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【第47回】シンプレクス・アセット・マネジメント運用本部の棟田響氏に聞く 日本のETF市場初の分割を実施。よりフェアな値段での取引を追求する

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「TOPIXブル2倍上場投信」(管理:シンプレクス・アセット・マネジメント)が6月23日、受益権の分割を実施した。海外市場では事例があるものの、東証に上場するETFでは今回が初めて。分割に至った経緯や投資家への影響などを、同社ディレクターで運用本部の棟田響氏に聞いた。


基準価額3万円超えだと呼値単位が10円から50円に

今回の「TOPIXブル2倍上場投信」(略称:TPX2倍、コード:1568)の受益権分割は、もともとの受益権数1口につき2口に分割した。その結果、1口あたりの市場価格は1/2になったが、受益者(投資家)の元本、つまり当該ETFへの投資総額に変わりはない。

そもそも、なぜ分割をおこなったのか。東証に上場する株式やETFの売買制度が大きく影響している。売買を注文する際の値段の刻みを「呼値の単位」という(ETFの場合はマーケットメイカーが値段を出している)が、その金額は東証のルールによって銘柄の値段水準で変わっているのである(表参照)。


(「内国株の売買制度」東京証券取引所ホームページより)

上の表でETFは「その他の銘柄」に含まれる。TOPIX100に含まれる世界的にも知名度が高い大型株銘柄であれば、値段の水準(株価)が3万円なら呼値の単位は5円、一方のETFでは同じ値段水準でも10円となる。マーケットメイカーは6円~9円単位でアスク/ビッドの値段が付けられないし、当然のことながら投資家は売買できないのである。

呼値単位の拡大は投資家の機会損失につながる

「2015年2月に『TPX2倍』の基準価額が初めて3万円を超えました。その瞬間に呼値の単位が10円から50円になったわけです。レバレッジ型である本ETFは東証のなかでも流動性が高く、活発に取引されているETFのひとつ。それまでは10円刻みで多くのアスク/ビッドが提示されており、50円刻みでは投資家の皆さまが以前ほどよい価格で売買することが難しくなってしまいました」。


シンプレクス・アセット・マネジメント
運用本部 ディレクター 棟田 響 氏

こう説明するのは、「TOPIX2倍」を運用・管理しているシンプレクス・アセット・マネジメント運用本部の棟田響氏。売買価格差の"さや取り"をねらうアービトラージ(裁定取引)をおこなっている投資家にとって、呼値の単位が大きくなってしまうことは投資機会の損失につながる可能性がある。






「ETFもTOPIX100構成銘柄と同じように、値段が3万円を超えても呼値単位が変わらないようにできないか東証さんに相談したのですが、特例を認めることになるので難しいという判断でした。そこで、呼値単位を10円に戻し、よりフェアな値段で取引できるようにするために考えたのが受益権の分割だったのです」(同)。

他の同種ETFでは直近の分割は考えにくい

「当社は運用会社なので値段の提示(マーケットメイク)はできません。市場価格を提供することはできませんが、その改善に向けて可能なことをやった結果です。比較的小さな会社であることから、問題の発見から検討、実施までを迅速に対応できました。また、ETFの分割は東証では初めてですが海外市場には事例があります。海外事情に通じていることも迅速な分割を可能にした理由のひとつだと思います」(棟田氏)。

ここで気になるのが、同種のETFで1口あたりの市場価格が近々3万円を超えそうな銘柄があるか、そして迅速な分割をおこなうことが可能かどうかだろう。結論からいうと、その可能性は低そうである。

ETFの基準価額は、同じ市場環境においても設定時期と当初元本の金額によって変わってくる。「TPX2倍」は当初元本1万円で2012年4月に上場したので、その後の株価上昇トレンドに乗って3倍の3万円を超えた。ほぼ同時期に設定された同種ETFもあるが、それは当初元本が半分程度。いますぐに3万円超えとは考えにくい。上場日が最近になればなるほど3万円超えには時間の余裕があると考えられるが、株価動向と一緒に気に留めておく程度の意識でいいだろう。

売買代金上位20位の約半数がレバレッジ型・インバース型

「今回の分割によって、これまで以上に流動性が上がることを期待している」という棟田氏だが、日本のETF市場全体の拡大には「段階を踏んで進んでいく必要がある」という。

「東証上場のETFは全部で200本以上ありますが、相応に流動性がある(=取引されている)のは30本程度なのではないでしょうか。現在、ETFを売買する投資家層は限られています。長期投資家の皆さまは、ETFの魅力の1つであるリアルタイム取引には、さほど関心がないかもしれません。しかし、実際に売買をしようとした際に、流動性がないので買わないという結論になってしまうことも多いと思います。」

確かに、直近のETF売買代金ランキング(東証「月刊ETF・ETNレポート2015年5月版」)では、上位20位のなかにレバレッジ型・インバース型9銘柄がランクイン。その他にも、連動指標として原油先物やVIX(ボラティリティ・インデックス)など、比較的強い特徴をもちハイリスクな銘柄が活発に取引されているようである。

強い特徴をもつETFが市場への"呼び水役"に

「多くの投資家の皆さまはまず、パフォーマンスを含めて自分の興味のあるETFに投資していく傾向が強いようです。あくまで私見ですが、レバレッジ型・インバース型をはじめとしたイメージしやすいETFが市場への"呼び水"となって、少しずつETF投資は拡大していくのでは。もちろん、比較的ハイリスクな商品であることのご説明と、お客さま個々人のリスク志向に合わせた選択の結果ですが」(棟田氏)。

ETF市場の流動性拡大には、ホームマーケットである日本株式市場の盛り上がりが欠かせない。その意味では「いまは確かに上げ潮。アベノミクス前と比べると、設定時の資金流入などの"初速"がまったく違うし、個人投資家も少しずつ増えている」という。

同社では現在、JPX日経インデックス400を原資産としたレバレッジ型・インバース型のETFを復数準備中で、今年8月後半には上場させたい考え。しばらくは、ETF市場の呼び水役の立場を続けていきそうだ。

掲載日:2015年6月24日



 
   
    

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