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-2- 無担保コールレート 日本の「金利の基点」が決まる短期金融市場 金融政策と表裏一体=無短コール金利と短資会社の役割を探る - 特集【金利】 - 経済トピックス - 話題とコラム

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特集・コラム [ 金利 ]

金利-2- 無担保コールレートについて 日本の「金利の基点」が決まる短期金融市場

金利が決まるメカニズム特集の第2回目は、政策金利である「無担保コールO/N物レート(※注1)」と、これを取引する「短期金融市場」についてレポートする。日銀は短期金融市場で、金融調節(オペ)によって無担保コールO/N物レートを誘導目標である0.25%(2007年1月時点、2月21日には0.50%に利上げされた)に近づけようとする。いわば金融政策の主戦場だが、一般的には馴染みのない金利、そして市場である。
 しかし、短期金融市場で資金のやりとりがスムーズにできなければ、日銀は金融政策を運営することもできず、企業の社債発行、国債の売買にも支障が出てしまう。短期市場は日本の金融市場を支える「縁の下の力持ち」的な存在として、極めて重要なのである。

※注1 無担保コールO/N物レート=金融機関が短期的な資金のやりとりを行うコール取引で、担保を取らずに資金のやりとりをする際の金利のこと。オーバーナイト(O/N)とは「翌日」を意味し、O/N取引とは、資金を今日借りて(貸して)、翌日返す(返済される)ものである。例えば政策金利の誘導目標が0.25%の時、100億円を無担保コールO/N物で運用すれば、1日当たりの金利収入は6万8493円となる(計算式={100億円×0.25%}÷365=68,493円)。

利上げ後、短期金融市場に活況戻る

日銀が短期金融市場でオペをはじめたのは1970年代からである。1981年には日銀が持つ政府短期証券(FB)の市中売却オペがはじまり、1985年には無担保コール取引も始まった。
そもそも、規制金利の時代には公定歩合(※注2)と預金金利が連動していたため、金融政策のスタンスを示す代表的な政策金利は公定歩合だった。1994年の預金金利完全自由化を経て、各種の金利は市場の需給を反映して動くようになっている。日銀も1994年に売り出し手形オペを入札方式で再開し、1995年には無担保コール金利翌日物を目標水準に操作するようになり、現在のような金融政策運営に至っている。
その無担保コールは、短期金融市場のインターバンク市場で取引が行われる【図1参照】。市場参加者は日銀や短資会社、メガバンク、邦銀、外銀、証券会社、生損保会社、投資信託、政府系金融機関などで、呼べば(マネー・アト・コール)、短期資金が調達できるということで「コール市場」と呼ばれる。取引時間は原則として8時から17時までで、実質的に16時過ぎには取引を終える。
図1 短期金融市場のイメージ
最近は金融再編の影響で、市場参加者の数も減る傾向にあるが「外銀の取引シェアが増加するとともに、証券会社も取引を増やしています」(セントラル短資総合企画部の金武審祐部長)という。日銀が1999年以降、ゼロ金利政策や量的緩和政策を取り始めてからはコール市場の取引量は減少に転じた。この背景には、コール金利がほとんどゼロに近い状況になったため、銀行などが運用しようとしても金利収入などを考えれば割に合わない状態だったからだ。
しかし、日本の景気回復が鮮明になった2005年頃からはコール取引も緩やかに増加し始めた。日銀が2006年7月にゼロ金利政策を解除してからは、無担保コール取引の残高は12兆円台にのる月も増え、量的緩和政策が導入された2001年以来の水準を回復している【図2参照】。「銀行でもクレジットライン(与信枠)を見直すところが増え、金利裁定もはたらき、市場機能が回復しつつあります」(同)。今後日銀がさらに利上げをすれば、短期市場での運用を見合わせていた地銀などもより活発に運用すると見られる。
図2 コール市場の月末残高の推移
※注2 公定歩合=日銀が金融機関に資金を貸し出すときの金利のこと。通称・マル公。金利が自由化される前には、金融機関の預金金利や貸出金利は公定歩合に連動していたため、昔は金融政策の基本的な手段となっていた。いまでは公定歩合も「基準割引率および基準貸付利率」という名称に変わり、政策金利の上限を間接的に示す役割として残っているに過ぎない。なお、金融危機の際に使われる「日銀特融」は、この基準貸付利率に0.5%を上乗せした金利が適用される。

市場のインフラ役を果たす「短資会社」

このコール市場では、資金に余裕のある金融機関が金利をつけて貸し出す(出し手)一方で、逆に資金が欲しい金融機関は利息を払って資金を調達する(取り手)。コール市場を通じて、この出し手と取り手を仲介するブローカーが短資会社である。
写真1 セントラル短資のディーリングルーム
写真1 コール資金を取引するセントラル短資のディーリングルーム
国内の短資業界は上田八木短資、セントラル短資、東京短資の3社体制となっている。短資会社の主な役目は(1)出し手と取り手を仲介するブローキング業務(2)自分でポジションを取って相手と資金の貸借取引などを行うディーリング業務(3)「短資取引担保センター」、「短資取引約定確認システム」などの市場インフラを提供する市場サポート業務--など。市場の資金の流動性を高めつつ、中立的な立場から適正なレートを提示している。その日の市場動向によって、短期市場で調達意欲が強いときもあれば、運用に回す金融機関が多い時もある。「取り手と出し手、両方の資金的な情報が分かる中立的な立場上、双方に適正なレートやアドバイスを提供することが大事です」(前出・金武氏)。月末で多くの金融機関の調達ニーズが強い時には「早めに調達した方が良いですよ」と、市場のニュアンスを感じて顧客にアドバイスを送ることもしばしば【写真1】。
近年の金融再編に伴い、いまでは短期金融市場を通さずに、銀行同士が直接資金をやりとりする「ダイレクト・ディール(DD)」も増えているという。DDの実態は不明だが、事務処理コストが掛かることや、一方に有利な金利水準で取引される可能性もあると見られる。このDDに限らず、市場を通した方がその日の適正なレートで資金を運用・調達できる場合もあり、短資会社の果たす中立的な役目は重要と言えそうだ。
ちなみに、短資会社は日銀や金融機関とは独立しているため、取引先からすれば市場の情報などについて聞きやすい存在である。「顧客から、気軽に問い合わせを受けることも多いのですよ」(同)。

日銀が制御できるのは「コール金利」だけ

日銀のオペを担当する日銀金融市場局は、金融機関の調達動向などを常にヒアリングしている。短資会社にも市場参加者の動きを聞き、市場動向をつかみながらオペの金額・タイミングを判断しているという。日銀総裁が記者会見などで幅広く市場関係者に考えを伝える一方、金融市場局の現場担当者は電話で常に市場と接しているというわけだ。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト
写真2 東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト
しかし、日銀が無担保コール金利の誘導目標を0.25%、0.50%と決めたからといって、市場参加者も直ぐにその通りの金利で取引するのだろうか? 不思議に思われるかも知れないが、日銀は金融機関が預ける準備預金残高(※注3)の量を決めることができ、インターバンク市場でも手形オペなどで資金の量を調節できるため、最終的にはコントロールできてしまう。東短リサーチの加藤出(かとう・いずる)チーフエコノミストは「短期金融市場は日銀という『お釈迦さまの手のひら』の上で動いているようなものです」と指摘する【写真2】。株式市場でのPKO(株価維持作戦)、為替市場での介入などは市場に短期的な効果しか及ぼさないが「短期金融市場は、中央銀行に喧嘩を挑んでも絶対に勝てない独特の市場なのです」(同)。
日銀が現実的にコントロールできるのは無担保コール金利などの翌日物に限られている。日本で一番短い期間・一番低い金利しか操作できない反面、逆をいえば無担保コール金利は、円に関わる全ての金利の基点となるものだ。「米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長も生活に大きく関わる金利は長期金利としながら、これは市場の予想が織り込まれて決まると述べています(※注4)」(同)。中央銀行は政策金利を決める一方、その他の金利は市場メカニズムや様々な要素が反映され、資本主義経済のもとで決まるのである。「バーナンキ議長は対話によって、その予想に働きかけることができるとしています」(同)。市場参加者は金利の水準もさることながら、中央銀行の利上げが早いペースなのか、しばらく据え置くのかを探りつつ、実際の取引に当たる。市場参加者が利上げが近いと判断すれば、実際の金融政策変更を待たずに資金調達を急ぐこともある。
※注3 準備預金=準備預金制度に基づいて、銀行などの金融機関は受け入れている預金などの一定比率以上の金額を日本銀行に預けなければならない。この最低金額を「法定準備預金額」、「所要準備額」という(2007年1月31日時点の準備預金残高は4兆9300億円)。準備預金制度は、1957年に施行された「準備預金制度に関する法律」によって、金融政策の手段として導入された。なお、日本郵政公社は準備預金制度の適用先ではないが、日銀の金融調節を円滑にするため、一定額以上の平均残高を保有する契約を日銀と結んでいる。
※注4 バーナンキ発言=2006年3月20日、バーナンキFRB議長はニューヨークで“Reflections on the Yield Curve and Monetary Policy“と題する講演を行った。この中でバーナンキ氏は「私の考えでは、振り返ってみれば、金融市場で方針のはっきりしたコミュニケーションを取ることで金融政策の効果を増やし、特筆すべき利益を提供した」と述べている。直接、長期金利をコントロールすることはできないが、市場との対話で期待にはたらきかけることは有効であるとの見解を示したものである。

短期市場が発達しなければ、金融政策も円の国際化もムリ

日本では1980年代以降、ロンドンやニューヨークの金融市場に追いつくため短期金融市場の整備、取引の多様化などを進めた。「短期資金のやりとりがスムーズにできなければ、他の株式・債券市場なども発展できません」(前出・加藤氏)。短期市場がない場合、企業の社債発行は滞り、レポ市場などで国債を売買することも難しくなるため、日々の生活や国の財政にも影響が出る。世界銀行でも、発展途上国が金融を整備する際に、短期金融市場をきちんと整備する必要があると指導している。また中国の人民銀行が最近オペ手段を多様化していることも、金融政策運営を適切に行う上で必要不可欠なものだ。
翻って日本では、バブル崩壊後の金融危機のほか、ゼロ金利政策の期間が長引いたことなどもあり、1998年の金融ビッグバン以降も金融市場の発展は鈍る傾向にあった。「政府は円の国際化を進めてきましたが、金融市場が縮小傾向にあったため、事実上それも頓挫しています」(同)。短期金融市場が厚みを持って効率的に機能していなければ、金融市場自体が発展できない。日本の政策金利はいまだに低いが、我々も関心を持って「日本の金利の基点」を見直したいものである。
【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年2月19日)

●金利特集第3回目は、生活に身近な預金金利が決まる仕組みについてレポートします。

 
   
    

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