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特集・コラム [ 信託で何ができる? ]

【信託で何ができる?】-1- 新規参入組の商品・サービス 
生前贈与から映画ファンドまで広がる可能性

「遺言信託」では解決できない!? 相続トラブルが急増中

信託銀行が遺言の保管・執行を行う「遺言信託」が普及している。しかし適正な手続きに沿って遺言書を作っても、相続争いが無くなることはない。相続に関するトラブルは近年増えており、家庭裁判所への相続に関する相談件数は2006年度に14万1147件を記録した【図1参照】。90年代前半は5万件台で落ち着いていただけに、この10年で2倍以上に増えた計算だ。高齢化の進行・遺族の権利意識の高まりを受け、今後も相続を巡る争いが増えそうだ。
図1 全家庭裁判所の相談件数(相続関係のみ)
図1 全家庭裁判所の相談件数(相続関係のみ)
最高裁判所「司法統計年報」よりQUICK作成

実際、遺言信託を使っても、1人でも内容に不満を持つ相続人が訴訟を起こせば裁判沙汰になる。遺言書で分割内容を決めていても、相続人達で協議して変更することも不可能ではない。「そもそも信託銀行では、もめ事になるような案件は取り扱いません」(業界関係者)との声もあり、個別の争いには遺言信託で対応しきれないのが現状である。
そんな中、日本弁護士連合会では2006年12月に「遺言信託プロジェクトチーム」を立ち上げた。弁護士なら紛争問題にも対応ができるため、遺言書の作成・保管・執行を取り扱うという。

新規参入の朝日信託、「本当の信託」で相続問題に対応

信託によって生前から相続財産を管理する方法も導入されている。信託銀行のいわゆる「生前贈与信託」のほか、2005年に新規参入した朝日信託の「円滑相続信託」などがそうだ。円滑相続信託では依頼者が委託者となり、受託者である朝日信託と信託契約を締結することで依頼者に相続が発生した時点から信託が始まる。朝日信託が契約の内容に基づき、決められた財産承継者に対して財産管理・運用・処分などを行うため、遺産分割協議が入り込む余地もない。故人の遺志が尊重されるというわけだ。
写真1 右から、朝日信託の神野清孝副社長、掛江康一部長
写真1 右から、朝日信託の神野清孝副社長、掛江康一部長
同社の神野清孝副社長は、日本では信託会社が銀行に転換した歴史的な背景もあって「本当の意味での信託が普及していませんでした」と述べる【写真1】。信託銀行の遺言信託は、あくまでも遺言書を保管・執行するサービスのため、これだけでは故人が望む財産の承継を実現できないケースもあるからだ。「朝日中央綜合法律経済事務所グループを母体する我々は法律・税務・財務の専門家集団ですので、様々な信託を取り扱うことができます」(同)とも語る。9月の信託法改正を受け、さらに様々な信託を扱えるという。
例えば、依頼者から配偶者、子、孫へと財産を引き継ぐ受益者連続信託(後継ぎ遺贈型信託)がその1つ。これにより、長期にわたって家族のために財産を管理できる信託が可能となる。「米国・英国では弁護士を受託者として、家族間信託(ファミリー・トラスト)としてよく使われるものです」(同)。日本でもようやく個人に便利な制度が整ってきたのである。

リバースモーゲージ信託、家に住みながら生活費などを確保

老後の問題では、相続だけでなく、生活費や医療費などのお金も切実だ。これを信託でサポートするものに、朝日信託の「リバースモーゲージ信託」がある。リバースモーゲージとは、自宅を担保として、担保の範囲内で生活費の融資を受けられるもの。1981年に東京都の武蔵野市が初めて導入し、民間金融機関では中央三井信託銀行などが取り扱っている。住み慣れた自宅で生活しながら、老後のキャッシュを得られる手段として、本格的な普及が待たれて久しいものだ【図2参照】。
図2 リバースモーゲージ信託のイメージ
図2 リバースモーゲージ信託のイメージ
※配偶者がリバースモーゲージを引き継ぐことも可能
※返済後の剰余金は委託者の相続人に交付する
朝日信託資料を元に、QUICK作成
従来の商品では、金融機関が融資を回収しやすいよう土地の評価額が4000万円から、1億円からと高額だったり、大都市圏の物件に限定するなど、一般庶民には利用しにくい問題もあった。その点、朝日信託は融資額500万円から利用が可能。同社の掛江康一部長によると、「利用者の土地評価額の傾向は都内で3000~5000万円、地方で1000~1500万円くらいで、融資枠も1000~2000万円での利用が多いです」という。資金の引き出しは融資枠の範囲内で自由にでき、使途も事業・投資目的以外なら自由で、住宅のリフォーム費や医療費、介護費に充てることができる。
融資の申し込みは東京スター銀行が受け付けており、北は同行の支店がある仙台、南は福岡までが営業エリアだ。今年2月から本格的な取扱を始め、「いまでは毎月10数件の申し込みがあります」(同)。信託によって権利関係を管理しているため、(1)兄弟や親子など配偶者以外の家族が自宅に同居している場合(2)賃貸住宅併用の場合――など、相続人・賃借人との権利関係が複雑になるケースでも利用できる。
リバースモーゲージ信託では任意後見機能を付けることもできるため、「委託者が認知症になったとしても、医療費、介護費用などの生活資金を引き続き金融機関から借りることもできます」(同)。同社では他の信託サービスも含めて、提携金融機関を増やして普及に努めたいという。
   
    

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