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-3- 大証ヘラクレス 新興市場もデリバティブも地道に育てる 日経225mini取引で個人投資家向け商品の拡充も図る中、新興市場にも力を入れる - 特集【2007年新興市場IPOを占う】 - 経済トピックス - 話題とコラム

 

特集・コラム [ 2007年新興市場IPOを占う ]

特集【2007年新興市場IPOを占う】-3-JASDAQ市場 代表執行役社長(CEO)筒井 高志氏に聞く「ベンチャー専業でIPO、IR支援サービスを強化」

IPO特集第2回目は、大阪証券取引所の米田道生代表取締役社長に話を聞いた。2006年、ヘラクレスのIPO件数は37件となり、2001年以来の高水準を記録した。大阪だけでなく、東京などでも積極的な誘致活動などを続けたことで、企業・投資家の認知度も着実にあがっているようだ。日経225mini取引で個人投資家向け商品の拡充も図る中、米田氏は「ヘラクレス市場もデリバティブ取引も、愚直に育てていきたい」と語る。

▼大阪証券取引所のヘラクレスとは
2000年5月に発足した「ナスダック・ジャパン市場」を前身とするいわゆるベンチャー市場。2002年12月に、現在の名称であるニッポン・ニュー・マーケット「ヘラクレス」に変更され、2006年1月からは新売買システムも稼働した。上場銘柄数はスタンダード89、グロース66、スタンダード外国株 1の計156(2006年12月26日時点)。大証自身も2004年4月にヘラクレス上場を果たしており、大型株から小型株まで、幅広い企業が集結している。

2006年を振り返った感想は?

米田社長:

ヘラクレス市場では、37社がIPOを行いました。これはナスダックと提携を解消して以来、年間の新規上場会社数としては過去最高のものです。国内で IPOの件数が増えている傾向も影響していると思いますが、われわれも東京を中心として、マーケティング活動を地道に行ってきました。その成果が出ているのではないかと思います。

2005年にはシステム上の問題で、残念なことにIPOを一時中止しました。現在は新システムもカットオーバーしましたが、これは取引スピードもさることながら、気配値の本数が売・買8本出ますから、投資家にとって売買がしやすいものとなっています。

なおヘラクレスの年間売買代金は、12月21日の時点で13兆1970億円となりました。05年は9兆6979億円、04年は3兆7153億円でしたから、伸び率としては落ちていますが、暦年ベースで見ると過去最高を更新しています。市場としては活況な1年だったと思います。

ナスダック・ジャパンからヘラクレスへどう変わりましたか

米田社長:

2000年にナスダック・ジャパン市場ができ、直後にITバブルがはじけました。米ナスダックが考えていたグローバル構想もなくなったことで、われわれも独自の新興市場戦略を考えました。ITバブル後は低迷した時期もありましたが、ここ2~3年は地道な活動を続け、信頼の回復に努めています。

われわれは2003年9月、上場審査の信頼性を高めるために「上場検討委員会」を設置しました。取引所として企業を審査しているわけですが、外部の方にも見てもらい、チェックを二重にするのが狙いです。残念ながら、新興市場では反社会的勢力が紛れ込むケースも見られますので、委員会には警察関係者に入ってもらっています。2006年7月には弁護士、銀行関係者も加わり、計3名となりました。取引所の審査後にもう一回、ここで企業を審査してもらっています。また、市場の質を維持するために、上場後の企業に問題があった場合のチェックもしてもらっています。

企業誘致、審査などの体制はどうなっていますか?

米田社長:

ヘラクレスの上場企業は7割が関東、2割が関西、1割がその他の地域となっています。ナスダックとの提携解消後、われわれも独立していこうと思い、上場サポート担当、上場審査担当の一部を東京に置いています。東京支社にはデリバティブを担当する企画要員もおり、増員が進んだ結果、現在は合わせて23名の体制となっています。ベンチャー企業は東京に多いため、東西両方で体制を強化しているところです。

なお、企業が上場する取引所を決める際には、幹事証券も含めて様々な検討がなされるものかと思いますが、ヘラクレスとしては当然、厳正に上場審査を行います。結果的に企業が他の市場を選択しても、それは各関係者が判断した結果だと思います。われわれとしては前出の上場検討委員会の協力も得ながら、今後もきちんとした審査に取り組みます。

関西という地域性は、どのように生かされていますか?

米田社長:

2005年2月、メディシノバ・インクという創薬ベンチャーがヘラクレスに上場しました。この米国の会社がヘラクレスを選んだ背景には、大阪が医薬品の盛んな街だったことが一因となっています。医薬品業界で活動するためには、東京よりも大阪で上場した方が活動の拠点としてふさわしいというわけです。また同社は、2006年12月にNASDAQにも上場しました。かつて大証は米ナスダックとも提携していたため、ヘラクレスの上場審査基準は、NASDAQの基準に沿ったものとなっています。その辺もヘラクレスを選ぶ一因となったのでしょう。

また2006年2月に上場したファンダンゴという会社は、吉本興業のコンテンツを配信しています。4月に上場したクラスターテクノロジーは、ナノテクノロジーの技術を持つ東大阪にある会社です。関西の会社で東京の市場に上場している会社もありますが、これらはヘラクレスの地域性・特長が生かされたケースだと思います。

「スタンダード」と「グロース」という2つの基準がありますが、この狙いは?

米田社長:

ナスダック・ジャパン市場をつくった時のコンセプトが生きています。米国のNASDAQに上場している企業がニューヨーク証券取引所にも上場するかといえば、そうではありません。ヘラクレスの「グロース基準」の企業はさらに成長して欲しい企業といえますが、「スタンダード基準」の企業はある程度、成長して時価総額なども大きくなった企業です。企業にはヘラクレスの中で、スタンダード基準になることを目指して成長して欲しいというのが狙いです。

大証自身、2004年にスタンダード基準でヘラクレスに上場しています。大阪はもともとベンチャービジネスが盛んな地域ですので、われわれもその精神を大事にしていきたいと思っています。企業の大きさに関係なく特色ある企業が上場できるよう、上場審査基準もスタンダードで3種類、そしてグロース基準の計4 つを設けています。この辺はナスダックの良い思想を引き継いだものです。

ヘラクレスの役目は時代を先取りする企業の資金調達をサポートすることであって、単なる通過市場ではありません。東証1部上場という言葉がブランドになるのではなく、ブランドは企業そのものなのです。取引所ができるのは、そのお手伝いです。

ところで、先物取引の日経225miniが好調ですね

米田社長:

日本では「デリバティブ取引は投機的である」という誤解もありました。しかし最近は既存の日経225先物取引(ラージ)でも個人投資家の取引が増え、新システムも稼働しましたので、環境が整ったと判断し、7月から10分の1に取引単位を小口化した「日経225mini」をスタートさせました。

ミニ商品を導入している海外の事例を見ますと、米国を除き、ミニ取引のシェアはラージ取引の2~3割にとどまるようです。しかし日経225miniは予想以上に取引が増え、枚数ベースではラージを超える日も多く見られます。個人投資家が約半分を占める一方、残りを市場間の裁定取引、海外からの取引などが占めています。参加者も増え、市場に厚みが出てきました。

ただ、レバレッジの効いた商品ですので、個人投資家には適切にリスク・リターンを認識してもらいたいと思っています。大証ではセミナーなどを通じて勉強の場を設けていますので、正しい知識を持ち、取引に臨んでいただければと思います。また、安全に決済が行われるように2005年から清算機関としてリスク管理の手法を整備し、2006年7月から第1段として担保制度などを見直しました。日経225miniに限らず、取引が安心して行えるよう、見えない部分でも努力しています。

2007年に向けた展望、投資家へのメッセージなど

米田社長:

愚直に市場を育てていく、これに尽きます。市場自体が非常に自由化されていますから、いろいろな問題も起こりますが、上場の段階できちんと審査し、上場した後もきちんと見ます。われわれは企業が問題を起こした時に「改善報告書」の提出を求めています。改善ができているかフォローも行っており、最悪の場合には上場廃止となります。ヘラクレスは市場として定着してきましたので、今後も良い企業が成長できるよう制度の整備を進めたいと思っています。

また売買審査にあたっては、ヘラクレスに限らずデリバティブ市場でも監視を強化しています。2006年11月から職員を外資系証券に派遣し、最先端の取引がどのように行われているか研修にあたらせています。また最近では、ジャスダック証券取引所とバックアップ体制を整えました。システムから審査まで、個人投資家の皆様には安心して取り引きできる体制づくりに努めています。

なお2007年は、大証が日本で最初にエクイティ・デリバティブ取引を始めてから、ちょうど20年目を迎えます。デリバティブ取引の認知もだいぶ進みましたが、さらに定着させていきたいと思っています。資本市場が育たなければ、日本の金融も育たないでしょう。


インタビュー:2006年12月、聞き手:MoneyLife 片平正二
(掲載日:2007年1月5日)



   
    

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