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-5- 仕組み預金 解約時の元本割れでトラブルに 金融庁もデリバティブを組み込んだリスク説明で注意喚起 - 仕組み預金  - 経済トピックス - 話題とコラム

 

特集・コラム [ 【経済トピックス】 ]

経済トピックス第5回 仕組み預金、解約時の元本割れでトラブルに

デリバティブ(金融派生商品)を組み込むことで利回りを高めた「仕組み預金」が問題になっている。仕組み預金とは、満期日の期間延長や繰り上げを金融機関が判断したり、外貨預金で為替レートによっては外貨で償還される「特約付き定期預金」のことだ。国民生活センターによれば、預金者が途中解約すると違約金を取られて元本割れしたという相談が目立っている。

金融庁もリスクの説明など広告表示の適正化について、金融機関に注意を喚起している。個人投資家は、説明書に「デリバティブ」や「仕組み」の表示がある商品については十分注意し、リターンばかりに目を奪われず、複雑な仕組みの裏にあるリスクを十分理解した上で投資判断する必要がある。

仕組み預金、デリバティブを組み込んで「特約」にも特徴

仕組み預金(または仕組み債)は、普通預金や定期預金と同じように、預金保険法の対象商品である。このため、元本の1000万円とその利息までは、預けた金融機関が破綻しても保護される。しかし、預金といっても実際はリスク性のある「投資商品」に近いため、広告におけるリスクの説明が不十分なケースも多く、金融庁や公正取引委員会が注意喚起や排除命令を出している【表参照】。
表 仕組み預金を巡る最近の動き
表 仕組み預金を巡る最近の動き
最近問題となっているのは「期間延長特約付定期預金(以下、円特約)」、「満期繰上特約付定期預金」という仕組み預金。これらは一般の定期預金よりも金利を優遇する代わりに、原則として満期日の期間延長・繰り上げの「特約」がつけられている。金融機関側の判断で期間を変更できてしまうため、満期を迎えても預金者は自由に資金を引き出せない恐れがある。
普通の定期預金なら中途解約しても利息分が目減りするだけだが、仕組み預金では期間延長があるかどうかに関係なく、仮に解約した場合には諸費用が掛かり、元本割れする場合がある。デリバティブを組み込んで高い利回りを実現するため、このような期間の制約は普通の定期預金より厳しいのだ。
さらに外貨預金に特約をつけた仕組み預金もある。「特約付き円定期預金」、「特約付き外貨定期預金」などの商品名で、「円定期」という名前がつきながら、円高などの条件によっては外貨で償還される可能性もある。「二重通貨預金(以下、二重通貨)」などとも呼ばれ、こちらも中途解約の場合は違約金によって元本割れする恐れがある。
金融庁監督局銀行第一課は「デリバティブなどを組み込んだ商品設計で投資家に不利なものなら、利用者保護を再徹底してもらう必要がある」とし、円特約、二重通貨それぞれの仕組み預金にリスク情報の適切な開示を求めている。
ここでのポイント

仕組み預金の取扱は40件、全国各地に点在

図1 仕組み預金の取扱件数
図1 仕組み預金の取扱件数
期間延長円特約、二重通貨預金の両方を扱っている銀行はそれぞれを1件として重複集計している。
大手行、信託銀行、地銀、第二地銀の各社公式サイトからQUICK作成。
国民生活センターには、この仕組み預金の中途解約に伴う違約金が高すぎるために元本割れしたという相談が報告されており、「都心部、地方に限らず相談事例があります」(情報分析課)という。実例としては「1年半預けた後に解約したら元本割れになった、解約時のリスクについて何も説明はなかった」というケースもあるようだ。
大手行から地銀まで、各社の公式サイトで仕組み預金の取扱事例を調べたところ、円特約で8件、二重通貨で32件、国内で合計40件の仕組み預金が存在することが分かった【図1参照】。1件だけ販売が停止されているものがあった。関東、東海地方はもとより、九州など全国各地で販売されていることも分かる。中には円特約、二重通貨の両方を取り扱っている地銀もあった。
ここでのポイント

円特約のリスク、金利上昇の恩恵は受けられない

図2 長く持てば金利が優遇される特約付定期預金の一例
図2 長く持てば金利が優遇される特約付定期預金の一例
架空の商品を前提にQUICK作成
具体例をあげながら、この商品のリスクを考えてみよう。A銀行がこのほど、10年定期で5年目以降、預金金利が上乗せされる「満期日繰上特約付定期預金」を販売したと仮定する【図2参照】。
この商品は「銀行側が満期日を10年目から5年目まで繰り上げられる」特約がある代わりに、5年目までは年利1.2%、その後毎年+0.3%ずつ引き上げられ、10年目には年利2.7%まで上がる特殊な定期預金だ。普通のスーパー定期(300万円以上)の適用利率は、5年定期が0.60%、10年定期でも0.80%(4月時点)となっているため、一見するとお得な金利設定である。 商品説明書をよく見ると、「金利情勢が変わっても、10年間の適用金利は当初契約したものが適用されます」と記されている。預けた時より市中金利が上昇に転じ、他の定期預金金利が引き上げられたとしても、この預金は金利上昇の恩恵を受けられない。逆に市中金利が預けた時より低下した場合、銀行側は償還期を5年目に繰り上げる可能性が高い。預金者は本来なら高金利で運用するチャンスがあったものの、その機会を失ってしまうのだ。
しかもこの商品は、原則として中途解約ができず、仮に解約した場合、顧客は違約金や手数料を銀行に支払わなければならない。「満期まで持っていただければ、絶対に元本割れはありません」(地銀の商品説明担当者)という声はあるものの、必要な時に解約できないリスクは避けたい。契約期間や各社の条件でも異なるが、違約金によって10数パーセントの元本割れが発生するケースもあるようだ。
ここでのポイント

二重通貨のリスク、ムダな為替手数料で元本割れも

図3 円高が進んで外貨で受け取る場合の問
図3 円高が進んで外貨で受け取る場合の問
架空の商品、為替相場を前提にQUICK作成
また最近の流行として、二重通貨預金もある。預け入れた時の為替レートより円安の場合は当初約束した通りの利息がついて「元本+利息」が円建てで償還されるものの、基準日に判定相場よりも円高が進んでいれば、そのときは外貨で償還されてしまうのだ。
具体例で説明しよう。B銀行の「条件付き外貨定期預金」で、3カ月物定期で100万円を預けたと仮定する【図3参照】。預け日の仲値が1ドル=117.20円で、3カ月後に判定相場の1ドル=116円を上回っていれば円で償還される。しかし、図の例では1ドル=115.50円となっているため、この時は判定相場の1ドル=116円で100万円分のドルが支払われる。1ドル=115.50円の円高水準でドルを買えれば、預金者は8658ドルの外貨を受け取ることができるが、それよりも円安水準の判定相場である1ドル=116円で交換すると8620ドルと38ドルが目減りする。
外貨を受け取った顧客が円貨への両替を求めた場合は、為替手数料が別途掛かってしまう。このケースで8620ドルが償還されても、実勢相場が115.50円なら対顧客相場は114.50円となる。この結果、円貨に両替した時に元本は98万6990円に目減りする。為替相場や複雑な条件を絡めることで、本来なら必要のない為替手数料を銀行に払わなければならない。
ここでのポイント

二重通貨のリスク、円安による為替差益も得られない

二重通貨預金が普通の外貨預金と大きく違う点は、円金利より高い利回りが得られる一方、仮に円安が進んだ場合でも「為替差益」が受けられないことである。前出の「条件付き外貨定期預金」の例で説明すれば、判定相場より円安が進んでも、預金者が受け取るのは「100万円+利息」に過ぎない。
各銀行のWebサイトを見ると、この二重通貨預金について「円高リスクを低く抑えた新しいタイプの商品です」、「しばらくは大幅な円高はないだろうとお考えのお客様にお勧めします」といった説明がされている。銀行によっては随時取り扱ったり、月に1~2回のペースで定期的に募集を受け付けたりと様々だ。
本来的には銀行に有利な商品設計が行われ、無駄な為替手数料を投資家が負担するリスクがあることに気をつけたい。中途解約した場合には高い違約金を銀行に支払い、元本割れする恐れもある。
図2 2002年度以降の年金相談者数(来訪相談)
【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年4月18日)

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