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【第51回】新コンセプトの「日本株設備人材投資指数ETF」
機関投資家の認知・啓発へ東証がセミナー開催:MSCI

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MSCI日本株人材設備投資指数

MSCI Inc.マネージング・ディレクター
内 誠一郎氏
エクイティストーリーを重視してESGインデックスのひとつとして開発

 「MSCI日本株人材設備投資指数」のコンセプトは、設備・人材投資が将来の収益性につながるというエクイティストーリーを重視するということでした。設備投資は企業にとっての支出項目なので、その支出をどれだけ売上につなげられるかという投資の上手さが問われてくる。また実際に海外の研究では、ガバナンスに優れた企業ほど資金調達コストが低く成長率に富むという複数の検証結果も出ており、企業を選ぶ観点でもガバナンスは非常に重要な項目であると考えています。そこで本指数をESGインデックスのひとつとして開発することを定めました。

 コンセプトは決まっても実際の指数開発は簡単ではありません。これは他のプロバイダも同じだと思います。指数化には多くの問題があり、本指数ではそれぞれに工夫を凝らすことで解決していく必要がありました(表参照)。その結果、シミュレーションベースのパフォーマンスでは過去5年間の対TOPIXで79ベーシスほどアウトパフォームしています。リスク水準もやや低く比較的良好なリスク・リターンの特性をもった指数にすることができました。

「指数化には多くの工夫が必要」

(出所) MSCI

 当社が独自でおこなっている「キャパシティ分析」を紹介します。本指数を含めて新しい指数を組成する際におこなっているのですが、これは「米ドルで100億ドル、日本円で1.1兆円くらいの規模でこの指数に対してパッシブ運用をすると、どのくらいの発行済み株式数をもってしまう銘柄が出るかという分析です。赤丸の1.5(%)が本指数の一例で、上が時価総額ベース、下が浮動株ベースです。この水準が5%を超えると大量保有報告の提出義務が出てくるので機関投資家には好まれません。本指数は数兆円規模で投資しても大丈夫であろうと考えています。

「キャパシティ分析」

(出所) MSCI

外国人投資家が日本株投資で使っているベンチマークがベース

 指数構築のルールは、外国人投資家が日本株投資をする際に多くが使っている一般的なベンチマークをベースにしています(表参照)。最も特徴的なのが、初期フィルターの3つめにある「Red Flag銘柄」です。これは弊社独自のデータで、弊社のESGリサーチが提供するレッドフラッグに該当する銘柄は除外するものです。世界に150人いる弊社ESGリサーチのアナリストが不祥事をモニタリングしており、どのような不祥事が起こったかを評価します。

「指数構築ルール」

(出所) MSCI

 評価軸は2つあって、ひとつ影響の本質。一時的な不祥事か構造的に起こっているのかという観点で評価しています。もうひとつは影響の広がりで、たとえばどのくらいの人たちが巻き込まれているのか、いくらくらいの金額が損害対象になっているか、などの規模です。この2つの軸で「Very Severe(ベリーシビア)」に該当するとレッドフラッグを立てて注意喚起を促します。本指数は人材投資が重視されているので、レッドフラッグに至らなくても人材管理や労働者管理の観点で深刻だと判断すれば、それも除外できるようにしています。

 150銘柄の銘柄選定の際に、主に使われるのが人的資本開発スコアです。報奨制度や福利厚生、従業員エンゲージメント、内部通報制度などの政策を通じて、企業がどれだけ従業員を惹きつける努力をしているかを評価しているもの。トレーニング&開発、多様性、外部認証、報酬&福利厚生、従業員エンゲージメント、不祥事などのカテゴリーで見ています。企業の公開情報をベースに評価を付けていますが、特徴的なのはアンケート情報も公開されていてきちんと書き込んである企業を評価して、そのなかで取り組み度合いかをアナリストが相対評価をしている点です。

 150銘柄を組み合わせて指数化する際の銘柄加重では、時価総額ウエイトではなく時価総額ウエイト×ガバナンス-クオリティ・スコアを使っています。ガバナンス-クオリティ・スコアとは、ROEと負債自己資本比率、収益安定性(収益の標準偏差)からクオリティ点数を算出し、11項目のガバナンスの評価項目からも点数を出します。これを採用した理由は①グローバルで共通した尺度②客観性が高い③実際に企業が改善行動を取れる――の3点。今回の日銀のねらいを考えると、指数に選ばれない企業も設備投資をするインセンティブになり得る必要があります。企業が改善することが比較的容易な項目を使っているわけです。

※MSCIはいかなる金融商品の推奨・支持・販売するものではなく、それら金融商品のパフォーマンスについて一切の責任を負いません

掲載日:2016年07月13日



   
    

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