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つなぎ売りとは?つなぎ売りの方法や注意点などを徹底解説!

 

信用取引を調べると必ず出てくるキーワードの1つが「つなぎ売り」です。様々なWebサイトや雑誌で取り上げられています。この「つなぎ売り」について、確認していきましょう。

つなぎ売りとは

つなぎ売りとは、保有する有価証券の株価が近い将来に下落する可能性があると考えた場合に、信用取引の売りなどを利用して、株価変動リスクを回避する取引手法になります。まさに、リスクを回避(ヘッジ)する取引であることから、ヘッジ取引とも呼ばれます。

つなぎ売りがどのような場合に活用されるか、いくつか事例を挙げたいと思います。

中長期保有予定の銘柄の一時的な株価下落への対応

投資家として、将来を有望視している銘柄へ投資することが多いと思いますが、こうした銘柄が常に右肩上がりで株価が上昇するとは限りません。世界情勢やライバル会社の台頭など様々な要因で株価は上下します。

株価下落時に手放す(売却する)のも1つの手段ですが、依然として、将来を有望視するならば、保有銘柄の株価下落リスクを回避しつつ、保有し続けたいと思うはずです。この方法として、つなぎ売りの取引手法を使うことが考えられます。

株主優待銘柄での「優待クロス取引」

株主確定日となる基準日に株式(現物)を保有していた場合に、株主優待が付与される銘柄は個人投資家に大変人気です。株主優待は取得したいが、株価変動(特に株価下落)が株主優待の価値を上回ってしまうと意味がなくなります。そこで、優待銘柄を現物で保有しつつ、株価下落リスクの回避策として、つなぎ売りの取引手法を使うことが考えられます。

中でも、現物の買いと信用取引の売りを同時に注文するクロス取引により、株式(現物)保有と信用取引の売り残高を保持する「優待クロス取引」が多く実施されています。

つなぎ売りのやり方

それでは信用取引の売りを使った「つなぎ売り」のやり方について、確認していきましょう。

つなぎ売りのやり方の確認点

2つの前提があります。「株式(現物)を保有する/保有していること」「信用取引の売りをすること」となります。

株式(現物)の保有については、すでに株式(現物)を保有している場合も、信用取引の売りと同時に株式(現物)の買いを注文し約定する(クロス取引)場合も「株式(現物)の保有」に該当します。

信用取引の売りをすることについては、注意が必要です。1つ目は、保有している銘柄が信用取引の売りができる銘柄であることを確認する必要があります。制度信用取引であれば「貸借銘柄(買いも売りもできる銘柄)」に選定されているかどうか、一般信用取引であれば口座開設証券会社で「信用取引の売り対象銘柄」になっているかどうかの確認が必須となります。2つ目は、制度信用取引の場合、制限措置(新規売り停止)が適用されていないかどうかを確認する必要があります。制限措置の適用状況は日本証券金融株式会社のWebサイトでも確認することができます。なお、一般信用取引においても証券会社が独自に制限を設定している場合がありますので、口座開設証券会社の情報を確認する必要があります。

つなぎ売りの終了方法

つなぎ売りの終了方法としては、2種類あります。1つは株式(現物)を手元に残したまま、信用取引の売りだけを終了させる「買い返済(買戻し)」で、もう1つは、保有している株式(現物)を引き渡して信用取引の売りの返済に充てる「現渡し」で、この場合は株式(現物)と信用取引売りの両方が終了することになります。

つなぎ売りのメリット

つなぎ売りについて、多くの個人投資家が実践していることやそのやり方を確認してきました。次に、つなぎ売りのメリットである、株価下落局面における「株価変動リスクの回避」について、詳しく確認していきたいと思います。

株価変動リスクの回避とは

株式(現物)を保有する投資家は、株価が上昇することを期待しています。常に株価が上昇するのであれば不安(リスク)はありませんが、残念ながら、確証を得ることはできません。株価下落の不安(リスク)は必ず付いてきます。このリスクを回避(軽減)させる取引手法が「つなぎ売り」になります。

例えば、ある企業の将来性を期待して株式を取得したとします。しかし、この企業が一時的な業績不振で収益が悪化し、近い将来に株価が下落することを予想したとします。一方で、この企業への期待は薄れておらず、引き続き、保有したいと考えています。このときに、黙って株価が下がるのを見ているだけだと、いくらまで下がるのか不安(リスク)は募るばかりになります。このような場合に「つなぎ売り」を利用することが考えられます。

仮に、保有している株式(現物)の取得価格が1,000円であったとし、現在の株価が同値(1,000円)で、この値段で信用取引の売りを約定できたと仮定します。つまりは、1,000円で「つなぎ売り」が成立している状態とします。

1週間後、株価が800円になったとします。株価の評価(損益)の算出方法は、「売却値段-買付値段」ですので、保有している株式(現物)の評価(売却したと想定した損益)は、800円―1,000円で、200円の損失(▲200円)となります。一方で、信用取引の売りの評価(買い返済をしたと想定した損益)は、1,000円―800円で、200円の利益(+200円)となります。つまり、「つなぎ売り」をしたことで、損益が相殺され「0円」となります。つまり、株式(現物)のみを保有していた場合の200円の損失(▲200円)を回避できたことになります。

このように、近い将来に株価下落することが明白な場合、「つなぎ売り」をすることで、当該株価下落分の不安(リスク)を回避することができます。

つなぎ売りの終了

信用取引についてはいずれ返済する必要がありますが、今回の事例で、株価が800円の時に、買い返済(買戻し)をしたと仮定すると、株式(現物)は200円の評価損(▲200円)を含んだまま継続保有している一方、信用取引としては200円の実現益(+200円)を得ることができます。その後、株価が回復して1,000円になれば、継続保有している株式(現物)の評価損益は0円に戻りますので、信用取引の実現益だけが残ることになります。これが、現渡しによる返済をした場合は、株式(現物)を引き渡すことで、信用取引の売りの約定値段である1,000円で売却したことと同等になるので、損益は0円となります。現渡しを行った場合は保有する株式(現物)の残高もゼロになりますので、保有し続けたい場合は、通常、買い返済(買戻し)を行います。

「優待クロス取引」時は現渡し!?

つなぎ売りの1つである「優待クロス取引」を実施する場合の信用取引の売りの返済は多くは「現渡し」により行われます。これは、基準日一時点に株式(現物)を保有していることを目的とする取引であり、買戻しを行った場合には、株式(現物)の売却を行うまでの間、価格変動リスクに晒されることになるからです。このため、対象銘柄の株価が下落しても上昇しても、優待の権利を取得した後は信用取引の売りと保有する株式(現物)の両方の残高がゼロとなる「現渡し」による返済をすることになります(現渡しをすることで売買損益は必ず0円となるため)。

損益の相殺

つなぎ売りのデメリット

つなぎ売りは、将来の株価下落局面が明白な場合に有効な取引手法であることは確認できたと思います。しかし、つなぎ売りは簡単にできる取引手法でもありません。注意点がありますので、確認していきましょう。

信用取引はさまざまなコストがかかる

メリットで「つなぎ売りをすることで損益が0円となる」として説明しましたが、これは株価変動に伴う損益だけで算出したものです。実際には、信用取引で売買し、残高を保持した場合には、信用取引に係るコストが別に発生することになるので注意が必要です。売買手数料や貸株料などがコストとして挙げられます。また、信用取引の売りを制度信用取引で実施した場合は、逆日歩のコストも念頭に入れる必要があります。

更に、信用取引の売りの返済方法として「現渡し」を選択した場合、別途手数料がかかる場合がありますので、合わせて注意しましょう。

コストの種類

予想に反して株価が「上昇」した場合は

メリットでは、1,000円から800円に株価下落した場合を挙げましたが、逆に株価上昇した場合を挙げてみます。

1週間後、予想に反して株価が1,300円になったとします。株式(現物)の評価は、1,300円―1,000円なので、300円の利益(+300円)となります。一方で、信用取引の売りの評価は、1,000円―1,300円なので、300円の損失(▲300円)となります。「つなぎ売り」で株価上昇しても、株価下落と変わらないように見えます。しかし、注意が必要です。

今回の事例に合わせると、株価が1,300円の時に、買い返済(買戻し)をした場合、株式(現物)は300円の評価益(+300円)を含んだまま継続保有している一方、信用取引としては300円の実現損(▲300円)が発生します。また、現渡しをした場合、株式(現物)を引き渡すことで、信用取引の売りの約定値段である1,000円で売却したことと同等になるので、損益は0円となります。ともにつなぎ売りとして信用取引の売りをしたために、株式(現物)だけを保有していれば得られた300円の利益を得ることが出来なくなっています。つまり、つなぎ売りをすることにより、得られる利益を失うこともあるということになります。

まとめ

多くの投資家が実践している「つなぎ売り」について、確認しました。近い将来に株価下落の可能性がある場合や優待銘柄の権利取得において価格変動リスクを回避したい場合を例に挙げてみました。その他でも様々な方法で「つなぎ売り(リスクヘッジ)」の手法は取られています。デメリットもあるので、注意しながら取り入れていきましょう。

監修:日本証券金融株式会社

   
    

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