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-1- 時価総額を大きくするため、日本企業の経営統合が活発に GCA代表取締役 佐山展生氏に聞く - 特集 【三角合併】 - 経済トピックス

 

特集・コラム [ 三角合併解禁の影響 ]

三角合併解禁の影響-1- 時価総額を大きくするため、日本企業の経営統合が活発に

2007年5月、外国企業が日本企業の合併・買収(M&A)で株式交換を利用できる三角合併が解禁される。三角合併の解禁に伴う影響をレポートする特集の第1回目は、M&Aの実務に詳しいM&Aアドバイザリー会社GCAの佐山展生代表取締役に話を聞いた【写真】。
 佐山氏によると、三角合併の解禁でまず注目すべきは、日本企業による経営統合の動きだという。買収防衛策の一環で株式時価総額を引き上げるためには大型化が近道のため、様々な業種で経営統合が増えるというのだ。
 特集第2回目は日本のM&Aの流れと今後の展開、第3回目は株式市場への影響、第4回目は実際に個人投資家が外国株を割り当てられた時の対応策をシリーズで連載する。

佐山 展生(さやま・のぶお)氏
▼佐山 展生(さやま・のぶお)氏の略歴
1976年 帝人株式会社に入社。
1987年 三井銀行(現三井住友銀行)に入社。M&A関連業務に従事、米州部投資銀行グループM&A総括、企業情報部部長など歴任。
1999年 投資ファンドのユニゾン・キャピタル株式会社代表取締役パートナーに就任。
2004年 GCA株式会社を設立、代表取締役に就任。
2005年 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授に就任。

M&Aアドバイザーとは、どんな仕事をするんですか?

私たちの仕事は、M&Aの仲介や紹介を主眼にするのではなく、M&Aの当事者の片方の立場にたって交渉のアドバイスをすることです。M&Aというのは買い手は少しでも安く買いたいし、売り手なら少しでも高く売りたい。当事者の目指す方向が全く違うため、私たちのような独立系のM&Aアドバイザーが必要なのです。日本でも外資系証券会社、国内銀行系証券がいままで中心的な役目を担ってきました。
特に最近は国内の銀行や証券会社もM&Aの仲介、アドバイザリー業務に力を入れてきていますが、M&Aの利益相反に対する問題意識は低いようです。2004年にダイエーの再建策が問題になった当時、債務者であるダイエーのアドバイザーに主な債権者だった銀行の系列証券3社が就きました。債権者のメーンバンクがお金を貸しているからといって、系列証券がアドバイザリー契約を取れてしまうことは利益相反上、本来ならできません。当時のGCAはまだ6人からスタートしたばかりでしたが、日本でも独立系の必要性が高まると痛感しましたね。私がM&Aアドバイザーに本腰を入れたきっかけはダイエーでした。

この2007年には米国法人も開設しますね

現在はニューヨーク(NY)にオフィスを探しています。6月からNYに日本人スタッフ2名を派遣し、サンフランシスコにも現地のM&A会社の中に事務所を置く予定です。  なぜ米国に拠点が必要かというと、現在、当社の案件の約2割を海外案件が占めるからです。ほとんどが日本企業による海外企業の買収案件で、かなりの比率が米国企業絡みです。2007年1月に発表されたリコーと米IBMの共同出資会社の設立に当たり、当社はリコー側のアドバイザーを務めました【表参照】。
表 GCAが手掛けた主なM&Aアドバイザリー業務
表 GCAが手掛けた主なM&Aアドバイザリー業務
GCA公式サイトよりQUICK作成
リコーの総出資額は7億2500万ドル(約870億円)で、当社の担当者がNYに3週間滞在し、IBMと最終交渉に当たりました。現地とのネットワークがないと効率が悪いですし、常駐スタッフが必要なほど、日本企業のM&Aニーズが高まっているのが現状です。

外国企業による日本企業の三角合併は増えますか?

例えば米ウォルマートの株式時価総額が約24兆円。これに対してイオンでさえ約2兆円ですから、約1割の株式と交換することで買収できてしまいます。しかし、ウォルマートが本当にイオンを敵対的に買収できるでしょうか?
小売業のように一般のお客さんの支持が必要な業種では、極めて難しいでしょう。私は昨年から、「三角合併が解禁されるからといってM&Aが増えることはほとんどない、そんなことがなくとも増える!」と言い続けています。
ある外国企業が日本企業を買収しようとして、検討を始めたとします。資金調達をどうしようかと考え、現金か株式交換か検討し、株式交換ができないから諦めるようなケースはほとんどありません。いまでは金融市場で数千億円以上の買収資金は比較的容易に調達できますし、案件によっては1~2兆円を調達することも可能です。三角合併はあくまでも「手段」であって、これがあろうとなかろうとM&A自体は増えます。

なぜ、M&Aが増えるのですか?

日本の上場企業の経営者は、買収に対して脅威を持っていると思います。日本企業が買収を防ぐために株式時価総額を増やすなら、手っ取り早い方法は他社との経営統合を進めることです。業界に関係なく、日本企業の経営統合は増えるでしょう。三角合併の影響があるとすれば、まずは「国内企業の大型化」から進むと思います。
実際、日本のM&A市場はまだ発展途上です。私がユニゾン・キャピタルにいた頃、ある企業を売却しようとして投資ファンドや事業会社それぞれ約10社に打診しました。しかし事業会社は興味を示さず、最後に残ったのは主に投資ファンドでした。事業会社なら本業との相乗効果が見込めたのですが、彼らにとっては「買わなくても済む案件」だったのでしょう。米国のM&A業界の成熟度を100とすれば、日本はまだ30程度です。株式公開買付(TOB)が増えていることでも分かる通り、日本企業が攻めの経営に出ればM&Aはますます増えると思っています。

規制上、外国企業が買える業種は少ないようですが

日本が考えなければならないのは、国内の資本でなければ困る企業が本当にどこまで必要かということです。もし国益上どうしても必要な業種があるのなら、法律を整備する必要があります。しかし余り規制を厳しくし過ぎるのも良くないでしょう。
これから日本企業は、海外の企業を買収すべく世界に打って出るでしょう。その時、例えば米国企業をたくさん買いに出ているのに、日本企業を米国企業が買おうと入ってくることを拒めばフェアではありません。そもそもグローバル化が進んだ今、日本企業の本社は日本にあって、経営陣も日本人が多いわけですが、中国で製造して米国で販売するなど、活動拠点は全世界に広がっています。会社によっては国内の売上げより、海外で売上・利益が出ているところも多いでしょう。いろいろな意見があるのは承知していますが、M&Aのルールだけグローバル化から逃れることはできないと思います。

日本企業同士でさえ、M&Aがうまくいかないケースもありますね 

最近、経営統合を発表した後で破談している会社がありますが、9割以上はM&Aアドバイザーに責任があると思います。そもそも経営陣は、在任中に頻繁に経営統合を経験することなどできません。「一緒にやりましょう!」という話はまとまるのですが、いざ経営統合を詰めて行くと、相手企業との間で利益相反の問題が出てきます。
経営統合の問題点は、(1)社長は誰か(2)社名はどうするか(3)本社はどこに置くか(4)統合比率はどうするか――という4つです。統合比率には取締役の数も含まれます。交渉の人数が少ない時にこれらは決めておかないとまとまりません。力のあるM&Aアドバイザーは交渉相手の本心がどこにあるのかを予測しながら、落とし所を決めていきます。

最後に、M&Aの観点で企業を見る秘訣を教えて下さい

佐山 展生氏
創業間もないベンチャー企業は難しいのですが、歴史のある企業なら将来の業績をある程度予想できます。企業価値を見る「物差し」を持って、時価総額と比べれば、その企業が本当に割安か割高なのかが分かります。
M&Aの世界では企業を見る場合、営業利益に減価償却費を足したものがベースになります。例えば営業利益15億円の会社で減価償却費が5億円なら、償却前の営業利益は20億円となります。EBITDA(※注)とも呼ばれるもので、その企業の営業キャッシュフローを表します。安定している会社なら株式時価総額はEBITDAの5~6倍になります。EBITDAが20億円で5倍とすると、100億円が借入金のない状態でのその事業の価値となります。
ただ会社は、事業に関係ない現金や有休不動産を持っていたりもします。営業に使っていない資産が10億円あれば、先ほどの企業価値100億円にこれを足し、企業の事業価値は110億円になります。借り入れが30億円あればこれを引いて、80億円がその株式の価値となります。この企業の場合、株式時価総額が50億円だったら割高だし、100億円だったら割安になるでしょう。私たちM&Aアドバイザーは持ち込まれた企業のEBITDA倍率に注目し、いつも2~3分で初期的な分析をします。
2003年12月にスティール・パートナーズがソトーに敵対的買収を仕掛けた当時、ソトーは借り入れがなく、250億円の金融資産を持っていました。このときの営業の価値は70億円くらいと見ると、私は株式の価値は320億円であると判断しました。当時のソトーの時価総額は100億円で簡易評価よりも220億円も安く、スティールに限らず誰が見ても割安だったのです。
日本の機関投資家は株式投資の際、有休資産や余剰キャッシュなどの保有資産を評価しません。株価以外に企業を見ることができる投資尺度を持てば、少なくとも投資で怪我をする可能性は大きく軽減されるでしょう。
※注 EBITDA=Earning Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略。イービットダー、イービットディーエーと呼ばれ、税引き前利益+減価償却費+支払利息を指す。企業が利益を生み出しているかを見る尺度として、税制・金利の違いなどを除いて判断できるためグローバル企業の分析に有効とされる。損益計算書の利益と同じように重視され、近年は株式投資の指標としても使われる。
 その場合はEV(Enterprise Valueの略、イーブイ)と組み合わせて使われる。EVは株式時価総額にネット負債を足して求められる「事業価値」を意味し、EV/EBITDA倍率はその企業の事業価値を何年分の営業キャッシュフローで賄えるかを示している。
【インタビュー:2007年4月、聞き手:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年4月27日)

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