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【第26回】バークレイズ・キャピタル証券、石橋氏に聞く 高い透明性で分散投資に応えるETN 東証ETF

 

東証ETF・ETN活用プロジェクト [ なるほど!ETF・ETN ]

【第26回】

バークレイズ・キャピタル証券、石橋氏に聞く

高い透明性で分散投資に応えるETN

バークレイズ・キャピタル証券インベスター・ソリューション本部長 石橋泰寛氏
バークレイズ・キャピタル証券インベスター・ソリューション本部長 石橋泰寛氏
さまざまな指数に連動させる新しい金融商品であるETN(指標連動証券)の国内第1号が8月23日に東京証券取引所に上場した。英国のバークレイズ・バンク・ピーエルシーが発行する指標連動証券(ETN)を信託財産とし、信託受益証券(JDR)の形で上場する。日本における初めてのETNの上場であり、外国証券がJDR形式を利用して上場するのも今回が初めてとなる。バークレイズ・キャピタル証券インベスター・ソリューション本部長の石橋泰寛氏に、ETNの金融商品としての特性、リスクや将来性などについて聞いた。
バークレイズとETNの沿革は?
「世界初のETNはバークレイズ・バンクが発行する『iPath』※で、2006年6月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。バークレイズがこれまでに発行したETNは世界で約100銘柄の上場実績がある。米国ETN市場は2011年7月の資産総額が約160億ドル。バークレイズ発行分は80億米ドル超で、おおむね50%のシェアを占める」
※「iPath」はバークレイズ・バンク・ピーエルシーの信用力に基づき発行されるETNのブランド総称
米国市場のETNの資産残高推移
米国市場のETNの資産残高推移
出所:Bloombergのデータを基にしたバークレイズ・キャピタル社集計による
「ETFとETNを足し合わせた、世界のETP(Exchange Traded Products)市場の規模は2010年で資産総額が約1兆5000億ドル、銘柄数が約3500。資産総額からETPの構成比率でみると99%がETFで、1%がETNという格好だ。ただ、ETNは2006年に生まれたばかり。5年間でここまで大きくなったということは、今後の商品の戦略およびマーケットの拡大に応じてかなり成長する余地があると考えている」
世界のETPの資産総額および銘柄数の推移
世界のETPの資産総額および銘柄数の推移
バークレイズ・キャピタル証券資料を元にQBR作成
「バークレイズが発行するETNは、ニューヨーク、ドイツ、ロンドン、イタリアの証券取引所に上場。トロントとシンガポールの取引所に重複上場している。日本の規制、会計システム、税制に対応しJDR形式で今回東証に上場することで、海外取引所に上場している『iPath』ETNへの投資機会を提供できる」
世界のETPの資産総額および銘柄数の推移
ETNとETFの違いについて詳しく知りたい。
ETNの金融商品の特性
 「ETFとETNのどちらが良いかという質問を受けることが多いが、基本的に競合する商品ではないと考えている。お互いの商品にメリットがあるので住み分けてゆく形になり、ETNがETFのマーケットを喰っていくということはない」
「バークレイズ銀行が発行する債券を、信託受益証券として上場し、取引時間中に自由に売買できることが今回の上場商品であるETNの極めて大きな特徴。株価指数、商品価格、新興国市場に関する商品、通貨、金利、投資戦略など特定の指標に連動する。あらゆるインデックスに連動する形で、無限の商品組成の可能性がある。ファンドであれば資産を信託するので、実際に買い入れて資産の値段で基準価額をつくるのがファンドの特徴だ。これに対しETNは基本的に裏付け資産の購入が義務ではない。バークレイズ・バンクが発行し、あるインデックスに連動することを保証することで、バークレイズ・バンクの与信でパフォーマンスが保証される」
「新興諸国で投資制限がされている、あるいは流動性が低く普通に簡単に売買できない商品など、連動する指標が市場で容易に買えなくても商品化できることが大きな特徴だ。世界的な投資銀行のプラットフォームで、それらのリスクを移転し商品化することによって、組成する商品の守備範囲がかなり広がってくる。ただし、買いにくい資産に連動させると、その発行体はリスクをとる訳で、このような商品を組成できる会社は限られてくる」「実際に商品を組み入れる場合に買いにくい商品を使ってしまうと、インデックスで計算した値段と異なる値段で買わざるをえなかったり、買うことができなかったり、計算した指標と値段がズレてしまう可能性がある。ETNは発行体が連動することを保証しており、自分のヘッジのために資産が買えなかったとしてもそれは発行体のリスクであって投資家のリスクではない。ただ、そういったリスクを投資家がとらない代わりに、発行体の与信リスクを投資家にとっていただくことが、ETFとの大きな違いになる」
トラッキングエラー
 「トラッキングエラーがないというのは、ETNの価格と連動する指標の間にトラッキングエラーがないということ。『iPath』の理論価格は日々公表されており、コストを含めた計算式もすべて公表されているので透明性は高い。上場商品となればビッド・オファーがたつので価格に若干のズレは生じるが、一定金額以上の『iPath』を保有する大口の投資家に対しては、仮に取引所で売買が成立しなくても、理論価格から一定のコストを差し引いた価格でバークレイズが買い取ることを保証しているので、透明性の高い価格での流動性を供給している」
ETFとETNの主な違い
ETFとETNの主な違い
各種資料からQBR作成
信用リスク
 「債券であるがゆえに、発行体がデフォルトすれば当然損失が出るリスクがある。ただ、前述したように発行体は金融商品の買い取りを保証しており、投資家が売りたいと感じたときに売れる日々の流動性を供給することで、債券としてのリスクはかなりカバーされていると考えている」
米国でETNはどのような投資家に支持されているのか?
「投資家別にみると、約50%が個人および富裕層と呼ばれる個人投資家だ。約25%が投信のファンドやヘッジファンドなどのアセット・マネージャー。残りの約25%が年金を含む機関投資家で、かなり幅広い投資家が買っている。個人投資家向けの金融商品は機関投資家は買わないというイメージを持つ方もあるかもしれないが、機関投資家でも今まで運用したことのない商品を手がけようとすれば、システムの導入やスタッフの採用、ノウハウの蓄積、リスク管理などのコストがかかる。個人投資家が多く購入している金融商品でもコストが極めて安いと判断し、運用をアウトソースする観点から機関投資家からも広くETNが受け入れられているとみている」
上場する9銘柄の『iPath』と今後の展開についてはどうか?
「今回はJDRの形式が効率的と判断し、海外ですでに上場しているETNを重複上場させることとなった。特定口座を利用できること、信用取引を利用できることなど、非常に高い利便性で新しい金融商品であるETNに投資できる。株式と同じプラットフォームで投資できるため、JDR形式でETNが上場する意義は非常に大きい」
「8月23日にS&P500のボラティリティ指数VIX先物に連動するものと、GSCIのコモディティ総合指数に連動する2つの商品が上場する。9月6日にはコモディティ指数のサブセクタが7本上場し、これまでなかったような金融商品がそろってくる」
上場日 コード 銘柄名 対象指標 売買
単位
8月23日 2029 iPathR VIX中期先物指数連動
受益証券発行信託
S&P 500 VIX中期先物指数トータル・リターン 1口
2021 iPathR 商品指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIR商品指数トータル・リターン 1口
9月6日 2022 iPathR 貴金属指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIR貴金属指数トータル・リターン 1口
2023 iPathR 産業用金属指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIR産業用メタル指数トータル・リターン 1口
2024 iPathR エネルギー指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIRエネルギー指数トータル・リターン 1口
2025 iPathR 農産物指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIR農産物指数トータル・リターン 1口
2026 iPathR 穀物指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIR穀物指数トータル・リターン 1口
2027 iPathR ソフト農産物指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIRソフト・コモディティ商品指数トータル・リターン 1口
2028 iPathR 畜産物指数連動
受益証券発行信託
S&P GSCIR畜産物商品指数トータル・リターン 1口
「分散投資を考慮すると、金融市場が仮に『全面売り』の局面でも値上がりしているような金融商品がほしいものだ。バークレイズとしては投資家から『メニュー』から選ぶように金融商品を選んでもらえるよう、『ニッチ』な投資家のメリットにも応える金融商品をそろえたい。将来的には、日本の取引時間帯がマザーマーケットの商品も候補になるだろう。ETNはモノの値段を上場させる極めて透明性が高いシンプルな商品であり、『このようなものもETNにできるのか』ということが、ひいては投資家保護につながると考えている」
掲載日:2011年月08月23日/株式会社QBR


   
    

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