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ETFの「価格変動リスク」 - ETF活用をした分散投資・ポートフォリオ投資術 - 東証ETF活用プロジェクト 東証ETF

 

東証ETF活用プロジェクト [ ETFを活用した分散投資・ポートフォリオ投資術 ]

【第3回】

ETFの「価格変動リスク」

国内で上場しているETFは5月末時点で99本(うち東証は88本)もありますが、自分にとって適切なETFを見つけるためには、どうしたらよいのでしょうか?
このシリーズの第一回目で、どの程度の損失に耐えられるかを認識することが投資の第一歩であることを説明しましたが、次に押さえておくポイントは、各々のETFの「価格変動リスク」(価格変動性)の大きさを把握することです。
「価格変動リスク」の「リスク」という言葉には「危険」「元本割れ」「値下がり」というイメージがあり、ついつい避けたくなると思いますが、実は、資産運用の世界では、「リスク」は「危険」という意味ではありません。ETFをはじめ投資信託、株式、債券など金融商品の「価格変動リスク」とは、価格が上がったり下がったりする価格の変動性ことです。(変動性をボラティリティと呼ぶこともあります。)もう少し厳密に言うと「価格変動リスク」は金融商品の価格変動に伴う投資収益率(リターン)の変動性(不確実性)を意味します。言い換えますと、ETFの価格は日々変動していますので、価格変動リターン「(期末の価格-期初の価格)÷期初の価格」も毎月、毎年変動しており、このリターンの変動性を「価格変動リスク」と呼びます。
図表1は、内外の株式、債券の年次リターンの推移ですが、いずれの資産クラスも毎年毎年リターンが変動していることがわかります。このリターンのブレ幅が大きいほど、「価格変動リスク」も大きいことになりますが、その大きさの水準は資産クラスによって異なります。
「価格変動リスク」は、国内債券→外国債券→外国株式→国内株式の順で、大きくなっていくことが図表1から目で見てわかります。
●図表1 目で見てわかる「価格変動リスク」
図表1 目で見てわかる「価格変動リスク」
提供:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
この「価格変動リスク」の大きさは、資産運用の世界では「標準偏差」という確率統計学の尺度を用いて計測されます。
図表2に毎年のリターンをヒストグラムにしたリターンの分布イメージと、「標準偏差」の関係を示しました。
「標準偏差」とは、毎年のリターンが平均リターン(図表2のお山の中心付近)からどの程度平均的に離れているかを計測したものです。わかりやすく言えば「リターンのバラツキ具合」を表しています。標準偏差は大きければ大きいほど、リターンが大きく上下に変動する可能性が高く、価格変動リスク(投資の不確実性)が高いことを意味しています。また、毎年のリターンのブレ幅が大きいため、リターンが将来どの程度になるか予測することが難しいことを意味しています。
●図表2 知って得する「標準偏差」
図表2 知って得する「標準偏差」
提供:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
この「標準偏差」は、語感から難しいイメージを持たれがちですが、とても便利な尺度です。
リターンが正規分布に従うとすると、毎年のリターンは「平均リターン-標準偏差」から「平均リターン+標準偏差」の範囲に約68%の確率で収まることが知られています。
例えば、「標準偏差」が年率20%のETFがあるとしましょう。そして、このETFの平均リターンは保守的にゼロとします。そうすると、このETFの年次リターンは、68%の確率で、‐20%(=0%‐20%)から20%(=0%+20%)の範囲内に収まることと予想されます。これは3年のうちほぼ2年はこの範囲内に収まり、1年はこの範囲を超えると予想されるわけです。したがって、6年間に1年は価格が20%超、上下に振れる可能性があることを示しています。
平均リターンに標準偏差の2倍を加減し、‐40%(=0%‐2×20%)から40%(=0%+2×20%)に範囲を広げると、年次リターンは95%の確率で、この範囲内に収まると予想されます。さらに、平均リターンに標準偏差の3倍を加減し、‐60%(=0%‐3×20%)から60%(=0%+3×20%)に範囲を広げると、99%の確率で、この範囲内に収まるとされています。  
以上のことから大体の目安として、「-2×標準偏差」から「-3×標準偏差」が年間の最大損失率と予想することができます。  
したがって、年間最大損失率を20%に抑えたいと思ったら、標準偏差が10%以内のETFを選択すること、年間最大損失率を30%に抑えたいと思ったら、標準偏差が15%以内のETFを選択すること、が「転ばぬ先の杖(つえ)」ということになります。
ETFの標準偏差(年率:%)を実際に計測した結果が図表3です。
一般に、標準偏差は計測期間が長いほど、統計上の精度が高まりますが、近年上場したETFは長い期間での標準偏差を計測することはできません。また、標準偏差は、計測期間や市場環境によって水準が異なります。そこで、ここでは3つの計測期間で標準偏差を計測しました。3つの計測期間は全て2010年5月末を計測終了年月にしていますが、計測開始年月と計測期間は、(1)リーマンショックの影響を計測するために2008年8月まで1年10カ月さかのぼった期間、(2)なるべく多くのETFの標準偏差を比較する目的で2009年6月まで1年さかのぼった期間、(3)統計上の精度を高めるために2002年6月まで8年さかのぼった期間としました。 したがって、5月末時点で上場後1年を経過していないETFは図表3に含まれていません。
図表3 ETFの標準偏差(価格変動リスク)
1年10カ月間(22カ月)で計測した標準偏差が大きい順に並べ替えをしています。
      標準偏差(年率:%) 標準偏差(年率:%) 標準偏差(年率:%)
  銘柄
コード
ETF名 計測期間:22カ月間
(2008.8~2010.5)
計測期間:8年間
(2002.6~2010.5)
計測期間:12カ月間
(2009.6~2010.5)
1 1324 NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信 59.5 30.9
2 1325 NEXT FUNDS ブラジル株式指数・ボベスパ連動型上場投信 47.1   31.2
3 1313 サムスンKODEX200証券上場指数投資信託[株式] 46.4 27.5
4 1650 ダイワ上場投信・TOPIX-17 不動産 43.6   39.0
5 1640 ダイワ上場投信・TOPIX-17 鉄鋼・非鉄 42.2 37.2
6 1309 上海株式指数・上証50連動型上場投資信託 41.5   37.1
7 1633 NEXT FUNDS 不動産(TOPIX-17)上場投信 41.2 32.1
8 1649 ダイワ上場投信・TOPIX-17 金融(除く銀行) 40.7   32.4
9 1623 NEXT FUNDS 鉄鋼・非鉄(TOPIX-17)上場投信 39.8 28.8
10 1323 NEXT FUNDS 南アフリカ株式指数・FTSE/JSE Africa Top40連動型上場投信 39.7   22.3
11 1618 NEXT FUNDS エネルギー源(TOPIX-17)上場投信 37.6 24.6
12 1322 上場インデックスファンド中国A株(パンダ)CSI300 37.6   26.5
13 1635 ダイワ上場投信・TOPIX-17 エネルギー資源 37.3 26.2
14 1632 NEXT FUNDS 金融(除く銀行)(TOPIX-17)上場投信 36.7   26.5
15 1646 ダイワ上場投信・TOPIX-17 商社・卸売 36.7 29.5
16 1613 東証電気機器株価指数連動型上場投資信託 36.1 24.2 31.7
17 1642 ダイワ上場投信・TOPIX-17 電機・精密 36.0 30.6
18 1641 ダイワ上場投信・TOPIX-17 機械 35.7   28.8
19 1625 NEXT FUNDS 電機・精密(TOPIX-17)上場投信 35.6 30.6
20 1639 ダイワ上場投信・TOPIX-17 自動車・輸送機 35.2   32.1
21 1610 ダイワ上場投信-東証電気機器株価指数 34.7 23.6 30.1
22 1622 NEXT FUNDS 自動車・輸送機(TOPIX-17)上場投信 34.7   29.5
23 1624 NEXT FUNDS 機械(TOPIX-17)上場投信 34.6 27.4
24 1629 NEXT FUNDS 商社・卸売(TOPIX-17)上場投信 33.7   22.6
25 1648 ダイワ上場投信・TOPIX-17 銀行 33.5 26.9
26 1612 ダイワ上場投信-東証銀行業株価指数 33.0 29.1 23.8
27 1615 東証銀行業株価指数連動型上場投資信託 31.8 29.1 22.2
28 1631 NEXT FUNDS 銀行(TOPIX-17)上場投信 31.3   24.4
29 1330 上場インデックスファンド225 31.3 21.0 23.7
30 1321 日経225連動型上場投資信託 30.5 20.7 23.7
31 1320 ダイワ上場投信-日経225 30.3 20.6 23.2
32 1619 NEXT FUNDS 建設・資材(TOPIX-17)上場投信 29.3   26.2
33 1329 iシェアーズ日経225 29.1 24.3 24.5
34 1636 ダイワ上場投信・TOPIX-17 建設・資材 28.1   21.6
35 1318 上場インデックスファンドTOPIX Small日本小型株 27.9 26.8
36 1314 上場インデックスファンドS&P日本新興株100 27.9   20.3
37 1310 ダイワ上場投信-トピックス・コア30 27.3 20.2 22.2
38 1311 TOPIX Core 30 連動型上場投資信託 26.7 20.0 21.2
39 1316 上場インデックスファンドTOPIX100日本大型株 26.6 21.9
40 1620 NEXT FUNDS 素材・化学(TOPIX-17)上場投信 26.6   24.2
41 1308 上場インデックスファンドTOPIX 26.0 18.7 20.4
42 1306 TOPIX連動型上場投資信託 25.9 18.5 20.2
43 1305 ダイワ上場投信-トピックス 25.9 18.6 20.1
44 1317 上場インデックスファンドTOPIX Mid400日本中型株 25.8   22.2
45 1312 ラッセル野村小型コア・インデックス連動型上場投資信託 24.8 22.2
46 1326 SPDRゴールド・シェア 24.7   12.2
47 1637 ダイワ上場投信・TOPIX-17 素材・化学 24.7 20.0
48 1647 ダイワ上場投信・TOPIX-17 小売 23.9   20.1
49 1643 ダイワ上場投信・TOPIX-17 情報通信・サービスその他 23.9 17.4
50 1328 金価格連動型上場投資信託 23.6   10.6
51 1630 NEXT FUNDS 小売(TOPIX-17)上場投信 22.1 17.2
52 1617 NEXT FUNDS 食品(TOPIX-17)上場投信 21.3   17.7
53 1626 NEXT FUNDS 情報通信・サービスその他(TOPIX-17)上場投信 21.3 17.2
54 1319 日経300株価指数連動型上場投資信託 21.1 17.9 14.9
55 1634 ダイワ上場投信・TOPIX-17 食品 21.0 15.1
56 1621 NEXT FUNDS 医薬品(TOPIX-17)上場投信 19.2   13.6
57 1638 ダイワ上場投信・TOPIX-17 医薬品 19.0 14.5
58 1645 ダイワ上場投信・TOPIX-17 運輸・物流 18.8   18.3
59 1628 NEXT FUNDS 運輸・物流(TOPIX-17)上場投信 17.0 16.0
60 1627 NEXT FUNDS 電力・ガス(TOPIX-17)上場投信 14.4   10.2
61 1644 ダイワ上場投信・TOPIX-17 電力・ガス 13.9 9.3
62 1347 上場インデックスファンドFTSE日本グリーンチップ35     28.0
63 1346 MAXIS 日経225上場投信 26.3
64 1327 イージーETF S&P GSCI商品指数キャップド・コモディティ 35/20 クラスA米ドル建     26.2
65 1343 NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 22.7
66 1345 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型     22.1
67 1344 MAXIS トピックス・コア30上場投信 20.7
68 1348 MAXIS トピックス上場投信     20.5
図表3を見ると、直近22カ月間で計測した価格変動リスク(標準偏差)が最も大きかったETF は、「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」で、逆に最も小さかったETF は、「ダイワ上場投信・TOPIX-17 電力・ガス」でしたが、その違いは4倍以上もあり、ETFによって価格変動リスク(標準偏差)の水準が大きく異なることがわかります。また、同じETFでも計測期間によって標準偏差の水準が異なりますが、相対順位は大きく変わらないこともわかります。
どうやら「価格変動リスク」の相対的な水準は、計測期間によらず何かが影響を及ぼしているようです。
そこで問題です。
Q1 なぜETFによって「価格変動リスク」(標準偏差)の水準が異なると思いますか?
(1) 上場時期の違い
(2) 運用会社の違い
(3) 投資対象の違い
(4) 信託報酬の違い

その答えは、次回をご覧ください。
執筆:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン マネジング パートナーCIO/小松原宰明
掲載日:2010年月6月17日
小松原 宰明氏小松原 宰明氏プロフィール
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 マネジング パートナーCIO
(社)日本証券アナリスト協会検定会員
http://www.matonavi.jp/
1987年慶應義塾大学理工学部卒業、日本長期信用銀行入行。長銀投資顧問システム運用部ファンドマネジャー、UBSアセットマネジメント国内株式ポートフォリオ・マネジャーを経て、2000年11月イボットソン・アソシエイツ・ジャパンを共同設立。著書に『リスク・リターンの経営手法』(共著、中央経済社)、『ポリシー・アセットアロケーションの重要性』証券アナリストジャーナル2008年9月号(第20回証券アナリストジャーナル賞受賞)、『債券の期待リターンの推計-実証分析と将来シミュレーション-』(日本ファイナンス学会第12回大会予稿集)、『ポートフォリオ・マネジメント・プロセス』(共著、証券アナリスト第1次レベル通信教育講座テキスト)などがある。


   
    

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