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【投資信託協会】証券市場活性化策は投資家の主体的な投資判断が可能な環境づくり

 

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取引所、協会に聞く! 証券市場活性化に向けた各社の取り組み【投資信託協会】

投資信託協会 稲野和利会長に聞く

証券市場活性化策は投資家の主体的な投資判断が可能な環境づくり

証券市場の活性化による成長マネーの創出や資産の世代間移転による経済の活性化は大きなテーマである。そこで投資信託の果たす役割は大きい。投資信託の普及には投資家が主体的に投資判断できる環境作りが何よりも大切。投信業界においても、目論見書の簡素化に加え、運用報告書の簡素化に向けた取り組みが進んでいる。
 証券市場活性化に向けた取り組みについて投資信託協会稲野和利会長に聞いた。

協会が「受益者に分かりやすく」という観点で今までやってきたことについて教えてください。

投資信託を受益者に分かりやすくみてもらうというのは非常に重要なテーマです。多くの人たちに投資信託を正確に理解してもらったうえで、購入・保有していただく。当協会の目的である投資信託の普及、発展、啓発に「分かりやすさ」という視点は欠かせません。

いくつか具体的な話をしますと、まず、ファンドの新分類です。これは、2009年1月にスタートしました。ここでは「厳密性」と「分かりやすさ」とのバランスをどうとるかがポイントでした。その意味で、新分類は「厳密性」を損なわないで「分かりやすさ」を追求したものです。

例えば、外国債券に投資をするファンドは、旧分類では株式投信追加型のバランス型に分類されていました。これが新分類では追加型投信・海外・債券となり収益の源泉が何か明確になりました。また、当協会では2010年2月に「投信統計システム」の再構築、新分類によるデータ集計が可能になりました。その一環として2013年1月のデータ(2月公表)からは、新分類毎の資産増減状況を公表します。これにより投資家の選好がどの辺にあるかという情報が分かるようになります(当分の間、現行の商品分類も併せて公表)。

次に、目論見書の簡素化です。2010年7月、投資信託販売時に顧客に渡される交付目論見書が簡素化されました。ページ数も8から12ページくらいに減らして読みやすく分かりやすいものにしました。情報量をしぼり、極めて重要であると考えられる情報に限定したことで見るべきデータがはっきりしました。さまざまなデータが統一され、順番に出てくることも比較検討しやすくなったのではないかと思います。投資家やファイナンシャル・プランナーからの評価は概ね好評と伺っています。新しい交付目論見書の記載項目は、2009年末の改正内閣府令の公布及び2010年3月の本協会規則の制定により確定しました。

2012年5月28日からは本協会の一般向けサイト「投信総合検索ライブラリー」が本格稼働しました。これは、リアルタイム情報である「基準価額検索システム」と発行時における開示情報である「目論見書検索システム」の統合です。本ライブラリーの目的は、交付目論見書ファイルや基準価額データ等を集約してファンドの商品分類、基準価額等、複数の項目を検索しその抽出結果を分かりやすく表示、比較することを可能にすることで投資家の主体的な投資信託の選択に資することです。

今後予想される投信法の改正について

投信法の改正は、平成22年6月の閣議決定「新成長戦略」、同年12月の金融庁「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」において、投資信託・投資法人法制の見直しの検討として、平成25年度までに制度整備の実施を行う、としたことを受けてのものです。現在は、金融審議会の「投資信託・投資法人法制の見直しに関するWG(ワーキング・グループ)」で議論されています。

主な検討テーマは以下の5点です。
 〈投資信託について〉
 (1)投資家が一定期間の累積損益を把握できるような通知制度の導入
 (2)販売時におけるリスク等についての情報提供の充実
 (3)一定の類型のリスクに対する規制
  
 〈投資法人について〉
 (1)ガバナンス強化のための具体的な方策の導入
 (2)インサイダー取引規制の導入

具体的にお聞きします。まず、運用報告書の簡素化について

運用報告書を改善する理由は、目論見書と同様、投資家が読んで理解しやすいものにするためです。投資対象や運用手法が多様化したことにより運用報告書の記載内容が増え、投資家にとって読みづらいものになっています。現行制度下では、開示すべき情報の量が膨大になり、投資家にとって理解すべき情報が埋没してしまっています。その結果、運用期間中の運用内容・経過、運用成果、コスト等を明らかにすることを目的とした資料としては使い勝手が悪くなっています。WGの第9回会合(9/26)では、運用報告書の二段階化として、運用状況に関する極めて重要な事項を記載した「交付運用報告書」と詳細な運用状況等を記載した「運用報告書全体版」に二段階化する案が示されました。先の「交付目論見書」と今般の「交付運用報告書」の簡素化によって投資家の主体的な商品選択や投資判断の促進につながれば、投資信託を通じて金融リテラシーの普及に資することになります。

トータルリターンの通知制度について

WGの第8回会合(7/3)の中間論点整理では、「適切な投資判断のための環境を整える観点から、受益者が自分の保有する投資信託に係る投資期間全体の累積分配金を含む累積損益を把握しやすくすることは重要である。そのため、一定期間の累積損益(トータルリターン)が受益者に通知される仕組みにつき、引き続き検討を行うべき」とされました。この問題は販売会社に関わる事柄ですので、現在、日証協がWGを設置して検討中と聞いています。

販売・勧誘時のリスク情報の充実について

WGの中間整理では「商品の複雑化・リスクの複合化が進行する中で適切に判断を行うためには、個々の商品の元本割れの可能性についての理解だけでなく、リスクの相対的な度合いの理解も重要と考えられる」としています。また、欧州でのファンドのリスク指標に関する取り組みであるUCITSの7段階の階級表示について、4つほど問題点が指摘されました。この問題点を受けて、リスクの階級表示より過去の運用実績を基にリスク量自体を表示し、併せて他の代表的なアセットクラスのリスク量を表示する案が金融庁事務局案として提示されました。今後、当協会としても日本の投信市場にふさわしい方法を考えていきたいと思います。

最後に平成25年度税制改正に関する要望について

現在の日本では、家計の金融資産が約1,500兆円あるものの成長マネーがなかなか循環していないというのが事実です。その意味で循環しやすい仕組みを作る必要があります。その仕組みのひとつが「日本版ISA」であり、金融庁の要望は「日本版ISAの恒久化」です。現在導入予定の日本版ISAは平成26年からの3年間時限措置(年間100万円、総額300万円)です。恒久化により、最大5年間は、配当・譲渡益が非課税(ISA口座内で保有)、5年経過後は特定口座等で保有し続けるか、ISAで新たな枠を活用して非課税保有することができます。したがって、ある年における「非課税投資総額」は、最大で500万円(年間100万円×5年)となります。ただ、老後の備えや教育資金など国民の自助努力による資産形成を支援するものとしては、金融庁要望でもまだ不十分な内容です。5年間の非課税維持期間は、長期的な投資による資産形成を促進する観点からは疑問に思います。税の特典が関係するような制度は堅牢に作られがちです。堅牢に設計されることにより、事後のメンテナンスが十分に行われないこともあります。

例えば確定拠出年金のマッチング拠出などはその典型です。日本は相対的には豊かな国ですが、個別の家計では必ずしもそうではありません。ある調査では、銀行口座を保有していない人が3%程度いて、口座を持っていても金融資産を保有していない人が30%近くいるそうです。すべての国民が一定の年齢に達した時、一定の金融資産を保有しているということが政策目標になるはずです。こうした点も踏まえて「日本版ISA」を構築すべきだと思います。

2012年7月9日の第3回「成長ファイナンス推進会議」とりまとめでは、「高齢者が保有する金融資産を教育資金として有効活用できるよう、資産移転等にインセンティブを付与する方策について検討する」と記載されています。これを受けて本年7月31日に閣議決定した「日本再生戦略」の金融戦略において、教育資金を通じた世代間の資産移転促進策の在り方の検討、所要の施策の検討、実施が明記されました。この点、米国の「529プラン」が参考になります。この制度は、贈与税、遺産税での優遇措置があるため、子育て世代のみならずシニア世代にとっても孫の教育資金を節税した上で確保できるメリットがあり、シニア人口が多く子供の教育負担なども少子化の原因となっている日本にとって導入メリットの高い制度です。日本版ISA、日本版米国529プランの成り行きを注視しています。

用語解説

(1)日本版ISA:英国で1999年にスタートした小口投資の配当・譲渡益を非課税とする個人貯蓄口座(ISA:Individual Savings Account)がモデル。

(2)529プラン:税制上の優遇措置が付与された米国の家計向け高等教育資金形成制度。名前の由来は米国の内国歳入法529条によって認可されたことによる。


取材・執筆:QBR 小林新(掲載日:2012年10月22日)

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