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-4- 長期金利 利上げでも上昇しにくい長期金利 「過剰貯蓄」が国債市場を下支え=景気などの循環要因も - 特集【金利】 - 経済トピックス - 話題とコラム

 

特集・コラム [ 金利 ]

金利-4- 長期金利について 利上げでも上昇しにくい長期金利

金利が決まるメカニズム特集の第4回目は、長期金利についてレポートする。長期金利の指標となる10年物国債利回りは、2006年7月に日銀が利上げした後も1.6~1.9%台を中心に推移している。日本の財政赤字が拡大しているにも関わらず、長期金利が安定している背景には、日銀の金融政策だけでなく、国内の資金フローなど様々な要因が影響しているようだ。
 みずほ証券の高田創チーフストラテジストは「世界・日本国内とも、2007年は一時的な景気減速が予想されるため、循環的な理由で長期金利が上昇しにくい展開も予想されます」と指摘する。長期金利の動きを見る場合、金融政策もさることながら幅広い視野が必要だという。

日本国債の発行額は米国の1.5倍

国債とは、日本政府が予算を組んだり、公共事業を行うための資金を調達するために発行する債券のことで、現在の残高は約541兆円(普通国債、2006年度実績見込み)となっている。地方などを含めた政府保証債務は800兆円を超えているわけだが、米国の国債残高の362兆円(市場性国債のみ)と比べて1.5倍の規模である【図1参照】。
発行される国債は、償還期間によって2年物、5年物、10年物、15年物(変動利付)、20年物、30年物、短期国債などに分けられる。この中で長期金利の指標となるものは10年物国債の利回りだ。また現物の債券だけでなく、先物の役割も見逃せない。債券先物は公社債の発行が増えたことに伴い、1985年から導入された。東京証券取引所だけでなく、ロンドン国際金融先物オプション取引所(LIFFE)にも上場している。
2003年3月からは個人向け国債(変動金利10年物)が販売されるようになり、2006年1月からは固定金利型の5年物も加わった。いまや日本国債は個人投資家にも身近な存在となっている。

債券市場でも、外国人投資家のインパクト強まる

国内の債券市場の主なプレーヤーは、都銀・地銀などの金融機関のほか、生損保・投資信託などの機関投資家、債券ディーラーなどとなっている。昨今、株式市場で外国人投資家の売買シェアが高まっているが、債券市場でも彼らのインパクトは強まっているようだ。
日本証券業協会の統計によると、2006年に外国人投資家は46兆2811億円の買い越しを記録したという【図2参照】。これは都銀(長信銀含む)、信託銀行などを上回り、最大の買い越しとなる。しかし外国人投資家の売買は、債券先物などとの裁定取引が中心のため、実際の保有額はそれほど増えていない。日銀統計によると、外国人の国債保有シェアはわずか5.1%(2006年9月末時点)。日本国債をじっくりと持つ状況ではない。
この結果、日本の債券市場は、地銀・投資信託などがコンスタントに買う一方、外国人投資家や債券ディーラー、都銀などが相場状況に応じて活発に売買する構図となっている。債券先物との裁定取引なども絡むため、株式市場に負けないエキサイティングな市場だ。ここで決まる10年物国債の利回りは、社債や住宅ローンなど、他の金利の基準にもなる。

長期金利は日本経済の調子を示す「血圧」?

その10年物国債利回りは1994年に4%台後半で推移していたが、その後は低下を続け、2003年6月には史上最低水準となる0.430%を記録した【図3参照】。
マクロ経済の基本では、景気がよくなれば資金需要が高まって金利は上がり、不況になれば逆に金利は下がる。バブル崩壊後、日銀は景気を下支えするために低金利政策を続けたが、企業や個人の資金需要は弱いままの状態が続いた。その結果、銀行の貸出は伸び悩み、資金を運用することに困った彼らは国債に投資していたのである。このような金利低下トレンドについて、みずほ証券投資戦略部の高田創(たかた・はじめ)チーフストラテジストは「金利は日本経済の血圧、体温を現します」と指摘する。2003年までのトレンドは、経済実態に沿った動きと言えるだろう。
みずほ証券の
高田創チーフストラテジスト
日銀が金融政策を緩和する一方、政府は不況時に財政支出を増やし、景気を下支えしようとする。ケインズ経済学の基本に沿った政策だが、行き過ぎた財政支出の増加は本来なら金利上昇要因となりかねない。実際、図3の棒グラフにある通り、1990年代半ばの国債発行額(市中消化ベース)は30兆円台で安定していたものの、金融危機が発生して不況感が強まった1998年以降は急拡大し、いまでは120兆円台を突破。この10年で4倍増を果たした。

国債の買い手は国内の「貯蓄」、今後は外国人にも期待

国債が増えるということは、株式市場で企業が株式を発行することと同じような効果を持つ。銘柄の数が増えれば需給悪化で下落、債券価格が下落することは金利の上昇につながる。国債の増加にも関わらず金利が上昇しなかったことについて、前出の高田氏は「国債発行を上回る旺盛な需要が、金融機関の側にあったからです」と指摘する。政府の財政赤字は増えたものの、預金や保険などによる資金が金融機関を通じて間接的に国債投資に向かったため、金利低下の流れが続いたというのだ。「個人金融資産1500兆円」という言葉で示されるように、日本の「貯蓄」がマクロ経済の常識を覆し、間接的に国債購入に向かっているのである【図4参照】。
しかし団塊世代の大量リタイア、少子高齢化などが進めばこういった貯蓄は減ってしまい、将来的には長期金利の上昇要因となりかねない。「今後は預金金融機関が安定して国債を保有できる仕組みを考えながら、個人向け国債や国債を取り込んだ金融商品の拡大、さらに海外投資家の売買インフラを拡充することが必要でしょう」(同)。
日本政府も幅広い投資家に日本国債を買ってもらおうと、2005年1月から海外投資家向けに国債IRをはじめている。政府が海外で国債IRをするのは、1904年に日露戦争の資金調達を目的に、当時の日銀副総裁・高橋是清がロンドンで行って以来のことだ。

「構造要因」だけでなく、世界的な要因で決まる長期金利

今後も景気回復が続けば、金利は緩やかに上昇すると考えられる。ただ、バブル崩壊後の長期低迷というマイナス要因が和らいだものの、「2007年は一時的な景気減速という循環要因によって、長期金利が上昇しにくい展開が予想されます」(前出・高田氏)との指摘もある。国内企業の設備投資は順調だが、米国を始めとする海外景気が鈍化すれば民間部門の資金需要は盛り上がらなくなる。「米国で利下げ観測が払拭されない中で、日銀が積極的に利上げをすることも難しいのではないでしょうか」(同)と見られる。
国・地方をあわせた債務残高は827兆9166億円(2006年9月末時点)となり、減少する兆しは全く見られない。ただ国内の過剰貯蓄、資金需要の鈍化という構図も変わっていないため、「財政悪化に伴う金利上昇」といった最悪のシナリオは今のところ発生しないようだ。
マクロ経済の常識では「中央銀行の利上げ=長期金利の上昇」と言われるが、日銀が利上げしたからといって、長期金利が直ぐに上がる可能性は低い。金利動向を予想する上では、国内外の経済情勢、資金フローなどを幅広く見る必要がありそうだ。
【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年2月26日)

●第5回目は、長期金利の動きにあわせて変化する身近な金融商品「住宅ローン」についてレポートします。

   
    

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