株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

-1- マザーズ、IPO数でJASDAQを上回るか 2006年の新興市場では個人投資家の取引が減少し、株価も下落傾向が続いた - 特集【2007年新興市場IPOを占う】 - 経済トピックス - 話題とコラム

 

特集・コラム [ 2007年新興市場IPOを占う ]

特集【2007年新興市場IPOを占う】-序-「マザーズ、IPO数でJASDAQを上回るか」

2006年の新興市場では個人投資家の取引が減少し、株価も下落傾向が続いた。ライブドア問題に代表される企業不祥事などが影響して、株式投資を見送るムードが強まったが、そんな時だからこそ個人投資家に身近な企業が上場し、投資金額も比較的すくない新興市場をあらためて見直したい。
MoneyLifeではIPOを中心に、2006年の新興市場の総括と、2007年の展望を特集する。

マザーズ、IPO数でJASDAQを上回るか

2006年の新興市場におけるIPO数は155件となり、2000年以来の高水準を回復した【図1参照】。東証一部でも野村不動産ホールディングス、出光といった大型案件が登場するなど、IPOの観点で見れば活況にわいた1年だった。ただ、あずさ監査法人企業公開部・IPOサポート室長の堀江秀治氏によれば「取引所によって、企業のファンダメンタルズに改善の兆しが見られる」という。

図1 新興市場別、IPO件数の推移

取引所 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
JASDAQ 97 97 68 62 71 65 56
東証マザーズ 27 7 8 31 56 36 41
大証ヘラクレス 33 43 24 7 16 22 37
名証セントレックス 0 0 0 0 5 13 13
福岡Qボード 0 0 0 1 1 2 4
札証アンビシャス 0 0 0 0 1 1 4
合計 157 147 100 101 150 139 155
これまでJASDAQ市場に上場していた企業も、今後はマザーズや直接東証二部に上場することが予想される。取引所の間で競争が激化する中、はやければ2007年にも、IPO数でマザーズがJASDAQを上回る可能性も出てきたようだ【図2参照】。
 

図2 新興市場別、IPO件数シェアの推移(数字は2006年のシェア)

2006年の特徴=「新しい業種」が台頭した1年

2006年のIPO市場の特徴として、「新しい業種が台頭した」(前出・堀江氏)ことがあげられる。「Web2.0」という言葉に代表されるアフィリエイト関係、SNS大手のミクシィなどがこれにあたる。また、不動産市場の活況を受け、不動産ファンドの組成会社のほか、合併・買収(M&A)のアドバイザーをつとめるGCAや日本M&Aセンターなども市場の関心を集めた。
外食・小売といった業種も含め、実体経済で好調だった業種がIPO市場でもそのまま頭角をあらわした1年間だったといえる。

初値ランキング=ジェイテックが8倍でトップ

IPOの公開価格と初値の乖離率で見た値上がり率ランキングでは、ジェイテックが公開価格比872.7%でトップとなった【図3参照】。同社は技術者派遣に特化した人材派遣業。これに比較.comやアスキーソリューションズといったネット、ソフトウェア関係の会社が続いた。また比較的、公開価格と初値の開きが少ないJASDAQ銘柄の中で、WDBとグラウンド・ファイナンシャル・アドバイザリーの2社がランクインしたことも目を引いている。
値下がり率ランキングではKFE JAPANがマイナス41.6%でトップとなった。同社は電子部品の購買代理、およびデジタル商品の企画・販売などを手がける。これにメンバーズやオプトロムなどが続き、セントレックス銘柄が上位を独占する形となった。ただ、他の値下がり銘柄を見ても2006年末に上場したものが多い。初値が公開価格を割り込んだ背景には、個別企業をとりまく要因のほか、株式市場全体が軟調だったことも大きく影響したようだ。
なお、ランキングには出てこないが、6月20日にマザーズに上場したアドウェイズも注目される。同社は公開価格115万円に対して、初値147万円で好調に寄り付いたわけだが、立花証券が1670円で2600株の売り注文を出す誤発注を犯してしまった。

図3 公開価格と初値の乖離率ランキング

【値上がり率トップ10】

市場 上場
月日
銘柄名 証券
コード
幹事証券 公開価格 初値 乖離率
1 ヘラクレス 04/04 ジェイテック 2479 三菱UFJ証券 110,000 960,000 872.7%
2 マザーズ 03/15 比較.com 2477 マネックス証券 450,000 2,700,000 600.0%
3 ヘラクレス 04/06 アスキーソリューションズ 3801 新光証券 350,000 1,880,000 537.1%
4 JASDAQ 03/16 WDB 2475 三菱UFJ証券 330,000 1,750,000 530.3%
5 ヘラクレス 04/03 ハブ 3030 新光証券 140,000 700,000 500.0%
6 マザーズ 02/09 ドリコム 3793 大和証券エスエムビーシー 760,000 3,470,000 456.6%
7 JASDAQ 02/10 グラウンド・ファイナンシャル・アドバイザリー 8783 大和証券エスエムビーシー 280,000 1,210,000 432.1%
8 アンビシャス 04/04 エコミック 3802 ディー・ブレイン証券 120,000 510,000 425.0%
9 マザーズ 04/06 ラクーン 3031 大和証券エスエムビーシー 800,000 3,360,000 420.0%
10 マザーズ 12/21 パイプドビッツ 3831 大和証券エスエムビーシー 210,000 800,000 381.0%
【値下がり率トップ10】

市場 上場
月日
銘柄名 証券
コード
幹事証券 公開価格 初値 乖離率
1 セントレックス 11/20 KFE JAPAN 3061 東洋証券 190,000 111,000 -41.6%
2 セントレックス 11/02 メンバーズ 2130 楽天証券 290,000 175,000 -39.7%
3 セントレックス 10/26 オプトロム 7824 楽天証券 150 125 -16.7%
4 セントレックス 10/11 フラクタリスト 3821 みずほインベスターズ証券 400,000 350,000 -12.5%
5 マザーズ 12/08 ゲームオン 3812 日興コーディアル証券 500,000 460,000 -8.0%
6 マザーズ 12/01 GABA 2133 大和証券エスエムビーシー 265,000 249,000 -6.0%
7 セントレックス 12/22 JBイレブン 3066 東海東京証券 1,260 1,200 -4.8%
8 JASDAQ 09/22 ジェイエイシージャパン 2124 野村證券 22,000 21,400 -2.7%
9 マザーズ 12/07 ジャパンインベスト・グループ・ピー・エル・シー 3827 みずほインベスターズ証券 150,000 148,000 -1.3%
10 JASDAQ 09/15 協和医科器械 3052 新光証券 500 499 -0.2%
(2006年12月27日時点、各証券取引所資料、QUICK ActiveManagerなどをもとにQUICK作成)

幹事証券=大和SMBCがトップ、数字に表れない個性も?

幹事証券では、大和証券SMBCが29件でトップを記録した【図4参照】。その一方、みずほ証券、新光証券、みずほインベスターズ証券を合わせた「みずほ連合」を見ると、ダントツの39件となることも分かる。ネット証券も含め、三大証券以外でもIPOの体制が板についてきたようだ。

図4 2006年の新興市場における主幹事証券の状況

しかし数では言い表せない特徴もある。例えばみずほインベスターズ証券では、取引所への提出書類の中でも、企業への負担が大きい「IIの部」【※注1参照】を作成しない案件は16件あった。「同じような銀行系証券の三菱UFJ証券が全体で15件のIPOを手掛けたうち、『IIの部』を作成しない案件が6件だったことを考えれば、銀行系証券の中でも性格に違いが出ている」(前出・堀江氏)ことが分かる。
特に2006年10月26日には、日本証券業協会が「会員における引受審査のあり方等に関するワーキング・グループにおける検討状況」と題するペーパーを出したことも注目される。これは、元受け証券の数が増加する中、証券会社の引受審査能力に格差が生じていることなどに警鐘をならしたもの。幹事証券には引き続き、数ではなく、質の部分でも正確な審査が求められそうだ。
注1 IIの部・・・正式名称は、「上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」。新規上場の際に、取引所に提出する書類の1つ。会社設立の沿革から、企業グループ全般のセグメント情報に至るまで詳細に記入する必要があるため、書類作成に当たっては莫大な時間とコストが掛かる。企業側の負担を減らす上で、 JASDAQ以外の新興市場では「IIの部」の提出を求めていない。

2007年のIPO見通し=Web2.0や金融関係に注目か

2007年は株式市場全体で底堅い展開が見込まれるため、新興市場のIPO件数も例年並みの150件前後を維持すると見られている。新規上場が期待される業種は、Web2.0関係のネット企業、時価総額の大きい金融・証券業など。不動産業界は地価の急騰を受けて成長鈍化が予想されるため、不動産ファンドの組成会社などのIPOはほぼ出尽くしたと見られる。消費者金融業界のグレーゾーン金利見直しなどによる影響で、パチンコといったコンプライアンスが厳しく求められる業種の新規上場は難しくなりそうだ。
また近年の傾向として、経営陣による親会社からの事業買収(MBO)などで独立した会社が新規上場を果たすことも予想される。ただ、出資したファンドが投資資金の回収を急ごうとすれば、新規上場時に株価下落を招くことも予想される。「東証一部のあおぞら銀行やアコーディア・ゴルフのように、投資ファンドなどがIPO時に大量の株式売り出しを行うようなケースでは、投資家の評価は得にくい場合が多い」(前出・堀江氏)との指摘もある。新興市場のIPOでも、出資者などの株式売却を制限するロックアップ条項【※注2参照】をこれまで以上に調べておく必要があるだろう。
マザーズのIPO件数がJASDAQを抜く可能性も注目される。地味な数字だが、2006年の東証二部の上場件数は16件となり、2000年以来の高水準を記録した。これの意味するところは、かつてならJASDAQに上場する会社が最初から東証二部に上場している可能性があるということだ。
時価総額で上場基準を比較すれば、JASDAQでは自己株式を除いて10億円以上が必要である。これに対し、マザーズも10億円以上、東証二部は20億円以上である。JASDAQとマザーズの両方の上場基準がクリアできる企業が将来、東証一部に上場することを検討していれば、取引所審査をスムーズに進める上でマザーズを選ぶケースもある。一方、例えば地方の機械メーカーなら、伝統と安定感を重視してJASDAQを選ぶ可能性が高いだろう。成長性というイメージや企業の戦略を考えると、いまのところマザーズに有利な環境と思われる。

図5 新興市場別、新規上場会社の経常利益の「中位値」
(新規上場会社の直前決算期連結を対象)

その一方、企業の成長性を考える上で経常利益に注目すれば、2006年に入り、マザーズとヘラクレスに1億円以上の差が出てきたことも重要だ【図5参照】。ベンチャー企業にとって経常利益で1億円違うということは「時間に換算すれば1年分の成長力に相当する」(前出・堀江氏)。またベンチャー企業が上場する際、経常利益で3億円を稼げる力があるかどうかがきちんとした成長力をはかる目安になるとの指摘もある。新興市場とはいえ、ほとんど利益を出せない状態の企業に投資することは、やはりリスクが高いといわざるを得ないだろう。
マザーズの上場基準を見ると、「利益の額」の部分は表向き空白となっており、かつては赤字でも上場できることをうたっていた。しかし昨今は、実際に上場している企業の経常利益の平均値(中位値)がこの3億円に近づいている。知名度だけでなく、いまや他の新興市場と比べても収益性が高い水準にあることは確かなようだ。もともと著名企業が集まっていることに加え、企業のファンダメンタルズも改善傾向にあるのなら、マザーズが新興市場で優位な状況は強まるだろう。
各取引所間の競争もますます激化し、IPO件数が高止まりする中、2007年の新興市場への投資は改めて質が重視される年になりそうだ。実際、初値ランキングの値上がり率トップ10の銘柄でも、その多くは上場直後に年初来高値をつけ、軟調な展開が続いている。当たり前のことだが、人気と株価の動きは別ものである。新興市場のIPO投資の際には、いまいちど企業の成長性・ファンダメンタルズなどを考えて投資に臨んだ方が良いのではないだろうか。
注2 ロックアップ条項・・・ある企業への出資者や、ストックオプションの権利を持つ社員などが一定期間、その会社の株式の売却や、ストックオプションの行使をしないように決め、文書でそれをあらわしたもの。この条項で示されている期間、株式の売却がなければ売り圧力が和らぐため、株価の需給は良好となる。逆にこの条項がなければ、株価にとっては悪材料となる。

【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2006年12月29日)



   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »