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-2- 2009年まで、株式交換の合併は少ない傾向 日本の会計基準の違いなどで外国企業にデメリット多い - 特集 【三角合併】 - 経済トピックス

 

特集・コラム [ 三角合併解禁の影響 ]

三角合併解禁の影響-2- 2009年まで、株式交換の合併は少ない傾向

第2回目は日本の合併・買収(M&A)の流れと今後の展開についてレポートする。日本では企業のリストラなどの一環でM&Aが普及してきたが、最近はグローバル化の競争の波が強まっていることに加え、投資ファンドの参入などで金額も大型化する傾向にある。株式交換による三角合併が解禁されることもそれを後押ししそうだ。
 しかし専門家によると、企業会計や日本の法律上の規制もあるため、実際に外国企業が三角合併で日本企業を買収することには制約も多いという。その反面、外国企業による日本企業の買収が活発化すれば、金融取引が増え、企業の競争力が高まり、巡り巡って日本全体ではメリットが多くなるとの意見もある。

外資だけでなく日本企業も活用か?

三角合併とは、外国企業が日本国内に子会社を作り、そこが存続会社となって日本企業を株式交換で買収する方式。これによって現金以外にもM&Aの選択肢が増え、買収される日本企業の株主には外国会社の株式が割り当てられる【図1参照】。実質的には外国企業による買収だが、子会社が間に入ることで三角合併と呼ばれる。株式時価総額の大きい外国企業が自社株を「買収通貨」とできるため、日本企業の警戒心は高まっている。
図1 三角合併のイメージ図
図1 三角合併のイメージ図
その逆に、日本企業が攻めに打って出た場合、外国企業の買収も株式交換でできるようになる。2007年1月、自動車部品メーカーの旭テック(静岡県菊川市)が米メタルダインを三角合併で買収、子会社化した。買収総額は総額約12億ドル(約1400億円)。当時は株式交換が解禁前だったことに加え、メタルダインが発行した大量の高金利の社債を買い入れるために株式交換ではなく、交付金合併という手段が取られた。
新たに現金を用意する必要がない株式交換のメリットが活用されれば、日本企業による外国企業の買収も増えるだろう。帝国データバンクが4月に発表したアンケート調査(回答9736社)でも、「三角合併への期待と懸念が同程度」と回答した企業は45.7%だった。M&Aへの不安はあるものの、国際競争力の向上のための期待もあるようだ。

M&Aは増加傾向、グローバル化・マネー化の台頭で

M&Aコンサルティング会社のレコフによると、日本のM&A市場は、2000年以降に急速に拡大している。2006年には2775件で過去最高を更新した【図2参照】。国内の日本企業どうしによる「IN-IN型」が8割近くを占める一方、日本企業による外国企業の買収「IN-OUT型」も増える傾向にある。昨年2月の日本板硝子による英ピルキントン買収、同12月のJTによる英ガラハーの買収など、国内企業による海外企業の大型買収も目立っている。
図2 1985年以降の日本のM&A件数推移
図2 1985年以降の日本のM&A件数推移
2007年は1-3月期の数字、レコフ資料よりQUICK作成
バブル崩壊後、M&Aは企業のリストラ策で活用されるケースが多かったが、近年ではグローバル化に伴う競争激化で業界再編が進んでいることに加え、ファンド(投資会社)の参入などで案件の大型化も進んでいる。同社調査によると、ファンドによる日本企業へのM&Aだけでも3年連続で300件を超えるという。国内のM&Aは、ファンドの台頭・グローバル化による第3期に入ったとも言えるため、件数・金額ともしばらくは高水準が続きそうだ。

会計問題などもあり、2009年までは本格化しにくい?

M&Aに詳しいレコフ上席執行役員の森山弘和氏は、国内の少子高齢化や団塊世代の大量退職に伴う国内需要の縮小、業界再編などに伴うM&Aは今後も増えるとしながらも、「敵対的な買収は増えないでしょう」と指摘する【写真1】。米国でさえM&A全体で成功したケースは全体の3分の1に過ぎず、「日本では市場の論理より、私情が優先されるケースもあります」(同)。2006年の王子製紙と北越製紙、アオキとフタタのM&A提案例が示すように、現経営陣に友好的な買収提案でなければM&Aは成立しにくい。
写真1 レコフの森山弘和氏
写真1 レコフの森山弘和氏
三角合併についても、「2009年の国際会計基準への収れん、2009年3月期からの内部統制ルールの適用などが完了しない限り、買収監査(※注)すらしないで外国企業が日本企業を敵対的に買収することは難しいでしょう」(同)という。2009年までには米企業とEU企業の財務諸表の相互承認が予定されており、日本も対応が迫られている。いまのところは会計基準が違うため、外国企業が直ぐに三角合併を利用するのは難しいというのだ。仮に外国企業が日本企業を買収した後、その日本企業に粉飾決算などが見つかれば、外国企業の経営陣は既存の株主から株主代表訴訟を起こされるリスクを持つ。
この2月に三洋電機、日興コーディアル証券らが過去の決算を訂正したことは記憶に新しい。外国企業が粉飾決算リスクを避ける上でも、日本企業を積極的に買収する可能性は短期的には低いようだ。
※注 買収監査=企業を買収する前に、企業価値が適正かどうかを判断するために行う監査のこと。デュー・デリジェンスと呼ばれる。買収企業側が専任した弁護士・公認会計士らは、被買収企業の財務内容などを把握するために必要な資料・帳簿・契約書などを閲覧する。決算短信や有価証券報告書などの公開情報だけでは分からない企業の将来性、法令遵守(コンプライアンス)なども徹底的に調べられる。買収監査をしないまま市場で公開買付を行うことは、企業買収の上ではリスクが高いと言える。

国家安保条項で買収できる業種にも制限

実際、株式交換による三角合併を考えた場合、時価総額の大きい外国企業が有利な一方で、敵対的な買収が増えない理由の方が多いことが分かる【表参照】。なかでも特定の国内企業について、外国企業が10%超の対日直接投資を行う時に政府の事前審査が必要と決めた外国為替法第27条第3項の1にある「国家安全保障条項」が重要だという。
表 三角合併で敵対的買収が増えるかどうかの判断材料
表 三角合併で敵対的買収が増えるかどうかの判断材料
レコフ資料よりQUICK作成
国家安全保障条項とは国の安全・公の秩序の維持に支障を来す恐れがある業種として、電力、ガス、通信、放送、水道、鉄道、航空機、武器、原子力、宇宙開発、警備事業などを外資の規制対象としたもの。日本経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼす恐れがある業種としても、鉱業、石油、農林水産、皮革、海運が指定されている。2007年中に関係する政省令が強化・改正される予定だ。
投資ファンドのスティール・パートナーズが明星食品や日清食品に投資している背景には、「食品セクターが国家安全保障条項に含まれていないことも一因となっているようです」(同)。また米国企業に限らず、中国企業などが世界戦略を考えれば、今後は食料、環境などの技術が必要になる。「日本の金融資産を狙った金融業のほか、水・食料などの環境技術に強みを持つ日本企業が狙われやすいでしょう」(同)という。
いずれにしても世界的な業界再編の流れは強まっている。「株式投資をする上でも、投資先の企業がM&Aに直面することはイベントとして避けられないでしょう」(同)。

オールジャパンで見れば、日本経済にはメリットも

三角合併が解禁されても、日本経済トータルでは大きな影響はないという意見もある。双日総合研究所の吉崎達彦副所長は「株式交換が使えなくても、M&Aを進めたい会社は資金を調達して実行してきました」と指摘する【写真2】。外資系に限らず、前出の日本板硝子やJTの例でも、巨額の資金が調達されて企業買収が行われた。
写真2 双日総合研究所の吉崎達彦氏
写真2
双日総合研究所の吉崎達彦氏
また吉崎氏によれば、日本企業でM&Aを上手に活用してきた会社は大塚製薬やオリンパスなどだという。「派手ではないが、上手にM&Aを行う会社は波風を立てませんから、企業価値をあげるM&Aこそ意外に知られていないのです」(同)。そもそも株式交換による三角合併を実行するには、取締役会決議に加え、株主総会で議決権の3分の2以上が賛成する「特別決議」が必要である。双方の会社にとってメリットがある友好的な合併でなければ、実現は難しい。メディアを賑わせるような敵対的買収では、株式交換という手段は使えないのだ。
むしろ日本企業ではなく、日本全体への影響を考えた場合、外国企業によるM&Aがもたらすメリットもある。例えば米シティによる日興コーディアル証券の買収では、約1兆7000億円の資金が邦銀らの協調融資によって調達されるという。日本の金融業界から調達された多額の資金が、シティを通じて再び日本の金融業界に投資されるため「オールジャパンで考えれば、巡り巡って金融取引が活発化し、企業も活性化するメリットの方が大きいでしょう」(同)。
【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年5月1日)
●第3回目は、買収防衛策やM&Aが株式市場に及ぼす影響についてレポートします。
   
    

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