株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

第5回 中長期での資産形成を考える - はじめての人の投資知識

はじめての人の投資知識

 

大きく勝つことの追求は簡単だが、失敗したときのダメージが大きい

投資において「大きく勝とう」とすることは、実はそれほど難しくありません。一番儲かると思われる対象に全額を投資すればいいからです。あなたの狙い通り大きく勝てれば大きな利益が得られます。

もちろん、これには失敗の可能性もついてきます。あなたの思惑通りにいかない場合は、がくんと資金が減少することになります。

投資を行う人は、「自分は投資において優秀である」「投資の判断は正しいに違いない」と自信をもってチャレンジを行います。自信がまったくなければ投資はしないことになるので、初心者も含め投資家はみな自信家です。しかし、自信があれば投資がうまくいくほど話は簡単ではありません。

個人の経済的行動がなぜ合理的にならないか心理学の力を借りて研究する行動ファイナンスというジャンルがありますが、その研究では、「自信過剰」は必ずしも投資のパフォーマンスを上げるわけではないとされています。それどころか、むしろパフォーマンスを下げる恐れが大きいといわれます。投資の初心者ほど、根拠のない自信を持ちがちで、自信が及ぼす悪影響を意識するべきです。

実は、投資初心者が買い求める投資指南書の多くは、失敗する可能性にあまり触れず、成功の可能性をあなたに強く提示し、一攫千金の夢をあおることがしばしばです。気を引くタイトルとするためには、少額で、多額の資産を生み出すストーリーを提示する必要があり、そのためには、とても大きなリスクを取るように促すことになるからです。

それでは、初めての投資において知っておくべき投資のテクニックはどういうものでしょうか。それは「大きく負けない」ことです。

レンタルビデオのように、大きく勝つより「大きく負けない」運用を考える

「大きく勝つ」だけを意識した投資方法の問題点は、ひとつの対象だけに投資を集中させることです。うまくいったときの利益の最大化を図る代償として、うまくいかなかったときの元本割れするリスクは大きくなります。

レンタルビデオやDVDを借りに行った人は誰でも記憶があると思いますが、「1本ではなく2本」「2本より3本」借りることが多いと思います。よほど借りる映画の満足度に自信がない限り、「外れだったらもう一本を見よう」と思って2本目を借りるものです。

あるいは、恋愛映画を1本目に選んだら2本目はコメディ映画を選ぶように、「同じジャンルは何本も借りない」という選択をすることも多いと思います。

これ、実は資産運用においても参考になる考え方です。つまり「大きく外さない」という考えにおいて投資でも同じ方法を採れるのです。それは「分散投資」というやり方です。

分散投資というのは、「値動きの異なる対象に資産を分散して投資を行う」方法です。A社の株だけを持っていると、日本の景気がよくてもA社だけ売り上げが減少すれば、自分の株価は下がってしまいます。ライバルのB社や違う業種のC社の株も持っておけば、「一人負け」は避けられます。

もっとたくさんの株式会社に投資する方法もあります。投資信託という仕組みを用いて、インデックス運用を行う投資信託を購入すれば、日本の株式会社(例えば東証一部上場企業約1750社)を丸ごと投資をしたのと同じ運用が可能になります。これなら個別企業の売り上げ不振を気にする必要はなく、日本の景気だけを見ておけばいいことになります。

さらに海外に手を伸ばすのも分散投資の考え方のひとつです。アメリカの企業の株を買ったり、インドやトルコなどの成長著しい新興国の株を買うことができれば、日本の景気がいまいちのときにも、海外の成長により資産を増やすことができるかもしれません。

株式以外に債券や不動産(REIT。不動産投資信託)、金や穀物などのコモディティを投資対象として加えることもできます。

分散投資は「大きく負けない」ための重要な方針

分散投資を行えば、「大きく負けない」投資が可能となります。なぜなら、世界中のすべての投資対象が同時に値下がりすることはほとんどないからです。

リーマンショックの直後のように、世界的に株価が大きく下落することはあります。しかしこうしたときも債券の下落は限定的で、「大きく負けない」投資ができます。その後も粘り強く分散投資をしていれば、海外の株価回復、国内のアベノミクス相場などにより資産は増えていきました。

分散投資をすれば上手に儲けられる、ということは残念ながら保証できません。あくまで分散投資は大きく負けないための方法であるからです。

また、分散投資で「大きく負けない」といっても、元本割れしないことまでは保証できません。大きく元本割れする可能性がある投資対象に資産の多くを投入していた場合、いくら分散投資していてもマイナスになることはあります。

しかし、特定の対象だけをターゲットにしていると、マイナス20%やマイナス30%に下がる恐れはあります。分散投資をしっかり行っていれば、極端な大負けは回避することができるのです。

まずは「預貯金」と「投資」の割合をしっかり決めるところから

投資した資産の分散投資の効果を計量することは、ちょっとした数学の知識と、データを必要とします。初心者には少しハードルが高いかもしれません。しかし、初心者にもできる簡単で重要な「分散投資」のステップがあります。

初めての投資家が、最初に行うべき分散投資は「預貯金:投資」の割合を決めることです。私たちが投資した金額以上の損失を被ることは基本的にありません(オプション取引やレバレッジの高いFX取引などは投資額以上の投資を行うため、金額以上の損失を被る可能性がある。しかし、こうした投資は初心者がいきなりチャレンジする必要はない)。

仮に運用した財産がうまくいかずマイナス20%になったとしても、あなたの全財産の30%しか投資に回さなければ、全財産に占める損失の割合はマイナス6%ですみます。70%の財産は預貯金で残しておいたことで、全体での損失は一定額に収まったわけです。

初めて投資を行う人にとっては、預貯金を手元に一定割合残し、資産の一部で投資にチャレンジすることが、最初の「分散投資」ということになります。

企業年金の運用のように専門家を交えてきちんと分散投資を行った場合でも、リーマンショックの年度にはマイナス20%近い損失が相次ぎました。個人の運用でも同程度の失敗はあり得ると考えてみてください。そうしたケースでもガマンできる投資割合を考えてみるとより具体的な投資割合の決定プロセスになることでしょう。

当然のことながら、投資の割合を多くするほど、うまくいったときには一気に増える反面、うまくいかないときも大きく下がることになります。自分の投資経験やお金のニーズなどを勘案し、「明日、リーマンショックが再び起きても」なんとか運用を続けていける投資割合を決定するようにしてください。

執筆:フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャル・プランナー/山崎俊輔
掲載日:2014年4月10日

   
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »