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-1- 映画ファンドとは 話題作の「北斗の拳」から仕組みを探る 日本の映画業界では今、「邦画ブーム」が巻き起こっている - 特集【映画ファンド】 - 経済トピックス - 話題とコラム

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特集・コラム [ 映画ファンド ]

映画ファンド-1- 映画ファンドとは 話題作の「北斗の拳」を中心に、映画ファンドの仕組みを探る

日本の映画業界では今、「邦画ブーム」が巻き起こっている。邦画作品で興行収入が10億円を超えるヒット作が相次ぎ、邦画の興行収入が21年ぶりに洋画を上回った。今春には、個人投資家からファンドで資金を調達した「北斗の拳~ラオウ伝 殉愛の章」も公開される。久々に人気漫画が劇場映画化されるので、ファンの注目が集まっている。
 活況にわく映画産業だが、映画ファンド自体も投資商品として魅力的なものに成熟してきたのだろうか。QUICK MoneyLifeでは、その映画ファンド業界について、これまでの変遷と今後の展望を全4回にわたって特集する。第1回目は、話題の「北斗の拳」を例としながら、映画ファンドの商品性、そのリスクについて分析する。

▼「北斗の拳」の主なあゆみ
  • 1983年
  • 原作・武論尊、漫画・原哲夫らにより少年ジャンプで連載開始(88年まで、全27巻)。
  • 1984年
  • TVアニメ「北斗の拳」の放映開始(87年まで、放送・フジテレビ)。
  • 1986年
  • 劇場版「北斗の拳」が公開される(配給委託・東映)。
  • 2002年
  • パチンコ「CR 北斗の拳」が登場(販売・サミー)。
  • 2003年
  • 小説を原作としたOVA(※1)「新・北斗の拳」が販売される(販売・ハピネット・ピクチャーズ、全3作品)。
  • 2003年
  • パチスロ「北斗の拳」が登場(販売・サミー)。
  • 2005年
  • 劇場用映画・OVAを投資対象とした「北斗ファンド」が販売される(販売・SMBCフレンド証券、当初募集枠5億円)。
    (漫画の単行本の累計販売数は800万部を突破。その他にもゲームやフィギュアなど、幅広いジャンルで関連商品が販売されている)。

※1 TV放送や劇場での放映ではなく、ビデオ等での販売を
   目的とした映像作品

投資家の人気集まる「北斗の拳」が今春公開

映画ファンドとは、映画を投資対象として投資家から資金を集め、その興行収入、DVD、テレビ放映権、キャラクターグッズの売上などを元に投資家に配当を分配するものをいう。投資先の「著作権」に投資するものでありながら、「映画」という一般にも分かりやすいものであるため、近年、設定が増えつつある。
その映画ファンド業界で、2005年9月に販売された「北斗ファンド」が成功例として注目されている。これは三井住友銀行が受託者としてファンドを組成し、グループのSMBCフレンド証券が販売を担当。有名マンガを映画化した商品性もさることながら、メガバンクが総合力を生かして個人投資家を主な対象とした「公募の映画ファンド」業界に参入してきた初めてのケースである【図1参照】。そのため、金融業界の関心も高いようだ。
図1 北斗ファンドの構成図
実際、当初は5億円(1口10万円)を販売目標としていたものの、投資家の人気が集まり、インターネットによる販売は5億6730万円を記録。募集額を上回って販売は終了した。総制作費25億円で、劇場用映画が3本、オリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)は2本製作される。劇場公開は2007年春からだが、2005年11月の運用開始から2010年3月31日まで約5年を掛けた壮大なプロジェクト。最初の資金調達では、好スタートを切ったと言える。

投資家メリットは「特典」? 肝心のリターンは予測困難

映画ファンドの特徴の1つに、投資家に与えられる数々の特典がある【図2参照】。北斗ファンドでは、投資家に台本やプレスキット、劇場用映画第1部の前売り券などがプレゼントされる。投資する口数によってはプレスキットの豪華版も付与される。出資したファンは、第1部のDVDに名前を出してもらうこともできるため、作品と一体となる「名誉」もある。2004年11月に募集された「忍-SHINOBI」ファンドでも、映画のスタッフロールに投資家の名前を掲載した実績がある。

図2 北斗ファンドの投資家向け特典内容

特典内容 発送予定時期 A号受益権口数
1~4口 5~9口 10口以上
第1部作品フライヤー
投資記念カード(シルバー)
投資記念カード(ゴールド)
投資記念カード(ブラック)
2005年11月末日以降 10枚 10枚 10枚
1枚
1枚
1枚
第1部作品前売券
第1部作品台本
プレスキット
プレスキット豪華版
2006年2月中旬以降  1枚 1枚 2枚
1冊 1冊 1冊
1組
1組
第1部作品DVDへの
投資家名の 表記(希望者のみ)
発送なし 1名 1名 1名
「北斗ファンド-英雄伝説-」資料よりQUICK作成
ただ映画ファンドを投資商品として見た場合、このような付随的な特典より、興行収入がなによりも重要である。それというのも、ファンドの運用実績は興行収入によって大きく左右されるからだ。北斗ファンドの制作費は25億円もかかるため、劇場用映画3本、OVAの2本などでこれを回収するためには、そのハードルは高くなると見られている。北斗ファンドの商品信託受益権説明書によると、興行収入のうち40~60%は配給会社に支払われるという。いわゆる「歩率」については、「映画業界で5割取られるのは常識的なライン」(映画業界関係者)のため、投資家への還元分は興行収入のまず半分以下となる。
また同説明書によると、劇場上映ではフィルム代、焼き増し代、音楽著作権物上映使用料、配給宣伝費を合計したP&A費(Print and Advertisement)というコストも発生する。これは受託者である三井住友銀行と配給会社との間で契約され、映画1作品あたり2億円ほど掛かる予定だ。その他にも前売券販売手数料や配給手数料なども差し引かれる。この結果、劇場用映画からファンドが得られる収益は「興行収入×歩率-P&A費-前売券販売手数料-配給手数料」という式で表すことができる。
こういった劇場公開に関するコストは、北斗ファンドに限らず、映画ファンドの宿命と言えるものだ。また映画ファンドの投資家は中途解約ができないため、流動性の観点で投資信託などと比べて劣る部分も多い。

映画独特のリスク、興行がヒットするかどうかが課題

図3 2005年に劇場公開されたアニメの興行収入比較
図3 2005年に劇場公開されたアニメの興行収入比較
図4 2005年に劇場公開されたアニメDVDソフトの販売トップ5
図4 2005年に劇場公開されたアニメDVDソフトの販売トップ5
デジタルコンテンツ白書2006、(社)日本映画製作者連盟、
各社公式サイトなどからQUICK作成
その一方、北斗ファンドに限れば、その企画の面で独特のリスクがあるとの指摘もある。1983年の原作誕生以来、20数年が経っても知名度は抜群だが、「劇場用映画として見た場合、観客層が30代前後に絞られてしまえば大ヒットには繋がりにくい」(前出・映画業界関係者)というのである。2004年11月公開の「ハウルの動く城」は興行収入200億円、DVD販売額も70万枚超で大ヒットした【図3参照】。興行収入10億円を超えればヒットと言われる映画業界において、幅広い層に支持されたことが大ヒットにつながったのだろう。北斗の拳を原作・TV放送時に見た世代が30~40代に多いとはいえ「その内容から言って、家族連れで見に行くものではない」(同)と見られる。
北斗ファンドの収益が増えるとすれば、大人になった団塊ジュニア層がDVDを購入するといった具合に、劇場以外のルートを通じたケースの方が現実的ではないだろうか。実際、作品の性格はだいぶ異なるが、北斗ファンドとファン世代が重なり、同じく劇場3部構成となった「起動戦士Zガンダム-星を継ぐ者-」は興行収入が8.3億円とそれほど振るわなかったものの、DVD販売数は23万枚を超えてファインディング・ニモの13.6万枚を上回った【図4参照】。
北斗ファンドの商品信託受益権説明書では、1986年に公開された劇場版「北斗の拳」、2003~2004年に3本販売されたOVA「新・北斗の拳」について、「利用可能な公表された情報はありません」と記している。しかし、過去の実績を探る上で同じ原作による映画・OVAの実績が示されていないことには、疑問が残る。
そこで、東映アニメーションに独自に取材したところ、1986年の劇場版「北斗の拳」の配給収入は約9億円だったという。大雑把に見て、興行収入から映画館側の販売手数料などを差し引いた配給収入は興行収入の2分の1となる。興行収入に換算すれば、約18億円を記録していたと見られる。原作の人気が華やかだった頃だけに、当時の邦画アニメとしては大健闘していたようだ。

2003年のOVA作品は200%の好リターン、企画力が鍵

2003年に販売されたOVA「新・北斗の拳」も製作委員会方式で作られたためか、正式な売上実績などは公表されていない。しかし関係者によれば、新・北斗の拳3作品のこれまでの売上は約2億3000万円となった模様で「製作委員会が出資した分の200%のリターンを記録した」(アニメ業界関係者)という。このうち注目されるのが、海外の売上が約1億5000万円となって、国内売上を上回ったことである。企画段階から海外販売を視野に入れ、製作委員会の出資企業に販売ルートを独占させない仕組みを取っていたこともあってか、小規模ながらも着実なリターンをあげたケースと言える。
今回の北斗ファンドでも「海外販売権」を利用する予定となっているが、2007年1月末時点で正式な海外戦略に関するリリースはまだなされていない。映画以外のDVD、テレビ放送許諾などといった二次利用がどこまで拡大するのか、不確定要因が多いのはコンテンツ業界の宿命のようだ。ちなみに前出のアニメ業界関係者によれば、新・北斗の拳はすでに販売した3部作のOVAを1つのパッケージにまとめ、「豪華版」として再販されるという。北斗ファンドと新・北斗の拳は全く関係のない母体が運営しているものの、新・北斗の拳側ではブームをさらに収益チャンスに利用するしたたかな戦略を持っているようだ。もちろん北斗ファンドも今後、他のメディアなどを通じてブームが盛り上がってくるようなら、その恩恵を受ける可能性があるだろう。

最終的にはコンテンツの中身、海外戦略も課題に

映画ファンド業界には、個人投資家からの出資を募集しても、なかなか資金が集まらないという古くて新しい問題がある。北斗ファンドは著名な原作によってその第一関門をクリアしたわけだが、近年のハリウッド作品が商業主義に走るあまり、ハリー・ポッターシリーズやスターウォーズ、スパイダーマンなどなど、続編物やリメイク作品に偏っていることは周知の事実である。ヒットを意識すればするほど、作品の新鮮味がなくなることは古今東西、映画ビジネスで問題となっている。ただでさえ新規参入組が良質のコンテンツを入手することは難しい。
また逆に製作費が大きくなり過ぎてプロジェクト自体が大型化すれば、出資募集も大変で、最終的な投資家への利益を還元するための採算ラインも必然的に高くなる。国内市場だけでそれをまかなうことは難しいため、「製作費が10億円を超えるアニメ作品なら、海外展開も考えなければ最終的なリターン確保は難しい」(映画業界関係者)との指摘もある。業界内では封切り前から呼び声が高い北斗ファンドだが、そのリスクを多角的に分析して見ると、成否を判断するのは時期尚早ではないだろうか。
【 執筆:MoneyLife片平正二】
(掲載日:2007年2月8日)

●映画ファンド特集第2回は、実際に映画ファンドの組成に携わってきたジャパン・デジタル・コンテンツ信託の土井宏文社長へのインタビューをお送りします。

 
   

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