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【第3回】東京オリンピック開催による自動車業界の夢と現実とは?

 

 東京オリンピック開催は自動車業界にとっても明るい話題です。オリンピックという全世界の注目を集める大イベントです。自動車が競技に登場するケースは殆どないと思われますが、競技場から選手村、プレスセンター、観客の宿泊施設等への移動手段として、様々なクルマが使われることは間違いありません。今から7年後ともなれば、ハイブリッド車より一層進んだエコカーである電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)等が大活躍して、日本の自動車産業の技術力を誇示する絶好の機会です。また、最近話題になっている自動運転システムも、オリンピック開催区域のような範囲限定ならば、かなり実用化されているかもしれません。

テレビ等のメディアを通じて世界中の人が「日本のエコカー技術は素晴らしい!」と感動するだけでなく、世界中から日本にやってくる多くの人が、こうした最先端技術を実体験して、母国へ戻っていくのです。自動車業界の研究開発に携わる人のモチベーションが大きく高まったと思いますし、想像しただけで私たちもワクワクしませんか?

ただし、これは未だ7年先の話です。この壮大な"夢"を、現実の株式投資に繋げるのは時期尚早であり、少し難しいと考えざるを得ません。一方で、オリンピック開催による経済効果が可処分所得を増加させて、回り回って、新車購入意欲を刺激することは十分あり得るでしょうが、これも自動車株への投資材料としては力不足です。それでは、自動車関連株はオリンピック開催の恩恵とは無縁なのでしょうか?

私は、決してそんなことはないと思います。現実的には、自動車産業でも大きなメリットを受ける企業が意外に多くあります。それは、商用車(トラック)に関連する企業です。

現在、政府が推進している大幅なインフラ刷新(国土強靭化計画)は、オリンピック開催決定を受けて一層拡大するはずです。既に、今回の開催決定前から、この国土強靭化計画の推進を背景に、建設向け大型車両(ダンプカー、ミキサー車、トレーラー等)の販売回復が顕著になっています。東京オリンピック開催が、こうした建設向けトラックの需要拡大を加速する可能性は高いと考えます。

図表1:国内の大型中型トラック市場の推移

思い返すと、高度経済成長期が終わった後の日本では、大規模な"スクラップ・アンド・ビルド"と呼ばれる建設需要は少なかったのではないでしょうか。"スクラップ・アンド・ビルド"に際しては、特にスクラップの過程に於いて、廃棄材等の物資輸送ニーズが発生します。最近では、震災後の復興需要がその実例です。災害時と比較することはできませんが、この物資輸送ニーズに必要不可欠なのがダンプカー等の大型トラックです。そして、その後はミキサー車やコンクリートポンプ車が使われるのです。

図表2:東京オリンピック・国土強化計画で恩恵を受けそうな自動車株

こうしたことから、自動車産業の中では、建設向けを中心としたトラック関連企業に大きなメリットが発生すると予想します。具体的には、トラックメーカーであるいすゞ自動車(7202)日野自動車(7205)に加えて、極東開発工業(7226)新明和工業(7224)のような架装メーカー、プレス工業(7246)のようなトラック向け部品メーカーにも波及効果が出てくるでしょう。 トラックにも様々な種類がありますが、建設用の大型トラックの需要が拡大すると、1台当たりの利益額も非常に大きく、業績に与えるインパクトも桁外れに大きくなります。オリンピック開催の特需が出るのはこれからですが、既に国土強靭化計画を背景にした需要回復が鮮明になりつつあることを考えると、今秋の中間決算発表時に株価見直しの局面は十分あり得ましょう。

執筆:持丸強志 株式会社ナビゲータープラットフォーム調査部アナリスト

持丸 強志(もちまる つよし)プロフィール

2013年に個人投資家向け投資アイデアサイト「Longine(ロンジン、http://www.longine.jp/)」に参画。

東京工業大学工学部卒業後、日興證券、大和総研、メリルリンチ日本証券、ドイツ証券、リーマン・ブラザーズ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、現職。

ほぼ一貫して約20年間自動車・自動車部品産業の分析、及び、大手自動車メーカーを始めとする企業分析を担当。

掲載日:2013年10月17日

   
    

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