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【第12回】WGC日韓地域代表豊島逸夫氏が語る 「今後5年の中国が金需給の景色を変える」 東証ETF

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【第12回】

WGC日韓地域代表豊島逸夫氏が語る

今後5年の中国が金需給の景色を変える

中長期での価格上昇を背景に金投資が拡大しています。リーマンショックや欧州財政危機を経て、世界の投資資金が資産分散の一環として金を志向する一方、中国の旺盛な金需要が大きくクローズアップされています。世界的な金の調査・研究機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)日韓地域代表の豊島逸夫さんに、中国金市場の最新動向と話題の投資手法である金ETFについて、話を伺いました。
金の世界でも中国市場の旺盛な需要が話題になっています。最近は頻繁に中国へ足を運んでいらっしゃるようですが、中国の市場動向についてどのように見ていますか?
豊島氏

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)日韓地域代表
豊島逸夫氏
私と中国の直接的なつながりは2001年、中国初の金取引所「上海黄金交易所」の創設を目前に、その国際顧問に就任してからです。2010年には中国最大の商業銀行である中国工商銀行の貴金属関連のアドバイザー役としてお手伝いしています。中国の中央銀行である中国人民銀行がこの2年ほど、民間銀行へ金業務の解禁を段階的に進めており、各行は貴金属部を設立して本格的な売買業務に取り組んでいる最中といえます。
中国工商銀行の貴金属部は今年9月でちょうど発足1周年。部員は90人に上ります。ちなみに、同行の預金口座数は約2億で、支店数は16,000拠点ほど。これまで私が経験してきた日本の金ビジネスの常識よりゼロが2つも多い。金選好度の高い中国人は基本的に自国通貨の人民元よりも金を信用しています。資産はできれば金で持ちたいわけです。人民銀行の統制によって自由に金が持てなかった2億口座の顧客が、自分の銀行口座で金を保有できるようになったことで、潜在的だった金の需要がいま、徐々に表に出てきている格好です。
ほんの一例ですが、金の現物志向が強く少しずつ貯めていきたい人の間に、純金積立が静かなブームになっています。まだテスト段階なのに日本では考えられない規模の数字が上がってきます。その中国が金を本気で売るようになったら――市場に与えるインパクトの大きさはちょっと想像がつきません。
一方のマクロ的な視点から、中国政府が金需要拡大に動く背景について教えてください。
豊島氏
中国政府が外貨準備で金を買い始めています。公的保有による金はいま1054トン。1年ちょっと前までは600トンだったので、454トンも増えた形です。もともと中国は2兆4000億ドル超の外貨準備高の7割近くを米ドルで保有していました。これを分散しようとしてユーロを買った結果、リーマンショックからの欧州財政危機で大きな損失を出した。そしていま、ユーロから金へと、中国政府が資金を移しているわけです。
例えば世界最大級の資産を運用する中国政府系ファンドのCIC(China Investment Corp=中国投資有限責任公司)がSEC(米証券取引委員会)に提出した開示資料によると、世界最大の金ETFである「SPDRRゴールド・シェア」(東証上場分のコード:1326)を保有していることがわかります。
さらに、中国当局が金取引の規制緩和を進めている背景には、過剰流動性によるバブル化を極力抑えたいという目論見があります。2兆4000億ドルもの外貨準備が株式や不動産に急に大きく流れて、市場が混乱することはできるだけ避けたい。金は株式や不動産に比べて、長期保有(売買頻度が少ない)の傾向が強い市場です。金によってマネーを「不胎化」させて、経済を落ち着かせたいというのが中国金融当局のねらいです。
以上のことから、中国の金需要の拡大が一過性ではない、構造的な流れであることがわかると思います。
中国における金需要の具体的な見通しは?
豊島氏
いま中国の金需要は年間400トン強くらいです。これから8年以内に、2倍の年間800トンになるのは確実でしょう。世界の金の年間生産量は現在2600トンほどですから、中国一国で30%以上を占める計算です。金需給の景色が変わるほど、そのインパクトは大きいと思いますね。
金需要には宝飾用と投資用の2種類がありますが、中国で今後伸びるのは投資用と見ています。中国ではいま、金やプラチナの宝飾品の競争相手が増えています。ファッションとして、前時代的という見方が多いようです。消費者が高度化してライフスタイルのレベルが上がれば、購買の選択肢が広がるのです。一方でリスク分散の意味を含めた投資の意識が高まれば、金はますます買われるようになるでしょう。
投資家の金選好度は「有事の金」「最後の拠りどころ資産」という意味で、過去の経験によっても変わってきますね。
豊島氏
上海の銀行博物館に行ったときのことです。そこに、紀元前2世紀に使われていた金貨が展示されていました。「なるほど中国の金貨の歴史は古いな」と。次に、1949年に発行された額面60億元(!)の紙幣の下に、それで買える米粒が数十粒置いてありました。60億元で米一盛りしか買えない。中国では、1945年から1949年までに卸売物価が月率78%上昇するというハイパーインフレを経験しています。紀元前の時代から金貨を使っている13億の人たちが、人民元紙幣を使っているわけです。「やっぱり最後は金に向かうだろうな」という思いを強くしました。
実際に中国の人たちと仕事をしたり、個人投資家と話をしたりすると、とてもスムーズなんですね。金が何たるかをよく知っているので、説明する必要がないから話が早い。個人投資家がいま安心して金を買える方法や場所を話すだけで十分。現在は信頼できる大手銀行が取扱いを始めており、近くの支店で買うことができますから。
先ほど純金積立の話がありましたが、中国では現物志向が強いのですか?
豊島氏
確かに強いですが、それだけではありません。一般には、バイ&ホールドの地金派とペーパーでトレーディング派の2つに分けられると思います。これは日本も似ています。リーマンショックによって株式投資で損失を被った"手負いの投資家"は、ペーパーは信用できない、やっぱり現物を志向するようです。また、「T+G」と呼ばれる先物取引もあります。これは、1日ごとに決済日を延ばしていくことができる特殊な先物取引。ずっと延ばし続けることも出来るし、好きなときに決済もできます。柔軟な取引で中国独特なもの。上海黄金交易所の全体出来高の45%ぐらいを占めるほどで、中国金市場の奥の深さを感じます。
金の販売体制について、印象的なエピソードがあります。広い国土の中国で億単位の顧客を持つ金融機関は、実際に金現物の引渡しをどうするのか――具体的な流通について質問したところ、現地の担当者は「我々は、遠くの支店・駐在員事務所でも、1.5営業日以内に顧客注文の金を届けられる」と胸を張るのです。「中国は現金社会。いつも現金が必要だから、どんな小さな支店でも必ず毎日1回は現金輸送車が回っている。それで金を運ぶ」。なるほどと納得しました。
さて、中長期での価格上昇などを要因に、日本でも金投資が話題になっています。特に金現物を裏づけとした金ETF(上場投資信託)は、全国の証券会社で少額から売買できること、売買コスト(信託報酬)が低いことなどから、期待を集めています。
豊島氏
中国、インド、ロシアなど急拡大を続ける国々の需要拡大が金価格上昇の上昇要因になっていますが、実は金ETF先進国が主体になっています。世界の機関投資家と欧米の個人投資家が主な投資家層といえます。リーマンショック以降、リスク分散で金志向が高まったのですが、欧米では自分で保管するリスクを嫌って地金はあまり人気がありません。むしろ金現物の裏づけがあり、有価証券なので保管が楽、上場されていて売買が容易などの理由から金ETFが選ばれています。金ETFによる世界の金保有量は1600トン超。年間生産量2600トンのうちの1600トンだから大きな市場です。
東証に上場している金現物を裏づけとした金ETFは前述の「SPDRRゴールド・シェア」と、今年7月に上場した「純金上場信託(愛称:金の果実)」(銘柄コード:1540)の2本。両者の大きな違いは、金現物と交換できるかどうか。SPDRRゴールド・シェアは世界の金ETF残高の75%を占める金ETFの代名詞みたいな存在です。一方の「金の果実」は日本国内で組成され金を国内(三菱UFJ信託銀行)で保管しており、交換が可能というユニークな特徴があります。
具体的にはどのような投資スタイルの投資家が向いていると思いますか?
豊島氏
欧米で金ETFを買う人は、金には投資したいけど現物は持ちたくない人。しかし日本では、有価証券として金に投資したいけど、現物も手にしたいという投資家が多いのです。バブル崩壊の影響か実物資産への信認が高い。日本の信託銀行が取り扱う遺言信託では日本国内で金を預かる点が日本の投資家に評価されているようです。これが「金の果実」が生まれた背景であり、日本独特の仕組みといえます。
これまでは、金に投資する顧客の8割以上が、50~80代で金現物を購入する人たちでした。一方の金ETFでは、8割以上がネット証券経由の若い人(30~40代)。金現物にこだわりがなく、売買が簡単で取引コストが安ければいいという方たちです。金ETFの登場によって、新しい投資家層が確実に広がっていると思います。
金と株式とは、いわば価値観、相場観が違います。まずは少額から始めて慣れることが大事です。その点、ETFは金投資の入門編としてお勧めできます。証券口座を持っている方は銘柄選択のひとつとして金ETFを考えると自然に金投資に入れると思いますよ。金現物志向がやや強いバイ&ホールドの投資スタイルなら現物と交換できる「金の果実」を、それ以外の例えばバイ&セルによるトレード志向が強い方は「SPDRRゴールド・シェア」が向いているかもしれません。
掲載日:2010年月10月06日/株式会社QBR
豊島逸夫(としまいつお)氏プロフィール
ワールド・ゴールド・カウンシル日韓地域代表
一橋大学経済学部卒業。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、スイス銀行で貴金属ディーラーに。同行で金売買の仲介業務に従事。ニューヨーク金市場にフロアトレーダーとして派遣され現場の経験を積んだ後、東京金市場の創設に参画。ディーラー引退後は金の国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)に移り、非営利法人の立場から金の調査研究、啓蒙活動に従事している。日経マネーDIGITALのブログ「豊島逸夫のニュース解説」(日経BP社)などで情報提供中。


 
   
    

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