証券会社に所属する証券アナリストが投資信託や年金などを運用する機関投資家(ファンドマネージャー)向けに発行している。一部は個人投資家も読むことはできるが、対象企業が東証一部に偏っており、新興市場に上場する銘柄の多くは発行対象になってないのが現状だ。

「東証アナリストレポート」はその現状を補完する形で発行されている。ここでしか読めない新興銘柄のレポートが多いのが大きな特徴だ。発行の仕組みは2種類。
1つめは「アナリストレポート・プラットフォーム(ARP)」と呼ばれるもので、QBRなどの独立性を担保したレポート作成会社が、申し込みのあった上場会社のレポートを発行する。
2つめが、一般社団法人証券リサーチセンター(SRC)への協賛によるもので、SRCが独自に選んだ銘柄のレポートが読める仕組みだ。

レポートは東証ウェブサイトからだれでも無料で閲覧可能。各種スマートフォンやタブレット端末向けの専用アプリ「アナリストレポート・ライブラリ」も用意されている。銘柄は上場市場や業種で検索でき、レポートのダウンロードが可能。新着レポートのお知らせ機能もある。



   
    

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